2007 Jリーグ ディビジョン1:第7節
 午後3時25分、時折細かな雨粒が落ち始める中、名古屋の選手達が軽快な足取りでピッチへと姿を現すと、スタジアムに明るい雰囲気が満ち始める。4連勝後、勝ち星から遠ざかってしまっているチームを元気付けるには、やはりサポーターの熱い声援が最高といえるだろう。

 横一列になってスタンドへと大きく手を振り終えた選手達はリラックスした表情から険しい表情へとスイッチを切り替えて、全員でボールを使ったメニューを始める。そして、控えの選手達と分かれると、気合いの入ったボール回しを行う。チーム最年長の藤田の、良く通る大きな声が響き渡り、ピッチ内で体を動かす選手達もこれを受けて、気持ちを徐々に徐々に高めるのが手に取るように分かる。
 シリアでのU-22の試合を終えて、昨夜、日本に戻りチームにすぐさま合流した本田も疲れた様子もなく、元気一杯にボールを蹴っている。代表戦ではしっかりとゴールを決めて結果を出したこともあり、正に“乗っている”という言葉が彼にはピッタリのはず。前節の大宮戦で不在だった分を取り返す活躍を今日は見せて貰おう。
そして、今日は是非とも良いプレイを見せて欲しいのが米山だろう。指宿キャンプでテスト生として参加し、フェルフォーセン監督の目にしっかりと止まり、入団を果たすと、開幕戦でのスピラールの怪我の穴をしっかりと埋め、勝利に貢献する活躍を見せながらも、翌試合で足首を負傷するという不運に見舞われてしまい、ようやく今日の試合から改めて先発メンバーとしてチームに戻ってきた。ビルドアップからの切れ味鋭い、的確なボールをドンドン繰り出し、チームが勢いを取り戻すよう、そして、勝利へと向かって欲しい。

午後3時45分、しっかりと体を解し、気合いを体に蓄積し終えた選手達は、納得した表情を見せながらピッチを後にしていった。
キックオフ直前3月度月間ランクル賞の表彰が行われ、杉本選手が受賞しました。
〜前半15分
上空の雲が、サポーターの歌い上げる応援歌に根負けしたように無くなり始め、明るさが戻ってくる中へ、両チームの選手がしっかりとした足取りで入場を果たす。
右エンドのアウェイ・神戸に対し、前半は右にエンドを取る名古屋。前半はその名古屋のボールで試合がスタートする。
今日の先発は、GK櫛野、DFは大森・米山・増川の3人。MFは、右に中村、左は本田、中央ボランチの位置に藤田、トップ下の攻撃的な位置に山口と金。FWはヨンセン・杉本の2人、3-5-2の布陣だ。
 
 
1分、右のタッチ際でこぼれ球を拾った山口が、縦に抜けるヨンセンに合わせてパスを出そうとするが、これはDFに止められてしまう。
2分、相手陣内深く右でのFKのチャンス。本田のゴール前に入れたボールは相手DFがクリア。これがボールが枠に飛ぶが、これは相手GKが弾いて外へ出してしまう。
3分、自陣中央で競り合いでこぼれたボールを神戸・近藤がミドルシュートに来るが、ボールは櫛野の上を大きく越えて、クロスバーの上を抜ける。
 
 
5分、右から中村の入れたボールをヨンセンが落としたところに山口が詰めるが、触る前に相手DFが先に寄せ、カットしてしまう。
7分、左から本田の入れたロングスローのボールをヨンセンがワンタッチでエリア内へと落とすが、これは誰も詰めることが出来ず。
8分、右から中村が縦に走る金に合わせて、DFの間を抜くパスを出すが、これは金が追い付く前に神戸GKが抑えてしまう。
 
 
9分、大森の裏へとこぼれたボールを神戸・大久保に拾われると、左からシュートを打たれるが、コースに走り込んだ米山がこのボールをしっかりとカット。
10分、自陣中程右寄りの位置での神戸のFK。神戸・朴が右足で蹴ってくるが、芝に滑ってボールを二度蹴るというファウルを犯す。
12分、左から神戸・大久保のパスを受けた神戸・近藤が、上がってきた神戸・内山とのパス交換を見せようとするが、これがミスパスとなり、タッチを割る。
 
 
14分、相手陣内すぐ右でのFK。中村がゴールに向かって蹴っていったボールは、DFに頭で弾き返されてしまう。
15分、自陣中程左での神戸のFKの場面は、中を狙おうと短く出したところを藤田が読んでカットする。
 
〜前半30分
16分、右で粘ってボールを自分のものにした山口が、浮き球をエリア内にいたヨンセンの裏へと狙って蹴り入れるが、神戸GKが前に出てこれを抑えてしまう。
17分、自陣右寄り中程での神戸のFK。神戸・田中のボールを遠いサイドの選手が折り返すと、神戸・河本がこのボールに抜け出して押し込んでこようとするが、これはオフサイド。ここまでは神戸の方がボールへの反応が良く、自陣へと攻め込んでくる相手を名古屋が受けて立つ、という形が続いている。
 
 
21分、左のスペースでパスを受けて中へと入り込んだ杉本が、DFを上手く外して右足で放ったシュートは右のポストに跳ね返されてしまう。更にこのボールに山口が飛び込んだが、タイミングが合わず、ボールは大きくバーを越えてしまう。  
 
23分、右でボールを持った中村が大きくサイドを変えるボールを蹴ると、左から走り込んできた金がこれを受けて、DFをかわしてヒールパスを出す。これを拾った山口が左足で上げたクロスは、ゴール前に何人か詰めていたものの、残念ながらボールがゴールラインを割ってしまった。
26分、増川の左足でのロングボールを、エリア内へと飛び込んだヨンセンが頭で合わせようとしたが、前に出た神戸GKにキャッチされてしまう。
27分、中央でヨンセンの落としたボールを藤田だがダイレクトで右タッチ際を上がる杉本に向けてパスを送っていったが、これはラインを割ってしまう。
 
〜前半終了
31分、相手ゴール正面、エリアのすぐ外でボールを持って強引に行こうとした金が倒されたかのように見えたが、これはシミュレーションを逆に取られてしまう。
33分、左タッチ際で金のパスを受けた山口が縦に長いボールを蹴ると、本田がこれを追うが、追い付く前にボールはゴールラインを割ってしまう。
34分、中盤で相手パスをカットしたヨンセンが縦に送ると、杉本が良いタイミングで抜け出してゆき、右からゴール前へクロスを入れる。逆サイドにきっちりと走り込んできた本田がこれに合わせて入っていくが、その目の前で神戸DFが頭でボールをカットしてしまった。
 
 
37分、右で相手のクリアミスを拾った杉本がそのままドリブルで仕掛けるが、付いてきた神戸・エメルソンの執拗なマークにボールを離してしまう。
38分、左のスペースから入ったクロスボールがゴール前でこぼれたところを受けた、神戸・近藤のエリアの外からのシュートは、ジャンプした櫛野の上を越して、ゴールの上を抜ける。
 
 
 
 
40分、左サイドへと出たパスを金が受けると、そのまま持ち込んで左足でゴール前へと流し込む。そして、これに右からしっかりと走り込んできたヨンセンが右足でボールを押し込み、名古屋に待望の先制点が生まれる。 【得点】
40分 ヨンセン(名古屋)
 
 
 
41分、右の中村からのゴール前への低いクロスに、DFの間から飛び出した杉本のヘディングシュートが神戸のゴールネットに突き刺さり、見事な追加点が決まる。
44分、右で相手パスを山口がカット、縦に送ると杉本がオフサイドのタイミングを上手く外すが、タッチ際で反転する際に足を滑らせてしまい、これをチャンスに出来なかった。
ロスタイム1、右の中村からのロングパスに抜け出した杉本がゴールラインギリギリからのクロス。これをニアサイドで山口が頭で押し込もうしたが、ボールには触れることが出来なかった。
そして前半は、名古屋が2得点と言う最高の流れで試合を進めたまま、終了し後半へと向かう。
【得点】
41分 杉本(名古屋)
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は右にエンドを変えて左へと攻め込む名古屋。試合は左エンドの神戸のボールで再開。前半の2点で作った良い流れのまま、後半も試合の主導権をしっかりと握って進めていきたいところ。 【交代:45分・神】
遠藤レアンドロ
1分、右に山口のパスで抜け出した杉本の低いクロスは相手DFが足に当ててしまい、中央に入り込んだヨンセンは触れることが出来ず。
2分、ゴール正面でのこぼれ球を神戸・近藤がトラップして左足でシュートを狙ってくるが、右足を大森がしっかりと入れてシュートを阻止する。
 
 
4分、左で米山をかわした神戸・近藤の左足のクロスを、右で拾った神戸・北本が中へと入れてくるが、山口がこれを頭で上に弾くと、櫛野が落下点に入りこれを正面でキャッチ。
5分、左から抜け出した神戸・エメルソンの放ったシュートが櫛野の指を弾いてゴールネットを揺らしてしまうが、これはオフサイドの判定に救われる。
7分、中に流れながら金のヒールパスを受けた中村が右にポジションを取っていた山口にパスを送ると、これをゴール前へと早めに入れてゆこうとしたが、ボールが足に付かず、ゴールラインを割ってしまう。
 
 
9分、中央でパスを受けた神戸・近藤の落としたボールを右で受けた神戸・大久保のシュートは枠の外へ。
10分、右からボールを持った大森がドリブルで一気に上がると、左から走ってきたヨンセンへとパスを送る。更にこれを左から上がってくる本田の前のスペースへとパスを狙うが、大きく流れてゴールラインを割ってしまった。
12分、相手ペナルティエリアすぐ右の外側の位置でFKを得る。これを本田が直接狙って蹴ったボールは、クロスバーを叩いてしまい追加点は決まらず。
 
 
13分、相手陣内中程左寄りタッチ際でのFK。今度も本田が先ほどとはスピードを変えたゴール前で落ちるボールを蹴ると、増川・ヨンセンと飛び込んだが、触ったボールは枠を捕らえることは出来なかった。  
16分、神戸の早いリスタートからのボールが、左のスペースへと出たところに飛び出した近藤がゴール前にグラウンダーのパスを入れてくるが、これはオフサイド。 【交代:59分・神】
エメルソン茂木
〜後半30分
18分、中央でパスを交換した神戸が、最後、大久保によるDFの裏へとラストパスを入れてくるが、これは誰も反応せず。
19分、左でボールを持った金がエリア内へと強引に持ち込むが、相手との奪い合いで芝生に足を取られた隙に、相手にボールを持ち去られてしまう。
 
 
22分、左でパスを受けた本田がゴール前へとクロスボールを入れると、中央でヨンセンが競るが、これは神戸DFに体を前に入れられてしまい、触ることが出来なかった。
23分、自陣で増川が大久保にボールを奪われると、エリア内へと持ち込まれシュートを打たれるが、このボールを櫛野がしっかりと抑える見事なセービングを見せて、ゴールを死守する。
 
 
28分、左にポジションを取っていた中村がパスを受けて前を向こうとしたが、ここは神戸の選手の厳しいプレッシャーにボールをチャンスへと結びつけることが出来なかった。
30分、右からの神戸のCK。神戸・朴の右からのボールは、中でクリアして、再び右からのCKに。遠いサイドでこぼれたところを神戸・河本が頭で押し込んでくるが、ボールは櫛野が正面で抑える。
【交代:70分・神】
栗原石櫃
〜試合終了
32分、左タッチ際でボールをキープした本田が、ヒールで藤田に送ると、これを中村へ通し、更に中央の山口へと繋がる。最後、山口がエリアの外から右足でシュートを狙っていったが、これはポストの右に外れてしまう。
33分、中央を走るヨンセンからのスルーパスは相手に当たってしまうが、このこぼれ球を中央で拾った藤田が左足でシュート。しかし、ボールはコースに入ったDFに当たってしまい、枠までは飛んでいかなかった。
 
 
35分、神戸・レアンドロが下がってボールを持つと、前線へと大きく出したボールを左で受けた神戸・石櫃。エリアのすぐ外から鋭く振り抜いてシュートを狙ってきたが、ここは櫛野がしっかりと反応、このボールを抑える。
36分、右から抜け出していった杉本がそのまま持ち込み右足で角度のないところからシュートを放つが、これは相手GKの正面に飛んでしまう。
 
39分、早速、津田が中央で金から出てきた裏へのボールに抜け出すと、シュート態勢に持っていこうとしたが、その前に笛が鳴りオフサイドに。 【交代:83分・名】
杉本津田
 
40分、自陣中程やや右での神戸のFK。神戸・田中のボールにゴール前に入り込んできた神戸・茂木がヘディングシュートにくるが、ボールは大きくバーを越える。
42分、神戸・近藤の裏へ落としたボールを神戸・大久保が狙い走り込んで来るが、躊躇することなくエリアを飛び出してきた櫛野が右足でタッチの外へとボールを蹴り出し、未然にピンチを逃れる。
 
44分、左からのCK。中村が小さく出したところを本田が時間を掛けてキープ、時間を稼ぐ。 【交代:89分・名】
須藤
 
ロスタイム1、再び同じような場面で、今度は本田を倒した神戸・大久保が2枚目のイエローカードを貰って退場し、神戸は10人となる。
ロスタイム2、裏へのヨンセンの入れたボールに本田がエリア内へと入り込んで、ヒールで付いてきた津田へとパスを送ろうとしたが、これは足下にボールが収まらず。
そして、試合は、前半にヨンセン・杉本のFWコンビが奪った2点をガッチリと守りきって、最後まで試合の主導権を神戸に譲ることはなく、終了の笛を聞くことができた。
連敗で苦しんでいただけに、今日の試合は失いかけていた自信を取り戻す事が出来た、正に納得のいく内容を見せることが出来た試合と言えるだろう。
最後まで応援ありがとうございました。