月刊グラン4月号のご紹介[阿部浩之選手インタビュー]
2020グランパス初試合
勝利にも「内容は全然ダメ」
期限付き移籍から復帰したマテウスの超絶フリーキックで1-0と勝利を収めたルヴァンカップ・グループリーグ第1節・鹿島アントラーズ戦。トップ下のポジションで先発出場した阿部は、相手の嫌な場所に常に顔を出して攻撃にアクセントを加え、さらにはアグレッシブな守備を見せて勝利に大きく貢献した。得点にこそ絡むことができなかったものの存在感は抜群。阿部はすでにチームの中心であることを見せつけた。
グランパスでの初試合で、もっと高ぶるかと思ったんですけど、意外に普通に落ち着いて入れました。もう9年目なので、試合で緊張することはないですけど『もうちょっと高ぶってもいいのにな』とは思いましたね(笑)。結果から言うと、いつも試合には勝たないと意味はないと思っているので、勝ったことは良かったかもしれないですけど、内容は全然ダメだったと反省しています。ただ、キャンプもキツかったですし、疲れが抜けていない状態でもやれるところはやれたので、コンディションが上がれば、もっとうまくできるかなと思っています。
ルヴァンカップ・アントラーズ戦をそう振り返った阿部。キャンプでは走り込みの多いマッシモ・フィッカデンティ監督特有のトレーニングに戸惑いつつも、自分がやるべきことをしっかりと見つめ、開幕に備えるべく全体練習後に米本拓司やコーチらと「止める・蹴る」のトレーニングをする姿が頻繁に見られた。
キャンプではとにかく走り込みましたね。ボールを使わない、ただ走るだけの練習は嫌いです。というか練習自体が嫌い。試合が毎日でもいいくらいです(笑)。まあでも走ることの重要性は分かっているし、今後に必ず生きてくることなので、慣れていかないといけないなとは思います。
個別練習は、ボールを使う練習がこれまでより極端に減っているので、そういう練習を取り入れていかないと、自分の中で間に合わないというか、感覚に合ってこないのでやるようにしています。練習の中でもボールに触れるチャンスはそこまで多くないですし、ボールを使ってナンボだと思っているので自分のプラスアルファとしてやっています。
風間八宏前監督時代はよく見られていた「止める・蹴る」の練習光景も、今ではあまり見られなくなった。阿部がガンバ大阪から川崎フロンターレに移籍したのは2017年。風間監督とはすれ違いだが、この基礎練習が大切だと思い知ったのは、やはり風間イズムが残るフロンターレ時代だと言う。
もともと大事だとは思っていましたけど、こだわって"止める・蹴る"をするようになったのはフロンターレに入ってからですね。みんなのうまさがすごくて、ついていくのに必死でした。それが正確にできないと試合にも出られませんでしたから。もちろんプレーで"止める・蹴る"がすべてではないですけど、思ったところにボールを止められないと次のプレーができないですし、良いトラップが決まらないとシュートも打てない。トラップとパスは基礎中の基礎なので絶対に必要だと思います。
ただ、僕も今は足りてないと思うからやっているだけで、シーズン中はそこまでやらないですよ。1カ月近くボールを触っていなかったし、キャンプでもそこまでできていなかったのでやっているという感じです。
想定外だった移籍オファー
初めてのトップ下に挑戦
阿部がグランパス移籍を決めたのは昨年末。自分では全く考えていないところに突然オファーが舞い込んだ。
その頃は代理人とも全く話をしていなくて驚きましたね。でも、監督から高い評価を受けていると聞きましたし、クラブの規模も魅力的でした。それに選手のポテンシャルもあると感じていたので、『チャレンジしてみよう』と思って決断しました。マンネリが好きじゃないんですよ。飽き性なんで(笑)
ルヴァンカップの試合前、ゴール裏へのあいさつやアップの時の大声援で、改めてグランパスに来たことを実感したという阿部。これまでの8年間はサイドハーフが主戦場で、トップ下での出場は初めてだった。
「トップ下は、動きも視野も相手が来る方向も全部違うし、やり始めてまだ1カ月あまりなのでやっぱり難しいですね。ルヴァンカップでも個人的にはそんなに良い出来ではなかったと思うし、もっともっと相手をコントロールできるようになれば、やりがいや達成感を感じることがあると思います。自分の中ではまだ探っているという感じです。
後半、シュートが1本だけだったのは寂しいですよね。シュートを打たないと得点は入らないので、もっとゴール前でボールを持つこと、シュートを打つチャンスをどんどんつくらないと、勝ち試合に持っていくのは難しいと思うので、そこがまだまだ課題だと思います。
シーズン最初の試合で課題が多く出たことは当然だろう。勝ったことで覆い隠されがちだが、修正しないといけない課題は山ほどある。
修正しないといけない点は全部ですよ。攻撃に関してはビルドアップも速攻もクロスも、全部レベルアップしないと点を取ることは難しいし、コンビネーションもまだまだ足りません。攻撃に関しては10も20もレベルアップしないといけないなと思います。
守備面も無失点に抑えられたのはとても良かったですし、ミッチ(ランゲラック)を中心にしっかりと守ることができましたけど、まだもったいない部分が多いし、修正するポイントはたくさんあると思います。僕たち前の選手もしっかりプレスにいかないと、たぶんうまく守れないと思うし、攻撃も守備も両方、全員でできないと簡単に勝てないと思います。
昨シーズン終盤の超守備的な戦法から"アグレッシブなサッカー"に舵を切ろうとしている今年のグランパス。アントラーズ戦ではまだ100パーセントとは言えないが、その兆候は見せることができた。
守備はそこまで意識していませんでした。でも守る時間が多かったのは事実ですし、それを攻撃の時間に当てられたらもっといいですね。守備の時間を極力減らすということは、今後大事なポイントだと思います。監督は『守備はしっかりするけど、攻撃に重きを置いている』という考えだと思うんです。試合の中で守備をする時間は絶対にあるので、そこをおろそかにすることはなく攻撃するという意味だと思っています。
アントラーズ戦はディフェンスをする高さや位置が、あまり良くなかったですね。もう少し前から行けたら、いい攻撃にもつながってくると思います。そうすることで勝点3を取れる試合が増えるのではないでしょうか。
阿部がグランパスでトライしているトップ下は、ガンバ時代には遠藤保仁が、フロンターレ時代には中村憲剛という圧倒的な実力者が存在し、チームの幹となってタイトルに導いてきた。身近にいたJリーグ屈指のゲームメーカーが手本となるのだろうか。
あの二人とポジション的に同じというだけで、同じ役割をしようとは思ってないです。もちろん、二人ならどういうプレーをするか考えるところもありますし、二人からは盗めるところがいっぱいあるので、それは盗んでいきたいなと思います。ただ、いいところは盗んで自分なりにアレンジしていきたい。一番はゲームコントロールの部分ですね。本当に二人ともうまくゲームを回していたので、そういうところは見習いたいです。
ですが、僕のイメージでは、あの二人よりももう少しゴールに近いところでプレーしたいですね。ゲームの流れは読みますけど、僕がすべてコントロールしていたら、たぶん得点が取れないと思うので、ゲームコントロールはボランチや後ろの選手に任せて、僕はその手助けをするくらいのイメージでやれたらと思います。
プロ生活8年間で七つの主要タイトルを獲得。"タイトル請負人"の異名を持つ阿部浩之のグランパス移籍は、このオフの最大のニュースだった。当の本人でさえ想定外だったという移籍劇。グランパスで八冠目のタイトルを目指す阿部に、公式戦初戦となったルヴァンカップ・鹿島アントラーズ戦を終えた時点で感じたことを率直に語った背番号11の姿は、、、。『Grun』2020年4月号をぜひご覧ください。
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阿部浩之
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