楢崎正剛選手 中日新聞コラム「ゴールマウスから」

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第1回「強がりのすすめ」(『中日新聞』4/27掲載)

強がる―。一般には虚勢を張る後ろ向きな意味の言葉だが、プロでは実力を発揮する方便にもなる。いわば能力を最大限に引き出すための作為の感情。3月の日本代表戦で久々に先発したGK川島永嗣(メッス)からも、似たものを感じた。

所属チームでは控えの永嗣が、ワールドカップ(W杯)アジア最終予選の2試合にぶっつけ本番で臨んだ。極限の緊迫感の中でゴールを守るのは並大抵の精神力では務まらないが、欧州トップリーグの厳しい環境に自ら身を置く永嗣の覚悟からすれば、重圧下で高い集中力を発揮したのは驚きではない。

15年間の代表時代に感じたのは、世界で戦える選手は突出した技巧に加えて、タフさがあるということだ。僕たちの世代では、イタリア1部リーグで活躍したヒデ(中田英寿)が別格の存在だった。ジダン、マルディーニ、バッジョら世界のトップと日常的に対峙(たいじ)し、強国との対戦ではヒデだけが対等に戦えた試合があった。

海外チームでのプレー経験がない僕は、そうはいかない。そこで自分に課したのは、練習でも、Jリーグでも、常に世界を意識することだった。結局、練習でできないことが試合でできるはずがない。海外組だけが代表で活躍できるわけではないという意地もあった。そして最後に、「ピッチに立てば自分が一番だ」と言い聞かせ、自信というよろいをまとった。

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これは僕なりの気持ちを高める方策だが、プロの世界でないものねだりをしてみても、誰も同情はしてくれない。ときには根拠のない自信も、ないよりはあった方がいい。

岡崎慎司(レスター)や香川真司(ドルトムント)ら今の代表選手はレベルの高い欧州での経験が好プレーにつながっている。だからこそJリーグから代表に選ばれる選手には、自分なりの流儀を見つけてほしい。

◇4/27より中日新聞で掲載が始まりました楢崎正剛選手によるコラム「ゴールマウスから」、J1最多試合出場(631試合)を誇り、日本代表としても長くゴールを守ってきた楢崎選手が、豊富な視点からサッカーについて語ります。中日新聞にて随時掲載、ぜひお楽しみにください。