2007 Jリーグ ディビジョン1:第12節
 午後1時30分、両チームサポーターの大声援がスタジアムにこだまして騒然とする中で名古屋の選手は黙々とした表情でボールを扱っている。しかし、前節の横浜戦で見せたプレイで芽生えた自信がしっかりと顔を覗かせ、誰にも力強さが漲っている。我らが名古屋グランパスエイトは、浦和レッズを豊田スタジアムに迎え、第12節を戦う。
 昨年、名古屋は浦和相手に1勝1分けと負け無しだが、浦和は名古屋に苦戦したことを除けば、固い守備と選手個々の高い能力をふんだんに発揮し、リーグ覇者となった実力は侮ることは出来ない。今日は守備の要・闘莉王を欠くものの、名古屋という“鬼門”を突き崩すために、そして連戦続きで上がらないコンディションを取り戻そうと、序盤から激しく攻め立ててくることが予想できる。
 浦和とは対照的に、公式戦を4連敗したものの、徐々にコンディションを開幕当初の状態へと戻し始めた名古屋。前線からの激しいプレッシャーから、ボールを奪って一気に攻撃へと攻め上がる形が出来るようになり、FWヨンセンの体の切れが良くなると、それに呼応するかのように杉本もそのスピードに磨きが掛かり、前節の横浜で、勝利を手繰り寄せるゴールを生んだ。
 代表戦で驚愕のFKを決めた本田も杉本同様、切れ味が冴え始めている。本人はまだまだ不満のようだが、得意の左足は横浜戦でも健在だった。今日も、昨年、リーグ最強と言われた浦和の守備を切り裂く、鋭いパスをドンドン出して、攻撃のテンポ作りの大役を果たして欲しいところだ。
 1時45分、ますます賑やかさを増す豊田スタジアム。大屋根に覆われたスタジアムのピッチの上で、念入りなアップを行い、最後の仕上げとして、シュートやドリブルで思い思いにボールの感触を確かめた選手達は、満足げな表情を見せながら、ゆったりとした足取りでロッカーへと向かう。
〜前半15分
浦和サポーターの打ち振る応援旗と名古屋サポーターの広げる赤と黄色の装飾が、これから始まる熱戦を盛り立てる。
右エンドのアウェイ・浦和に対し、名古屋は左から右へと攻め上がる前半。試合は浦和のキックオフでスタート。
今日の先発メンバーは、GKは、名古屋の守護神・キャプテンの楢崎、DFは右から大森・米山・吉田・阿部の4バック。中盤は、右から金・藤田・山口・本田、FWはヨンセンと杉本の11人。横浜戦同様4-4-2の布陣で臨む。
 
 
 
1分、左からドリブルでカウンターを仕掛ける本田だったが、マークに付いてきた浦和・ポンテに潰される。
2分、左に抜け出していった本田が深い位置でマイナスに折り返すが、これは中央に入り込んでいったヨンセン、杉本へは届かず。
3分、藤田が相手ボールをカットして前に行こうとした、ここは浦和・小野の激しいタックルに倒される。
 
 
4分、右サイドを上がってきた浦和・山田のクロスに浦和・ワシントンがニアで飛び込んでくるが、ここは間一髪、先に飛び込んだ楢崎がボールを抑える。
5分、左に抜け出してきた浦和・相馬の鋭いクロスは米山が落ち着いてカット。
6分、相手ゴール前でのルーズボールを拾った杉本が中へと入り込んで右足でシュートを放つが、これは浦和GKに抑えられてしまう。
 
 
8分、左サイドの大森をかわして抜け出した浦和・相馬のマイナスのボールを受けた浦和・小野がシュートコースを探しに来るが、コントロールしたシュートはコースに飛び込んだ藤田が体で跳ね返す。
10分、左からのスローインのボールをエリアのすぐ外でワシントンがダイレクトでシュートを狙ってくるが、これは楢崎の守備範囲。
11分、左からの浦和のCK。浦和・ポンテが遠いサイドにいた浦和・ネネに狙って蹴ってくるが、名古屋のGKに。
 
 
13分、右でボールを細かくつつきながら回していた浦和・小野がゴール前へと狙ってクロスを入れてくるが、先に落下点に入った大森が頭で弾き出す。
14分、左からスピードに乗ったドリブルで浦和・相馬が上がってこようとしたが、金が厳しいスライディングを見せて、きっちりとボールをタッチの外へとクリア。
 
〜前半30分
16分、右深くでDF2人を背負いながらキープを見せた金からこぼれたボールを拾った大森が、ゴール前に入れてゆこうとしたが、ここは味方が中に入り込みすぎてしまい、誰も触ることが出来なかった。
17分、左エリアの外45度の位置で相馬のパスを受けた浦和・ポンテが迷わずシュートを狙ってくるが、楢崎が落ち着いて正面で抑える。立ち上がりから攻守の入れ替わりが激しく、両チーム陣内へとそれぞれが攻め上がる場面が見られ、主導権の奪い合いの様相が続くこの時間帯。しかし、浦和の攻撃を早い位置で抑え、チャンスを作らせることは無く、良い形で試合に入っていると言えるだろう。
 
 
19分、右の縦のスペースへと出た長いボールを杉本が拾いにいくが、ここは浦和・ネネにクリアされてしまう。
21分、右でボールを持って前が空いたところを本田が無回転のシュートを狙う。しかし、ここは浦和GKに弾かれてしまい、枠を捕らえることは出来ず。
22分、左からの浦和のCK。ポンテのゴール前を抜けてゆこうとするボールは、楢崎が片手で外へと弾き出す。
 
 
23分、自陣からのカウンター攻撃を見せると、中央を金がスピードに乗ったドリブルで上がるが、エリアの手前で急停止して、相手マークを外そうとしたところでボールが流れ、カットされてしまった。
24分、米山のサイドを変えたボールを左で受けた本田が、寄せてくる山口に預けると、これを山口が前線で待つヨンセンへと蹴り入れて行ったがクリアされてしまい、右からのCKに。
 
 
25分、右から本田の蹴り入れたボールはニアで弾かれてしまう。さらにこのこぼれ球を拾おうと藤田が競るが、頭で触ったボールはタッチを割ってしまう。
26分、右から阿部のマークをものともせずに浦和・ワシントンが持ち込んでくると、右足でゴール前に入れてくるが、これは大森がクリアする。
 
27分、左からの浦和のCK。ポンテのボールに遠いサイドで浦和・ネネにヘディングシュートを許してしまい、先制点を浦和に奪われてしまう。
しっかりとボールを繋いで、しかも高い個人技で名古屋陣内へと攻め立ててくる浦和に押し込まれる場面が目立つこの時間帯だが、ここは耐えて失点は逃れたい。
【得点】
27分 ネネ(浦和)
〜前半終了
31分、右からのポンテのパスを受けたワシントンがシュートを狙ってくるが、ここは楢崎がしっかりと体を入れてシュートを弾き出してゆき、好セーブを見せて味方を盛り上げる。
32分、右からの浦和のCK。ポンテの入れたボールは遠いサイドで大森が頭で弾き返す。
 
 
33分、左で阿部から本田、藤田とパスが中に繋がれてくると、最後上がってきた米山が左足でシュートを放つが、これは浦和GKの正面だった。  
 
 
 
35分、左にサイドを大きく変えたボールを拾った阿部が鋭いクロスを浦和のゴール前へと入れると、中央に走り込んだ金はこれに触れることが出来なかったが、遠いサイドに走り込んだヨンセンが、マークに付いていた浦和・ネネをかわして伸ばした長い右足でこれを合わせ、浦和のゴールネットを揺らす見事な得点を挙げて、試合を振り出しに戻す。
39分、自陣入ってすぐ左寄りでの浦和のFK。ポンテがロングボールを入れてくると、ワシントンがマークの吉田を引き連れて入り込んでくるが、負けることなくこれを吉田が抑え、シュートを許さなかった。
【得点】
35分 ヨンセン(名古屋)
 
40分、自陣左深くで大森のクリアしようとしたボールをポンテがカットすると、中へと流し込んでこようとするが、ここは米山がすかさず体を入れて、ボールを奪う。
41分、楢崎からのロングフィードをヨンセンが競り勝ってスペースに落とすと、これを杉本が狙うが、ここは浦和のDF2人にコースを阻まれ、抜け出すことは出来なかった。
 
 
43分、自陣中程右でワシントンを倒してしまい、浦和にFKを与えてしまう。ポンテが鋭いボールを入れてこようとしたが、大森が頭で落ち着いて跳ね返す。
44分、浦和陣内深く左でのスローインからのボールを繋ぐと、最後、左で金からのボールをもらった本田が浮き球をゴール前へと入れていったが、待っていたヨンセンには届かず。
ロスタイム1、右に上がっていた小野からのパスを貰った浦和・山田が中へと入り込んでくるが、山口、阿部と厳しくこれに食らい付いてゆき、ボールを奪ったところで前半終了の笛が鳴る。
前半のゴールで勢いを掴んだ浦和が押し込んできた時間帯をしっかりと耐えると、ヨンセンのゴールで試合を振り出しに戻し、これで自分達のテンポを保った名古屋。後半は、より一層激しい攻撃を浦和は仕掛けてくると思われるだけに、集中力を最後まで欠かさないことが、試合の勝敗を分けると言っても良いかもしれない。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、右から攻め上がる名古屋のボールで試合が再開。
1分、左でボールを持った浦和・小野が簡単にゴール前へと上がるワシントン目掛けて入れてくるが、これはオフサイド。
2分、小野が個人技で裏へと出したボールを、左を上がる浦和・阿部が拾って持ち込んでくる。ゴール前へとクロスを入れてくるが、米山が頭できっちりとカットする。
3分、自陣からの、大森のロングボールを俊足を飛ばして抜け出した杉本が拾うと、右足でクロスを入れるが、これは走り込んだヨンセンの頭上を抜けてしまう。
 
 
4分、左タッチ際でヨンセンの落としたボールを拾って抜け出そうとした杉本だったが、浦和・坪井の早い戻りにボールを奪われてしまう。
5分、相手陣内中程左寄りでの名古屋のCK。もちろんここは、蹴るのは本田だ。しかし、左足でゴール右を狙って蹴ったボールが、大きく伸びて枠を外れてしまう。
7分、右サイドを縦に上がってきた山田が中へとクロスを狙ってくるが、ここは山口が厳しくマークにゆき、ボールを入れさせなかった。
8分、吉田がクリアしようとしたボールをポンテに奪われると、エリア内でクロスを入れて中央に飛び込むワシントンへとパスを狙われるが、ここは判断良く飛び出した楢崎がジャンプでパスをキャッチ、このピンチを救う。
 
 
11分、左サイドで阿部に当てて本田が裏へと抜け出すが、出てきたボールは浦和DFが先に反応、迷わず飛び込んだ本田はファウルを取られてしまう。
12分、右の高い位置で相手ボールを奪った金が左に上がる本田に合わせ、右足でスルーパスを出そうとするが、これはコースを読まれカットされてしまう。
14分、左からの浦和のCK。ポンテの蹴ったボールは、誰も触ることなく大きく逆サイドへと抜ける。
 
〜後半30分
16分、中央でやや下がってパスを受けた浦和・ワシントンの落としたボールに寄せてきた浦和・阿部がシュートを右足で狙ってくるが、これは精度を欠き、クロスバーの上へ。
17分、自陣の金から出たロングパスに杉本が一気にスピードを上げて上がるが、これは浦和DFに阻まれ、ボールに触ることは出来なかった。
 
 
19分、浦和・小野のサイドを変えたボールを拾って上がってくる浦和・山田にファウルを与えてしまい、危険な位置でFKを与える。
20分、ポンテが入れてこようとしたボールは壁で弾くが、こぼれ球を拾われてゴール前で競り合いになるが、シュートは許さなかった。
 
 
22分、中央を金が持ち上がると、最後、大森がこれを貰ってゴール前で待つヨンセンに合わせてクロスボールを蹴り入れる。中央でDFと競り合いながらも頭でこれをシュートに行ったが、枠を捕らえることは出来なかった。
24分、右から縦パスに抜け出した杉本が、マークを振り切って右足からのシュートを放つが、ボールはポストの僅かに右へ抜けてしまう。
 
 
27分、相手陣内中程右でのFK。米山がゴール前へと長いボールを蹴ると、上がっていた本田が触るものの、こぼれたところをクリアされてしまう。
29分、左で縦に出たパスを受けた浦和・相馬が中を狙ってくるが、ここはしっかりと寄せた米山がボールをカットする。
 
〜試合終了
31分、右でパスを受けた大森が、そのままドリブルで果敢に仕掛けていったところで倒され、相手陣内右中程、45度の位置でFKのチャンスを得る。
32分、これを本田が直接狙って蹴るがゴール右隅に飛び込むかと思われたボールは、浦和GKに弾き出されてしまい、ゴールネットを揺らすことは出来なかった。
 
 
33分、右からのCKのチャンス。本田がゴールに向かうボールを入れるが、浦和の固い守備に跳ね返されてしまう。
35分、左から阿部の入れたクロスをヨンセンがスペースへと落とすが、ここは走り込んだ杉本へは届かず。
36分、ワシントンが裏へのボールに抜け出すと、楢崎が1対1に。しかし、エリア内へと入り込んできたところでワシントンがトラップしたボールを体を倒しながらもしっかりと抑え、失点を許さなかった。
 
【交代:81分・浦】
相馬岡野
39分、小野のパスに左から入り込んできたポンテにパスをゴール前のワシントンに繋がれると、エリア内で右へと流れながらも右足からのシュートを許してしまい、ついに浦和に逆転されてしまう。 【得点】
84分 ワシントン(浦和)
41分、右に山口が叩いたボールを大森がゴール前へと入れ、ヨンセンがディングシュートを打つが、枠を捕らえることは出来なかった。 【交代:85分・名】
藤田片山
 
42分、パワープレイで前線に上がっていた吉田がエリアのすぐ外で倒され、FKを得る。
43分、ゴールまで20mとない、絶好の位置でのFKのチャンスだったが、本田の蹴ったボールは浦和の壁の選手に阻まれてしまう。
 
ロスタイム1、右から持ち上がってきた浦和・長谷部のスルーパスに浦和・岡野が抜け出してくるが、これはオフサイドに。 【交代:89分・浦】
ポンテ長谷部
 
ロスタイム2、左サイドで粘った片山がゴール前へとクロスを入れるが、待ち受けていたヨンセンはしっかりとマークが付けられ、ボールを前へと飛ばすことは出来なかった。そして、試合は浦和の勝利で終了を迎えてしまい、名古屋は悔しい敗戦を喫してしまう。
前半からハイテンションで試合を進め、速いペースで試合を飛ばしてきたこともあって、運動量が少なくなり拮抗した状態が続く内容だった。最後は浦和の個人技の高さにやられてしまった試合だったと言えよう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。