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 第87回天皇杯全日本サッカー選手権大会4回戦は、まさに秋晴れという言葉がふさわしい、よく晴れ渡った名古屋市瑞穂陸上競技場で行われた。名古屋グランパスエイトは、J2のザスパ草津をホームスタジアムに迎え撃つ。チームは、J1所属クラブとして実力の差をきっちりと見せつける戦いを見せたいところだ。
 しかし、フェルフォーセン監督が「J1のチームがJ2や大学生チームに負ける事もある。」と語ったように、例年意外な結果が起こるのがノックアウト方式のこの大会。来年の元旦に国立のピッチに立つためにも、ここでつまづく訳にはいかない。チームは、今週の準備段階から入念に調整を行ってきた。
 前半は右にエンドを取る、アウェイ・草津のボールで試合開始。先発メンバーは、DF米山を中央に置いて吉田が右、阿部が左に入る3バック。中盤は、右に小川、左に渡邊の両サイド、中央は吉村をワンボランチに据えて、トップ下の位置に山口と本田が入る。FWは、ヨンセンと中村の2人という3-5-2の布陣で臨む。

 試合立ち上がりは、お互いが相手の出方をうかがう落ち着いたスタートとなった。しかし、草津DF陣は自陣深い位置での守備をくるため中盤にスペースが出来やすく、名古屋の選手は、そのスペースを狙って相手パスをカットして攻込む場面が次第に増えるようになる。

 特に左サイドの渡邊は、積極的な攻め上がりを見せてゴール前に好クロスをあげる。しかし草津は、名古屋の攻撃の柱・FWヨンセンへの徹底したマークを見せて簡単には決定機を作らせてはもらえない。試合の序盤は、ペースを引き寄せつつもゴールまで持ち込めない重苦しい雰囲気がスタジアムを包んだ。しかし前半15分、相手陣内でのこぼれ球を拾った吉村が、かつての同僚でもある草津GK本田の隙を突き、コースを狙いすましコントロールしたシュートを決めて先制し、重い雰囲気を払拭する。そして、先制点の後は、名古屋が試合の主導権を握る。

 21分、24分と渡邊が良い形でゴール前のヨンセンにボールを入れるが、ヨンセンは厳しいマークを受けて、思うようなプレイができない。33分にヨンセンは、ようやくフリーでのヘディングシュートを打つ決定的なシーンを作り出す。しかし、今度はクロスバーがこのシュートを阻み、追加点をなかなか奪えないまま時間が過ぎる。逆に前半40分過ぎには、草津がCKを連続して得て押し込まれる場面が続くが、久し振りの先発となった米山や先週の浦和戦で好プレイを見せた吉田が高い集中を保ち草津の攻撃に耐える。
 前半は、1-0のまま名古屋がリードして終える。
 エンド入れ替わり、後半は右エンド名古屋のボールで試合が再開。「後半は守備面を修正し、しっかりとしたプレスからボールを奪う事が出来るようになった」と監督が語ったように、前半の途中から少なくなっていたDFラインの押し上げが見られるようになる。更に後半10分、山口に代えて藤田が投入されると、前線のプレスから良い形でボールを奪い攻撃へと繋げる早いテンポでの仕掛けが増え始める。

 13分、相手ペナルティ内で縦パスを楔の形で受けた藤田が、ワンタッチでスペースへと落としヨンセンが右足でシュート。しかし、このシュートは草津GKの正面を衝いてしまう。
 20分、名古屋メンバー交代:小川→玉田

 21分、CKからのこぼれ球を拾った吉村が、右からゴール前へクロスをあげる。このボールは、走り込むヨンセンの前に飛び出した草津GKが弾くが、逆サイドに詰めてきた吉田の下へと流れる。吉田は、これを右足でトラップして冷静にゴールへ押し込む。このシュートがゴールネットを揺らして、吉田の公式戦初得点が待望の追加点をもたらす。23分には、本田のCKのボールを相手DFがカットして高く上がったボールを吉村が見逃さず、右足を振りぬく。すると、このシュートは低い弾道を描いてゴールに吸い込まれ、目の覚めるような25mの弾丸ボレーが決まり3-0。草津を突き放す。

 名古屋は、J1の意地を見せて完封勝利といきたかったところだが、28分、自陣深く左寄りの位置でFKを与えてしまい、これを交代したばかりの草津・松浦にヘディングシュートを決められてしまう。その後は、草津が前線に枚数を増やしてリスクを背負った攻撃を続けてくるが、名古屋の選手達は落ち着いて対応を見せる。名古屋は、自分達のチャンスになってもボールを持って攻め急がず、自分達が握っている主導権を最後まで相手に渡すことなくゲームを支配し続けて終了のホイッスルを迎えた。名古屋は、天皇杯の初戦を3-1で終えてJ1の柏を下したJFL・HondaFCとの5回戦へ駒を進めた。