月刊グラン10月号のご紹介

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グラン・インタビュー

不撓不屈 明神智和

結果が出ていなくとも
全てが悪いわけではない

 人事の半分は尽くされた。小倉隆史前監督の休養と、ボスコ・ジュロヴスキー監督の就任。さらに田中マルクス闘莉王の復帰を同時にまとめ、名古屋グランパスの大逆転残留へ向けた加速装置は完成した。続出していた負傷者も次々復帰し、追撃の体制は整うばかり。あとは残る半分の"人事"である戦いの果てに天命を待つのみだ。座して死を待つことをせず、あがきにあがく覚悟を決めたチームに、もう怖いものなどない。

 明神智和に話を聞いたのはその前夜、レイソル戦を目前に控えた週のことだった。リーグ通算495試合出場を誇る歴戦の勇士は、その確かな眼力で現実を見定める。シーズンの半分を勝てなかった事実の、選手の側からの視点とはいかなるものか。明神はそこに、少しの掛け違いを強調した。

 問題はチーム全体というよりも、できていたことができなくなっている、ということが今はあります。もちろん一番の薬は勝つこと、勝点3を取ることです。どんな形であれ、今のチームにとって一番大事なことで、必要なことで、欲しいことだと思う。選手個人はそんなに悪いプレーをしているわけではないのに、結果が出ていないことで自分まで良くないと思ってしまいがちです。チームが勝つことが一番で自分のエゴなんていらないですけど、自分ができていることまでできていないとか、そういう風に考えないようにするのが大事だと思います。ミスの分析はもちろん必要ですけど、その試合の中でもできていた部分というのは絶対にあるはず。できなかったことだけを考えすぎると、どんどんプレーが小さくなっていきます。できている部分もあると、反省しながら自信を持っていくことです。
 僕も、ここまで長い間勝てなかったという経験はなかったです。これを止めるにはすごく大きなパワーが必要だと思います。でも、できるとも思います。簡単ではないけどしっかり切り替えて、過去の試合は取り返せないから、次の試合のために100%を今の試合で出す。そのサイクルが大事です。そして一人ひとりが良い意味で「オレがやってやる」という気持ちをもつことが必要です。誰かがやってくれるではなく、自分が。もちろん僕も今、そう思っています。

 自信を持て、とはジュロヴスキー監督も来日して一番に口にした言葉だった。疑問を持っての行動に鋭さは出ない。冷静に、それでいて大胆に。思いきりというのは特にスポーツの世界ではその質の面において大きな影響を及ぼす要素と言える。別の言い方をすれば、プレッシャーとの闘いにいかにして勝利するか。あるいはプレッシャーとのうまい付き合い方を確立している選手やチームは、いつでも安定している。

 今年でプロ21年目の明神は、その真理を体で理解している男だ。ピッチの機微を肌で感じ、流れをいい意味で都合よく解釈する。勝者の抜け目なさは、確かに今のグランパスに最も不足している要素だ。

 状況判断と言っても、普通の状況であればみんなそれはできているんです。若い選手であろうともね。伸び伸びとプレーしている時にはその判断もできるし、声も出ている。でも、これだけ勝てていない中では「勝たなきゃいけない」「負けられない」というプレッシャーがあって、自信の面からか判断がほんの少しだけ遅くなっているところはあるかもしれません。良い時であれば五分五分のボールだと思った瞬間に行けるから動くスピードも速く感じるし、自分の体が能動的に動いているので遅れることもない。でも、「抜かれたらどうしよう」「もしかわされたら」と思うことでほんの一瞬遅れて、後手に回ってしまうことはあります。ボールを取りに行けない場面も多かったですが、押し込まれて後ろに人数が増えるとどうしても前はキツくなる。それは「別にいいや」と思っておけば僕はいいと思ってるんです。その状況がずっと続いているのは良くないけど、5分、10分と続いたとしても、回させていると考えていればいい。どうしても「支配されている」とか「自分たちが奪いに行けていない」と思いがちなので、自分たちが取りに行っていないだけ、別にやられてないと思えるようになれば、守備もゆとりを持てるようになると思うんですけど。頭と体の疲れは「回されている」と思っているのと、「回させている」と思うのではやっぱり違うので、「回させとけ!」と言うだけでも違ってくると思いますね。


サッカーを知る職人であり守備の専門家、そして不屈の戦士でもある明神選手、優勝の喜びと降格の悲しみ、その両方を知る真の勝者のその冷静な目の先に映るものは...。続きは『Grun』10月号をぜひご覧ください。

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