月刊グラン11月号のご紹介[米本 拓司選手インタビュー]

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予定より1カ月早くピッチ復帰
敗れるも仲間を鼓舞し前を向く

 J1第26節のアウェー清水エスパルス戦。この試合に久々のベンチ入りを果たした米本は、1点リードを許した直後に指揮官から呼ばれた。練習中に負ったケガの影響で戦列から離れていた米本にとって、19節セレッソ大阪戦(7月13日)以来2カ月ぶりの出場。しかしピッチサイドで待つ間にチームはさらに失点を重ねてしまった。

 「思っていたよりも少し早く復帰できて、本当にトレーナーやドクターなど医療関係の人たちに感謝しています。その方たちの努力があって早く復帰できました。久しぶりの試合は、厳しさもありましたけど、やっぱりサッカーは楽しいなと。追いついて逆転することができなくてすごく悔しい試合になりましたが、やっと戻ってきたんだなと思いました。

 試合はベンチで見ていて、セカンドボールが拾えていないなと思っていました。なので、自分が入った時には運動量を増やして、ボールが入った後のサポートや顔出しをすれば、もっとスムーズに攻撃できると思っていました。自分の特長はそういう部分なので、そこを意識しましたし、うまくチームが回るようにと思ってプレーをしました。1点は取れましたけど、やっぱり逆転したかったなと思います」

 チームが負けている状況での途中交代は、これまであまり経験したことがなかったという米本。とにかく追いつきたい一心でピッチを駆け回った。米本が入ったことでコンビを組むジョアン・シミッチも生き生きとプレーできるようになり、攻撃が活性化。良い守備が良い攻撃に繋がる。これもサッカーの一つの真実である。

 「僕のストロングは守備です。そういう意味では、ジョアンは僕よりパスがうまいし、攻撃の部分で上だと思っているので、パスを出す時はジョアンに一列上がってもらった方が良いと思っています。その方が僕の特長も生きるし、ジョアンの特長も生きます。自分としては攻撃も守備も両方で個人が生きる。なおかつチームに自分が生かしてもらえるような役割をすることが大事だと思っています」

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 そして後半29分、米本のシュート性のボールを長谷川アーリアジャスールがコースを変えて1点を返した。追い上げなければならない状況だということを差し引いても、米本が入ってからは、攻守にリズムが生まれワクワクする時間が増えた。

 「あれは全然シュートじゃないですよ。パスです。アーリア君を見ていてパスを出そうと思った瞬間に相手が動いたので、速いボールじゃないと通らないと感じて、強いボールを蹴ったら浮いてしまったんです。でもアーリア君が足を出してくれて、そのまま『あっ、入っちゃった、じゃあいいか』みたいな感じで、入る時はこんなものなんだなと思いましたね。

 練習でも縦にボールを付ける練習はずっとしています。あの場面もアーリア君がしっかり相手を外す動きをしてくれたので、練習のようにそこにもっと丁寧なボールを出して、それをアーリア君がきちんと止めてGKと1対1になっていれば100点だったのかなと思います。だから得点にはなったけど、僕のボールの質としてはすごく悪かった、技術的には納得していないですね(笑)」

 チームとしてこの試合に賭けていたというエスパルス戦。結果は後半の怒涛の追い上げも実らず2-3で敗れた。米本はピッチに倒れ込むチームメートに声を掛けて回った。

 「正直なところエスパルス戦は、残留争いをしている中で大事なターニングポイントとなる試合だと思っていました。でもそこで負けて、みんな走り切って疲れてもう立てないのか、落ち込んでいるのか、それはよく分かりませんでした。でもアウェーにも関わらずあんなにたくさんのサポーターが応援に駆けつけてくれて、やっぱりやることはしっかりやらないといけないし、最後の最後まで僕たちは走って戦ったから下を向く必要はない。顔を上げて胸を張ってサポーターのところへ挨拶に行こうと言いました。負けても気持ちをすぐに切り替えて次の試合に全力で臨むこと、チーム一丸になって戦うしかこうした苦しい状況は打破できないと思います。

 実際に後半はあれだけ攻め倒せたので、前半からそういう攻撃ができるのがクラブの求めるサッカーだと思うし、あとは仕留めきるという部分の精度をもう一段階上げる必要があります。キレイなゴールじゃなくてもアーリア君みたいなゴールも必要だと思うので、もっとがむしゃらに、精度だけじゃなく気持ちで押し込むようなゴールが増えていけば、もっとこのチームは上に行けると思っています」

 チームメートを勇気づけた米本の行動。逆に米本を勇気づけたのはサポーターからの声援だったと言う。ピッチに足を踏み入れた瞬間に大きな拍手と期待の声がスタンドに響いた。

 「声援は素直にうれしかったですね。それを聞いた瞬間に『絶対にやってやる、同点に追いついて逆転してやる』という思いになりました。グランパスの応援は、ケガをしてスタンドから見ていてあらためてこんなに大きい声だったんだと気づかされました。だからこそ、その声援に応えたいという思いが強くなりました。

 普段、僕はプレーに集中する方で、いろんなことを考えながらやっているのであまりスタンドの声が耳に入ってきませんが、プレーが切れた時に相手サポーターよりもグランパスサポーターの方が大きな声が出ているなとよく思いますね」

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勝利のカギを握る漢が還ってきた。前半戦の快進撃を支え続けていた米本拓司。7月中旬に右肘関節脱臼および肘関節側副靱帯損傷で全治3カ月の診断を受けていたが、予定より1カ月早くピッチに舞い戻り、復帰戦ではジョアン シミッチとの絶妙なコンビネーションを見せた。何度も大ケガから復活を果たした米本が、厳しい残留争いを勝ち抜くための欠かせないピースとして、不屈の魂をチームにもたらす。

続きは『Grun』2019年11月号をぜひご覧ください。

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不屈の魂
米本 拓司

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