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 午後0時20分、この日も怪我の楢崎に代わってスタメン出場となった西村、そして広野のGK2人がピッチに姿を表すと、駆けつけたサポーターから大きな声援が送られる。雲が広がり、日陰では肌寒さを感じるNACK5スタジアム大宮だったが、ゴール裏の熱は高く、半袖や中には上半身裸といった姿のサポーターも見受けられる。
現在リーグ戦では優勝争いを繰り広げるグランパスは、過去に2度制した事のある天皇杯でも99年大会以来の決勝進出に向けてモチベーションは高い。

 今年で2度目の試合となるNACK5スタジアムは、4月に行われた前回のリーグ戦では前半先制されながらも、後半わずか2分の間に増川、マギヌンのゴールで試合をひっくり返した良いイメージを持っているスタジアムの1つだ。

 試合前のウォームアップを終えた選手達は、これから始まる一戦に向けて気合の入った表情でロッカールームへと一旦引き上げた。
 午後1時、照明の灯ったNACK5スタジアム大宮のピッチに、両チームのイレブンが姿を表す。この日のスターティングメンバーはGKに西村。ディフェンスラインは左から阿部、吉田、増川、竹内。ボランチに吉村と中村が並び、その前にマギヌン、藤田、小川が入る。そしてフォワードには、ヨンセンが1トップという布陣となった。

 そして開始早々の2分、思わぬ形で名古屋にチャンスが訪れる。右サイドでボールを持った小川が、ゴール前へアーリークロスを上げると、大宮DFレアンドロがGKとの連携に迷いクロスをクリアし損なう。すると流れたボールは、ファーサイドで完全にフリーだったヨンセンの前に。相手の迷いから生じたチャンスに、ヨンセンは無人となったゴールへクロスを頭で押し込んで、名古屋が幸先の良い形で先制点を挙げた。

 しかし、開始早々の「してはいけない失点(樋口監督)」をしてしまった大宮もすぐに反撃をする。4分には大宮・藤本に中盤でドリブルを仕掛けられるが、縦へのパスは竹内がクリアする。6分、ディフェンスラインの吉田からゴール前へ縦パスが出ると、久しぶりの先発出場となった藤田が抜け出そうとするが、ボールは先に相手GKがキャッチ。
 7分、大宮・ラフリッチのポストプレーから、ボールを受けた藤本にミドルシュートを打たれるが、増川が体を張ってクリアする。さらに9分、中盤からの縦パスに大宮・内田に左サイドを破られると、飛び出したGK西村も交わされてヒヤリとするが、ボールは相手の足下に収まらずゴールラインを割る。

 12分、大宮陣内でヨンセンがFKを得る。このボールを小川がトリックプレーで左サイドへ流すと、阿部がフリーで強烈なミドルシュートを放つが、枠の上を超えてしまう。
 22分、名古屋は藤田、阿部、マギヌンと細かいパス回しで左サイドを崩しに掛かるが、オフサイドの判定。
 23分、大宮・小林(大)に右サイドから中央のラフリッチへ向けてクロスを上げられるが、吉田が頭でクリアする。さらに大宮・左CKをラフリッチに頭で合わされるが、これは枠の外に。ラフリッチを捕まえきれずシュートを打たれて、ひやりとするシーンだった。

 25分、大宮・内田にハーフラインからボールを持たれると、中盤での寄せが甘くそのままドリブルを許し、30mの位置から強烈なミドルシュートを打たれる。このシュートに反応したGK西村も何とか指先で触れるが、「私同様に西村自身も驚いたのではないだろうか(ストイコビッチ監督)」という程の強烈なボールはクロスバーに当たりゴールの中へ。名古屋は、前半の早い段階で試合を振り出しに戻されてしまう。
 さらに28分、エリア内左で大宮・内田にドリブルを仕掛けられると、一旦後ろへ戻したボールから藤本に右足でシュートを打たれる。しかし、これは枠の右へ逸れて連続失点のピンチを逃れた。

 先週の柏レイソル戦で課題となった、短時間での続けての失点だけは避けたいグランパスは、ここでもう一度集中力を高める。
 すると34分、阿部の縦パスに左サイドを抜け出したマギヌンが、ゴールライン間際までドリブルでえぐり中央へクロスを上げる。「あとは合わせるだけの完璧なクロス(ヨンセン)」と試合後に語ったボールを、ファーサイドで飛んだヨンセンが頭で捉えてゴールネットを揺らす。名古屋のエースが、同点に追いつかれて嫌な空気を払拭する貴重な得点を決めて、再び試合をリードする。

 38分、左サイドでボールを受けたマギヌンの外側を阿部がオーバーラップを計り、相手DFを引き連れてパスコースを開ける。このリーグ第2節、浦和戦での得点シーンを彷彿とさせる展開からマギヌンがヨンセンを狙って中央にクロスを上げるが、わずかに合わず相手DFがクリア。40分、今度は右サイドから竹内がオーバーラップし、相手エリア内で倒されるがノーファールの判定に。逆にその右サイドからカウンター攻撃を受ける事となるが、大宮・金澤のシュートは西村が正面でセーブ。

 ロスタイムにもスローインから阿部、吉村、藤田、マギヌンが左サイドでパスを繋ぐが相手DFに奪われてしまう。そしてここで前半終了。
 お互いにボールを奪ってから攻守の切り替えが早く見応えのある前半となったが、ゴール前での集中力の差でヨンセンが2ゴールを挙げて名古屋がリードして折り返す事となった。
 名古屋は、左にエンドを変えて、大宮のボールで後半がキックオフ。

 開始早々に右サイドを大宮・藤本に破られる。すると藤本に、そのまま中央にクロスを挙げられてラフリッチにヘディングシュートを打たれるが、これは西村が正面でキャッチ。4分には大宮、左からのCK。このボールは、両チームとも触れる事ができず逆サイドのタッチラインを割る。

 6分、ようやくボールが落ち着き出したグランパスは、中村からのパスを中央で受けた吉村が相手DF裏へふわりと浮かしたパスを上げる。小川がこれに反応し抜け出そうとするが相手DFにクリアされてしまう。
7分にもディフェンスラインでボールを奪った吉田が、左サイドを上がるマギヌンの前へと浮き球を狙うが相手DFがクリア。

 11分、右サイドから竹内が攻撃参加。中に切れ込んでの速いパスを小川がスルーをして他の選手にパスを渡そうとするが、味方と呼吸が合わず相手ボールに。
 13分、左サイドでパスを受けたマギヌンが、中央に走りこむ中村の前にスルーパスを狙うが、相手GKが飛び出してクリアされてしまう。14分、中盤で大宮・内田にドリブルを許すと、そのままエリア内まで持ち込まれてシュートを打たれるが、しっかりとクリアする。

 同点に追いつきたい大宮に対し、名古屋はボールを奪ってからカウンターを狙う場面が見られるようになる。
 19分、マギヌンとのパス交換で左サイド内側を上がった阿部が中央にクロスを上げるが、ファーサイドのヨンセンには届かず相手GKにキャッチされる。
 20分、大宮・藤本に中盤からドリブルを仕掛けられると、これを止められずにペナルティエリアへの侵入を許してしまう。藤本の中央への速いパスはディフェンスが一度はクリアするが、これを拾った大宮・小林(大)が再び上げたクロスにラフリッチにフリーでヘディングシュートを許す。しかし、このシュートは枠の上へ。先のクリアでディフェンスラインが整っていなかっただけに危ないシーンだった。

 ここでストイコビッチ監督は、藤田に代えて山口を投入。同点ゴールを狙って前線から積極的にプレスをかける大宮に対し、中盤での運動量と守備に定評のある山口で対応を図る。
 24分、左サイドへ張り出した中村からのパスを中で受けた小川が左足を振りぬく。しかしこのシュートはクロスバーを超えてゴールならず。
 26分、右からのCKをショートコーナーで繋いだマギヌンが、シュート気味のボールをゴール前へ上げるが、相手GKにキャッチされてしまう。29分、ラフリッチが胸で落としたボールを拾った大宮・小林(大)がエリア内への侵入を図るが、吉田がクリア。

 ここで大宮・樋口監督は中盤の佐伯に代えてドリブラーのFW桜井を投入。攻撃の姿勢を強める。
 32分、山口のパスカットから左・小川を経由し逆サイドのマギヌンにパスが渡る。しかしマギヌンから中央へのパスは、相手DFがカットされる。
 33分、ヨンセンとのパス交換で中村が相手ペナルティエリア内へ。角度の無い位置でボールを得た中村はシュートではなくパスを選択するが、中央のマギヌンへは渡らず相手にカットされる。
 35分、自陣エリア内へ攻め込まれると、増川がクリアしたボールが大宮・藤本の足下へ。このボールを合わされてシュートを打たれるが西村が正面でキャッチ。

 38分にも名古屋ゴール前で大宮のパス交換から、最後は桜井に倒れ込みながらのシュートを打たれるが、ボールは力が無く西村がキャッチ。
40分、バイタルエリアで大宮・小林(大)にボールを持たれると、そのまま横方向へのドリブルから右足でシュートを打たれるが、これも西村がキャッチする。

 負けたら即終了となるノックアウト形式の天皇杯、ホームで戦う大宮はさらに前線に人を集め、同点ゴールを狙って攻撃を仕掛けてくる。
 41分には大宮・桜井のドリブルを阿部がスライディングで倒し、ゴール右寄り22mの位置でFKを与えてしまう。このタイミングでストイコビッチ監督は中村に代えバヤリッツァを投入。このFKは大宮・塚本が強く低いシュートで直接狙うが、名古屋の壁がこれを跳ね返す。

 そして迎えたロスタイムには、吉村からのパスに抜け出してフリーとなったヨンセンが、相手DFが寄せてくる前にシュート放つが相手GKに正面でクリアされる。ストイコビッチ監督は、時間を有効に使う狙いも持ち小川に代えて杉本をここで投入する。

 後が無くなった大宮は前線に4人を並べロングボールを放り込むが、ラフリッチと競ったバヤリッツァが頭でクリアする。そしてここで試合終了。
 1度は追いつかれながらもヨンセンの2点目のゴールで前半のうちに勝ち越したグランパス。後半はサイド攻撃を仕掛けながら守りのブロックをしっかり固めるという、アウェイでのトーナメント大会らしい戦い方で勝利をおさめ12月に行われる準々決勝への進出を決めた。