2007 Jリーグ ディビジョン1:第3節
 午後1時30分。サポーターの掲げる「12」のビッグフラッグを背に、選手達は力の入ったアップを行っている。しかし、どの選手も気負うことなく、落ち着いた表情でボールを扱っている。初先発となる竹内も余裕の様子だ。時折、藤田や本田から大きな声が漏れ、チームの雰囲気を明るくさせるなど、チーム状態が良いことが良く伝わってくる。

 2試合連続完封による勝利は、確実に選手達に自信を培わせているようだ。しかし、最後方でゴールマウスを守るという、最も重要な役割を担う楢崎だけは、険しい表情を見せながら、気合いタップリのボールを蹴り出している。良いコンディションの時だからこそ気を抜けないと言う、キャプテンとしての大きな自覚なのだろう。その一方で、2試合連続でゴールに直結する働きを続けている杉本は、時折、笑顔がこぼれ、良い意味で気持ち良くプレイが出来ている事が分かる。しかし、彼も今季は活躍以上に結果をしっかりと残したいはず。今日もピッチを所狭しと駆け回ってくれることだろう。

 そして、今日一番の期待は、なんと言ってもヨンセンだろう。昨年、チームが調子を取り戻す立役者となった彼だが、今季はここまでノーゴール。勿論、彼の存在があることで、他の選手がゴールを奪うチャンスが増えたことは間違い無いが、彼自身も今季の自分を盛り上げるためにも、是非ともゴールが欲しいところだ。
1時45分。納得した表情を見せながら、次々と選手達はロッカールームへと消えていった。

〜前半15分
日の当たらないところでは、やや肌寒いが、スタンドを埋め尽くす名古屋サポーターには春の日差しがしっかりと当たり暖かい。そして、その陽気に気持ちが高まったようで、選手達が入場を始める前から、力強い声援を送り続けてくれている。
前半は、左にエンドを取るホームの名古屋のキックオフでスタート。
先発メンバーは、GKは守護神・楢崎。DFは大森を真ん中に、右が初先発の竹内、左が増川の3バック。MFは藤田を中央に、やや左に金、右は山口、左サイドには本田を、右サイドには中村が位置し、FWはヨンセン・杉本2人。3-5-2の布陣で臨む。
 
 
2分、左のスペースへのボールをヨンセンが追うが、これは新潟・千代反田がクリアしてしまう。
3分、藤田のスペースへのボールに抜け出した杉本が前を狙うがこれはシュートに行けず、中へと入れる。これを藤田が切り返して左足でシュートに行ったが、ボールはポストの左へ。
4分、中央でヨンセンの落としたボールを藤田が落ち着いて右に送ると、杉本が中へと狙って蹴るが、寄せてきたDFに弾かれてしまう。
 
 
6分、自陣右タッチ際で新潟・坂本がパスを受けて前に抜けようとするが、ここは中村が厳しいDFを見せて阻止する。
7分、左から持ち込んだ本田が中央の山口のパスを通すと、これを右足でシュート。しかし、ボールは相手GKの正面。
8分、左の深い位置で新潟・矢野が切れ込んでくるが、寄せた藤田がボールを奪って縦に蹴りだす。
9分、右から新潟・深井が中へと入れてこようとしたが、ボールは増川がクリアする。右からの新潟のCKは中央に折り返してきたところをヨンセンが頭でクリア。
 
 
11分、右に流れるヨンセンからのパスを受けた本田が中へと入ると、縦にパスを送り、ペナルティエリア内へと走り込む中村へとパスを狙うが、これは背中に当たってしまい、こぼれ球をクリアされてしまう。
12分、相手陣内中程右寄りでのFKのチャンス。本田が左足で蹴り入れたボールが風に乗ってゴールへと向かうが、エリア内でのファウルで相手ボールに。
14分、左深くでボールを持つ新潟・坂本が中を窺うが、藤田がしっかりと寄せてこれを阻止。
 
〜前半30分
16分、自陣深く左での新潟のFK。マルシオが右足で直接狙ったボールは、大きくバーを越える。
17分、縦に入ったパスを新潟・矢野が落とすと、これを深井が拾って左に抜け出してくるが、ここは竹内が快足を飛ばしてボールに先に追い付くと、タッチの外へとクリアする。
19分、自陣中央やや左寄りの位置での新潟のFK。先ほど同様、新潟・マルシオが壁の間を抜くボールでゴールを狙ってくるが、楢崎が正面で落ち着いてキャッチ。
 
 
20分、右タッチ際でヨンセンがキープしたボールを藤田が受けると、大きく縦に蹴り出すが、前にいた山口はこれに反応できず。
22分、相手陣内入ってすぐの位置でパスを受けて前を向こうとした金だったが、厳しファウルに潰されてしまう。
24分、縦に自陣から蹴りだしたボールを新潟・深井が狙うが、体を入れた大森が頭でクリアする。
 
 
25分、右に藤田の出したボールを山口がDFをかわしてゴール前へと入れると、ニアの杉本が競るが、これは相手DFに押さえ込まれ、前に飛ばせず。
26分、自陣中程右の位置での新潟のFK。新潟・マルシオのボールは壁に当たって右からのCKに。マルシオのボールは中央の本田が頭でカットする。この時間帯は新潟の選手の動き出しが良く、名古屋にファウルが目立ち始めているだけに、少し試合を落ち着かせたいところ。
 
 
28分、左からエリア内へと入ってきた深井のサイドを変えたパスをマルシオが受けて中を狙ってくるが、本田がきっちりと体を寄せて、相手のファウルを誘ってマイボールとする。  
〜前半終了
 
31分、中央で新潟・シルビーニョの縦パスを受けた深井が前を向こうとするが、ここは大森が粘り強い守備を見せてボールを縦に蹴りだす。
32分、竹内の縦パスをヨンセンが前で頭で落としたところを杉本が狙うが、新潟DFが先にこれをカットしてしまう。
 
 
 
 
33分、右のスペースへのロングボールをギリギリのところで拾った杉本からのクロスを、エリア内中央で待ち構えていたヨンセンがヘディングシュートをゴール左隅に叩き込む見事な先制点を挙げる。
36分、自陣左深くにボールを持って入り込んできた深井だったが、竹内、中村がしぶとく寄せてボールを奪う。
38分、右を上がる竹内から縦パスが出ると、これを山口が拾って中を狙っていったが、ボールはコースに入ったDFに阻止されてしまった。
【得点】
33分 ヨンセン(名古屋)
 
39分、右のスペースへフリーで上がる中村の前にロングパスが出てくるが、これは追い付く前にゴールラインを割ってしまう。
40分、左をスルスルと上がってきた増川の折返しをゴール前で待っていたヨンセンが右足でシュートするが、ボールは左のポストに跳ね返されてしまい、惜しくも追加点は奪えなかった。
 
 
42分、自陣からのカウンターで左を上がる増川がそのまま入り込むと、中央に入る金にパスを送る。これをワンタッチでDFをかわしてGKの前に抜け出した金だったが、トラップが大きくなってしまい、GKに押さえられてしまう。
44分、新潟・シルビーニョが縦にスルーパスを狙うと、これに矢野・深井が飛び出そうとしてきたが、パスコースを読んだ竹内が大きくカットする。
 
 
ロスタイム1、ロングボールをヨンセンがスペースに落としたところで、杉本が抜け出すが、これはオフサイドに。そして、このプレイを最後に前半が終了。
途中、セカンドボールを狙う相手の出足に付き合う形で流れを新潟に握られそうになったが、ヨンセンの見事なゴールで試合の流れを掴むと、その後は自分達のペースを続けることが出来た。後半もこのペースで試合を進めながら、追加点を狙ってゆきたい。
 
〜後半15分
前半は、流れが新潟に傾き始めていたところでのヨンセンの、今シーズン初ゴールで勢いを取り戻した名古屋。後半も名古屋のペースで試合をしっかりと進めて、追加点を狙って欲しい。
エンド入れ替わり、後半は左の新潟のボールで試合が再開する。後半は風下となる名古屋。
1分、左で竹内の裏へのボールを拾った深井が持ち上がってくると、左足でクロスを入れてくるが、これは中央に待ち構えていた新潟の選手の頭上を抜けて、大きく反対に抜ける。
 
 
3分、左からこぼれ球を新潟・矢野が狙いに来るが、山口がこれにしっかりと体を入れてボールに触れさせず。
4分、左サイドをドリブルで持ち上がった本田のパスを、中で受けた金が切り返してシュートを右足から狙うが、これはDFにカットされてしまった。
5分、右で竹内からのロングボールを杉本が上手く落とすと、寄せていった中村が左足でシュートを果敢に打っていったが、惜しくも相手GKに正面で止められてしまう。
 
 
7分、右から新潟・内田が中へとクロスを入れてくるが、増川が落ち着いて縦に跳ね返す。
9分、自陣で新潟・矢野が縦に抜け出そうとするが、ここは増川が落ち着いて対応、ファウルを誘う。
10分、右から杉本がDFと競り合いながら縦に抜け出そうとするが、これは厳しいマークに遭い、倒されてしまう。
 
 
13分、増川の縦パスに上手くDFの前に抜け出した本田が左足でシュートを放つが、惜しくも僅かにクロスバーの上に。  
  【交代:59分・新】
田中鈴木
〜後半30分
16分、右で金のパスを受けた中村が仕掛けようとしたところで倒されるが、これはファウルを貰うことは出来なかった。
17分、中央でルーズボールを新潟・深井が拾って前に抜けようとしたが、藤田が迷わず体を入れてこれをしっかりと止める。
 
 
19分、相手陣内深く左でのスローインのボールを受けた金がエリアの外からシュートを狙うが、これは相手DFに当たってしまう。
20分、相手エリア内でパスを受けた杉本だったが、前を向けないと見ると大きくボールを上げて、バイシクルシュートを放つ。これがしっかりと枠を捕らえるが、相手GKの手に当たって外へと弾かれてしまい、惜しくもゴールを奪うことは出来なかった。
23分、新潟・千代反田のロングボールに矢野が抜け出してくるが、これは楢崎が落ち着いて処理。
 
 
 
24分、左から入り込んだ金がDFをかわして中へと入り込むと、右足のアウトサイドで放ったボールが、一旦はGKに当たるが、ボールはそのまま枠を捕らえ、見事な追加点に。これで金は3試合連続のゴール。好調・名古屋の牽引車の役を引き受けてくれていると言っても良い程の活躍を見せてくれている。
27分、山口の縦のスペースへのボールに杉本が詰めるが、これはDFの体に阻まれてしまう。
【得点】
69分 金 正友(名古屋)
 
29分、右に抜け出した山口からの折返しを中央で受けた杉本だったが、胸トラップしたボールはゴールラインを割ってしまう。  
〜試合終了
31分、中央を持ち上がる藤田から右に上がってくる杉本にパスが通ると、これをゴール前へと入れるが、逆サイドに上がってきたヨンセンへはボールが届かなかった。
33分、自陣中程左寄りの位置での新潟のFK。シルビーニョのボールはゴール前で跳ね返してゆく。
 
 
34分、新潟・深井がDFの裏へのパスに飛び込んでくるが、楢崎が先に前へと出て、交錯しながらもボールを押さえて、相手のチャンスをしっかりと潰す。
35分、中央で金が落としたボールを杉本がワンタッチで、縦の右スペースへと蹴り出してヨンセンを走らせようとするが、ボールが大きすぎてしまう。
 
37分、左からの新潟のCK。マルシオのゴールに向かって曲がってくるボールは楢崎が落ち着いて正面でキャッチ。 【交代:81分・新】
深井河原
 
39分、左から持ち込んだ本田のパスを中で押し込もうとしたヨンセンのシュートは大きく浮いてしまう。更にこぼれ球に寄せた藤田の左足のシュートは相手GKの右手に弾かれてしまい、追加点を奪う惜しいチャンスを逃してしまう。 【交代:83分・新】
内田松下
42分、左に持ち上がったヨンセンからのパスを中央で受けた金が1人かわしてシュートを狙うが、これはコースに入り込んだDFに阻まれてしまう。
43分、左から持ち込んできた新潟・河原のシュートはポストの右に流れる。
【交代:86分・名】
杉本玉田
 
44分、右に持ち上がってきた新潟・シルビーニョのクロスボールを合わせた矢野のヘディングシュートは枠の外。  
ロスタイム2、中央でパスをカットされると、最後、新潟・河原が遠い位置からシュートを狙ってくるが、このボールには勢いが無く、楢崎が難なく押さえてゆく。
ロスタイム3、左からロングボールを放り込んで河原を走らせてくるが、このボールも楢崎がコースに入って抑えると、ここで試合終了の笛が高らかに瑞穂陸上に響き渡り、名古屋の開幕3連勝、3試合完封勝利、そして、単独首位が告げられる。
後半は金のゴールが名古屋の勢いを加速させ、立て続けの選手交代で巻き返しを図る新潟を全くと言っても良いほど寄せ付けずに試合を完勝した名古屋の力の差が出た結果と言えよう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。
【交代:89分・名】
中村吉村