2007 Jリーグ ディビジョン1:第2節
 青いヴァンフォーレサポーターで埋め尽くされた小瀬スポーツ公園陸上競技場のピッチに甲府の選手に先駆け、名古屋の選手達がウォーミングアップのため駆け込んでくると、名古屋から駆けつけたサポーターから大きな声援が飛ぶ。柔らかな日差しに心地よい暖かさの中、選手達は落ち着いた表情を見せながら、体を解し始める。

 前節の千葉戦では、しっかりと自分達のサッカーを見せて勝利したことで、選手達の表情は誰もが明るい。前半早々のスピラールの怪我のため、急遽ピッチに立った米山もようやくチームの一員としての存在感を示すことが出来たのか、落ち着いた雰囲気でアップを行っている。逆に、昨年17試合で10ゴールと、抜群の決定力を誇った、ヨンセン選手は試合前から相当の気合いが入っている。チームメイトのスピラール選手の長期離脱は同じ外国人選手としては特に相当に辛いはずだ。その彼のためにも、今日は相手の厳しいマークをかいくぐって、必ず甲府のゴールネットを揺らすゴールを決めてくれるはずだ。

 昨年のリーグ戦では、ホーム・瑞穂陸上での戦いは、5-1と圧倒的な破壊力で勝利を挙げたものの、アウェイの、この小瀬での試合では、1-2と敗戦を喫している。また、カップ戦でも1-1の引き分けと、勝ち切れていないスタジアムのひとつ。連勝して勢いに乗りたいところだが、甲府の細かく早いパス回しからの攻撃は、ホームサポーターの後押しもあるだけに、しっかりと警戒して臨みたいところだろう。
 午後1時45分、両チームのサポーターの唱える応援を背にしながら、1人また1人と、名古屋の選手達はロッカーへと消えていった。

〜前半15分
緩やかな風がピッチ上を吹き抜ける中、ゆっくりとした足取りで両チームイレブンが入場を始めると、それまで大人しかったスタジアムが火が付いたように賑やかになり、キックオフを待ち望む両サポーターの興奮が選手達を包み込む。ヴァンフォーレサポーターの陣取るスタンドでは赤と青のチームカラーのパネルが選手を出迎え、スタジアムの雰囲気を更に盛り上げる。
左エンドの甲府に対し、右エンドの名古屋からのボールで試合が始まる。
先発は、GKは守護神・楢崎、DFは大森・米山・増川の3バック。中盤は中央下がり目の位置に藤田、左に本田、右が中村、トップ下の位置に山口と金、FWはヨンセンと杉本という11人。立ち上がりは、3-5-2の布陣だ。
 
 
1分、縦パスをヨンセンが後ろのスペースへと頭で落とすと、杉本がこれを拾って縦に突破を図るが、これはシュートは相手GKに抑えられてしまう。
3分、左でルーズボールを拾った本田が縦のスペースへと送ると、これを山口が追うが、追い付く前にタッチを割る。
4分、左からドリブルから甲府・アルベルトが縦に仕掛けてくると、左足でシュートを狙ってくるが、これはポストの右に。
 
 
6分、左から本田の縦に送ったボールをヨンセンが追っていくが、これはGKの方が先に追い付いてしまう。
7分、右の山口に下がってボールを受けたヨンセンからの縦パスが出ると、これを持ち上がって中へと入れてるが、中央に走り込んだ杉本、逆サイドの金に上を抜けてしまう。
 
 
9分、自陣左深くの甲府のFK。甲府・藤田が右足で直接狙って来るが、ボールはポストの左へ。
10分、中央で金からのスルーパスに杉本が抜け出そうとするが、早い相手DFの戻りにカットされてしまう。
12分、右寄りの位置で中村のパスを受けた藤田が縦に送ると、杉本が良いタイミングで抜け出してシュートを狙うが、これはDFに止められてしまう。
 
 
14分、右寄りの位置でヨンセンが相手DFとの競り合いでカットしたボールを藤田が持ち出し、左足からのシュートを放つが、これは相手GKの正面。  
〜前半30分
16分、杉本のパスを中央でヨンセンを経由して山口がワンタッチで左のスペースへと繋ぐ。これを走り込んだ本田が左足からシュートを放つが、ボールはポストの左へ。ここまでは名古屋は相手の得意のパス攻撃を許さず、チャンスも作り、良い流れで試合を進めている。  
 
18分、杉本が頭で縦に送ったボールを金が持ち込もうとしたところで倒され、相手陣内左深くでのFKを得る。中村がGKとDFの間に狙って蹴り入れると、何人もが飛び込むが、ボールは甲府のDFに弾かれてしまう。
21分、中盤でのルーズボールを山口がワンタッチで縦に送って相手DFの裏へと杉本を走らせようとしたが、これは甲府DFの守備の網に掛かってしまう。
 
 
23分、ヨンセンの縦のパスに杉本が右から飛び出すが、これは惜しくもオフサイドの旗が上がってしまい、チャンスに繋げず。
25分、左タッチ沿いでボールを持った金が寄せてきた選手の頭越しにパスを縦に出すと、杉本が詰めるが、厳しいマークに抜け出せず、ボールに触ることが出来なかった。
 
 
27分、左サイドを細かいパスを繋いで抜け出してきた甲府・茂原がエリアの外からシュート打ってくるが、これは精度を欠き、クロスバーを大きく越えて行く。
28分、右に上がってきた甲府・杉山がゴール前にクロスボールを入れてくるが、これは中央で米山が頭で弾き返して行く。
 
〜前半終了
31分、相手陣内右中程でのFKのチャンス。これを本田が得意の無回転ボールでゴールを狙って蹴っていったが、ボールは相手GKが正面で止めてしまう。
32分、左からの甲府のCK。甲府・藤田の右足からのボールはニアで大森が弾き出す。再度左からのCKは中央で縦に弾き出したボールを金が拾って右のスペースに送ると、杉本がこれを持ち上がろうとするが、相手の執拗なマークにファウルを取られてしまう。
 
 
35分、右に持ち込んで来た甲府・茂原を増川が止めようとして飛び込んだところをかわされ、中へと放り込まれるが、相手選手の折返しは、中央で蹴り出す。  
38分、相手陣内深く左寄りでのFKのチャンス。本田がGKの前で弾むボールを蹴って行くと、前にこぼしたところへ竹内が詰めていったが、ボールは相手GKが先に抑えてしまう。 【交代:36分・名】
米山竹内
 
41分、左タッチ沿いに本田が縦パスを送って行くと、杉本がワンタッチで落としたところを金が拾って抜け出したが、甲府DFの早い戻りにカットされてしまう。
43分、中央の藤田が左に上がる金にパスを通すとこれを左足でゴール前へと上げるが、走り込んで来たヨンセンは間に合わず。
 
 
ロスタイム1、左から甲府・アルベルトに侵入を許すと、小さく上げたクロスに逆サイドから甲府・藤田が詰めてダイレクトでシュートを打たれるが、ボールはクロスバーの上へ。そして、ここで前半が終了。
立ち上がりは良いペースで試合を進めていた名古屋だったが、次第にエンジンの掛かり始めた甲府に細かいパスでペースを掴まれ、次第に相手のリズムに。それでものゴール前でのフィニッシュに精度が欠けたこともあって、失点を許すことなく、前半を無得点で抑え、0-0で終える。後半は相手の運動量も落ちてくるはず。そのタイミングを上手く見極めてゴールを狙いにゆきたいところだ。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は右エンドの甲府のボールで試合が再開する。後半は名古屋が風下となるだけに、ロングボールの処理は注意だ。
1分、右からの甲府のCK。石原のボールはゴール前で弾くが、逆サイドでこぼれ球を甲府・藤田がシュートを狙ってきたが、これはクロスバーの上。
3分、左から本田がドリブルで持ち上がると、縦のスペースへとパスを出して、横を上がってくるヨンセンに繋ごうとしたが、相手のマークを振り切ろうとしてファウルを取られてしまう。
4分、右でのサイドを変えたボールを中村が受けると、これをゴール前へと蹴り入れていったが、GKの守備範囲。
 
 
 
 
5分、自陣からのカウンターで、右に抜け出した杉本が快足を飛ばして駆け上がると、ゴール前へ絶好のクロスボールを入れると逆サイドから走り込んだ金が左足できっちりと合わせたボールが相手ゴールをしっかりと捕らえ、名古屋に待望の先制点が生まれる。
8分、相手DFの裏へのパスに杉本が抜け出すが、追い付く前に飛び出したGKが阻んでしまう。
【得点】
50分 金正友(名古屋)
 
10分、右からドリブルでテンポ良く上がっていった中村が、中へと切れ込んだところで左足からシュートを放つが、これはポストの僅かに右へ。
12分、右に抜け出した杉本が折り返すと、逆サイドに上がってきた本田がこれを拾ってゴール前に詰めるヨンセンを狙うが、頭で合わせたボールは力なく、右に流れてしまう。
 
 
13分、左からのCKのチャンス。本田の左足からのボールを増川が頭で中へと落とすが、これは誰も触れられず。
14分、藤田が相手DFのラインを上手く見て、裏へとパスを入れると、杉本が抜け出すがこれは触れず。
 
〜後半30分
16分、左からDFを切り返して入り込んだ山口からのパスを中央で金が受けると、右足からのシュートを放っていったが、これは相手DFに当たって弾かれてしまう。
17分、右から中村がDFを振り切って入り込むと、シュートを放つが、飛び出したGKが弾いてしまう。しかし、これに山口が走り込んで狙ったシュートも弾かれ、最後、こぼれ球もDFにカットされ、惜しい追加点の場面を決めることが出来なかった。
 
 
21分、中盤で甲府・アルベルトが前を向いてボールを持つと、スペースを狙って出そうとしてくるが、金がここに鋭く詰め寄り、パスを奪う。
23分、左に上がってきた本田からのクロスを中村が中へと落とすと、中央でシュートを狙うが、これはDFの正面。
【交代:64分・甲】
鈴木長谷川
 
25分、左からDFの裏を狙ったパスを入れて、甲府・長谷川を走らせてくるが、ここは竹内が落ち着いてコースに入り頭でタッチの外へと出す。
26分、左からの甲府のCK。甲府・藤田のゴール前へのボールは楢崎が正面で抑えてる。
 
 
28分、右に抜け出した甲府・藤田のゴール前へのボールに、甲府・石原が走り込んでくるが、ボールは頭上を大きく抜ける。
30分、右に抜け出す竹内がパスを受けると、深い位置でマイナスに折り返したボールを中村が受けるが、トラップが流れてしまい、ボールは相手GKに渡ってしまう。
 
〜試合終了
32分、甲府・長谷川が左からパスを繋いで入り込んでくるが、中央で入れようとしたラストパスを読んだ本田がコースに入り、きっちりとカットする。 【交代:78分・名】
杉本玉田
【交代:78分・甲】
アルベルトジョジマール
 
 
34分、左からドリブルで持ち込んできた本田のゴール前へ流し込んだボールに中央に詰めた玉田が右足で合わせて押し込み、追加点を挙げ、早速、仕事をしてみせる。
36分、右から斜めに切れ込んできた甲府・茂原が中央から左へ開く長谷川にパスを通すが、大森・竹内がしっかり来れについて行き、ボールを奪う。
38分、右からの甲府のCK。石原の左足からのボールは楢崎がパンチングで弾き出す。
39分、右からリズムに乗ってドリブルで上がると、逆サイドに上がってくるヨンセンへとパスを送る。これをスライディングしながら合わせにいったが、足下にボールがしっかりと収まらず、枠へとボールを飛ばせず。
【得点】
79分 玉田圭司(名古屋)
 
42分、ゴール前でパスを繋ぎながら名古屋のDFの隙を捜しに甲府・茂原が仕掛けてくるが、ここは金・藤田と高い集中力での守備を見せてチャンスを作らせなかった。  
43分、左からパスで抜け出した甲府・藤田がゴール前へクロスを上げてくるが、これは楢崎が難なくキャッチする。
ロスタイム1、藤田のワンタッチのパスに抜け出そうとしたヨンセンがエリアのすぐ外右で倒され、FKを得る。甲府・山本がこのプレイで2枚目の警告となり、退場する。本田のゴール前へのFKのボールはGKが抑えてしまう。
ロスタイム2、自陣深くエリアのすぐ外左寄りでの甲府のFK。甲府・藤田が壁の右を狙って直接狙って蹴ってきたが、ボールはクロスバーの上へ。
そして、このピンチを無事逃れた名古屋が6年ぶりとなる、開幕2連勝を2-0で飾って、試合終了を迎える。
前半の米山の負傷による交代から嫌な空気になっていた名古屋の選手達だったが、杉本、金のホットラインからの2試合連続のゴールで試合の主導権を握った後は、完全に名古屋が試合を制したと言える。
最後まで熱い声援をありがとうございました。
【交代:87分・甲】
須藤