風間八宏監督 就任記者会見
1月13日(金)、トヨタスポーツセンターにて、風間八宏監督就任記者会見を行いました。
下條佳明 チーム統括本部ゼネラルマネジャー
皆さまこんにちは、下條です。あらためまして、今シーズンもよろしくお願い申し上げます。
本日はお忙しい中お越しいただき、ありがとうございます。新シーズンもいよいよ到来、来週からトレーニングも開始します。元日まで闘った風間監督に今日は来てもらいました。遅くなりましたが、監督の記者会見を開催させていただきます。今日は質疑応答も含め、よろしくお願いいたします。
風間八宏監督
─名古屋グランパスの監督に就任された、いまの率直な気持ちをお聞かせください。
一言でいえば、楽しみしかありません。このクラブには、地域も含めいろいろなものが隠れていると思います。そういったものを全員でしっかりと掘り起こし前へと進む。その楽しみが、いまは大きいです。
─川崎フロンターレでの元日の天皇杯決勝からまだ数日しか経っていませんが、やはり新シーズンへのわくわく感が強いようですね?
そうですね、引越しもなんとか終わり、今は選手に早く会いたいという気持ちです。
─実績のある風間監督が、今シーズン再スタートを切る名古屋グランパスを率いることとなった経緯をお聞かせください。
昨シーズンの最初から、川崎フロンターレでの仕事は今年を最後にしようと自分の中で決めていました。クラブ(フロンターレ)へは9月ぐらい、あるいはもう少し前だったか時間は定かではありませんが、話をしました。それから色々と話が出るようになり、グランパスの大森強化部長と知人を介し食事をする機会がありました。その時には正式な話はありませんが「次にどこかのクラブを率いるつもりはないのか?」という話をされました。私からは、すぐに決断するわけではなく色々と考えているというような話をしました。そこから徐々に情報が入り、何度か話を重ねるなかで、このクラブは面白いなと思うようになりました。ポテンシャルという表現が正確かはわかりませんが、私の先輩にはサッカー協会の関係者も多く、グランパスのあるこの土地には、まだまだ力があると思っていました。グランパスというクラブ、そしてファン・サポーターの皆さまにもすごい熱があると感じていました。このオフシーズンにも、これだけの選手が集まる、それだけこのクラブの魅力は大きいと感じさせられました。これだけの選手が集まることを見ても、私が感じていたことに間違いはなかったと思い、もう一度挑戦したいと感じています。
─川崎フロンターレから、昨シーズンのグランパスをどのように見ていたのでしょうか?
正式な話をした段階ではありませんでしたが、秋以降に、もしJ2となった場合はどうなのか、ということは聞かれました。私にとって、どこのリーグなのかはそれほど興味のあることではなく、これから何をするかが最も興味のあることです。先に話したようなこのクラブの力を考えれば、いろいろなことができるだろうと考えていました。それでも、その時期は川崎フロンターレの監督でその方向を見ていましたし、グランパスに対して何かを考えることはありませんでした。もちろんリーグ戦を戦っている以上、グランパスの状況は見えてきますし、その部分に関しては見ていました。
─サッカーの監督として風間監督の考えをお聞かせください。
プロのサッカーの現場には、ものすごく魅力があふれています。何度か経験させてもらっていますが、クラブ、ファン・サポーター、そして選手が一つにならなければ、素晴らしい環境は達成できません。またこの場に戻りたい、と感じるのがサッカーの魅力ですし、そういったサッカーを見せたいと思います。そのためには、選手の顔が見えるサッカーが大切です。相手に合わせ、自分たちが集団の中にかくれてしまうようなサッカーはしたくはありません。選手個々が集団の中から飛び出し、なおかつその選手が集団を作るようなのびのびとしたサッカーをさせたいと思っています。ボールを中心に、全員が繋がるようなサッカーを見せたいと思っています。
─以前に「現状での非常識が最先端になりうる」という話をされていたことがあったと思います。そのこともふまえ、グランパスではどのように監督ご自身の考えを浸透させたいとお考えでしょうか?
あまり、非常識だとは考えたことはありませんし、周りからそう言われるだけです。驚きがなければ、つまらないサッカーになってしまいます。そのために我々は日々努力し、我々自身も驚くような、いまはできるようはずも無いようなことが明日にはできている、明日それができれば人が増えさらにとんでもない事ができるというのがサッカーです。今日で良いということはありえません。一ヶ月先の選手には今のレベルでは物足りなくなります。常に自分の望みを表現できるような取り組みを我々自身で取り入れ、面白いものを作りたいと思っています。
─新しいグランパスを、具体的にどのようなチームにしたいとお考えでしょうか?
まず、選手をしっかりと見ることが必要です。クラブとの話でも、全ての選手が闘う気持ちを持っている、全ての選手が本当にうまくなり、自分たちにしか作れないものを作りたいという気持ちでいることを理解しています。その気持ちを制限する事なく、のびのびと日々進化させることで自分たちの理想を高く持てるようなチームを作りたいです。
─川崎フロンターレでの攻撃的なサッカーを継承するのか、あるいは今の選手を見て新たなサッカーに取り組むのか、現時点でどのようなビジョンをお持ちでしょうか?
私自身、パスサッカーだとかポゼッションサッカーという言葉を自分から言った事は一度もありません。それでも、ボールを大切にする事は間違いありません。ボールを持っている方に意思があるというのが私の考えるサッカーです。川崎フロンターレでもそうでしたが、選手が変われば、チームの個性も変わります。ボールの動かし方や特徴も変わります。1人で相手11人を交わすような選手がいてもかまいません。今いる選手の特徴をいかすことがサッカーですし、こういったサッカーをやりたいと明言したことはありません。理想は選手達が作り出すものであり、それを私がサポートしたいと考えています。
─今シーズンのグランパスは20人近い選手が入れ替わりましたが、現時点でどのように考えているのでしょうか?
選手も楽しみにしくれているでしょうが、私自身も非常に楽しみにしています。全ての選手に大きな期待をしていますし、期待できると確信しています。会見場よりも、早くグラウンドへ出て選手に会いたいというのが今の私の率直な気持ちです。
─監督として求められることは何だとお考えでしょうか?
楽しく勝つことです。選手が楽しくなければ、見ているサポーターの方も楽しくはありません。そして「勝つ負ける」の「勝つ」がなければサポーターも我々も楽しくありません。楽しく勝つ事は大切ですし、そのためにはグラウンドに厳しい空気と楽しい空気、この2つを同時に持ち込むようなグラウンドを作りたいです。
─今シーズンの具体的な目標をお聞かせください。
日本のどのクラブと対戦しても負けない、というチームを作ることが目標です。
─グランパスにとって初のJ2での戦いとなりますが?
何を意識するかという事ですが、自分たちにしかできないサッカーで勝つ、そのためにはグランパスに関わる全ての人が努力しなければいけません。その中心として選手と我々がしっかりとサッカーに取り組みたいです。
─1年でのJ1復帰も課せられた目標になると思いますが?
それはどこのクラブでも同じですし、全力で闘います。プロである以上、もちろん勝利を目指しますが、約束する事はできません。勝利をどれだけ引き寄せるか、そのための日々のトレーニングですし、その事に集中し取り組みます。
─筑波大学を率いている際に、1年でJ1へ復帰、即優勝した柏レイソルのチーム作りを讃えられていましたね?
どこに焦点をおくかということは確かに大切ですが、未来を見据えて行動することは、私は好きではありません。今どれだけのことができるかに全力を尽くせば、明日は変わります。言葉でいうのは簡単ですが、日々進化する必要があります。初日から選手をしっかりと見て、どうやったら選手が伸びるか考えるのが私の仕事です。大きな物を見るのは私の仕事ではありませんし、その事を見失わないよう日々取り組みたいと思っています。
─ベンゲル監督、ネルシーニョ監督、ストイコビッチ監督。歴代の監督に名前を並べる気持ちをお聞かせください。
並ぶのかどうかはわかりませんが、今は現状の選手で最も良い仕事をすることしか考えていません。そして選手の顔が見えることで、この選手が見たいというファンの方も増え、豊田スタジアムを満員にしたいと考えています。そのためには、今日、ここへお集まりいただいたメディア関係者のみなさまにもご協力をよろしくお願いいたします。
─1ヶ月半後にはシーズンが始まります。キャンプも含め、このプレシーズンをどのように過ごそうとお考えでしょうか?
プランを練るのは苦手なのですが、それは毎日をかけて作るものだと思っています。トレーニングの回数、量は多くなると思います。選手がそれをどこまで消化できるのか、それを見ながら進めたいと思っています。選手がやらされるグラウンドは作りたくありません。選手が何かをやりにくる、そのようなグラウンドを作りたいです。それが叶えば、トレーニングの時間も短くなるかもしれませんし、選手の伸びも加速すると思います。
─先日加入会見をした佐藤寿人選手が、風間監督から「もっとうまくなる」と声をかけられたと話していましたが?
それは、全ての選手に言えることです。全ての選手の頭の中に、まだ開いていない引き出しが沢山あります。理解はしているがやれていないこと、その引き出しを開く手伝いができれば良いと思っています。例えば、点で合わせるという話をしていても、その点とは何なのか示さなければ点と点が繋がりません。そういったことを繰り返していくと、選手のもっている能力を出せるようになると思います。頭の引き出しを開くことで、本来持っている沢山のことが見えるようになります。もちろん佐藤寿人もそうですし、全ての選手が可能性を持っています。その中で何人かは、引き出しを開けることに苦労するかもしれませんが、その場合は周りのみんながサポートし、開けさせたいと思います。
─元日まで川崎フロンターレの監督を務められ、グランパスのことを考える時間はなかっと思います。それでも、その状況でこう言った選手が欲しいとか、リクエストを出すようなことはあったのでしょうか?
もちろんありましたが、私自身が動けるわけではありません。反対に、グランパスのから、このような選手を考えているがどうかというような話を受けることもありました。もちろん、短い時間ですが、1日の時間の中の何割かはグランパスのことも考えていました。そういう意味では、あまりできない貴重な体験をしたと思います。
─川崎フロンターレを率いた5シーズン、チームが年々進化しているように見えました。監督として、常に変化を求められているのでしょうか?
5年間で変わったことといえば、選手の数でしょうか。いろいろな選手を見ることができました。空気というものは変えたつもりはありません。
選手に何を望むか、例えばゲームを想定したトレーニングでも、練習試合を想定する選手と6万人が入る試合を想定する選手でとらえ方が違います。そういった部分でも、高いレベルで物事を考えさせる、それがグラウンドの空気を引き締めることになります。楽しく取り組むのはもちろん、その上で常に一段高いレベルで取り組む、そのための厳しい空気を作り続けることが重要です。