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 京都を迎えた開幕戦は、圧倒的にゲームを支配しながらもゴール前でのフィニッシュの集中力を欠いた名古屋。試合は、ヨンセンの同点ゴールによる引き分けに終わり、ストイコビッチ新監督の初采配を勝利で飾ることが出来なかった。
 そして迎えた第2節は、アウェイ・埼玉スタジアムで浦和レッズとの一戦。かつて仏・マルセイユ時代にストイコビッチ監督と浦和・オジェック監督は、選手とコーチという間柄だったが、今回は指揮官として互いの持ち得る戦術と経験、そしてサッカー哲学を戦わせる事になった。
 試合前日に「グランパスにとって(埼玉スタジアムの大観衆)は良い環境だと思っている。試合を楽しんで、良いプレーをしてゴールを奪うことだけを考えれば、平常心で出来る。」と自信に満ちた監督の言葉通り、完全アウェーの状況で自分達の試合運びが出来るかが勝利を握る鍵と言えた。
 京都戦で受けた怪我の影響でDFの要であるバヤリッツァが欠場、この日のDFラインは、青山・竹内・吉田・阿部という若い4人がGK楢崎とともにゴールを守る役割を担う。中盤は、小川・中村・吉村・マギヌンの4人。FWは1年8ヶ月振りに代表復帰を果たした玉田とヨンセンの2人。この日も4-4-2の布陣で、昨年のアジア王者・浦和に真っ向から挑んだ。
 この日の埼玉スタジアムは、前日の雨が嘘のように好天に恵まれ、暖かい陽気に誘われた両チームサポーター54,482人がスタンドから声援を送る中で試合は開始された。

 試合はリーグ屈指の大声援を受けた浦和が、序盤から今シーズン補強したFW高原とエジミウソンの二人にボールを集めてくる。しかし、名古屋の若いDF陣が気合いの入ったプレーを見せてこれを押さえ込み、浦和の攻撃をことごとく潰すと、徐々に試合の流れを自分達に引き寄せる。
 そして14分、左のマギヌンからのクロスボールを、ヨンセンがDFと競り合いながらも、きっちりと頭でゴール右に流し込むヘディングシュートを決めて名古屋が先制。スタジアムに静寂が訪れるとともに、良い時間帯のゴールで試合の流れを名古屋のものにする。

 開幕戦を落とした浦和は、ホーム開幕戦となるこの試合で連敗だけは避けたいと左サイドの相馬が積極的な攻め上がりを見せるが、青山・竹内の2人が吉村や中村と上手く連携をして、集中したプレーを見せて相手の攻撃の芽を摘みとる。
唯一の危ない場面は38分、相馬からのパスに走り込んできた細貝に許したシュートだったが、これは守護神・楢崎が正面で押さえて、名古屋が1点のリードを保ったまま前半を終える。
 しかし後半は、高原に代えて永井を入れたオジェック監督の采配が功を奏し、立ち上がりからボールを支配した浦和が、積極的に名古屋陣内へと攻め立ててくる。

 6分には、左に切れ込んだ相馬のマイナスのボールを中央に走り込んだ鈴木にフリーでシュートを打たれてしまう。しかし、この決定的なシュートは左ポストに当たって跳ね返る幸運もあって、名古屋は浦和が押し込んできた苦しい時間帯に失点をすることなく凌ぎきる。

 「後半は(浦和が)何か変えてくるとは予想していた。それでも(相手の攻撃を一身に)受けることなく、しっかりと戦えたことが追加点に繋がった」と試合後に語った楢崎の言葉通り、浦和がゲームの主導権を握る苦しい時間帯でも、チームは冷静に対応。名古屋は、再び流れを引き戻すべく自分達のサッカースタイルを貫き続けた。

 そして向かえた後半の24分。相手のリスタートの場面で、GK都築と浦和DFの連携ミスのボールを「パスコースを消そうと絞っていた」小川が見逃さずにボールを奪うと、ゴールに蹴り入れて、名古屋は思っても見ない形で追加点を挙げて浦和を突き放す。
 ストイコビッチ監督は、30分に青山に代えて三木を投入、40分にはマギヌンに代えて杉本を入れるなど、心憎いまでのタイミングで選手を交代させて、自分達のペースで終始試合を進めた。

「これまで私が常々伝えてきた事を、選手達は今日のピッチの上で表現してくれた」

 監督が試合後に笑顔で語った言葉通り、浦和の戦い方に合わせることなく、終始自分達のサッカーをピッチ上で描き続けた名古屋の選手達が、アウェイ・埼玉スタジアムでの浦和との対戦を見事2-0で制し、指導者として新たなキャリアをスタートさせた“ミスター”ストイコビッチ監督に、待望の初勝利と「人生の中でも忘れられない1日」をプレゼントした。