2007 Jリーグ ヤマザキナビスコカップ 予選リーグ 第4節
 午後6時を回る頃になると、それまで降っていた雨の粒が大きくなり、カシマスタジアムの屋根に当たって大きな音が聞こえるほどになる。6時10分過ぎから選手達は、屋内のウォームアップエリアで大きな声を掛け合いながら、体を解し始める。誰もが今日こそはこのスタジアムで勝利を飾りたいという気持ちが心の中にあるのか、気合いが満ちあふれている。

 その中でも、名古屋移籍後、初の公式戦、それも古巣・鹿島が相手と言うことで、早くも気合い十分なのが金古選手だ。出場機会を求めて、鹿島を離れ、神戸、福岡と渡り歩き、名古屋につい先日移籍してきた彼にとって、まさかの初戦が鹿島と言うのでは、興奮を抑えろと言うのが無理なことだろう。
 そして、もう1人、気合いが入っているのが本田だ。先日の広島戦では、代表の駒野とのマッチアップながら、失点のきっかけとなるボールを彼に簡単に入れさせてしまったことは、相当に反省しているようで、昨日、一昨日の練習でもこれまで以上に力の入ったプレイを見せていた。この試合後は、U-22のメンバーとしてすぐにシリアに向かう彼としては、この前の鬱憤を晴らすようなプレイを見せて、名古屋にカシマスタジアムでの勝利という置き土産をして旅立ちたいはずだ。

 6時25分、屋内からピッチへとアップの場所を移動すると、雨で濡れた芝生の感触を入念に確かめ始める選手達。先発2試合目となるGK長谷川も力一杯のセービングを見せている。吉田や、先輩の津田と共に、名古屋ユース出身の彼らの活躍も、勝利への大きな力になると信じたい。
 約15分ほど、水を含んだ芝生の上でシュート練習やトラップを行って、コンディションを整えた選手達は、早くも火照り始めた体を冷やさぬように、軽く名古屋のサポーターに手を振ると、駆け足でロッカーへと向かっていった。

〜前半15分
相変わらず降り続く鹿島のピッチに両チームの選手が入場すると、平日の夜にもかかわらず、生で試合を観戦しようと訪れたサポータの大きな声援の声がスタンドにこだまする。
左エンドの鹿島に対し、右エンドの、真新しい上下白のユニフォームの名古屋。そして、試合は名古屋のキックオフでスタートする。
今日の先発は、GK長谷川、DFは中央に吉田、右に竹内、左に金古の3バック、MFは、右に津田、左に阿部、中央下がり目に吉村、トップ下右は須藤、左は本田が入り、FWは玉田と杉本の俊足コンビ、という11人だ。
 
 
2分、右からワンツーで抜けてくる鹿島・柳沢を倒してFKを与えると、鹿島・中後が蹴ってくるが、ゴール前でこぼれたところを合わせたシュートはバーの上へ。
3分、中央でルーズボールを拾った津田が縦に入れて、杉本を走らせるが、ボールはDFがカット。
4分、左にこぼれてきたボールを拾った阿部が鋭いボールを入れると、中央で玉田が詰めるが、これは触れず。更にこぼれたところを本田がエリアの外からシュートを狙うが、これはバーを越えてしまう。
 
 
6分、右に抜け出していった鹿島・マルキーニョスの中へのマイナスのボールは、吉村がきっちりとカット。
7分、相手陣内中程やや左でのFKのチャンス。玉田が蹴ってこぼれたところを津田がシュートを打つが、相手に当たってCKに。
8分、右からの玉田のCKに遠いサイドの竹内が頭で合わせるが、DFにクリアされてしまう。
9分、右からのCKのチャンス。玉田のボールはニアで弾かれるが、これを本田が拾ってスペースに出したところを杉本が上手く抜け出し中へと入れる。前に残っていた竹内がこれを合わせようとしたが、僅かに足が届かず。
 
 
11分、左のスペースへのロングボールを拾った杉本が中へと入り込むと、右足からのシュートを狙うが、これはDFの足に阻まれてしまう。
13分、左から本田がドリブルで抜け出そうとしたが、足下への鹿島・ダニーロのスライディングに倒されてしまう。
14分、左に抜け出していった玉田がボールを奪われそうになるが、こぼれたところに詰めた阿部が右足から積極的に放ったシュートはGKの守備範囲。立ち上がりから積極性の見える名古屋がボールを持つ時間が長く、攻撃の場面も作るなど良い形で試合を進めている。
 
〜前半30分
17分、右にドリブルを仕掛けて上がってこようとした鹿島・マルキーニョスだったが、吉村が体を張ってきっちりと止める。
19分、右に抜け出してきた鹿島・内田のクロスに、ニアで鹿島・柳沢が合わせてヘディングシュートを狙ってくるが、ボールは大きくゴールを越える。
 
21分、左に抜け出した鹿島・柳沢のボールに、中央に走り込んだ鹿島・増田にシュートを許し、これが芝生でバウンドが変わり、ボールは長谷川の手をすり抜けてゴールネットを揺らしてしまう。 【得点】
21分 増田(鹿島)
 
24分、鹿島・ファボンが縦のスペースへと走る柳沢に合わせてロングボールを蹴ってくるが、ここは吉村がコースを読んで跳ね返す。
26分、左の杉にパスを出して中へと走る阿部にパスを送ろうと下が、これはDFの伸ばした足にカットされてしまう。
 
 
28分、左で須藤のパスを受けた杉本がドリブルで中へと入り込むと、縦に抜ける本田に送ろうとしたが、これはDFにカットされてしまう。  
29分、自陣ゴール前でのルーズボールを、鹿島・マルキーニョスに拾われると、右足からのシュートを決められてしまい、2点目を鹿島に奪われる苦しい展開に。
先制点を先に奪われてしまったことで、鹿島の選手に勢いを与えてしまい、それが2点目にも繋がってしまった。ここは早く気持ちを切り替えることが重要だ。そして、前半のうちに1点でも挙げて、試合を少しでも楽にして、進めてゆきたいところ。
【得点】
29分 マルキーニョス(鹿島)
〜前半終了
32分、右から須藤とのパス交換で津田が入り込んでいこうとしたが、鹿島の選手の速い寄せにパスをカットされてしまう。
34分、自陣から須藤の出したロングボールを杉本、玉田が抜け出して拾いにゆこうとしたが、DFにカットされてしまう。
35分、右からのCKのチャンス。玉田が鋭く曲がるボールを左足で蹴っていったが、ゴール前の鹿島DFに頭で大きく弾き出されてしまう。
 
 
38分、右からの鹿島のCK。鹿島・中後の右足からのゴール前でルーズになる。これに鹿島・青木が先に寄せて左足からシュートを打ってきたが、ボールは大きくゴールの上を抜ける。
40分、右の津田の縦のスペースへのパスを須藤が拾ってゴール前へと入れるが、これはDFがカット、右のCKに。
 
 
41分、玉田がゴールに向かうボールを入れたが、鹿島DFに簡単にクリアされてしまう。
42分、ゴール正面やや中程で鹿島にFKを与えると、これを早いリスタートでDFの裏を狙ったボールを入れてくるが、飛び出したマルキーニョスはオフサイド。
44分、左でパスを受けた阿部が、ゴール前へ走り込む須藤の足下を狙って鋭いパスを入れるが、上手く収まらず。
 
 
ロスタイム1、そして、前半は0-2と鹿島2点リードで終了。
名古屋としては、何とかこのビハインドをひっくり返して、ナビスコカップ初勝利を狙いたいところだ。後半は気持ちを入れ換えて臨みたい。
 
〜後半15分
エンドを左に変えた名古屋。後半はホーム・鹿島のボールで試合再開。
1分、左に抜け出した鹿島・ダニーロの左足からのクロスを、ゴール前で長谷川が弾いたボールが小さくなり、これを柳沢が拾ってシュートを強引に打ってくるが、ボールは大きく左へと抜けて、ゴールラインを越える。
3分、本田のスルーパスに抜け出した玉田だったが、中を狙ったボールはDFに弾かれてしまう。
 
 
4分、左からのCKのチャンス。ゴール前へと入れていったボールが中央でこぼれるが、上がっていた吉田の左足からのシュートは枠を捕らえることは出来ず、ゴールを越える。
5分、自陣深く左での鹿島のFK。中後の蹴ったボールを一旦はゴール前で弾くが、これを拾われると、中央からシュートを打たれそうになる。しかし、吉田が体を張ってゴールを守り、このピンチを凌ぐ。
 
 
7分、左からのCKのチャンス。しかし、玉田の蹴ったボールは遠いサイドの竹内の頭上を抜けてしまう。  
12分、右からのCKのチャンスだったが、玉田の蹴ったボールは難なく相手DFにクリアされてしまう。
14分、吉村が右で鹿島・マルキーニョスのボールを奪うと、タッチ際に張っていた玉田に当てて、更に前へと抜け出そうとしたが、パスが流れてしまい、相手に渡ってしまう。
【交代:55分・名】
竹内青山
阿部片山
〜後半30分
16分、相手DFの裏へのロングボールに杉本が良いタイミングで抜け出すが、エリアを飛び出した鹿島GKに先にボールに寄せられ、蹴り返されてしまう。
18分、相手陣内中央で玉田のスペースへ出したボールを、須藤が相手DFと奪い合いになるが、相手への足下へのファウルを取られてしまう。
 
 
21分、自陣左中程での鹿島のFK。鹿島・中後のゴールに向かって来るボールは長谷川が正面で抑える。 【交代:65分・名】
杉本
25分、左でルーズボールを金古が拾って縦に送ると、片山がトラップから更に縦のスペースへと出して、本田がこれに反応するが、伸ばした足が届く前に相手DFにカットされてしまう。 【交代:68分・鹿】
ダニーロ遠藤
 
27分、左で巻の落としたボールを片山が拾って持ち上がろうとしたがしたが、鹿島のDFにカットされてしまう。  
  【交代:75分・鹿】
柳沢興梠
 
 
33分、正面から縦へのボールに抜け出した巻が左足からのシュートを放つと、これがしっかりとゴールを捕らえ、名古屋は鹿島相手に1-2と1点差に詰め寄る。 【得点】
78分 巻(名古屋)
〜試合終了
35分、自陣深く左、エリアのすぐ外でのFKを鹿島に与えるが、鹿島・中後の蹴ったボールは壁の選手がしっかりと弾く。
37分、右から青山が前線で体を張る巻に当てるが、厳しいマークに思った場所へボールを落とすことが出来ない。
39分、津田のパスを中央で受けた本田が、寄せて来たDFをかわして、右足でシュートを放つが、ボールは抑えが効かずポストの右に流れてしまう。
 
 
40分、須藤のパスを津田が受けると、寄せてきたDFをかわして、縦のスペースへとパスを送って須藤を走らせるが、これは相手DFに読まれてしまい、受けることが出来なかった。
42分、左から中へと入り込んできた鹿島・遠藤のエリアの外からのシュートは、長谷川が正面で落ち着いて抑える。
43分、左に抜け出していった片山がマイナス気味にクロスを低い弾道で入れるが、これは誰も詰めることが出来ず。
 
 
44分、相手エリア内で浮き球を巻と津田が奪いにいくが、鹿島DFにタッチの外へとクリアされてしまう。  
ロスタイム1、須藤の縦パスに本田が左サイドを走るが、これはスライディングした足に届かず。
ロスタイム2、右タッチ際に出たボールを津田が玉田に預けるが、鹿島のDFに囲まれ、ボールを見失ってしまう。そして、ここで主審の吹く笛で試合終了が告げられ、名古屋は善戦しながらも巻の挙げた1点のみに終わり、鹿島に敗れてしまう結果となってしまう。
残念ながら、名古屋の鬼門・カシマスタジアムでの勝利はまたしてもお預けとなってしまった。最後まで声援ありがとうございました。
【交代:89分・鹿】
マルキーニョス田中