月刊グラン6月号のご紹介[内田健太選手インタビュー]

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「理解者」野心抱くレフティー

サッカーは"蹴る"のではなく
"止める"スポーツ

 永井龍や和泉竜司が"申し子"ならば、彼はさしずめ"理解者"といったところか。複雑ではないが独特な風間八宏監督のスタイルに対し、名古屋グランパスで最も強い親和性を示したのが、新加入の内田健太だった。愛媛からやってきたプロ10年目の職人レフティーは、左サイドのスペシャリストという前評判を良い意味で覆すポリバレントな働きぶりで、チームを力強く支える一人となっている。3バックのストッパー、左サイドバック、ウイングバック、そしてボランチと守備的ポジションなら何でもござれ。強烈な左足ばかりがピックアップされてきた今までよりも、自分を表現できていると話すそのプレーは、何とも言えず軽妙で老獪だ。
 時に際立ち、時に地味に。内田の存在感は実に興味深い。彼がいま、サッカーを心底楽しんでいるのがわかるからである。

 充実しているし、ほんのちょっとの期間ですけど、自分が上手くなっている感じはしています。僕自身、こうやってボールをつなぐのはもともと好きですし、狭いエリアでプレーするのも好きでした。だから普通にやれましたし、初日から衝撃を受けたところもあります。でも監督がやりたいサッカー、考えているサッカーが、自分にとって魅力あるものだったから、普通に入っていけたという感じです。監督の言葉もスッと入ってきました。合っているかどうかはわからないけど、理解は速い方だと思いますね。ちょっとしたニュアンスも深く理解しようと思えます。
 プレーにもすんなりそれを表現できていると思っています。ポジションは関係ないとずっと監督は言っていたし、「ボールを触りたがれ」とか「はたいてもう1回寄れ」とか、そういうプレーも好きでした。自分はもともとがパスをはたいてもう1回欲しいタイプだったので、ボールが返ってくることが多くなって、そういう面では前にいたことのあるチームよりも自分を出せている感覚はありますね。前にいたチームではポジションも違って、ボールに触る回数も少なかったし、触った時に何をするか、ということしか考えられなかった。ボールに触ってリズムを作りたいので、ずっとボールに関わり続けられるこのチームは本当に楽しいです。

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 もはや名古屋グランパス界隈では知る人ぞ知るところとなった「止める、蹴る」の重要性だが、その意味や意図を理解し、自分の考えと一致させる内田はボールを蹴るのがサッカーではないと断言する。蹴るために何が必要か、その根源的な観点から彼は、サッカーを「ボールを止めるスポーツ」だと定義する。逆転の発想か、あるいは経験則か。キックが自慢の選手がそう言うのだから、説得力はさらに増す。ウオーミングアップの中で必ず行なわれる対面パスは、一見するとプロの練習には見えないかもしれない。だが、内田を始め選手たちは黙々と単純なキックを繰り返す。このチームで基本技術の奥深さに、気づかされたからだ。

 チームの動きは変わってきたと思います。前半から後半でも、監督の一言で全然変わる。風間監督の"言葉"ってすごいな、って思った後半もありました。いつも練習でやっていることを試合でもできるような一言を、パッと言うんです。それはいつも高いレベルの練習をやれているからだし、監督もいつも、「練習以上のプレッシャーはこない」と言います。讃岐戦でもその一言から余裕が生まれたし、それだけ質が高い練習をやれているのがチームの自信になっています。だからいかにリラックスして、大胆にプレーできるかです。そこから普段やっていることがプレーに出てくるようになるので。
 サッカーは蹴るスポーツだと思われていますけど、一番大事なのは止めることです。良いところに止めないとボールは蹴れないし、そこを改めて気づかされました。ボールを触ったら、足下にボールを回転させずに止める。それは意識しないとできないし、それができれば試合でもけっこうプレッシャーも感じないな、と思う。それがプレーに生かされるから余計に、練習せなアカンな、と思えるんですよね。それさえパーフェクトにできればサッカーはスムーズにいくと思うし、基礎って言いますけど、たぶん一番大事なことです。意識してやると相手も見えるし、そこから自分のプレーの幅も広がる。というのは感じていたから、技術面はもっと伸ばしていきたいですね。


名古屋グランパスに加入してから風間監督に心酔する内田選手、それは風間スタイルに順応していることの何よりの証明でもある中で、自身が抱く野心とは...。
続きは『Grun』2017年6月号をぜひご覧ください。

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「理解者」野心抱くレフティー
内田健太

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