月刊グラン9月号のご紹介[ランゲラック選手インタビュー]

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ACLグループステージ首位
5週間の長い"バブル"期間

2021年7月。グランパスの選手たちは極めて厳しい状況にいた。新型コロナウイルス感染症のパンデミックにより、ACLはタイ・バンコクでの集中開催に。それにより選手たちは"バブル"と呼ばれる生活を余儀なくされる。現地ではもちろんのこと、日本に帰国してからもホテルに缶詰めの状態。試合会場、練習場にバスで移動する以外は、家族にも会えずホテルの部屋で一人で過ごす。精神的にも辛い日々は5週間にも及んだ。
そんな中、ランゲラックにインタビューできたのは、バブルがようやく終わろうかという7月21日。画面越しのミッチは、当然のことながらかなり疲れているようだった。

―長い隔離期間でしたが、ようやく家族に会えますね。

 もうすぐ5週間になりますけど、こんなに長い期間、ホテルで隔離されることはなかったですし、いつもと全然違った状況で家族とも離れ離れになっています。でも、あと1日我慢すれば会えるということで、今は本当にワクワクしています。

―1月には長女のエミリアーナちゃんが生まれたばかりですし、長男のサンティアゴくんも喜びそうですね。家に帰ったら何をしてあげたいですか?

 とにかく一緒の時間を過ごしたいというのが一番です。普通のことでいいですよ。例えば外に出て散歩をしたり、公園に行って遊んだり。新鮮な空気を吸って、いろんなことを家族と一緒に楽しみたいと思います。

―ホテルの部屋ではどのように過ごしていましたか?

 部屋ではたいしてやることがないんですよね。読書をしたり、家族と連絡したりしていましたが、なかなか難しい状況でした。試合もありましたが、この状況下で準備することの難しさを感じました。いつもと全く違いましたからね。

―バンコクでは食事もそれぞれの部屋で弁当を食べていたそうですが。

 食事は個人の好みがありますから、『選択の余地がない』というのは難しかったですね。でも、その環境の下で食べるしかなかったし、本当に食べ物はアスリートにとって重要なことです。栄養面ではしっかりと考えて作ってくれていたので、そう考えながら食べていました。

―日本人選手には"サバ缶"の追加などもあって喜んでいたそうですが、ミッチが何か追加したものは?

 私は特に頼みませんでした(笑)。

グランパスが9年ぶりに挑んだACLグループステージは、5勝1分けで首位通過。初戦でマレーシア王者のジョホール・ダルル・タクジムに1-0と苦戦はしたものの、第2節G組最大のライバルと思われた韓国の浦項には3-0と快勝。この試合でランゲラックは、前半31分に左サイドからの強烈なシュートを鋭い反応で好セーブ。相手に先制点を許さずゴールに鍵をかけると、直後に柿谷曜一朗のスーパーゴールが決まり先制。リズムをつかんだグランパスは後半にマテウスが2点を追加し、勝利した。

―ACLは見事に首位通過しましたが。

 本当にいい結果になって良かったと思っています。1試合以外はすべて勝ちましたし、とにかく次のラウンドに進めたということは、特別なことであり一番いいことですね。グループステージは難しいこともありました。ホテルと試合の行き来しかできないというライフスタイルでしたし、ピッチコンディションもあまり良くありませんでした。それにACLでは知らない相手と戦うことで、情報がなかったというのも難しさが増したポイントです。日本だったら、誰がどういう個性を持っているのかとか、どういうプレーをするのか分かっていますけど、ACLは本当に全体を通して難しかった印象です。

―私が最大の難関だと考えていたのは第2節の浦項戦でした。柿谷選手の素晴らしいシュートが決まる直前に、ミッチのスーパーセーブがありました。あれを決められていたら試合は違った展開になっていたと思いますし、私は柿谷選手のゴールもミッチのおかげだと考えています。

 浦項というチームは本当に強かったですから、あの試合に勝つことができたのは本当に良かったと思っています。私のセーブから柿谷選手のゴールが生まれたと言われるのはうれしいですが、どうでしょう(笑)。私のセーブはチームを助けることができましたし、柿谷選手のゴールからペースを握ることができて、最終的に勝ち切ったというゲームだったと思います。

―ACLはどんな気持ちでゲームに臨みましたか?

 いつもと同じですよ。どんな試合でも私はベストを尽くしたいと思っています。それはACLでもJリーグでも変わりません。いい準備をして、いいパフォーマンスをして、そしてチームが勝つということに全力で取り組むだけ。それでチームが勝てばいいと思っています。

―第4節のラチャブリー(タイ)戦でも、前半37分に先制点を奪われそうになるピンチがありました。圧倒的に攻め込んでいた試合でしたが、相手の意表を突くミドルシュートが枠内に飛び、それでもミッチは集中力を切らさず防ぎ切りました。

 あのシーンはよく覚えていますよ。意外性のあるシュートでしたが、準備ができていたので反応できました。シュートを止めてチームを助けることが私の仕事ですから、それができて盛り上がればそれでいいと思います。それでチームに自信がついていきますし、それがつながると良い方向に向いていきます。

 ゲームには動きがあります。先制点を取って、そこから勢いをつければ簡単な試合になることもありますが、すべてのゲームは簡単ではありません。ラチャブリー戦は第3節で得点がたくさん獲れて良かったと思いますが、すぐ次の4試合目でまた同じ相手と試合をするというのは、意外に難しいものです。というのは、相手も守備を固めてきましたし、研究もしっかりしてきました。楽な試合はありませんよ。

―最後の第6節では、2年ぶりにベンチの外から試合を見守りました。武田洋平選手のプレーはいかがでしたか?

 そうですね、あの時点で次のラウンドに進出できることが決まっていたので、ベンチにも入らず試合を見守りました。武田選手は素晴らしいパフォーマンスがありましたね。前半のヘディングシュートを止めましたが、あれが入っていたらまた違った展開になっていたと思いますし、久しぶりにチャンスが巡ってきて、そこで自分の力を示すことができたのは良かったと思います。

 我々GKグループは常に一緒に切磋琢磨して練習をしています。もちろん武田選手だけでなく、渋谷(飛翔)選手も三井(大輝)選手も、試合に出たら素晴らしいパフォーマンスをしてくれたと思います。このタイミングで外から試合を見て、それが分かったのは良かったと思います。

―外から見て、改めて自分たちのチームをどう感じましたか?

 そうですね、いろんな選手にチャンスがあった試合だったと思います。フレッシュな選手も入りましたし、全員が攻守にハードワークするという自分たちの戦術をベースにして、いろんな戦い方が見られた試合でした。ACLは画面上では簡単に見えたかもしれませんが、一つ一つのゲームが難しいものでした。今後も続きますが、いろんな選手がプレーできたのは良かったですし、チームとしていいパフォーマンスを見せたい。Jリーグと並行してチャンスを得た選手が、いい形でプレーしていければいいなと思っています。


続きは『Grun』2021年9月号をぜひご覧ください。

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