楢崎正剛選手 中日新聞コラム「ゴールマウスから」

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第2回「リーダーの言葉」(『中日新聞』6/13掲載)

優れた監督は「言葉」にインパクトがある。長くプロサッカー選手を続けて感じてきたことだ。

名古屋では、圧倒的なカリスマ性を持っていたストイコビッチ元監督が印象深い。ミーティングでは極力短いフレーズを多用して戦術を選手に定着させた。

日本代表監督では、自分の戦術に選手をはめ込むトルシエさん、勝利への執念がすさまじいジーコさん、すべてにおいてバランスの良かった岡田さん。みな分かりやすい比喩を駆使し、自分のサッカー観を選手にすり込むことにたけていた。

風間監督にも、似た香りを感じる。昨季までのJ1川崎時代につくりあげた攻撃的なパスサッカーの理論は斬新で、指導は技術論に特化しているが、求めるプレーを言語化する巧みさは名将に共通するものがある。

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風間監督は難しい専門用語や横文字を使わない。ミーティングで使うホワイトボードに書かれるのは、「矢印(パス)を出させない」、「先取り(ボールが来る前の準備を)しておこう」などの日本語ばかり。専門性を高度に語れば「モダン」とか「先端的」と思われがちだが、難解なプロの駆け引きをかみ砕いて平易な言葉で表現できるのは、本質を知る指導者ならではの芸当だ。

その監督の言葉や方向性に魂を入れるのが僕たち選手の仕事。どんなに素晴らしい理想も、ピッチに立つ者が何とかしなければ形にならない。だから最後は自分次第だと常に言い聞かせて試合に向かっている。

最後に僕個人のJ1復帰への思いを。昨季の名古屋のJ2降格には大きな責任を感じている。だから、どんなことがあろうと1年で戻るという決意は揺るがない。サポーターのみんなも、「あの悔しさを忘れるな」と僕たちにどんどんハッパをかけてほしい。そしてクラブを前進させたいと思う。

◇4/27より中日新聞で掲載が始まりました楢崎正剛選手によるコラム「ゴールマウスから」、J1最多試合出場(631試合)を誇り、日本代表としても長くゴールを守ってきた楢崎選手が、豊富な視点からサッカーについて語ります。中日新聞にて随時掲載、ぜひお楽しみにください。