「サステナソシオプロジェクト/グランパスカーボンニュートラルアクション with TOYOTA」レポート
このままだと子どもたちがサッカーをできなくなる。そんな未来が訪れないために。
グランパスファミリーと共にグランパスの未来を創る「GRAMPUS SOCIO PROJECT」。その第5弾となる「サステナソシオプロジェクト/グランパスカーボンニュートラルアクションwith TOYOTA」が、8月10日に豊田スタジアムで開催されました。これまでは「新エンブレム」や「女性が楽しめるスタジアム」など具体性のあるテーマで行われてきましたが、今回は社会問題が絡んだ難しいテーマ。それにもかかわらず多数の応募があり、その中からおよそ30名のグランパスファミリーが参加しました。
まずは豊田スタジアムでのプロジェクト開催時の恒例となっている「スタジアムツアー」。普段は入ることのできない記者会見室や入場前に選手が集まるエリアを見学しました。試合直前の選手撮影で使うスポンサーバナーは、日付入りでこの日にだけ使われるもの。参加者も記念に写真を撮っていました。
今回の「サステナソシオプロジェクト/グランパスカーボンニュートラルアクションwith TOYOTA」は2部構成で、第1部はカーボンニュートラルの意味や意義を理解する時間に。2008年からトヨタ自動車株式会社により行われている全国の小学校での出張授業「トヨタ未来スクール」のカリキュラムの中から、昨年に考案、開発されたクイズとロールプレイングを組み合わせたカードゲームを実施。増えすぎたCO2の危険性や削減方法、カーボンニュートラル(二酸化炭素など温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること)の意義などを学んでいきます。子ども向けに行われることが多いようですが、大人たちばかりのグループも楽しそうに取り組んでいました。第2部はメンバー同士で対話をしながら「カーボンニュートラルを実現するアイデアを考える」時間。今から25年後、2050年のカーボンニュートラルが実現したスタジアムと、その周辺の街はどうなっているのかを想像し、未来を「見える化」します。
はじめに、名古屋グランパスのホームタウングループ・グループリーダーの佐藤剛史さんが、今季からクラブが行っている「グランパス気候チャレンジ」や愛知や名古屋の気候変動の現状を説明。昨年7月と8月の気温上昇により、日中にサッカーができなかった日数が39日あったことを聞くと、参加者たちは驚いた様子でした。
続いて、ファシリテーター(会議やミーティングの進行役)を務めた株式会社フューチャーセッションズの上井雄太さんが、海外クラブや、プロ野球球団などの取り組みを紹介。世界のサッカークラブがいかに気候変動問題に取り組んでいたかを競い合う「スポーツポジティブリーグ」に、26-27シーズンからアジアとして初めてJリーグクラブが参加することも伝えられました。少し先の未来には「サッカーで世界一のクラブになる」ことを目指していますが、スポーツポジティブリーグでのタイトル獲得はクラブを含めたグランパスファミリーの取り組み次第。近い未来に達成可能なことなのかもしれません。
そして、その「スポーツポジティブリーグ」にある12の項目(アクションリスト)に対するアイデアをメンバー全員で考えていきます。まずはそれぞれが付箋に自由に書き出し、次にグループ対話でアイデアを広げていきました。そうして生まれたアイデアをアクションリストごとに貼っていきます。
その後、さらに対話を深めていきます。今度はアクションリストごとにグループを分け、メンバーは自分が最も取り組みたいと感じたテーマのグループに参加。言葉だけではなくイラストや図を使い、アイデアが一目で分かるように描き出します。スタジアムを中心とした街のマップに貼り付けて、どのようなアイデアが出てきたのか、グループごとに発表しました。
「ごみの削減/管理」を話し合ったグループは「出たごみをどうするかではなく、ごみを出さないようにするためには」という発想で、「サステナビリティに取り組んだ項目をポイント制にして、試合会場で誰にも負担を背負わせないような体験ができないか」というアイデアを出しました。「水の効率的な利用」を考えたグループからは「2050年にはトヨタの工場や市役所などで使った水を再生利用する技術を転用できているといいな」という意見が聞かれました。
Jリーグ気候アクションハンドブックの中には、2100年、名古屋の夏の平均気温は全国で最も高い44度になると予想された記載もありました。実際に現在、部活動でも気温の上昇によりサッカーができず、室内での講義や体育館で他競技とスペースをシェアして練習している学校もあるそうです。子どもたちがいつでもサッカーを楽しめるように。気候変動についてもっと考えを進め、実際に行動をしていくことが大切です。今回のサステナソシオプロジェクトがその第一歩になるように、クラブもアクションを続けていきます。
参加者コメント
HIROさん(40代、男性)
「職場でもカーボンニュートラルに取り組んでいて、サッカークラブでの取り組みに興味があって参加しました。一番はクラブやサポーターが『自発的にやっていこう』という気持ちを持つことなのかなと。これからどんどん形になっていくと思うので楽しみです」
親子で参加したケイタロウさん(父・30代)
「グランパスが好きだし、自分たちの将来のことを考えてという側面もありますが、子どもが当事者として影響を受ける話になるので、子どもと一緒に参加しました。まずは生活において電気を使い過ぎないことも大事ですが、将来的に今の仕事で社会に還元できればいいなと思いました。グランパスのような大きな会社と取り組むことができればいいなと思いますね」
シュンくん(息子・4年生)
「難しかったけど楽しかったです。ごみを燃やすとCO2が出るので、なるべく燃やさないようにできたらいいなと思いました」
株式会社フューチャーセッションズ・上井雄太さん
「難しいテーマでしたが、皆さんしっかりとスイッチを入れて、高いクオリティーで対話されていました。名古屋グランパスと一緒にこの地域や世の中を良くする活動をしていくためには皆さんのアイデアが必要でしたので、一緒にデザインすることができて良かったです。この地域にはトヨタさんのような大きな会社があり、熱いサポーターがいますので、グランパスだからできる『サステナ』があると考えています。今日出たアイデアが一つでも形になっていくと、国内で初めてスポーツポジティブリーグのタイトルを獲れる可能性も十分にあると思います。2050年、カーボンニュートラルは当たり前で、その先のものを持っている国であり地域になっていると思っています」
ホームタウングループ・佐藤剛史さん
「皆さんサッカーが好きなんだなとあらためて感じました。サッカーと街をつなぐところまで考えてくれて、グランパスファミリーの皆さんに思いが及んでいることを本当にうれしく思いました。難しいテーマでも楽しんでやっていただいたことで、最後にはすごく大きな話になってワクワクしました。現状は環境にいい取り組みにお金がかかったり、技術的に難しかったりすることもありますが、今日のように楽しんでクリアしていきたいです。スポーツポジティブリーグの12項目に向き合い、クラブも一緒に取り組んでいきたいと思います。2050年はカーボンニュートラルを達成し、グランパスが旗振り役として地域を良くする存在の一つになれたらと考えています」