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 ピッチ上に冷たい風が吹き始めて、気温は10度を割り、冷え込みが強まり始めてきた午後4時前。これから始まる第33節:札幌戦での勝利を確信するサポーターには熱気が満ち溢れ、2試合を残して優勝争いを繰り広げているチームの戦いに熱いエールを送ろうと待ち構えている。

 そして午後4時、サポーターの掲げる「12」のビッグフラッグに迎えられて両チームの選手が入場すると、スタジアムは興奮の渦に包まれて一気にヒートアップする。
 前半、右エンドのアウェイ・札幌に対し、左にエンドを取るホーム・名古屋のキックオフで試合がスタート。
 この日の名古屋の先発メンバーは、GK西村、DFは右から竹内・吉田・増川・阿部の4人。MFは、右に小川、左はマギヌン、中には、中村と山口が並び、FWはヨンセンと、出場停止の玉田に代わって杉本が先発。これまで通り、4-4-2の布陣だ。

 試合は札幌が、立ち上がりから前線のダヴィが中心となって名古屋にプレッシャーを掛けて、意地を見せてくる。2分、自陣深く左からの札幌のFK。札幌・藤田のボールをファーポストの札幌・西嶋が頭で合わせてくるが、ボールは右に流れ出る。3分、右サイドで小川がルーズボールを拾うと、裏へと抜け出そうとする杉本にすぐさまパスを送ろうとするが、札幌DFの網にかかってしまった。

 5分、早いリスタートで抜け出した杉本がペナルティボックスのすぐ外で倒され、ゴール正面やや左寄りの好位置でのFKのチャンスを得る。そしてこのFKを、小川が右足で狙い澄まして蹴ったボールが右のポストに当たって札幌のゴールネットを揺らし、見事な先制点を名古屋にもたらす。

 7分、右CKのチャンス。マギヌンが短く出したボールを山口が落として、再度、中へとクロスを狙うがこれは大きくゴールラインを割ってしまう。8分、中央で待ち受ける札幌・ダヴィに札幌・西からのクロスが入るが、吉田が競り勝ってクリア。
 10分、ハーフウェーラインからのヨンセンのボールを右に上がる杉本がワンタッチで中へと落とすと、マギヌンがこれをワンタッチでDFの裏にパスを出す。そして最後は、小川が中央に入り込んで右足でダイレクトシュートを狙ったが、ボールは右に流れてしまった。
 11分、右から大きな切り返しでダヴィが自陣深くまで入り込んでくるが、増川がゴールライン際に追い込んだところで中村がしっかりと寄せて、ボールを奪い取る。

 12分、左サイドから小川が丁寧に入れたクロスを、ファーポストのヨンセンが頭で中へと落とすと、札幌GK・佐藤が前に弾いたところにきっちりとゴール前に詰めた杉本がボールを押し込み、名古屋が追加点を挙げて2−0とする。

 16分、札幌陣内の中程でFKのチャンス。しかしマギヌンの蹴った巻いたボールは、DFの頭で弾かれてしまった。
 19分、中央で山口からのパスを受けて前を向いたマギヌンが、そのまま縦に仕掛けると遠目から積極的にシュートを狙う。しかし、ポストの右に流れ出てしまった。
 20分、吉田からのロングフィードにマギヌンが追い付く。マギヌンは、寄せてきたDFをワンタッチで華麗にかわすと右足で強烈なシュートを放つが、GKの前に体を入れたDFに弾かれてしまい追加点のチャンスを逃してしまった。
 25分、右の小川の落としたボールに詰めたヨンセンが遠目からミドルシュートを放つ。抑えの効いた低い弾道のシュートだったが、札幌GKの正面を衝いてしまった。

 30分、中央で相手パスをカットした中村。縦に上がりながら右足のアウトサイドのボールを蹴って杉本を走らせるが、これは長すぎてしまい札幌GKに渡ってしまう。
 35分。ヨンセンからのスルーパスに絶妙のタイミングで抜け出した杉本が、札幌のペナルティボックス内に持ち込んだところで後ろから倒されてしまう。スタジアム中のサポータ全てが「PKか?」と固唾を呑んだが、ここで主審の笛は鳴ることはなかった。試合を更に優位に進めるためにも追加点が欲しかった名古屋だが、徐々に札幌に試合のペースを奪われてしまう。

 37分、DFの裏へと抜けたボールを拾ったマギヌンが縦に仕掛けると、GKと1対1に。しかし、丁寧にコースを狙った左足シュートはポストをわずかにかすめて枠の左へ外れてしまった。
 40分、ロングボールに反応して中央を抜け出してきた札幌・中山に、増川がクリアしたボールを当ててしまうが、先に反応した阿部が丁寧に体を入れて、ラインの外に大きくクリアする。
 42分、右に持ち上がってきた札幌・西がゴール前へ流し込んだボールに反応して逆サイドから走り込んだダヴィに、フリーでシュートを許してしまう。しかし、ここはボールが大きく上に浮いて枠を外れ、名古屋は相手のミスに救われる。

 2点を取った後からプレーがおとなしくなってしまった名古屋だったが、2-0で札幌を抑えて後半に折り返した。
 エンド入れ替わり、後半は左の札幌のボールから試合再開。
 札幌1人目メンバー交代:中山→西谷

 「今のスコアは忘れて、0対0だと思ってプレーしよう。もう1点必要。ゴールを必ず決めよう。」とストイコビッチ監督は、前半途中から積極性があまり見えなくなってしまった選手達に、しっかりと気合いを注入してピッチへと送り出す。

 2分、中央のヨンセンがポストプレーでスペースにボールを落とすと、ここに走り込んだ杉本がワンタッチで持ち出して、ゴール右隅を狙ったシュートを放つ。しかし、この弾道は僅かに高くポストに弾かれてしまい、決定的なチャンスに追加点を奪うことが出来なかった。
 8分、右の札幌・藤田が、中央で待ち受けるダヴィを狙って早いクロスを蹴り入れてくるが、マークに付いた吉田がファウルを誘ってマイボールに。

 10分、札幌がカウンターを見せると、右サイドの藤田へとボールを繋ぎ、早いクロスをゴール正面のダヴィへと放り込んでくる。これをダヴィが胸で落としてシュート体勢に入られそうになったが、飛び出した西村の前で吉田が体を入れて、ボールをポストの左へ蹴り出す好プレーを見せ、ゴールを死守する。
 11分、札幌2人目メンバー交代:芳賀→アンデルソン

 12分、右から札幌・アンデルソンが力強いドリブルを見せて持ち上がってくるが、増川がしっかりと体を入れて阻止する。13分、右でヨンセンが落としたボールを小川がすぐに縦に送ると、杉本が中央を抜け出したが、これはオフサイド。
 14分、右からの札幌CK。札幌・西里が速いボールを蹴り入れてくるが、ニアサイドの中村が頭でクリア。
 15分、札幌の左CK。藤田の右足からボールは、中央の増川が頭でクリアする。
 16分、札幌の右CK。西里の遠いサイドを狙ったボールは竹内が頭でクリアする。この時間帯は、何とか2点差を跳ね返そうとする札幌の選手の方がセカンドボールへの出足が早く、名古屋の選手は後手に回らざる終えない状況が続く。

 18分、左から阿部の入れたクロスはDFが跳ね返されるが、これを再び拾ったマギヌンが同じ位置からクロスを入れる。しかし、ボールは僅かに高く、ジャンプしたヨンセンの頭上を抜けてしまう。
 19分、ゴール右でフリーでパスを受けた小川が、中央にフリーで詰めていたヨンセンにシュートを譲る形でパスを出すが、パスが短くなってしまいヨンセンが触れる前に札幌DFにクリアされてしまう。
 21分、左でヨンセンが相手DFのクリアミスを拾うと、寄せてくるマギヌンに丁寧なパスを送る。これをマギヌンが得意の左足ではなく右足でシュートにいったが、ボールは残念ながらクロスバーを越えてしまい、またしても名古屋は追加点のチャンスを逃してしまった。
 22分、札幌3人目メンバー交代:藤田→岡本

 札幌・三浦監督は、早めの交代で自分たちの流れになり始めている試合の主導権を握ろうとカードを切る。
 25分、左からゴール前へと入れられたボールに先に詰めた増川がこのボールをコントロールしようとしたところに、後ろから寄せてきたダヴィにボールを奪われてしまう。西村もこの1対1の場面を止めようと飛び出したが、ダヴィに切り返しでかわされてしまい、最後は無人のゴールにシュートを決められてしまう。

 26分、名古屋1人目メンバー交代:増川→バヤリッツァ
 ここでストイコビッチ監督は、この嫌な雰囲気をすぐに断ち切るため増川をバヤリッツァに代え、さらに30分には、疲れの見える杉本に代えて巻を投入する。
 33分、右に持ち上がった小川からのボールを、中央で巻が落とすと、逆サイドに走り込んだマギヌンが左足で強烈なシュートを放つ。しかし、ボールは右のポストの僅かに右へ抜けてしまう。
 35分、右に抜け出してきたダヴィのゴール前へのグラウンダーのクロスは、上がってきた札幌の選手は誰も触れられず、最初に触れたバヤリッツァが大きく縦に蹴り出す。
 38分、左から札幌・西谷がダヴィがサイドを変えたボールをニアに詰めるアンデルソンに送るが、これは届かない。
 40分、名古屋3人目メンバー交代:ヨンセン→米山

 43分、右からのスローインのボールを巻が頭でスペースへと落とすと、山口が拾いに行くが相手選手の出足が早くクリアされる。44分、札幌陣内左中程でのFKのチャンス。これを小川が短く蹴って阿部が縦に送ると、再び受けた小川が中を狙おうとしたが、寄せてきたDFに弾かれてしまう。

 ロスタイム、札幌陣内左でルーズボールを拾った米山が縦に抜け出そうとしたところで足を掛けられて倒れ、好位置でのFKを得る。このFKを蹴るのは、チャンスを自ら志願した米山。そして米山の右足から狙い澄まして放たれた無回転のボールは、鋭い軌道を描いて札幌のゴールネットに突き刺さる。このゴールで再び名古屋は、スコアを2点差として追いすがる札幌を突き放す。

 後半途中で札幌に1点差に追い上げられて嫌な雰囲気だったが、米山のスーパーシュートで、重くなっていた空気が吹き飛び、約20,000人のサポーターの歓喜が渦巻くなかで主審の笛が試合の終了を告げた。
 そして、いよいよ残す試合は最終節・大分戦のみ。他力とはいえ、優勝の可能性が残っているだけに、今日のこの勝利で得た自信は選手達にとっては計り知れないほど大きい。これで選手全員が、悲願の“優勝”へ、そしてACL出場へと大きく希望に胸を膨らませて、大分との最終決戦に気合い充分で臨めるはずだ。

 「我々は集中力を保ち、勝ちに値する試合をしたと思う。選手の努力、そして“美しいサッカー“を見せられた事に対しおめでとうと言いたい。」とこの日の勝利に、表情を緩めて、試合後の会見に臨んだストイコビッチ監督だったが、最後は「グランパスにはまだ優勝の可能性があるという事を皆さんも信じて欲しい。今シーズンはまだ終わっていないし、グランパスは最後まで諦めません。」と次節への強い想いを語って、気持ちをきっちりと引き締めた。