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 選手時代は才能を余すことなく発揮し、“ピクシー(妖精)”の呼び名の通り、数々の華麗なプレイを披露してJリーグナンバーワンの外国人選手として名を残したドラガン・ストイコビッチ氏。名古屋グランパスは、クラブにとって最大の切り札と言っても過言ではないストイコビッチ氏を新監督に迎え、新しいシーズンをスタートさせた。
 およそ1ヶ月半の「ハードワーク」に耐えた選手達がどんなプレーを見せてくれるのか、かつてのプレーヤー時代のように華麗な采配を見せてくれるのか、3月8日の開幕戦は様々な思いを胸に抱いたサポーターで、快晴の豊田スタジアムは埋め尽くされた。
 迎える対戦相手の京都サンガF.C.は、昨シーズン途中に監督交代をしながらも経験豊かな加藤監督の下、粘り強い試合運びを見せて入れ替え戦を制してJ2から再びJ1へと返り咲いた。今季は、鹿島から柳沢、千葉からは佐藤を獲得するなど積極的な補強を行いチーム力を上げて開幕に臨んできた。
 試合は、地元サポーターの後押しを得た名古屋のキックオフでスタート。先発メンバーはGK守護神・楢崎、DFは右から竹内・バヤリッツァ・吉田・阿部の4バック。中盤は、小川・中村・山口・マギヌンの4人。FWはヨンセンと玉田の4-4-2の布陣だ。
 序盤は名古屋が、指宿キャンプから取り組んできた組織的で早いパスワークから相手陣内へと攻め立てる展開を見せ試合を優位に進める。特に好調の玉田が切れの良いところを見せ、ヨンセンと共にチームの多彩な攻撃にアクセントをつける役を引き受ける。
 ところが9分。青山に代わって右SBを務めた竹内のパスを京都・パウリーニョに奪われ、これを止めようとしたバヤリッツァがペナルティ内で彼を倒してしまいPKを献上してしまう。そして、このPKをきっちりと決めた京都に先制点を先に奪われてしまう。

 しかしこの失点で気持ちが吹っ切れたのか、ここからは名古屋の怒濤の攻撃が続く。まずは12分、阿部のシュートがDFに当たってこぼれたところに走り込んだ小川が相手と1対1に。小川は、迷わずシュートを狙うが、これは飛び出したGKの正面で阻止されてしまう。17分、今度は右に上がった竹内がマイナスに入れたボールを中央の玉田が受けると、前を遮るDFをかわし左足でシュートを放つが、これは左に流れてしまい惜しくも枠を捕らえる事は出来なかった。

 24分、京都陣内中央でのFK。玉田が早いリスタートをから縦に走るヨンセンへとボールを送ると、右足ダイレクトでシュートを打つが、ボールは右に流れポストの僅かに外へ。さらに30分にはヨンセン、31分には小川が決定的な場面を迎えるがポストに弾かれる等の不運もあり同点とすることが出来ず、前半は京都の1点リードで折り返した。
 エンド入れ替わり、左から攻め上がる京都のボールで試合が再開。何とか早い時間帯で同点としたい名古屋は、3分、右に流れた山口の落としたボールを竹内が「合わせるというよりも、ぶつけるくらいの勢いで蹴った」と語る速いクロスボールを、中央のヨンセンが頭であわせる。これが見事ネットを揺らす同点ゴールとなり、試合を振り出しに戻す。

 7分、ここまで名古屋のDF陣が押さえ込んでいた京都・柳沢が長いボールに抜け出してくるが、ここは竹内と吉田が厳しい寄せを見せて、相手のチャンスの芽をきっちりと摘みとる。8分、右にこぼれ出たボールを拾ったフリーの京都・中山がゴール前へのクロスを狙うが、ここでも吉田が体を張った熱いプレーを見せてゴールを守り、チームを盛り立てる。

 ストイコビッチ監督は、後半21分に疲れの見えた中村に代えて藤田を、26分には小川に代えて片山を投入し、徐々に京都に流れ始めた試合の主導権を再び引き戻そうと積極的なベンチワークを見せる。しかし、前半から積極的に攻撃の姿勢を見せてきたこともあってか、終盤は前線と最終ラインとの間のスペースが出来るようになり、名古屋にも京都にもカウンターのチャンスが巡ってくる展開になる。
 それでも、この時間帯での失点は命取りになるだけに、名古屋は試合終了の笛が鳴るまで高い集中力を見せて、互いの攻撃を跳ね返す。

 ロスタイム、京都・田原が左から抜け出すと、中央を走る柳沢へとボールを繋がれ、絶体絶命のピンチを迎える。しかし、柳沢がフリーで放ったシュートはクロスバーの上へと外れてゆき、スタジアムは大きな安堵の声に包まれた。

 先制点を奪われながらもしっかりと追いつく勝負強さを見せつけた名古屋だったが、その後は最後まで京都の固い守備を突き崩すことは出来ず、1-1の同点で試合は終了。ストイコビッチ新監督初采配による記念すべき初勝利は、残念ながら次節以降へ持ち越しとなってしまった。
 しかし、同点という結果とは裏腹に「ファイティングスピリットと体力的な強さ、そしてメンタルの強さも見せてくれた。サポーターも今日の試合内容には満足してくれたと確信している。」という監督の言葉通り、スタンドを埋めたサポーターから、試合を終えた選手達へ惜しみない大きな拍手と暖かい声援が送られた。