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 「天皇杯で勝つことが(サポーターへの)プレゼント」と、力強い表情で、心強い言葉を語って見せてた前日のトレーニング後のストイコビッチ監督。しかし、その一方で、天皇杯準々決勝の対戦相手・ガンバ大阪は、昨年の浦和に続いてアジアナンバーワンの座を勝ち取るだけでなく、CWCでは世界最強のマンチェスター・ユナイテッドを本気にさせるほどの激しい点の取り合いを見せて、堂々の第3位を獲得した強豪ということもあり、「日本の中でも素晴らしいクラブチームの一つ。ハードなゲームになると思う。」と、警戒を怠らず、この日の神戸総合運動公園ユニバー記念競技場に、満を持して臨んだ名古屋グランパス。

 12月下旬、冬の真っ最中のナイトゲームと言うこともあり、スタジアムは試合前から冷たい空気に包まれ、震え上がる程の冷え込んだ風が吹き抜ける中で、この日の試合がスタートする。CWCを含め、中3日の強行日程で臨むG大阪に対し、名古屋はリーグ最終節・大分戦から2週間以上経ち、コンディション面では休養充分で臨む試合となった。

 この日の名古屋の先発メンバーは、GK西村、DFは、右から竹内・吉田・増川・阿部の4人。中盤は、右に小川、左にマギヌン、中央は中村と吉村が並び、FWは、今季限りで名古屋を退団するヨンセンと玉田の2人。ベストメンバーで臨む、4-4-2の布陣だ。
 試合は、左エンドのガンバに対し、右から攻め上がる名古屋のキックオフでスタート。
 2分、左に抜け出したガンバ・安田のマイナスのボールを中央のガンバ・播戸がシュートに来るが、これは吉田に当たってこぼれたところを竹内が拾う。3分、左でヨンセンからの早いスローインを玉田がタッチ際を走って受けようとするが、ここはガンバ・山口の早い寄せに奪われてしまう。

 7分、自陣深く左寄りでのガンバのFK。ガンバ・遠藤の浮かせたボールは西村が落ち着いて正面で直接キャッチ。8分、中央、玉田からのスルーパスに左から抜け出したヨンセンだったが、これはオフサイドを取られてしまう。「自分たちのやり方を読まれてたと思う。」と言う試合後の玉田の言葉通り、名古屋は得意のサイド攻撃をガンバに封じられ、なかなか思うようにボールを前へ運べず、時折、FWのヨンセン・玉田にパスが入っても、あっという間に包囲され、自分のサッカーをさせて貰えない。

 10分、吉村からのパスに抜け出した玉田がガンバのペナルティエリア内でDFをかわしながら中へとパスを入れるが、これは誰も詰めることが出来なかった。11分、右に開いてこぼれ球を拾ったガンバ・ルーカスが中へとクロスを放り込んでくるが、ここは落ち着いてコースに入った増川が頭で弾き出してゆく。

 何とか先に点を奪って試合を有利にしたい名古屋だったが、前半13分、右に流れながらガンバ・山崎が落としたボールを橋本がすぐに中央へと流し込むと、これに走り込んだガンバ・ルーカスに強烈なシュートを決められ、先制点を奪われてしまう。
 18分、小川のパスを受けて右を抜け出した中村のクロスは、中央のヨンセンが頭で落としたところをクリアされ、左のCKに。小川がこれを蹴り入れてゆくが、ガンバDFにあっさりと弾き出されてしまった。22分、左から小川の入れたパスが相手に当たってこぼれたところを逃さず詰めた玉田のシュートはDFの正面を衝いてしまう。

 連戦の疲れがあるとは思えないほど、球際での厳しいチェックを見せるガンバは、早く追い付こうとする名古屋の攻撃を連動した動きでしっかりと寸断させると、次第に得意の早い仕掛けで小気味良くパスを繋ぎ始め、名古屋の選手達はなかなかボールを奪えに行けなくなってしまう。
 そして23分、右からのガンバのCKの場面で、橋本が短く出したボールを遠藤から再度受けると、これをゴール前へと簡単に上げさせてしまう。このボールをファーサイドに詰めていたガンバ・中澤にフリーでのヘディングシュートを決められ、ガンバ相手に2点目を献上してしまう。

 28分、右にカウンターで抜け出したマギヌンのマイナスのボールに、後ろから上がってきた吉村が右足でミドルシュートを放つが、これはガンバGKの正面を衝いてしまった。29分、右を吉村のパスに抜け出したマギヌンだったが、安田の早い戻りに潰されてしまう。30分、中央で玉田がキープして落としたところを小川が持ち出そうとしたが、これはガンバ・山口の伸ばした足にトラップしようとしたボールを止められてしまう。

 全体をコンパクトに、そしてしっかりと左右に開いて構えるガンバの守備に、名古屋の選手達はなかなか前を向かせて貰えず、焦って不用意に横パスを出してしまうと、すぐさまこれを奪われ、鋭い攻撃を浴びるという、苦しい展開が続いてゆく。
 34分、中央へ走り込むガンバ・山崎にルーカスからスルーパスを通されると、1対1でのシュートを許すが、ここは飛び出した西村がシュートを正面で弾き返してゆく。しかし、これが山崎に当たってしまい、無人のゴールへとボールが転がり込みそうになるが、ここは、いち早くボールに反応した増川がラインギリギリのところで外へと弾き出し、この大ピンチを救う。

 2点リードで少し落ち着いたのか、この時間帯はガンバは自陣に下がり気味となり、名古屋の早いパス回しを狙ったカウンターを狙ってくるようになる。
 38分、中央で吉村のパスを中村がダイレクトに玉田に送るが、ここはガンバ・明神が厳しい寄せを見せ、ボールが玉田の足下に収まる前に奪い取られてしまう。43分、右に抜けて来た橋本のゴール前へのクロスは、増川がしっかりと体を入れて阻止。

 ロスタイム1、中村からのパスに右から抜け出そうとした竹内だったが、安田の厳しいプレッシャーにクロスを上げることが出来なかった。ロスタイム2、中央でボールを持って前を向いた玉田が、エリアの外から強烈なシュートを放つが、これは力みすぎたのか、ボールはクロスバーを越えてしまう。そして、前半はガンバに2点のリードをを許したまま終了となった。
 エンド入れ替わり、後半は右にエンドを変えたガンバのボールから試合が再開する。ハーフタイムにストイコビッチ監督は「後ろでボールを回しすぎない。もっと立ち上がりからアグレッシブにいこう。」と選手達に2点ビハインドで劣勢のチームの勢いを取り返そうと、しっかりと気合いを入れ、そして、前半ほとんど仕事をさせて貰えなかった右サイドバックの竹内に代えて、スピードのある杉本を投入、この苦しい状況を何とか打破しようと、彼の俊足に希望を託す。

 2分、自陣左寄り、ペナルティボックスすぐ外でガンバにFKを与えてしまう。3分、このFKをルーカスが直接狙って蹴ってくるが、これは壁で弾いて、枠へは飛ばず。4分、左から長い距離を上がってきた杉本の、ゴール前のスペースを狙ったパスは戻ったDFに弾かれてしまった。5分、中央の玉田からのパスを右から走り込んだ小川が受けると、中へと仕掛けよとするが、ここはDFの厳しい寄せに潰され、ボールを奪われてしまう。6分、自陣深くやや左寄りでのガンバのFK。ガンバ・山口が壁が飛んだ足下を抜くボールが枠を捕らえてくるが、ここは西村が落ち着いて正面で捕らえる。

 後半は、立ち上がりから杉本を入れた効果が見え始め、それまでなかなか見られなかった、ガンバの高いDFラインの背後を突く攻撃を仕掛けるようになる。
 8分、右でマギヌンのパスを受けた玉田が中央に詰めてゆく杉本にパスを入れると、これを杉本が早いタイミングでシュートに行くが、惜しくもポストの右に。10分、左に上がる杉本のゴール前へのクロスに中央で合わせて飛び込んだマギヌンのヘディングシュートは、クロスバーの僅かに上へ。

 13分、ルーカスからのワンタッチパスで播戸に裏への抜け出されると、1対1からのシュートを許すが、ここは西村が落ち着いて体を寄せると、このシュートを正面で止め、ゴールを守る。14分、ここで早くもストイコビッチ監督は2枚目のカードを切り、連戦の疲れで足が止まり始めたガンバを攻略しようと吉村に変えて山口を投入する。
 18分、中央でボールを持ったマギヌンが落としたボールを増川が大きく右に展開すると、右に駆け上がる山口が受けようとするが、ここはボールが流れ、タッチを割ってしまった。19分、右に上がった杉本が2度3度と鋭い切り返して見せて、安田を振り切ると、右足でマイナスにゴール前へと流し込んでゆく。ガンバゴール前でこぼれたところを、上がっていた吉田がこれをダイレクトで合わせたシュートは、惜しくもクロスバーを越えてしまった。

 22分、相手パスを鋭いダッシュで奪った小川が前に走るヨンセンへとパスを出してゆくが、これは惜しくもオフサイドに。23分、名古屋は3人目メンバー交代で、疲れの見える玉田を下げ、FWの巻を投入、追加点を狙った指揮官は、いよいよ総攻撃の体勢に入る。24分、左の杉本からのクロスを中央のヨンセンが上手く溜めて、スペースに落とすと、これに巻が詰めてゆくが、伸ばした足に触れる前にガンバGKが押さえてしまう。

 ここへ来て一気に運動量が落ちたガンバに対し、後半から入った杉本・山口の早い仕掛けが功を奏し、名古屋が次々とガンバ陣内深くへ攻め立てるようになる。そして、後半の25分。中央で吉田からの縦パスに、オフサイドラインをかいくぐるように絶妙のタイミングでフリーで抜け出した杉本が、DFが体を寄せる前に左足のワンタッチで放った豪快なシュートが見事枠を捕らえ、ついにガンバを1点差に追い詰めるゴールが決まる。

 27分、ガンバ陣内中程右タッチ際でのFKのチャンス。マギヌンがゴールに向かって飛ぶ精度の高いボールを蹴り入れてゆくが、これはゴール前に合わせようと走り込んだ選手のオフサイドになってしまう。28分、右で杉本の落としたボールをマギヌンが中へと早めに蹴り入れると、中央で受けたヨンセンが絶妙のトラップからシュートを放ってゆく。しかし、これはガンバGKの正面を衝き、枠の外へと弾かれてしまう。
 29分、安田の上がった裏を突いて右から抜け出した杉本が角度のない位置から強烈なシュートを放つが、これもガンバGKの正面を衝いてしまった。31分、中央の中村から右へと展開したボールをマギヌンが受けると、軽いタッチを見せて、中へと流れ込みながら放ったシュートが枠を捕らえるが、またしてもギリギリのところでガンバGK・藤ヶ谷の好セーブにバーの上へと弾かれ、名古屋はどうしても同点のゴールを挙げることが出来ない。

 後半は、終始、名古屋が攻め立てる時間が続くが、苦しい時間帯での戦いで分のあるガンバは、大事なところでは、相変わらず厳しさを見せ、機を見て遠藤、橋本、明神と言ったベテランの老獪なプレイに翻弄され、掴みかけている良い流れを、すぐに断ち切られるてしまう。34分、中央でクリアボールをガンバ・山口に拾われると、そのまま持ち込んでシュートを放ってくるが、これは精度を欠き、大きくゴールを越えてゆく。
 36分、左からマギヌンが落としたところを拾って、中へと持ち込もうとした阿部が倒され、絶好の位置でのFKのチャンスを得る。ここでガンバ・西野監督は、ようやく1枚目のカードを切り、FWの播戸代えて、若い武井を入れてくる。そして、このFKのチャンスを小川が丁寧にゴール前を狙って蹴ってゆくが、ガンバ・山口を中心とした壁に阻まれ、追加点を奪うことは出来なかった。

 39分、左に抜け出した小川からのクロスは、ガンバDFに簡単にカットされてしまった。40分、中央でマギヌンとのパス交換を見せようとした杉本だったが、これは気持ちが合わず、ルーズになったところを奪われてしまう。
41分、攻め上がりの裏を突かれて中央から抜け出してきたルーカスに、1対1からのシュートを許してしまうが、これはポストの右に外れ、このピンチを相手のミスに救われる。そしてここで指揮官はDFの吉田を上げるよう命じ、パワープレーを仕掛ける。

 ロスタイム1、ガンバ陣内中程右でのFK。マギヌンのボールを右に開いて受けた小川が速いクロスを入れてゆこうとするが、ここはニアで弾かれてしまった。ロスタイム2、西村のゴールキックを受けたヨンセンが縦に仕掛けようとトラップしたところで潰されてしまうが、これはファウルにはならず。ロスタイム3、右タッチ際からのマギヌンのロングクロスに中央でヨンセンが飛び込むが、ここは飛び出したガンバGKにボールを捕らえられてしまう。ロスタイム4、ゴール正面で上がっていた吉田が粘りを見せると、これに寄せてきたマギヌンがミドルシュートを放つが、ガンバGKの正面を衝いてしまった。

 そして最後、ガンバGKのゴールキックが大きく蹴り出されたところで、冷たい神戸の冬の空を振るわせる主審の試合終了の笛が鳴り響き、名古屋の今シーズン終了を告げられてしまった。後半は、終始、怒濤の攻撃を見せてガンバゴールに迫った名古屋だったが、前半に与えてしまった2点が重くのし掛かり、ガンバの高い集中力の前に追加点を奪うことが出来ず、1点差のまま、2000年以来となる、元旦・決勝の実現の夢は果たすことが出来なかった。しかし、ストイコビッチ監督は「後半のグランパスのプレーには満足。逆転を狙い最後まで戦った事は賞賛に値する。」と、後半は世界3位のガンバ相手に互角に渡り合った選手達の頑張りには満足げの様子を見せた。
 しかし、その一方で「来シーズンに向けて何が必要なのか、具体的な課題を含めた絵が、既に私の頭の中にはある。」と早くも来シーズンに向けた構想を、既に着々と準備を始めていることを、試合後の会見で力強く語って、今季最後となった激戦を締め括った。