月刊グラン5月号のご紹介[成瀬竣平選手インタビュー]
成長時期に突然の公式戦中断
右サイドバック研鑽を誓う
もちろん、早く試合をやりたいですよ。
成瀬に話を聞けたのは、リーグ戦の再延期が決まった直後の3月11日。新型コロナウイルスの影響は、1月に19歳となったばかりの若者にも及んでいた。最も成長できる時期に試合に出られないもどかしさ。成瀬もそれを当然のごとく感じているだろう。しかしそんな表情は一切見せず、いつもどおり飄々と話し始めた。
試合をしたいと言っても仕方ないですからね。もう気持ちは切り替えています。自分のやるべきことは変わらないですし、今まで通り練習から一生懸命やるだけだと思っています。週に1回は練習試合が入ってくるので、それを公式戦と同じような気持ちでやっていけば、モチベーションもコンディションも大丈夫だと思っています。テーマとしては、守備ではしっかりと無失点に抑えること、攻撃ではしっかりアシストや得点できるところまで行くこと、そこは徹底的にトライしていこうと思っています。
愛知県瀬戸市生まれの成瀬がグランパスのユニホームに袖を通したのは中学生の時。グランパスU-15 に加入して以来、ずっと攻撃的なポジションを担ってきた。しかし今は本格的にサイドバックを主戦場としている。
初めてサイドバックに入ったのは、ユースの時だったから3年前ですかね。風間(八宏)監督の時の沖縄キャンプでした。あの頃は別に攻撃の選手がサイドバックに入るのは普通の光景だったし、自分がどこのポジションに入れられても"やってやる"という気持ちでいたので、そこまで疑問には思わなかったです。
その後もトップでは、攻撃的なポジションでもサイドバックでもプレーするようになって、今まで攻撃しか知らなかった分、守備の面白さを感じるようになりました。もちろんミスをしたら失点に直結するという厳しい面もありますけど、サイドバックは守備も攻撃も両方できないといけないポジションなので、そこにやりがいを感じています。
とはいえ、グランパスの右サイドバックは実は層が厚い。過去3年間、実績を残してきた宮原和也。左右どちらも高いレベルでこなす吉田豊。そして今季はU-18からユース二冠の原動力となった1年後輩の石田凌太郎が昇格してきた。昨秋、マッシモ・フィッカデンティ監督が就任した直後の練習で、ボールに対する身体の向きやステップの取り方、ラインの揃え方など、一人だけ動きを合わせられず戸惑いを見せていた成瀬。ポジション争いは厳しい戦いになるだろうと感じていた。
自分がまわりの選手と比べて、サイドバックの経験値が少ないことは分かっています。だから分からないことはしっかりと聞くようにしているし、見て盗める技術はどんどん盗みたいと思っています。その上で自分は攻撃が得意なので、その部分では絶対に他の選手には負けないようにしないといけないし、そこで違いを出して結果に結びつけないと生きてはいけません。
もうすぐみんなケガから帰ってくると思いますけど、しっかり競争して自分が選ばれるようにやっていきたいと思います。
公式戦2試合連続のスタメン
キャンプの自信が緊張薄める
今季初戦となったルヴァンカップ第1節・鹿島アントラーズ戦。右サイドバックのポジションに立っていたのは成瀬だった。宮原、石田はピッチに戻れず、左サイドバックの太田宏介も沖縄キャンプ中に骨折が発覚し戦線から離脱。直前で復帰できた吉田豊は定位置である左サイドバックでの先発となった。成瀬の先発出場には当然、それら負傷者の多さという影響もあっただろうが、その試合での彼は時間を追うごとにたくましさを見せていった。
アントラーズ戦の試合前は、特に開幕戦だと意識することなく、緊張していないつもりでしたけど、試合開始のホイッスルが鳴ったら"あぁ、始まった"と思ってちょっと緊張して、その後、徐々に慣れていったという感じでした。瑞穂ですでに何試合か出ていたので、それが良かったのかもしれません。
嬉しいことに、アップの時に自分に声を掛けてくれるサポーターの方がいて、そういう人たちのためにも頑張りたいと素直に思いました。アントラーズ戦は無失点で勝利できたし、久しぶりの勝利だったので、"みんなで一緒に喜ぶというのはこんな感じだったな"と真っ赤なスタンドを見て記憶がよみがえってきました。毎試合訪れてほしい景色だし、次の試合も頑張ろうと思います。
そして、仙台で行われたJ1リーグ開幕戦でも成瀬は先発出場。ディフェンスの選手として常に目標としている無失点とはならなかったが、同点ゴールの起点となるプレーもあった。
ベガルタ仙台戦も緊張することなく試合に入れました。アウェイにも関わらず多くのサポーターが見に来てくれて、自分たちが勝って喜んでほしいという気持ちだったので、勝ち切れなかったことが残念でした。
アントラーズ戦は、相手のクロスに対して、自分がどこに立っていたらいいのかポジショニングがあまり定まっていなくて、相手の選手をフリーにすることが多かったので、ベガルタ戦では自分がどこで守ればいいのかを特に意識をしました。相手のサイドバックも背の高い選手で、サイドハーフも足の速い選手だったので難しい部分もありましたが、徐々に改善できたと思います。相手も圧力をかけてくる中で、自分一人ではなく味方の選手を動かしながら守れている時はうまくいきました。
同点ゴールは(前田)直輝くんがうまかっただけ。僕はそこにボールを出しただけなので、"タッチラインを割らなくてよかったな"とは思いますが、ゴールに貢献したという意識はまったくないです(笑)
これまでは緊張するタイプだったという成瀬。ただでさえリーグ開幕戦は緊張するもの。それが落ち着いてプレーできたのは、ルヴァンカップで公式戦をすませていたからだけではないと言う。
今季はチームが始まってからずっとAチーム(主力組)でやれているので、それはとても自信になっています。しっかりと練習、試合、練習と積み重ねてきて、公式戦に向けて準備ができたこと、やるべきことをやってきたという自信が、緊張感を薄めてくれたと思います。
タイでは暑い中、走り切ることができるようになりましたし、戦術的なところでもまわりに言われるだけでなく、自分で"ここはしっかり行かないといけない"とか"前の選手をこう動かさないといけない"ということがはっきりと分かってきました。
沖縄では攻撃的なところでも自分のポジションの取り方や、味方からのパスを受けやすい位置が分かるようになってきて、特に阿部(浩之)さんから多く指摘を受けました。本当に多くのことを学ばせてもらっています。
2020年の新体制が始まって3カ月、最も成長した選手といえば成瀬竣平だろう。
ジュニアユース時代からグランパスのエンブレムを身に付けて戦う俊英は、顔つきも一段と精悍になり、右サイドで輝きを放ち始めた。
しかし突如として起こった新型コロナウイルス感染拡大という抗うことのできない非常事態。
そんな苦しい状況の中でも、巡ってきたチャンスを確実なものとするために
さらなる成長をチームも成瀬自身も欲している。続きは『Grun』2020年5月号をぜひご覧ください。
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