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 遠く九州・大分の地まで足を運んだ名古屋のサポーターの気合い充分の声援を背に、午後2時30分、ホーム・大分のメンバーと共に名古屋の選手がピッチに入場をする。

 大屋根を閉じた九石ドームは、2008年Jリーグ最終戦を目の前で見ようと詰めかけた大分サポーターの応援にも力が増したこともあって、両サポーターの大声援と力強い拍手が心地良く響き渡る。
 左エンドのホーム・大分に対し、右から攻め上がる名古屋。赤いキャプテンマークを左腕に付けた中村と、大分・高松のコイントスが終わると、ピッチ上には緊張感が一気にみなぎる。
 ピッチ際でストイコビッチ監督を中心に、スタッフ、選手全員等が円陣を組んで気合いを入れた名古屋のキックオフで、リーグ最後の90分の開始を告げる笛が鳴った。

 この日の先発メンバーは、GK西村、DFは、右から竹内・吉田・増川・阿部の4人。中盤は、右に小川、左にマギヌン、中には中村と、3試合ぶりに戻った吉村の2人が並び、FWはヨンセン・玉田の2人。久しぶりのベストメンバーが揃った4-4-2の布陣だ。

 試合は、序盤から大分が積極的な攻撃を仕掛け、名古屋はこれを受ける形で試合が進む。3分、右でパスを受けた大分・ウェズレイが前を向こうとするが、竹内と小川が厳しく寄せると最後はヨンセンが追い詰めて、相手陣内へと押し戻す。4分、左を上がる大分・鈴木からのクロスに、中央へと大分・高松が飛び込んでヘディングシュートを狙うが、増川がしっかりと寄せてミスを誘った。
 6分、自陣左中程で大分のFK。大分・ウェズレイが鋭く強いボールを蹴ってくるが、先にコースに入った吉田が頭で跳ね返す。8分、カウンターで上がってきた大分・金崎の出したボールが、ゴール中央でこぼれたところに反応したウェズレイにシュートを打たれるが、西村が好セーブを見せてゴールを守る。

 名古屋も、前節の札幌戦を出場停止で出られなかった玉田が軽快な動きを見せて、大分のDFに揺さぶりをかける。11分、阿部から縦に出されたボールに反応した玉田が仕掛けようとするが、大分DFに体を入れられてしまい、ボールに触れることが出来なかった。13分、右タッチ際でスローインのボールをヨンセンが軽いタッチでさばいて、玉田に当てるが、このボールは先に大分に奪われてしまう。
 そして14分。左からゴール前に入り込もうとした吉村がこぼれ球を拾うと、右足でコントロールしたシュートをエリアの外から放つ。このシュートは大分GKの指先を越えて枠を捕らえたかと思われたが、惜しくもクロスバーに直撃し弾かれてしまった。

 18分、大分陣内右中程でFKのチャンス。キッカー玉田が、ゴール前へクロスを蹴り入れるが、ニアサイドのウェズレイの頭に弾かれ、右からのCKに変わる。
19分、右CK。玉田が短くパスを出して、再度ボールを受ける。そして中へとクロスを狙うが、時間をかけすぎてしまい大分の選手にボールを奪われてしまう。
20分、右からのCKのチャンス。玉田の蹴ったボールは中央で弾かれるが、こぼれ球を中村が右に展開し、残っていた玉田を使おうとするがオフサイドを取られてしまった。

 大分も、早い時間に先制して試合を優位に進めようと、早い攻撃を次々と仕掛けてくる。22分。右に抜け出した金崎の速いクロスからニアサイドに入り込んできた高松にヘディングシュートを許してしまう。しかし、このシュートは右ポストにあたり、名古屋は失点を逃れた。
 24分、左からのCKのチャンス。小川の蹴ったボールはニアで弾かれてしまう。26分、右に開いた大分・高松がゴール正面へと詰める選手を狙ってクロスを入れてくるが、西村が落ち着いて正面でキャッチ。28分、マギヌンが裏へと抜け出そうとしたところでファウルを受け、好位置でのFKのチャンスを得る。
 29分、大分陣内右中程でFKのチャンス。マギヌンが長いボールをゴール前へと入れるが、ニアで守備についていたウェズレイの頭に跳ね返されてしまう。

 30分、中央でボールを持った大分・藤田の裏へのボールに右から高橋に抜け出しを許すと、ゴール至近距離でのシュートを放たれるが、ポストの左に流れて救われる。34分、右でマギヌンが玉田とパス交換から抜け出すと、中にクロスを入れようとするが、前を阻んだDFに当たってボールは弾かれてしまう。36分、阿部からの早めのクロスに中央を上がるマギヌンが合わせようとしたが、DFの厳しい寄せに潰されてしまう。

 この日は、大分の高橋や金崎のケアもあって、なかなか縦への突破が見られなかった阿部だったが、41分、左からDFをかわしてドリブルでエリア内へと侵入する。更に阿部は、寄せてきたDFを反転してかわそうとしたところで後ろから押し倒されるが、笛は鳴らずファウルは認められなかった。
 ロスタイム1、速いリスタートからエジミウソンが、右を駆け上がるウェズレイを目掛けてロングボールを蹴ってくるが、頭に触れたボールはゴールラインを割る。

 ロスタイム2、大分陣内左深くで玉田が倒され、好位置でのFKのチャンスを得る。小川が速いボールをゴール前へと蹴り入れる。増川や吉田、ヨンセンと上背のある選手が飛び込むが、誰も触れることは出来ない。そして、前半は互いに惜しいチャンスを作りながらも、ゴールには至らず0-0のスコアレスで終了する。
 エンド入れ替わり、後半は右エンドの大分からのボールで試合が再開。ストイコビッチ監督は、「相手にスペースを与えすぎている。お互いの間隔を詰めよう。」と修正点を話し、「しっかりとクロスをあげてゴールを決めよう!」と最後の45分へと臨む“戦士達”に気合いを注入して、再びピッチへ送り出す。

 1分、右サイド深くを抜け出した中村からのクロスを、ファーポストのヨンセンがヘディングシュートに行くが、枠を捕らえられず。4分、大分陣内右中程でのFKのチャンス。玉田の蹴ったボールは大分DFの頭に跳ね返されてしまった。
 8分、左で玉田が持ったところに寄せてきた小川へとパスが出る。小川は左に流れながら中にパスを流し込もうとしたが、ボールは大分GKに抑えられてしまった。

 9分、大分陣内中央やや右でFKのチャンス。小川がボールをまたぎながら背後に流すと、玉田が直接ゴールを狙って左足でシュートを放つが、ボールは僅かに流れてしまい、ポストの右へ。前半は、自分たちのサッカーがなかなか出来なかった名古屋だったが、後半は立ち上がりから積極さを見せ、サイドを突いた攻撃を仕掛ける。

 そして12分。左に上がるマギヌンから絶妙のクロスに、中央に入り込んでいったヨンセンがドンぴしゃのタイミングでヘディングシュートを放つが、ボールは大分GKの正面を衝いて弾かれてしまい、先制のチャンスを逃してしてしまった。17分、大分の左CK。ウェズレイの蹴ったボールがこぼれたところを中央で拾われると、大分の選手にエリアの外からシュートを許してしまう。強烈なボールが枠へと飛んできたが、ここは西村が落ち着いて体を入れ正面でガッチリと捕らえた。

 19分、大分ペナルティエリア左で玉田がDFと競ってこぼれたボールを、小川がすぐに拾って中へと仕掛けようとしたところで潰されると、ここで審判の笛が鳴りファウルが告げられる。ところが、これは大分DFへではなく、小川がシミュレーションとしてカードを受けてしまう判定に。

 なかなか先制できない試合展開を何とかしようとストイコビッチ監督は、ここ2試合、吉村に代わって先発し好プレーで2連勝に貢献した山口を、中村に代えて投入する。21分、右CKのチャンス。マギヌンの入れたボールをファーポストのヨンセンが頭で合わせるが、ボールは枠を捕らえられずクロスバーの上へ。

 後半は、前半から飛ばしていたこともあってか、大分の運動量が減り、球際での鋭さもあまり見られなくなったことで、名古屋が得意のサイドチェンジを見せて、大分のゴールをこじ開けようと次々と攻撃を仕掛ける。
 23分、中央を抜け出してきたウェズレイがエリア手前でシュート体勢に入ろうとするが、ここは吉田が厳しい寄せを見せて潰しボールを奪い取る。24分、大分陣内中央ゴールほぼ正面でのFKのチャンス。先ほどと似たような形で小川の落としたボールをマギヌンが蹴るが、大分の壁に弾かれてしまう
 25分、左からマギヌンが丁寧に上げたクロスを中央でヨンセンが頭で合わせるが、シュートはクロスバーの僅かに上へ。

 27分、左から侵入してきた金崎がゴール前にクロスを入れてくるが、体を張った西村がしっかりと飛び出してボールを抑える。30分、マギヌンが左から中央へと走る玉田に鋭いボールを入れるが、足下への厳しいタックルに潰されてボールを奪われてしまう。
 31分、左でパスを貰ったマギヌンがシュートを放つが、右に外れてしまう。32分、中央から入り込んだウェズレイを止めたところでこぼれたボールを、ペナルティ内にいた高松が左足でシュートを狙ってくるが、西村が正面でガッチリと抑える。34分、左を上がってきた阿部が、遠目からのミドルシュートを放つが、枠を捕らえることが出来なかった。
 36分、大分1人目メンバー交代:高松→森島

 37分、左から持ち込んだマギヌンが縦に送ったパスに反応して、玉田がエリアに入り込む。しかし、寄せてきたDFをかわそうとしたプレーでファウルを取られてしまう。ここでストイコビッチ監督は、2人目のメンバー交代で、DFの竹内を下げFWの巻を投入、攻撃の枚数を増やして勝負に出る。
 38分、中央で小川からの速いパスを受けた巻が右足でボレーシュートを放つが、僅かにポストの右へと流れ、大分のゴールネットを揺らすことは出来なかった。39分、左を抜け出した阿部からのクロスに、ファーポストの巻が頭で飛び込んで合わせるが、ヘディングシュートはポストの右に流れてしまう。

 40分、名古屋は、前半からフルパワーで飛ばしてきた玉田に代え、3人目メンバー交代として杉本を入れ、彼の俊足にゴールの望みを託す。
 そして41分。早速、右からヨンセンの落としたボールを、鋭く持ち上がった杉本がゴール前にクロスを上げるが、このボールは惜しくも大分GKの正面を衝いてしまった。
 43分、大分2人目メンバー交代:金崎→山崎

 44分、右からの大分CK。鈴木のボールは中央でしっかりと増川が高さを見せてクリア。ここでロスタイムが告げられ、互いに一度もゴールを揺らすことが出来ないタフな試合も、残り5分となった。
 ロスタイム1、左CKのチャンス。マギヌンの短いボールを受けた阿部が中に入れるが、弾かれてしまう。ロスタイム2、中央で巻が落としたボールを狙った小川のミドルはDFに当たって右に逸れてゴールラインを割ってしまい、右からのCKに。これを小川がシンプルにゴール前へと蹴るが、大分の堅い壁に阻まれてしまう。

 ロスタイム3、左からマギヌンの入れたボールにヨンセンが飛び込むが、前に出た大分GKがキャッチ。
 ロスタイム4、大分3人目メンバー交代:鈴木→家長
 ロスタイム5、右からの大分のCK。こぼれ球を拾って持ちだそうとしたマギヌンが奪われると、これを繋がれゴール右寄りに浮いたところで高橋にオーバーヘッドシュートを許すが、ここはGK西村と共にDF陣が最後の踏ん張りを見せて跳ね返し、ゴールを死守した。
 そして、マギヌンがボールを大分陣内に持ち出すと、名古屋の殆どの選手が攻め上がる。しかし、ためを作っていたマギヌンが厳しいタックルで潰された瞬間、主審の両手が上がり、今季最後のリーグ戦の終わりを告げる笛が九石ドームに大きく鳴り渡った。

 難攻不落といわれる大分の堅い壁を何とかして打ち崩そうと、しぶとい攻撃を続けた名古屋だったが、最後までホームでの意地を見せた大分のゴールを破ることは出来ず、試合は0-0で終了を迎えた。
 今季、ストイコビッチ新監督の指揮の下、新しいシーズンを切った名古屋は、最後まで優勝争いに踏みとどまる、粘り強い戦いを年間を通して見せることが出来た。
 残念ながらタイトルには手が届かなかったものの、3位という高順位まで上り詰めるだけでなく、アジアチャンピオンズリーグへの出場権も獲得し、充実したシーズンだったと言えるだろう。

 ベンチから常に厳しい表情をピッチで戦う選手達に送っていたストイコビッチ監督。しかし試合後の会見では、「シーズンを通し、ベンチに入ってサッカーを楽しめました。そして選手もそう感じながらプレーできたと思っています。グランパスサポーターにも楽しんでもらえたと思いますし、他クラブのサポーターにも、グランパスのサッカーを楽しんでもらえたのではないでしょうか。」と満面の笑みを見せながらシーズンを締め括った。