月刊グラン11月号のご紹介[森下龍矢選手インタビュー]
ここ半年くらいで
メンタルが強くなった
AFCチャンピオンズリーグ(ACL)ラウンド16・大邱FC戦。左サイドを駆け上がった森下龍矢は、浮き球のパスを前田直輝に預けると、自らはボックス内に侵入。再び前田から浮かせたパスを受け相手DFを剥がすと、シュヴィルツォクの頭に合わせて完璧なクロス。強烈なヘディングシュートが決まりグランパスが同点に追いついた。
このゴールで勢いがついたグランパスは、シュヴィルツォクのハットトリックなどで得点を重ね今シーズン初の逆転勝ち。ベスト8に駒を進めた。このシーンに象徴されるように後半戦、森下の躍動感あふれるプレーが、チームを何度も助けている。
―このところチームにすごくプラスのエネルギーを与えていると思いますが、手応えはいかがですか?
手応えはあります。というよりはずっと前からあったので。それをどうやってチームの力に変えるか。そういう頭の部分がすごく整理されてきたと思います。2月のキャンプでは、なかなかチームのやり方に慣れていなかったですけど、キャンプが終わったあたりから、すごく自分の状態も良かったですし、試合には出られませんでしたけど、ずっとコンディションが良くて、早く試合に出たいなと思っていました。
―コンディションがずっと保てている要因は?
グランパスのやり方が分かったこともあると思うんですけど、パーソナルトレーナーを付けたり、グランパスのトレーナーさんと方向性を打ち合わせしながら、いろんな角度で自分の体にアプローチできたことが一番だと思います。試合に出られなかったから、そういう時間を有効に使えたのかもしれません。
―確かに今シーズン初出場だったサガン鳥栖戦(第10節)も、いい動きをしていました。それでもなかなかチャンスが回ってきませんでしたね。
そうですね。でも僕のポジションには(吉田)豊さんがいて、成瀬(竣平)とか(宮原)和也とかいるので、出られないのは仕方ないじゃないですか。そこは監督が選ぶことなので。だから僕は本当に自分のプレーを向上させる、それだけにフォーカスして毎日取り組んでいましたし、この半年くらいでものすごくメンタルの部分が強くなったと思います。
―久しぶりの先発だったアビスパ福岡戦(第25節)はいかがでしたか?
本当にスターティングメンバ―って特別だなって感じましたね。久々にすごく緊張しました。でもピッチに出たら意外にいつも通りになるんですよ。それが不思議だなと思いながら
プレーしていました。
―不安もあったのでは?
正直ありましたよ。ここでダメだったら、もしかして今シーズンの出番がなくなるんじゃないかって。そんな思いがよぎることはありますけど、それは雑音でしかないので。自分は自分のプレーをするだけだし、『自分の良さを全部出すんだ』っていう心の在り方を練習からつくっているので、その気持ちを全部ぶつけました。以前の自分だったら消極的なプレーになっていたかもしれないですけど、本当にこの半年で強くなったと思うし、自分のやるべきことに集中できるというか、自分でも別人だった気がします。
―立ち上がりからエンジン全開でしたね。
そうなんですよ。プレーヤーとして90分やり切ることは大事ですけど、そこじゃないなって。変にセーブして何もできずに終わるよりは、45分でも30分でもいいから自分の力を全部出してチームのために頑張ろうって、その心意気がいい方向にいったと思います。みんなに『足つるの早いよ』って言われましたけど、それ以上に褒めてもらえたので(笑)。
パワーを100パーセント出し切ることが僕の仕事だと思っているし、明治大学時代やこれまでの育成で教えられてきたので、これまでの指導者に感謝ですよね。
ポジションにこだわりはない
与えられたところで良さを出す
森下がサッカーを始めたのは小学1年生の時。それまでは水泳を習っていて、幼稚園の庭でボールを蹴っている友達を見て「楽しそうだな」と思っていたという。小1まで待って習い事をサッカーに変更すると、自分自身の中に足の速さなど新しい発見があり、「自分はサッカーが得意なんだ。すごく楽しい」と感じたそうだ。
―子供の頃のポジションは?
前ですね。生粋のストライカーで『掛川のウェイン・ルーニー』と呼ばれても過言ではない存在でした(笑)。でもなんだかんだで下がっていって、小6でトップ下になって『掛川の(ジネディーヌ・)ジダン』と言われてもおかしくない時代もありましたね。そこからサイドハーフ、サイドバックという感じです(笑)。
―大学時代はサイドの選手で大学三冠も獲得しましたね。
そうですね。大学時代は前も後ろもウイングバックもやっていて、ハチャメチャなプレーをしていました。サイドバックで上がりすぎて戻れないとか、ウイングバックでどっちにプレスを掛けていいか分からないとか、結構ゴチャゴチャでした。
―それをやっていたからアビスパ戦は本職のサイドバックじゃなくても対応できた?
そこに関しては、マッシモ監督の指導が大きいと思います。サイドバックのプレーとサイドハーフのプレーを、今年になってしっかりと勉強できたので、その両方を切り替えられるようになりました。アビスパ戦は自分に求められていることと、エンジン全開で行けること、そのエンジンのパワーがうまく"マリアージュ"したっていう感じです(笑)。
―名言が出ました(笑)。ポジションにこだわりはない感じですね。
全然ないです。僕は与えられたところで自分の良さを出すだけですし、『サイドバックの森下』とか『サイドハーフの森下』とか言われるよりも、『森下のプレーを見ると楽しいよね』って言ってもらえるのが一番なので、どこで出場しても僕のプレーをしたいと思っています。
―練習では左サイドバックが多いですが、吉田豊選手の壁はやはり厚いですか?
すごく厚いですね。本当に厚いと思いますし、今は豊さんが持っていて、僕が劣っているところがたくさんありますけど、僕の方が勝っているところもあるし、豊さんを見習って、いつかは『森下は日本一だね』って言われるようになりたいです。豊さんを超えられれば、きっとそう言われると思います。
続きは『Grun』2021年11月号をぜひご覧ください。
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