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この日の対戦相手・サンフレッチェ広島ユースは、今年10月に国立競技場でおこなわれた高円宮杯第18回全日本ユース(U-18)サッカー選手権大会で、後半ロスタイムの劇的な同点ゴールで延長戦に持ち込みながらも最後は力負けを喫し悔し涙を流した相手。今回こそはリベンジを果たしてやろうと、試合前の選手達からは気合いが伺えた。

前半は、右にエンドを取る広島のキックオフで試合開始。この日の先発メンバーは、GK鈴木、DFは右から三島・津田・三宅・磯村の4バック。中盤は西山・西部のダブルボランチに、右に安藤、左に鈴木の両サイド。そして、トップ下には奥村が入り、FWはアルベスの1トップという4-5-1の布陣で臨む。

高円宮杯は広島の個の力の前に序盤から苦しい試合展開だったが、この日は立ち上がりから名古屋が主導権を握り、果敢に広島陣内へと攻め込む。

3分、安藤からの縦パスを受けた鈴木が右から切れ込んで、角度のないところから左足を振り抜く。しかし、このシュートはコースに入った広島DFに阻まれてしまう。

広島は、卓越した個人技を見せて中盤での早いパス回しを展開し、名古屋DF裏のスペースを狙った攻撃を序盤から見せてくる。しかし名古屋は、三宅を中心にDF陣とGK鈴木が集中したプレイを見せて広島の攻撃を跳ね返し、サポーターを大いに沸かせる。

名古屋は、前半のうちに先制点を挙げて試合を楽に進めようと攻撃を仕掛けるが、広島の厳しいプレスのためボールの出し手が良い形で前を向かせて貰えない。そのため、奥村や安藤と言ったスピードを活かした選手を使う事が出来ない。そして、相手の隙を突いたドリブルで仕掛けようとするものの広島の早い寄せに囲まれ、シュートに持ち込む前に潰されてしまう。

試合は、強い風を利用したロングボールからの攻撃を見せる広島に前半の終了間際に押し込まれてしまうが、相手のミスにも助けられて0-0のスコアレスで試合を折り返す。

エンド入れ替わり、後半は右エンドの名古屋のボールから試合が再開する。

2分、左タッチライン際を力強いドリブルで持ち上がっていた磯村が、相手陣内深くでゴール前へと良いボールを流し込むが、これには誰も詰めることが出来ない。4分、安藤のスルーパスに反応した奥村が寄せてきたDFを上手くかわして右足でシュートを放つが、惜しくもポストの僅かに左へそれてしまう。9分、交代で入ったばかりの広島・岡本がエリアのやや左から強烈なミドルシュートを放つが、GK鈴木が正面でボールをしっかりと捉える。13分、中央突破を図ってきた広島・篠原とGK鈴木が1対1になるが、ここでも鈴木が好セーブを見せてゴールをがっちりと守る。

18分、右に抜け出した西山が相手DFを引き付けて、中央に入り込むアルベスにラストパスを送るが、ここでも広島DFの包囲網に捕まってしまい、シュートを打たせて貰えない。24分、名古屋メンバー交代:奥村・鈴木→中田・岸。

25分、広島のDFの中途半端なクリアを拾ったアルベスがGKと1対1になり、絶好のチャンスが名古屋に訪れる。しかしアルベスは、飛び出したGKと戻ってきたDFをかわそうとして体勢が崩れてしまい、シュートを打つことが出来ず決定的なチャンスを決めることが出来ない。

終盤は、個の力に勝る広島がペースを握ることが多く、名古屋には苦しい状況が続く。チームは、相手の早いパス回しからの仕掛けに追い付けずに危険な位置でファウルを与える場面もあったが、前半から見せていた高い集中力は途絶えることはなく、全員で広島の攻撃に耐えて後半を0-0で終了する。そして、試合は10分ハーフの延長戦へ突入する。

延長前半は、右エンドの広島ボールからスタート。6分、名古屋:安藤→太田。

7分、右サイド長い距離を上がってきた三島にあわせて太田からパスが出る。太田はゴール前へとクロスを上げるが、広島の固い守備の前に誰もペナルティエリアに侵入することが出来ない。9分、自陣左深くの位置での広島のFK。広島・内田がゴールを直接狙ってくるが、壁に入った三宅が体を張ってボールを弾き返す。

エンド入れ替わった延長後半も、ホームサポーターの強い後押しを受けて名古屋の選手達が気力を振り絞って、立ち上がりから広島を攻め立てる。1分、岸のサイドを変えたボールを左で受けた中田が仕掛けるが、相手マークを振り切れずシュートまで持ちこめない。2分、中田が当てたボールを岸が落とす。これに磯村が詰めて、狙ったシュートは惜しくもクロスバーを越えてしまう。

延長後半3分、広島・岡本のパスに抜け出した広島・大崎に中央を突破されると、103分間高い集中力で守ってきた名古屋ゴールに決勝点となるシュートを決められてしまう。

何としても同点に追いつきたい名古屋は、DF三宅を前線に上げて、早めにロングボールを前線に入れるパワープレイに持ち込む。しかし、リードしている広島の時間稼ぎのプレイへの苛立ちや、早く同点にしたいという気持ちの焦りもあってか、丁寧にボールを供給することが出来ないまま時計ばかりが進む。

そして名古屋は、約2分のロスタイム間も果敢に攻め続けるが、無情にも主審の長い笛が0-1で広島のリードのままピッチ上に響き渡る。残念ながらこれでチームは、今シーズン終了を迎えることとなる。チームは今年10月の高円宮杯でのリベンジを果たすことは出来なかったが、最後まで見せた熱い闘志は、間違いなくチーム後輩達、サポーター達に伝わったはずだ。

 
<朴 才絃監督コメント>
高円宮杯と比べれば正反対の内容でした。前半から名古屋が試合を支配することが出来て試合をコントロールすることが出来ました。今年の広島の“個の力”を押し込むことは難しかったですが、高円宮杯後の二ヶ月で選手達の伸びしろを感じました。出来れば前半のうちに点を取りたかったです。後半途中から広島の岡本が入ってからは、相手を押さえることがなかなか難しくなってしまいました。

いくつか相手に決定機を作られたと思いますが、高円宮杯の時より修正できていたと思いますし、良い準備をすることも出来ていたと思います。点を取る確率は両チームとも同じと思っていました。そして、力でねじ伏せることが出来ませんでしたのでPKかと思っていました。最後の失点は向こうに力があったことだと思います。

名古屋の組織的な守備はやられてはいなかったと思います。広島の攻撃はトップクラスですが、うちの組織力が上がってきていると思いますし、2大会連続で90分間で引き分けたことは評価できると思います。夏のクラブユースで千葉に敗戦した以外は、高円宮杯での広島に負けただけで、チームの戦略的にもメンタル面も出来上がって安定していただけに、ここで終わってしまったのは残念です。