月刊グラン11月号のご紹介

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グラン・インタビュー

勝利をつかむ、"神の手"楢崎正剛

時間が経てば40歳になる
衰えは感じない

 あと、たったの270分である。セカンドステージ14節を終えて15位まで年間順位を浮上させた名古屋グランパスは、ここから残留を確定させるために再び必勝の道を行く。勝点3が必須の状況は変わらずとも、残留圏からそれを為すのは降格圏でのそれとは大違いだ。勝てば自力で残留できる。その充実感とともに、グランパスの33名の選手たちは"ファイナル3"に挑む。

 簡単な試合はない。むしろ厳しい試合ばかりだろう。だが、名古屋のゴール前には本物の"守護神"がいる安心感がある。40歳になり、文字通りの「不惑」を地で行くGKの大家は、激動のシーズンのクライマックスを前にして驚くほど落ち着いていた。チームと自分、その両面に余程の自信があるのか、あるいは。楢崎正剛の紡ぐ言葉は、我々にも勇気を与える重みがあった。

 こんな大変なシーズンは、過去に「そんなに」どころか「ない」でしょう。厳しいシーズンはもちろんあったけど。監督が交代したことも何度かありましたけど、ショック療法というか、言うほど変わるものでもないなということの方が多かったですしね。

 でも今回は選手からすると、チームのスタイルや目指すものを示して導いてほしいという部分を、ボスコがすごく的確にやってくれている。こういうことはここ数年はなかったように思えますね。全くないわけではなかったけど、どちらかといえば個人の能力による戦い方が多かったので。特に守備面はうまくいかなかったら、アイデアは出すけどその都度変わっていった。「これ」と決めた中で信じてやり遂げるものを示してくれているというのは、精神的には楽ですよ。

 ただ、言う通りにやっているだけではダメ。それは当たり前のことで、サッカーに同じ場面はないし、相手もいる。常に動いている中で個人の判断とクオリティを出していくもの。でも言われすぎてそれしかできないという状況の選手がいるにはいる。以前にやっていた選手はスムーズに入っているけど、馴染みがない選手はチームでやることに精一杯になりすぎてもいる。ベースを理解はしているけど出せない、まったく理解できていない選手も(苦笑)。それでも、今やっていることは当然のことなんですよ。

 就任以降の5試合で3勝1分1敗。チームを力強く立て直してくれた指揮官への信頼は厚く、またその手腕へのリスペクトも隠さない楢崎だが、それ以上に信を置く男が田中マルクス闘莉王だ。ジュロヴスキー監督の就任とともにチームに戻ってきた稀代のスーパーDFがもたらしたのは、強烈なリーダーシップと攻守を安定させる確かな戦術眼。特に後者は試合中に次々と起こる問題をその場で解決できる修正能力としての顕現が頼もしく、彼がいることでチームはプレーが簡単になり、自分の仕事に集中できる好循環が生まれている。楢崎もみずから「オレもそうかもしれない」とそれを認めるが、チームメイトにそれ以上のチャレンジを求めることも忘れなかった。

 監督が交代してからの試合で、希望は見いだせてきたとは思います。でも、もっと強いメンタル面を出していかないといけないです。勝ってホッとしている場合ではないし、追い込まれている状況をピッチでの危機感として出していかないと。そこで闘莉王が入って精神的に助けてくれることはあるかもしれないけど、みんながアイツに頼るもんじゃない、という戦い方もできていると思いますよ。闘莉王がいて負担が和らぐ選手はいるかもしれない、もしかしたらオレもそうかもしれない。だけど頼らないでやるという気持ちは大事。これが最低限です。

 でも、自分の能力以上のことをやらなければならない状況が今まではあったのかもしれないというのは確かで、闘莉王の一番の影響力はそこですよ。タケ(竹内彬)も、これで自分のプレーに専念できると考えているかもしれない。自分を高めていくうえでは、今季は良い経験だったかもしれないし、闘莉王がいても同じようにやるべきだとは思うけどね。少し気持ち的にリラックスしてやれているというのは良い影響で、闘莉王が負担を感じるとなったら良くないけど、まあ、そんなタイプではないし(笑)。闘莉王がみんなの助けになっているという今の状況は、すごく良いことだと思いますね。


キャリア22年目、40歳となった節目のシーズンも残り3試合、稀代の守護神はどう臨むのか...。続きは『Grun』11月号をぜひご覧ください。

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