月刊グラン7月号のご紹介[佐藤寿人選手インタビュー]
18番目からのスタート、18位で中断
J1復帰後の目標があいまいだった
5月20日の柏戦でひとつの区切りがつき、約2カ月の「ワールドカップブレーク」に突入しました。チームにとって大事な2カ月になると思います。
2カ月といえば、開幕前の準備期間と同じ、またはそれ以上の時間があるわけで、例年にないハードな日程の中で、ここまで結果が出ていない僕たちにとって、この2カ月をどう過ごすのかによって中断明けからの結果につなげていけると思うし、非常にポジティブなものでしかない。チームを、個人をしっかりと良くしていきたい。それだけです。
柏戦の試合後、小西社長がファン・サポーターに挨拶する姿を、ピッチへの出入り口に並ぶ選手の最前列で見つめていた姿が印象的でした。ほぼ半年前、昇格プレーオフで歓喜の瞬間を味わった同じ豊田スタジアムで感じた空気。複雑な思いだったのでは。
社長がああいう形で受け止めてあいさつをしてくれましたが、社長に矛先を向けられるべきではなくて、まずはピッチに立つ選手、もちろん監督も、コーチングスタッフもそうですし、常にグラウンドにいる自分たちがそれを受け止めなければいけない。プレーしているのは僕たち選手なので、自分たちの中で解決策を見つけていかなければと思っています。トレーニングからもっとコミュニケーションを図り、要求し合って、厳しい集団になっていく。
開幕で連勝したことで、危機感を感じることが難しかった。一つ勝ったら変わるよというような雰囲気があったのも事実。でも失点が多く、ここはチームとして改善しなければいけない。3点取られても勝てるようにならなければというのではなく、3点取られたら負ける。それはプロなら当たり前のことです。点をより多くとることは大事だけど、失点をしないことも同じくらい大事。点を取るだけじゃなくて、取らせない。取らせなければ0-0でゲームが推移し、相手も前掛かりになってスペースが生まれ、バランスが崩れるというのは、サッカーではいつでも起こること。それなのに常に相手にアドバンテージを与え続けてゲームをしなければいけなかった。もちろんすべては自分たちで起こしたこと。僕自身もけがで2回チームを離れてしまったので、体をしっかりいい状態に戻して、チームの力になっていきたい。18番目からのスタートで、18位で中断を迎えるとは思っていなかった。正直、もう少し上にいられるのかなと思っていました。
1月のタイ、2月の沖縄キャンプの練習試合を見ていても、しっかり相手を押し込むことも見られていた。そして開幕連勝。ピッチ外から見ると、いい流れを感じていたのですが。
正直言って、開幕の連勝についても勝つべくして勝ったゲームではなかった。結果が逆になってもおかしくないような内容で、ギリギリで勝ったという感じ。連敗中についてはギリギリという試合すら少なく、早い時間帯で失点して、リードされた状況でゲームを進めてしまった。ケガや体調不良というアクシデントが重なり、紅白戦のメンバーも揃わない時期もあった。今季はこれまでにない厳しいスケジュールなのに、J1に戻ってきたばかりでチームとして揃っていない中、開幕を迎えてしまった。試合間隔が空いていれば、練習やトレーニングで重点的に修正したり、アプローチを変えてみたりできるけれど、すぐに次の試合が来てしまう。勝つことがいい形で次につなげられる一番の要素だったのですが、負けて、その次の試合、さらに負けて、を繰り返した。固定したメンバーでできたのは最初の数試合で、チームとして安定した戦いができなかった。
僕の中で一番難しい問題だったのは、昨年は「1年でJ1に戻る」という明確な目標があったけれど、J1に戻ってみると、どこに目標を設定するのか、それぞれであいまいだったのかなと。今年のメンバーを見ても、J1で100試合以上出ているのが、スタメンの日本人選手では(長谷川)アーリア(ジャスール)と(小林)裕紀くらい。それを考えると、出場機会を得た若い選手はいろんなものを得たと思う。ただ、本来ならば、若い選手が思い切ってやれる環境を作ってあげられることが必要だったけれど、そういうプレーができるチーム状況ではなかった。そういうことも含めてクラブとしてまだまだ力が足りなかったのだと感じています。
「異常事態」10代選手の出場
プロの厳しさ感じてほしい
自身も開幕戦で出番がなく、リーグ戦では終盤からの出場。ルヴァンカップではホーム浦和戦にフル出場してゴールを決めていますが、乗り切れない時間が続いた。
一番難しいのは、コンディションの部分でメリハリがなかったこと。リーグ戦では常にウォーミングアップを続けて終盤に試合に出て、カップ戦ではスタートから、どうしてもリーグ戦の方がカップ戦に比べて重きを置く部分もある。カップ戦で90分出た後、リーグ戦に向けて負荷をかけてトレーニングする。本来ならリカバリーをして次の試合にという状況だけど、日程が厳しく、人も少なく、難しかった。ベテランがそう思うのだから、若い選手はより難しかったと思う。体はもちろん、カップ戦で大敗が続けば頭の疲労もあって、プレーの整理は難しかったと思う。
プロ契約をしていない選手も数多くピッチに立たなければいけない状況は、クラブの未来を考えれば大事だと思うけれど、プロフェッショナルということを考えれば、本当の意味で良かったのかなと。僕もプロ1年目、2年目の選手がたくさん出場していた試合という経験もあるけれど、2種登録の選手については終盤に少し出てくるという印象だった。プロは結果を出してチャンスをつかむもの。人がいないという中でピッチに立つというのは、厳しい言い方だけれど、プロとしてあるべき姿ではない。
まだプロ契約をしていない若い選手に対して、経験から何を伝えたい、感じてもらおうとしていたのか。
伝えたいとか、そういうことはないですね。重要なのはあくまで勝ち負けで、目の前の相手に勝つということ。プロの選手がユースの選手に合わせる必要はないし、こっちに合わせなければ、ユースに帰ればいいということ。相手に勝たなければ、ユースの選手には「普通ならこの集団には入れないぞ。それがプロだよ」と。それがごく自然な姿です。彼らはいい選手だけれど、本当にプロですぐにできるかといえば、まだいろいろと学ばなければいけない。問題がなければシーズン前から契約すればいいだけのこと。トップチームが不安定で練習に参加して、またユースに戻っていく。とても難しい時間を過ごしたと思う。僕もユース上がりですけど、そんなに優しい言葉をかけられたことはない。プロの選手と一緒にやるということは、そのレベルに達していなければふるい落とされるし、時には迷惑をかけてしまうこともあるから。普通に考えれば異常な事態だったと思います。
風間監督が目指すグランパスのスタイルは、自分たちが主語になって相手を動かしていく形。技術に自信がないとピッチの中では戦えない。
風間監督の考えだけがサッカーではないし、別にいろいろなサッカー観があってもいい。その中でチームとしてやるべきことをすり合わせることが大事。監督も自分の考え方を押し付けているわけではないし、いろいろな選択肢は、プレーが成功するためにある。もっと自分たちで考えて、その場でいい判断をしていくことが求められている。そういう部分では選手たちがもっとコミュニケーションを取って、お互いが何を考えているか、何をやりたいかということを深めていかないと。アイデアにはいろんな変化があると思うので、いろいろな状況に対応できなきゃいけないと思う。「言われたことしかできません」では、すぐに新しい選手を獲ってこなければいけない。
去年も決して順風満帆でJ1に昇格したわけではないのですが、去年の終盤戦で見せた勢いとの違いはあるのですか?
まずはJ1とJ2の違いです。J2なら点を取られても取り返せるという感じはありました。でも、J1だと取り返すのが簡単ではないと。去年も失点が多かったので、J1では失点を減らしていかないと難しい。自分たちがボールを保持している時のミスやいろいろな部分のミスで相手のストロングポイントを安易に出させてしまう。失点する時間帯を含めて、失点を減らすということにもっとフォーカスしていかないと。J2だったらば外してくれたシュートが、J1ならば決められてしまう。数字で出ている以上、しっかり認めていかないと。
僕たちは強さを見せつけて戻ったわけじゃない。ギリギリ戻っただけなので、もう一回地に足をつけてやっていかないといけない。今が最下位なので、これ以上落ちることはないから、一つでも順位を上げて残留圏内に這い上がっていく。とにかくJ1に残るということを危機感を持ってやっていかないと、あっという間に試合が過ぎ去ってしまう。せっかく1年で戻ったのに、この順位は誰も望んでいない。勝てない状況がこれほど長く続いたので、ファン・サポーターには残念な思い、悲しい思いをさせてしまっている。もう一度自分たちがJ1で戦い続ける、J1に残るという強い意志を言葉に出して共有して、一緒に戦うファン・サポーターに示していかないといけない。
5月20日、豊田スタジアム。ブーイングと激励の拍手が交錯するピッチを、厳しい表情で見つめていた。J1復帰を開幕連勝で飾ったものの、13試合連続で勝利から見放され、最下位で中断を迎えた。
昨年、一体感で這い上がったクラブの歴史をつなぐため、熱いメッセージを語った背番号11の姿は...。
続きは『Grun』2018年7月号をぜひご覧ください。
GRUN INTERVIEW
J1で戦い続ける
佐藤寿人
改革ウオッチャー
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