2007 Jリーグ ディビジョン1:第13節
 午後2時30分、先にアップを始めている楢崎・櫛野の下へ、名古屋の選手達が駆け込んでくる。名古屋のゴール裏に陣取るサポーターに大きく手を振り上げた後、ピッチで早速、最後の仕上げをスタートさせる。
 新潟戦では、鬼気迫るセービングを見せ名古屋のゴールを死守した楢崎。他のメンバーがリラックスした雰囲気の中で体を動かしているのとは裏腹に、早くも臨戦状態と言えるほどの迫力で芦川コーチの蹴り入れるボールをガッチリとキャッチしている。今日も苦しい時間が訪れたときには、チームの支えとなる攻守を見せてくれそうだ。
 リーグ戦はここ数試合、4-4-2のシステムに変更したのが功を奏し、勝ち星は横浜戦のみだが、守備での安定感が抜群に増している。特にこれまでは中央で攻守の切り替えの重責を果たしていた藤田が、山口とのコンビを組んだことでプレイに彼らしさが目立つようになってきた。今日は強烈な3FW を擁するFC東京が相手だが、彼の経験に裏付けされた落ち着いたプレイがチームを救ってくれることだろう。
 午後2時45分、納得ゆくアップを終えた選手達は、汗が滴ることも気にすることなく、ゆっくりとした足取りでピッチを後にしていった。
〜前半15分
両チームサポーターのボルテージが一気に上り詰めた味の素スタジアムのピッチに両チームの選手達が入場を果たすと、大きな声援と共に、溢れるような拍手が送られ、これから始まる熱戦へと花が添えられる。
前半左エンドの、ホーム・FC東京に対し、上下白のユニフォームの名古屋は、右にエンドを取る。そして、試合はFC東京のキックオフでスタート。
今日の先発イレブンは、GKは、名古屋の守護神・キャプテン楢崎。DFは大森・米山・吉田・阿部の4バック。MFは右から、金・藤田・山口・本田、FWはヨンセンと杉本。4-4-2の布陣だ。FCのFW3人をどう抑えるかが、今日の試合を制する鍵となるはず。
 
 
 
1分、左で藤田のパスを受けた本田が中へと入り込むと金へ。これを切り返して左のスペースへと金が送るが、ここは誰も寄せることが出来ず、相手ボールに。
3分、左に上がる東京・鈴木のクロスを受けた東京・梶山が阿部をかわしてシュートを狙ってくるが、ここはマークを離さず、ボールを奪う。
 
 
4分、左から阿部のパスを受けた本田がエリア内へと侵入すると、DFが寄せてきたところで中央にパスを入れると、ヨンセンがこれを合わそうとするがDFにカットされてしまう。更にこぼれ球を金が左に流れながらゴール前に入れたが、ここは誰も詰めることが出来なかった。
6分、相手陣内深く左でのFKのチャンス。ゴールまでほぼ20m、角度的にも本田が狙うと見せて、米山が壁の足下を抜く意表を突くボールを蹴ると、中央へヨンセンが走り込むが、東京GKの左手に阻まれてしまう。
 
 
9分、ゴール前でカットしたボールがルーズになったところを東京・ルーカスが拾い、そのまま放ったミドルシュートはポストに当たって跳ね返る。
11分、左でボールを持った阿部が東京DFが寄せたところで右のスペースへと大きくサイドを変えて金に送るが、ボールが長すぎタッチを割ってしまう。
13分、最終ラインでボールを回して、中盤を省略して大森の裏へ長いボールを蹴って、東京・リチェーリを走らせてくるが、ここは大森が粘りを見せてボールに触れさせず。
 
 
15分、中央で本田のパスを貰った金が右に上がる大森目掛けてパスを出すが、これは芝生に足を取られてしまい、ボールを拾うことが出来ず。  
〜前半30分
17分、右からのCKのチャンス。本田が入れたボールはニアで東京・ワンチョペに跳ね返されてしまう。
18分、東京・ルーカスからのパスを左で受けた東京・リチェーリが切り返してシュートを狙ってくるが、大森・山口が厳しく寄せてミスを誘う。
 
 
20分、中央の米山からの縦パスをヨンセンが頭でスペースに落とすと本田がこれを拾いにいくが、追い付く前にボールがラインを割ってしまう。ここまでは互いの攻守の切り替えが目立ち、試合の主導権の奪い合いが続いているが、決定的な場面はどちらもほとんど無く、未だ譲らずといった感じで進んでいる。
23分、右深くで相手ボールを奪った金からのロングボールを杉本がワンタッチでスペースへ落として抜け出そうとしたが、ここは東京・今野に先にボールを拾われてしまう。
 
 
25分、左深くで本田がプレッシャーを掛ける東京DFをかわして、左足でゴール前へとクロスを入れるが、ボールは東京GKの正面。
26分、右に上がる大森がゴール前へと早めに入れたボールをヨンセンが頭で合わせるが、ポスト左へ流れてしまう。大きな屋根の覆うスタンドとは逆にピッチ上は強い日差しが差し込み、選手達は思った以上に体力を奪われているようで、この時間帯は動きのテンポが緩い。
28分、左からの東京のCK。梶山の入れたボールは楢崎がパンチングで弾き出す。
 
 
30分、中央からヨンセンがドリブルで勝負を仕掛けるがエリアに入り込んだところで、後ろから寄せた東京・藤山にボールを奪われてしまう。  
〜前半終了
31分、右に流れながらボールをキープした杉本が左足で中へと入れたボールをヨンセンが合わせようとするが、東京DFの厳しい寄せに倒されてしまう。  
 
 

 

 

32分、エリア内へのスルーパスに走り込んだヨンセンが左足からのシュートをダイレクトで東京ゴールに沈める見事な先制点を叩き出す。
34分、右に上がる東京・徳永がゴール前へと入れてくるが、このボールは走り込んだ山口がきっちりと阻止する。
35分、自陣深く右寄りの位置での東京のFK。これをルーカスが直接狙って蹴ってくるが、右足から繰り出されたボールは抑えが効かず、ゴールを大きく越えて行く。
36分、右に開いていた杉本からのクロスに、ニアで藤田、中央でヨンセンが頭から飛び込むが、ボールは僅かに先を抜けてしまう。
【得点】
32分 ヨンセン(名古屋)
 
39分、中央でヨンセン、金と繋いだパスを抜け出していった本田が受けて、そのままシュートを左足から狙うが、飛び込んできた東京GKに阻まれてしまう。
42分、中央から斜めに走りこむ藤田目掛けて本田からスルーパスが出るが、これは相手DFに読まれてしまい、カットされてしまう。
44分、中央で競り合ってこぼれたセカンドボールを本田が拾うと、縦にドリブルを仕掛けるが、後ろから追いかけてくる選手にボールを抑えられ、倒されてしまう。
 
 
ロスタイム1、東京・ワンチョペへのボールをカットした吉田が縦に送ると、ヨンセンが落としたところを杉本が狙うが、これは相手DFが体を先に入れてしまう。そして、ここで審判の笛が鳴り、前半の終了が告げられる。
互いに譲ることなく、序盤は拮抗した状況が続いたが、徐々にボールを支配し始め、ヨンセンのゴールが生まれた。後半もこのペースを守って、巻き返しを狙う東京の攻撃をしっかりと抑えることが重要だろう。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は左の名古屋のボールで試合再開。
1分、東京・リチェーリとのパス交換で左から東京・鈴木入り込んでこようとしたが、山口と大森でしっかりと挟み込み、ボールを奪う。
2分、相手陣内左深くで、浮き球に競り勝った阿部が縦に落としたボールを受けた杉本が前を向こうとするが、ここはオフサイドに。
3分、右に下がってボールを受けた東京・石川が縦のスペースにパスを送ってルーカスを走らそうとするが、これは米山が簡単にカット。
【交代:45分・東】
ワンチョペ石川
 
5分、右スペースへのパスを杉本が相手DFと競り合うが、ここは倒されボール奪われてしまう。
6分、エリア左からのリチェーリのパスを受けたルーカスが振り向きざまにシュートをニアサイドに狙ってくるが、楢崎がまたしてもこれに反応、ボールを弾き出して、ゴールを守る。
 
 
8分、中央に入ってきた東京・石川が縦パスを落とすと、これに走り込んだルーカスが右足でコントロールしたシュートを放つが、ポスト右へ外れる。
10分、自陣からのロングボールをヨンセンが相手選手と競り合うが、流れたところをカットされ、前へと持ち上がることは出来なかった。
12分、左に上がってきた、鈴木の中央へのクロスは体を先に入れた吉田が弾き出す。
 
 
14分、右タッチ際でリチェーリが粘りを見せるが、大森・山口が厳しく寄せて、ボールを奪い取る。  
〜後半30分
16分、相手DFの裏へのボールに抜け出した杉本がGKと1対1になるが、僅かにGKの方が早く、ボールをカットされてしまう。
17分、右からのCKのチャンス。本田の入れたボールにニアへ吉田が飛び込むが、その目の前でDFがカットしてしまう。
 
 
19分、DFの裏へのパスに中央から杉本が飛び出すが、これはオフサイドになってしまう。
20分、中央のルーカスが頭で縦パスをDFの裏へと落として、代わったばかりの東京・赤嶺を走らせてくるが、これは完全にオフサイド。
22分、中央を藤田が金に預けて縦に抜け出そうとしたが、これはパスを読まれカットされてしまう。
【交代:63分・東】
福西赤嶺
 
24分、大森からのロングボールを相手陣内右深くで杉本がDFと競り合いながらもボールを拾おうとするが、相手へのファウルを取られてしまう。
26分、藤田が右寄りの位置で金からボールをもらうと、右から走り込む杉本を狙ってスルーパスを蹴り入れるが、相手DFに阻まれ、杉本は抜け出すことが出来ず。
27分、左からリチェーリが強引なドリブルを見せてくるが、大森が体をコースに入れ、相手のミスを誘ってファウルを貰う。
 
【交代:73分・名】
杉本片山
【交代:74分・東】
リチェーリ栗澤
【交代:75分・名】
竹内
〜試合終了
31分、自陣入ってすぐ右での東京のFK。梶山が長いボールを放り込んでくるが、楢崎が落ち着いてこれをキャッチ。
32分、山口が中央での浮き球をダイレクトでDFの裏へと蹴りだし、片山を走らせるが、ここはDFに阻まれてしまう。
33分、左からドリブルでヨンセンが攻め上がるが、エリア手前で中央に走り込む選手を待とうとしたところで、寄せてきたDFにボールを奪われてしまう。
 
 
35分、右で東京・赤嶺のパスを受けた東京・石川が入り込んでくると、切り返して左足からシュートを狙ってくるが、これは楢崎の正面。
36分、左から縦に入ったパスを受けたルーカスと吉田が奪い合いを見せるが、逆から寄せた大森がしっかりと体を入れルーズになったボールを楢崎に拾わせる。
38分、左からのCKのチャンス。本田の左足からのボールを遠いサイドに上がっていた米山が狙うが、ボールが長すぎてしまう。
 
 
40分、右のスペースへと出たロングボールを拾ったヨンセンからのゴール前への速いクロスに中央で片山が飛び込むが、ボールはその先を抜けてしまい、追加点は奪えなかった。  
42分、自陣中程右寄りでの東京のFK。これを栗澤がゴール前を狙って蹴り入れてくるが、吉田が中央で跳ね返す。
44分、右の徳永からのボールがゴール前でルーズになるが、上がっていた今野が触る前にDFが大きく蹴り出す。
【交代:86分・名】
藤田吉村
 
ロスタイム1、ゴール前でのルーズボールを拾った東京・赤嶺のシュートは力無く、楢崎がしっかりと抑える。
ロスタイム2、自陣での東京のボールをクリアしたところを拾った片山がそのまま持ち上がると、右足からのシュートをゴール左隅を狙って蹴るが、GKの指先を抜けたボールは左のポストに嫌われ、追加点とはならなかった。
ロスタイム3、左からの東京のCK。鈴木の入れたボールは中央できっちりと跳ね返す。
そして、最後楢崎がGKでボールを大きく相手陣内へと蹴り出したところで主審の手が上がり、試合終了が告げられる。
後半は地元サポーターの勢いを味方に付けた東京が分厚い攻撃を見せてきたが、名古屋の選手達は最後まで集中力を欠かすことなく落ち着いたプレイを見せてこれをはね除け、前半のヨンセンの挙げたゴールをしっかりと守りきる完封劇を見せて試合に勝利した。今日の勝ち点3は、自分達のプレイの自信を一際深める大きな大きな価値あるものと言えるだろう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。