「新アンセム制作 共同プロジェクト」第1回ミーティングレポート

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クラブのシンボルとなるエンブレムが刷新され、来年にはパロマ瑞穂スタジアムの改築が完了するなど、グランパスを取り巻く環境は大きく変化しつつあります。そのなかでサポーターから、選手入場時に歌う"アンセム"を新たなものにしようという声。6月22日に「新アンセム制作 共同プロジェクト」の第1回ミーティングが、"聖地・瑞穂"の会議室で行われました。

プロジェクトメンバーは、2016年からサポートソングを担当しているQaijffのリーダー、ウチダアキヒコ氏。現アンセム考案メンバーの3名。スタジアムDJのYO!YO!YOSUKE氏、新エンブレム制作にクリエイティブディレクターとして携わった株式会社ワンダーズの岩田玲氏、名古屋グランパスクラブスタッフ4名、そして公募で当選したグランパスファミリー40名です。

はじめに、このプロジェクトの3つの目的である「グランパスファミリー全員で歌えること」、「一体感を高め、圧倒的なホームの雰囲気作りでチームを後押しすること」、「多くの人に愛され、歌い継がれることで愛知・名古屋の盛り上がりを発信していくこと」(全て要約)を共有。その上で、新パロマ瑞穂スタジアムでゲームが行われる最初の試合で、グランパスファミリー全員が歌えるようにすることを目指すという目標が示されました。

ただ、同じグランパスファミリーでも音楽の感性は多種多様。そのさまざまな思いや意見を全て受け止め昇華させるのが、作曲を担当するウチダ氏の役割になります。「皆さんの思いを気兼ねなくぶつけてほしい。楽しく覚悟を持ってやりたい」とウチダ氏は意気込みを語りました。

そしてミーティング開始前に、パロマ瑞穂スタジアムがどのように生まれ変わるのかを株式会社瑞穂LOOP-PFIの髙橋氏に説明いただきました。整備事業のコンセプトや特長、こだわりを耳にするたびに参加者の目の色が変わり、期待感が高まる空気を感じます。その後は実際に工事中のスタジアムを見学。現在造成中のピッチやスタンド全体を覆う渦巻き状の膜屋根、赤とグレーがランダムに配置された座席などを見て、新しいアンセムにどのように生かしていくのか、それぞれがイメージを広げました。

会議室に戻った後にグループでトークセッションを行い、まずは現アンセム考案メンバーに現アンセムを作成した当時と今の思いを伺いました。

シンゴ氏

「自分たちが憧れていたヨーロッパのチームのような雰囲気に名古屋らしさを加えて、みんなでアンセムを歌って闘いにいく、勝ちにいくという気持ちを選手たちに伝えたくて作ろうと考えました。最初は自分の小さな部屋にみんなで集まって、伝えたいワードを出して曲に当てはめていったけど、実際に形になったと感じたのはみんなが歌ってくれて何年かしてから、ですね。あのときの思いは今も変わっていないし誇りに思っていますが、そうしたストーリーをみんなで共有できないかと考え、新しいアンセムの制作を提案しました。みんなの思いをぶつけてもらえれば、絶対にいいものができると確信しています。」

カズヤ氏

「彼の家で言葉を考えたのが始まりで、当時はまだアンセムがあまりない時代でした。当時はSNSもなかったのでダンボールに歌詞を書いてみんなに歌ってもらいましたね。チャントは本当にたくさんの人たちに歌ってもらえていますが、アンセムに関しては少し限界を感じていて、そんなときにウチダくんと出会いました。今のアンセムに対する思いは、おそらく自分たちが一番持っていると思います。でも、チームにとっては、いいものを作ってそれが広まることが一番いいことだと思っています。」

2人の熱い思いを受けて、いよいよトークセッションが始まりました。パート1の大きなテーマは「アンセムのチカラとは」で、以下の4つの項目について話し合いました。

・アンセムがあることでスタジアムやチームにもたらせることは
・現アンセムのいいところ
・新アンセムをとおして作りたいスタジアムの雰囲気、理想の姿とは
・理想の姿の実現に向けて新アンセムに加えたいこと

まずは参加者それぞれが自由に意見を書き出し、それをグループ内で対話しながら考えをブラッシュアップ。どんな意見が出ているのかウチダ氏もとても気になる様子で、各テーブルを回っていました。

さらに「新アンセムに込めたいこと」を話し合い、どんな会話が生まれたのかを代表者が発表しました。
「『共に勝利をつかもう』というのは今のアンセムにもある言葉。勝利という言葉は選手だけでなく、自分たちサポーターを奮い立たせるものだから継承したい」
「誰でも歌えるものでなければ広げることはできない。老若男女問わず歌えること、シンプルなメロディであること、音域に無理がないこと、早口にならない言葉選びにすることも大事。愛を込めたワードが入っているといいなと思う」
「現在のアンセムの思いを聞いてアンセムの歌詞を読むと、削るべきところがないと思った。名古屋という誇りを取り入れてもらいたい」

上記のようにさまざまな考えが発表されました。こうした意見は全てウチダ氏が目をとおし、彼のフィルターをとおして新しいアンセムに創り上げられていく流れになっています。

参加者コメント

みほさん(30代女性)

私は観戦を繰り返すたびにどんどんグランパスを好きになっていきましたが、まだ社内で観戦好きな人が少ないことを実感していて、自分がこのプロジェクトに携わることで、もっと社内でグランパスを観に行く人を増やしたいと思って参加させてもらいました。
皆さんの思いがすごく強いと感じました。まだ何も公開できないですが、伝えられるようになったら「私もこのプロジェクトに携わったんだよ」と話し、興味を持ってくれる人を増やしたいと思います。
ウチダさんが「今日たくさんの意見を聞いて心が震えた」と言ってくださったので、今度は私たちの心を震えさせてくれるような曲を作ってきてくれるとうれしいです。

かいさん(20歳・男性)

僕はJリーグも海外サッカーも好きで、グランパスが新しいアンセムを作ると聞いて、自分の持っている意見も取り入れてもらいたいと思って参加しました。
ワクワクしながらミーティングができたので、いいアンセムができあがると思います。こういう会議自体が新しい取り組みだと思うので、Jリーグでも話題になるかもしれないですね。
迫力のあるアンセム、みんなが歌いたいアンセムがあると思いますが、世界の人に歴史を感じてもらえる、100年歌い続けられるアンセムになるといいなと思います。

シランさん(50代・女性)

もともとゴール裏で歌っていたためアンセムやチャントに興味がありましたし、普段感じていることもあったので、それをお伝えできたらいいなと思いました。また、今回新しいアンセムを作るという素晴らしい企画に、自分が参加できたら素敵だなと思って参加しました。
気になっていたのは女性という立場で、やはり筋力が弱かったり、低い音を出せなかったりすると感じていて、それを今回伝えることができたので良かったです。
誰も知り合いはいませんでしたが、すぐに打ち解けてグループでディスカッションできたことは良かったです。参加した方は全員、普段から名古屋を愛しているなと感じましたね。ウチダさんにはいろいろな声が届くので大変だと思いますが、楽しんで素敵な曲を作っていただければありがたいです。ぜひ頑張ってください。

プロジェクトメンバー コメント

Qaijff ウチダアキヒコ氏

どういう意見やアイデアが出るのか、楽しみにして今日を迎えました。皆さんの意見もそうですが、本当に心が震えるような情熱を感じ取れたので本当に良かったと思います。

―シンゴ氏から「アンセムを作り変えたい」と言われた時の心境は?

本当にありがたいし光栄だなと。同時に自分も3歳からサッカーを始めて、ずっとグランパスに憧れて、アカデミーでもプレーしました。サッカーを辞めてからもグランパスを応援し続けた自分としては、うれしさと同時にその責任の重さも正直感じています。正直、「やり切れるだろうか」という不安もゼロではありませんでした。もちろん大変なこともあると思いますけど、今日のミーティングを見たら、何より楽しみだし、みんなと一緒なら、新瑞穂のこけら落としで最高の景色を作れるだろうと確信しました。

―アンセムはグランパスという国の国歌だと表現することもできます。

そのとおりだと思います。音楽は流行がある文化だと思いますけど、そこに込められた思いや感情は100年後も同じで、シンゴさんたちが今のアンセムに込めた思いもずっと変わらない気がしています。その思いを変えずにブラッシュアップできるような曲にしたいと思っています。

―すでにアイデアが浮かんでいるのでは?

そうですね。いろいろな可能性があると思っています。たくさんのアイデアがあるので、どういう形がいいのか、これから考えていきたいと思います。

シンゴ氏

皆さんの意見や話を聞いていて、みんなすごくポジティブで、自分が思っていた以上に、紡いできたものや思いを受け取ってもらっていたんだと、強く感じました。本当に素晴らしい時間だったと思います。

―自身が作ったアンセムがあるなか、新しいアンセムを作ろうと思った理由は?

最初にアンセムを作ったときには、エゴイスティックに自分たちの思いを届けていた部分もありましたけど、多くの人に歌ってもらい、これだけみんなのものになっていったなか、「今の人たちだけでなく、欲を言えば名古屋の人たちみんなが歌える、みんなの思いをそこに込められるアンセムになったらいいな」という新たな欲が生まれました。今日のような時間を含め、前に進めていくことが自分たちにとって必要だと思っています。新しい瑞穂の完成は一つのいいタイミングになったとも思っています。

―グランパスの試合があるたびに国歌のように歌われる曲になります。

自分たちがいなくなったとしても、ちゃんとそれを受け継いでくれた人たちが語り継いでくれる、歌い継いでくれるアンセムになったらそれ以上のことはありません。夢があることだと思います。

―作曲するウチダアキヒコ氏にはどういった期待をしていますか?

まず、自分からのパスを受け取ってくれたことを本当にありがたく思います。本人も絶対に感じていると思いますけど、本当にすごい挑戦を自分が手掛けていく、その自覚があると思うので、しっかりみんなの期待に応えてもらい、素晴らしい曲を作ってほしいです。彼に任せておけば間違いないと思っています。