2007 Jリーグ ヤマザキナビスコカップ 予選リーグ 第6節
 午後6時30分、徐々に赤みを増す空とは裏腹に、ここ東北電力ビッグスワンスタジアムは、明るい照明が緑鮮やかなピッチでアップを行っている選手達の影の濃さを強める。水曜の夜の開催と言うことで、キックオフ30分前のスタンドは残念ながら空席が目立つものの、ホームサポーターの陣取るスタンドだけは熱気が溢れ始めている。順位こそ3位だが、新潟にとっては今日の名古屋との試合で勝ち点3を得ることで、他の2チームの結果次第では予選を勝ち上がれるという事もあり、相当に力が入っていることが伺える。
 その一方で既に予選敗退が決まってしまった我らが名古屋グランパスエイトは、かえって肩の力が抜けたのか、誰もがリラックスした雰囲気の中でアップを続けている。しかし、フェルフォーセン監督としては、ちゃんと結果を出したいという気持ちは強く、GKには楢崎を、DF陣も大森・米山を先発メンバーに入れて試合に臨む。
また、ここ2試合ベンチを温めていた中村や、リーグ戦で徐々に出場時間を増やし始め、その存在感を知らしめ始めた須藤や竹内、片山等も先発させてきた。彼らも、監督の期待をしっかりと受け止めているようで、他の選手と比べると気合いが違うのが見て取れる。ナビスコカップは今日で最終戦となってしまうが、この後に続くリーグ戦でもレギュラー争いを続けるために、彼らの頑張りが今日は重要になってくると思って間違いないだろう。
 おおよそ15分と、短い時間の中でウォーミングアップを終えた選手達は、最後、ビッグスワンの芝生の感触を名残惜しそうに確かめた後、納得した様子で遠く名古屋から応援に訪れているサポーターへ挨拶を交わし、ゆっくりとした足取りでピッチを後にする。アップが始まる前まではリラックスした表情を見せていた選手達だったが、ロッカールームへと引き上げるその表情は準備万端の様子だ。
〜前半15分
水曜の夜とは思えないほど、新潟のサポーターが詰まったホームのスタンドから応援歌が響き渡る中へ両チームの選手が審判団に引き連れられて入場を果たすと、それまで静かだったスタジアム全体が賑やさを一気に増す。
左エンドのホーム・新潟に対し、右から左へと攻め上がる名古屋。そして前半は、新潟のキックオフで試合が始まる。
今日の先発メンバーは、GKはキャプテン楢崎、DFは大森・米山・竹内の3バック、MFは中央下がり目に吉村、右に中村、左は渡邊、トップ下には須藤と小川、FWは巻と片山、3-5-2の布陣で臨む。
 
 
 
1分、右に抜け出してきた新潟・矢野のマイナスのゴール前への折返しは、大森がカット、すぐさま縦にクリア。
2分、右から新潟・坂本がDFの裏へと抜け出しを狙う新潟・深井にパスを入れてこようとするが、これは米山が頭で弾き返す。
5分、左から渡邊と新潟・坂本が競り合ってこぼれたボールを小川が持ち出すと、前に走る片山にパスを通して、自らは更に縦に抜ける。しかし、片山から出たパスはDFにカットされてしまう。
 
 
6分、左からのCKのチャンス。吉村の入れたボールは遠いサイドの須藤が触るだけだった。
8分、中央でパスを受けた新潟・矢野がワンタッチで裏へと深井を走らそうとパスを出してくるが、ここでも大森が読みの鋭さを見せてボールを奪う。
10分、中央で新潟・本間がパスを受けて前を見ると、右前方のスペースへと長いボールを入れてくるが、これには新潟の選手は誰も反応出来ず。
 
 
12分、中央で吉村のパスを受けた片山がフェイントで寄せてきた選手をかわすと、縦のスペースへとパスを出して巻を走らせようとしたが、ボールが長すぎてしまう。
14分、中央の新潟・マルシオから出た裏へのボールに左から新潟・松下が抜け出そうとしてくるが、大森がしっかりとこれをマークし、チャンスを作らせなかった。
 
〜前半30分
16分、自陣左深くで新潟にFKを与える。ゴールに向かって蹴ると見せかけて中央へ流し込んでくるが、ここは集中力を切らすことなくボールにしっかりと寄せて、ゴールへのコースを阻み、シュートは許さなかった。
17分、エリア内やや右でパスを受けた新潟・矢野に反転しながらの右足からのシュートを許すが、ボールは左のポストを掠めてゴールラインを割る。
 
 
19分、自陣中央で相手ボールを奪った須藤が蹴ったボールをカットされると、左からエリア内へと矢野が持ち込んでくるが、ここは須藤が厳しくプレッシャーをかけてボールを奪い返す。
21分、中央での浮き球を矢野が落としたところを拾われると、右から裏へと抜け出してきた深井にパスを通され、右足からのシュートを許すが、ここは楢崎が右手一本でこのボールを止めて、ゴールを守る好セーブを見せる。
 
 
23分、中央を自陣からのロングボールに抜け出す片山だったが、これはオフサイドに。序盤からホームサポーターの大声援を受けた新潟の攻勢が続いていたが、大森・米山、そして楢崎の落ち着いたプレイもあり、ここまで新潟にゴールを割らせることなく試合を進め、次第に自分達のリズムを掴み始めている名古屋。
27分、中央からの右サイドへの長いボールを上がっていた新潟・坂本が頭で中へ落とそうとしてくるが、ボールは楢崎が前に出て抑える。
28分、左で小川からの縦パスに片山が抜け出そうとするが、追走してきたDFにボールをタッチの外へとカットされてしまう。
 
 
29分、相手陣内右中程でこぼれ球を拾った中村がそのまま前を向くと強烈なミドルシュートを放つが、これを新潟GKがファンブルするものの、ここへは誰も詰めることが出来なかった。  
〜前半終了
31分、右で須藤とのパス交換で中へ入る中村が縦へとパスを送るが、DFの伸ばした足に阻まれてしまう。
33分、吉村からの大きく出されたパスを左で受けた渡邊がゴール前で待つ巻に好クロスを入れると、これに滞空時間の長いジャンプでしっかりと合わせた巻がヘディングシュートを放つが、ボールは惜しくもクロスバーの上。
 
 
35分、左から入り込んできた新潟・松尾に中央からのミドルシュートを許すが、これは精度を欠き、ボールは大きくゴールを越える。
37分、左タッチ際で竹内の縦パスを渡邊がワンタッチで新潟DFの裏へと出し、巻を走らせるが、ボールに追い付く前に新潟・坂本に体を入れられてしまい、触らせて貰えず。
 
 
38分、左で大森のパスを受けた渡邊が縦へと上がる小川にパスを送るが、トラップが流れたところを寄せてきた選手に奪われてしまう。
40分、左の渡邊が入れたボールをカットされてこぼれたところを拾った小川が中央の巻に入れると、これを頭で逆サイドに落とす。このボールに右から中村が走り込んでDFをかわしゴール前へと入れていったが、誰も触る事が出来ず。
43分、中央でのこぼれ球をエリアのすぐ外で拾った新潟・マルシオにシュートを許すが、ここは体を張った守備を見せて跳ね返す。
 
 
44分、右から坂本が縦へと突破をしてこようとするが、小川がボールへとスライディングを見せて奪う。
ロスタイムは約1分と短く、両チーム共に大きな動きを見せることなく、前半は0-0で折り返す。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は左から攻め上がる名古屋のボールから試合再開。
1分、右からゴール前に詰める矢野にパスを通されるが、ここは厳しいプレッシャーを掛けてシュートミスを誘う。
2分、中央をフリーで抜け出してきた矢野がドリブルでエリア内へと侵入を試みてくるが、楢崎が落ち着いてボールを抑え、シュートを許さなかった。
3分、自陣中程左での新潟のFK。マルシオが蹴ったボールは直接ゴールに向かってくるが、楢崎が落ち着いてクロスバーの上へと弾き出す。
 
 
5分、右からの新潟のCK。マルシオのニアへのボールは大森がきっちりとカットする。
6分、右で中村が落としたボールを須藤がゴール前へと入れると、中央から巻が飛び込むが、僅かにボールに届かず。
8分、左で小川の落としたボールを拾った渡邊が速いクロスをゴール前へ蹴り入れるが、ここは新潟DFに簡単に弾かれてしまう。
 
 
10分、新潟陣内右中程でのFKのチャンス。片山が遠いサイドに詰めていた巻に合わせて蹴り入れると、落としたところを米山が狙うが前を向いてシュートを打つことは出来なかった。
13分、右からパスを回してゴール前に入れてくるが、これは大森がカット。
14分、ゴールやや左でボールを持った新潟・寺川が、距離があったものの、遠目から左足で強烈なミドルを放ってくるが、このシュートはポストに当たって跳ね返る。
 
〜後半30分
16分、中央でこぼれ球を拾った吉村がそのまま勝負を仕掛けると、右足からシュートを放つが、惜しくもポストの左。
18分、右からゴール前へと入ったボールに合わせようとした新潟・矢野を大森が倒したとして、PKを与えてしまう。この判定にはフェルフォーセン監督が猛抗議を主審にするも、判定が覆ることは無かった。
 
 
21分、このPKを新潟・マルシオがタイミングを外す動きでゴール左に蹴ってくるが、楢崎が冷静にこれを読んで止め、このピンチを救って新潟に得点を許さなかった。
22分、エリア内右で新潟・マルシオにシュートを許すが、ここでも楢崎が神懸かりとも言えるほどの鋭い反応を見せてシュートを止める。
 
 
25分、自陣から小川がボールを奪うと、一気にカウンターへと出る。最後左でパスを受けた橋本が切り返しでDFをかわして放った右足からのシュートは、ポストの僅かに右に流れてしまい、新潟のゴールネットを揺らすことは出来なかった。 【交代:68分・名】
橋本
【交代:68分・新】
深井田中
28分、右からの新潟のCK。マルシオの蹴ったボールを遠いサイドの新潟・永田が狙ってくるが、ここは米山が早い反応の見せて、ボールをクリア。
29分、山口が左へ展開したボールを渡邊がゴール前へと入れると、中央で片山が飛び込むが頭には届かず。
【交代:72分・名】
須藤山口
【交代:75分・新】
寺川鈴木
〜試合終了
31分、左の渡邊からのボールを右から詰めた中村が頭で競り勝って中へと落としたが、ここは相手DFの寄せが早く、先にカットされてしまった。  
33分、左で本田のパスを受けた橋本がワンタッチで中へと落としたボールを本田が受けて前を向こうとしたが、ここは厳しいDFに阻まれ、ボールを失ってしまう。
34分、中央に入り込んできた本田のパスを受けた橋本が右の中村へと送ると、これをDFを振り切って中へと入れていったが、逆サイドへは誰も走り込めず。

【交代:77分・名
片山本田

 
37分、右へと流れながらDFを引き付けてスペースを作った本田からのパスを左で橋本がもらいに行くが、反応が遅れたところを相手DFに奪われてしまう。
38分、中央でルーズボールを拾った新潟・河原が裏を狙って蹴り入れて来たボールは大森がしっかりとカット。
40分、新潟陣内右深くで本田がキープしているところを倒され、絶好の位置でFKを得る。これを本田が上がっていた米山に合わせて精度の高いボールを蹴るが、ボールを新潟のゴールへと飛ばすことは出来なかった。
【交代:80分・新
坂本河原
 
42分、速いリスタートからのボールを相手陣内左深くで受けた本田がゴール前を狙ったクロスを上げるが、これはゴールラインを直接割ってしまう。
43分、左から新潟・鈴木の入れてきた速いクロスは渡邊がクリア。
44分、中央でフリーでシュートを新潟・松下に許すが、ここは米山が体を張ってこれを阻止。
ロスタイム1、中央で縦のスルーパスに抜け出してきた新潟・矢野へは米山がしっかりとボールを奪う。
 
 

ロスタイム2、左からの新潟のCK。鈴木のゴールから逃げてゆこうとするボールは、詰めていた本田がカット。
ロスタイム3、楢崎からのゴールキックのボールを前線の橋本がトラップしてスペースへと落としてルーズになったところで審判の手が上がり、笛の音がざわめくスタジアム内に高らかに鳴り響き、試合終了が告げられる。

後半も地元サポーターの猛烈な後押しを受けた新潟の攻勢が続く試合内容だったが、GK楢崎の正に神懸かり的なPK阻止と好セーブの連発で、最後まで名古屋の選手は集中力が途切れることはなかった。終盤の怒濤の新潟の攻撃も、米山や大森が落ち着いたプレイを見せて、他の選手達を引っ張り、全員がしっかりと守りきった。そして最後まで新潟に得点を許すことなく、価値ある勝ち点1を得ることが出来た。
最後まで熱い声援をありがとうございました。