Jサテライトリーグ・Dグループ・第13日
名古屋グランパスエイト vs ヴァンフォーレ甲府

澄んだ空気と、秋の雲をちりばめた青空の広がる、山梨県南アルプス市・櫛形総合公園。我らが名古屋グランパスエイトは、午後1時よりヴァンフォーレ甲府とのサテライト戦を戦う。遠く霊峰・富士山を臨む中、12時過ぎからはウォーミングアップを開始。行楽シーズン真っ盛りと言うこともあり、この日の来場者には家族連れが多く、開始前からスタンドからキックオフを待ち受けるちびっ子達の声で賑やかだ。また、名古屋のメンバーに玉田が入っていることもあって、若い女性陣もアップ中から最前列に陣取り、カメラ片手に黄色い声援を飛ばしている。

午後1時、キックオフの笛が鳴り渡り、試合が開始。前半は右にエンドを取る名古屋のボールから。この日の先発メンバーは、GK川島、DFは阿部・竹内・増川・渡邊の4人。MFは須藤と吉村が並び、やや前開き気味の位置で、右に井上、左が片山。FWは津田と玉田という11人だ。
前 半
先週のサテライト・磐田戦で、68分の出場で怪我からの復帰を果たした玉田。前日のJ公式戦・清水とのゲームでも後半途中から投入され、いよいよ本格的な復活モードに入ってきた。彼の復活で、FWヨンセン頼りだけでない、違った攻撃のバリエーションを使うことができるだけに、早く本来のキレを取り戻してほしいところだ。

立ち上がりは、その玉田にボールを集め、津田・片山と言ったスピードのある選手がサイドを崩してゆくという形で攻め上がってゆくが、甲府DFは固く、玉田は簡単には前を向かせもらえない。しかし、前半8分。右サイドから中へと流れた阿部のスルーパスに抜け出した玉田が持ち込むと、相手GKをかわし、得意の左足ではなく、右足からのシュートを落ち着いて沈めて先制点を挙げ、名古屋が好スタートを切る。

対する甲府は、左サイドを起点にゴール前へとボールを集め、甲府・堀井(14)、宇留野(11)、森田(28)の3トップが積極的にシュートを狙ってくるが、GK川島の好判断もあって、簡単にはチャンスを与えることなく試合を進めてゆく。

早い時間帯での先制点で勢いに乗った名古屋は、その後も井上や阿部も積極的に前を向いて仕掛けると、玉田だけでなく、ゴール前に顔を出してゆく津田にあわせてボールを入れてゆくが、厳しい守備もあり、簡単にはプレイさせてもらえない。22分、甲府陣内中程右でのFK。阿部が左足で壁を越えてワンバウンドするボールでゴール右隅を直接狙うが、これは惜しくも甲府GKの攻守に阻まれてしまう。23分、右からの井上のCKのボールがこぼれたところを津田が左足でシュートを狙っていったが、枠を捕らえながらもコースに入ったDFに弾かれてしまい、追加点を挙げることは出来なかったが、名古屋が良い雰囲気で試合の流れを掴んで試合を進めてゆく。

ところが、玉田同様、ようやく怪我から復帰を果たし、徐々に試合勘を取り戻し始めた吉村が、29分、この日2枚目のイエローを受けて退場、何と前半残り時間約15分、後半45分と言う長い時間を10人で戦う事を余儀なくされてしまう。

そして、前半の残り時間に甲府が早めに追い付いて試合を楽にさせようと、一気に畳みかけてくるが、名古屋も玉田を1人前線に残し、高い集中力を発揮して甲府の攻撃を跳ね返し、ゴールを死守してゆく。42分には、自陣で相手CKのこぼれ球を拾った竹内と増川がカウンターから一気に上がってゆくと、増川に追走していった片山がヒールからのパスを受けて、ゴール前へとダイレクトで入れてゆくが、これは誰も触れることが出来ない。更にこのこぼれ球を右で拾った玉田が勝負を仕掛けると、エリア深くへと持ち込んでマイナスに出したパスを津田がゴール前で飛び込むが足下に上手く収まらず、シュートを打ちきれずに、惜しい追加点のチャンスを逃してしまう。

しかし前半は、GK以外、全選手が名古屋陣内へと攻め入った甲府の怒濤の攻撃を、好プレイを繰り返す川島を中心に、高い集中力を見せた名古屋が失点することなく、1-0のリードを守って試合を折り返してゆく。

後 半

エンド入れ替わり、後半は左にエンドを変えた、ホーム・甲府のボールで試合再開。名古屋としては前半で得た1点をしっかりと守った集中力を続けて、後半も入りたかったところだが、開始2分。甲府・保坂(26)からのスルーパスに中央から抜け出した甲府・堀井(14)に右足からのシュートを決められてしまい、名古屋は1-1と甲府に追い付かれててしまう。そして、このゴールで一気に名古屋を突き崩そうと、甲府がかさに掛かった攻撃を仕掛けてくる。これに対し、名古屋は相手の攻撃の裏を突くカウンター狙いに徹してゆく。

12分、津田が増川が自陣で得たボールを一気に前線へと蹴り出したところを、俊足を飛ばして拾うとカウンターを仕掛けてゆく。相手陣内深くで、左サイドに上がる玉田とのワンツーで、さらにゴール前へと侵入を試みるが、ボールを良い形で受けられず、シュートは出来なかった。その後も、甲府らしい前へ前へと押し寄せる攻撃を受け止めてカウンターを狙ってゆくが、甲府守備陣の早い戻りもあって、簡単にはペナルティエリアに入れてもらえず、シュートを打たせてもらえない。

23分、後半途中から代わって入った、甲府・石田(29)をエリア内で厳しいマークに付いていた竹内が倒してしまい、甲府にPKを献上。そして、このPKを甲府・鶴見(17)に、一度は仕切直しがあったものの、きっちりと決められてしまい、ついに1-2と甲府に逆転を許し、1人少ないという状況の中、名古屋はますます苦しい戦いを強いられることになってしまう。

後半28分、前半途中からの劣勢を強いられたことで、運動量が落ち始めた、須藤・片山の2人に代え、高橋・豊田を投入する。先週のサテライト・磐田戦でもゴールを決めた豊田には、ここでも勝負強さを発揮して欲しいところだ。

31分、32分と立て続けにロングボールに津田がカウンターから良い抜け出しを見せるが、甲府の早い戻りからのプレスにシュートにまで持ってゆくことが出来ない。後半から入った高橋も玉田のスピードを生かそうと鋭いパスを相手DFの裏へと繰り出してゆくが、これもパスの収まったところで玉田が潰されてしまい、名古屋はなかなか甲府のゴールを割ることが出来ないまま、時計が過ぎてしまう。終了間際の44分には、相手陣内中程、ほぼ正面の位置でFKを得ると、阿部が強烈なボールを直接狙いで蹴ってゆくが、ボールを恐れない甲府の、壁に立った選手が弾き返してしまう。

もはやこれまでかと思われたロスタイム、自陣からの増川のロングボールを受けた阿部が相手DFの裏へと放り込むと、中央から抜け出した豊田がスライディングから、強引に伸ばした左足でこのボールを相手ゴールに押し込み、最後の最後で、起死回生の同点弾を決め、2-2としてゆく。更に相手の攻撃からのカウンターで井上が中央をもの凄いスピードで持ち上がってゆくと、左から上がってきた玉田にラストパスを送る。これを左足でシュートを狙うが、ボールは甲府GKに弾かれてしまう。さらにこぼれて来たところを左足でもう一度シュートに行ったが、今度はサイドネットを揺らしてしまい、逆転弾は決めることが出来なかった。しかし、試合は前半途中から10人での戦いを強いられた名古屋が、土壇場で追い付くという“執念”のプレイを見せて、2-2の同点で終了を迎えてゆく。

前半の吉村の退場で苦しい戦いを余儀なくされ、さらに後半の2点で一度は甲府に突き放されるものの、GK川島を中心とした高い集中力からの守備と、粘り強いカウンター攻撃が実を結んだ、価値ある引き分けの試合だったと言えよう。なかなか好調を続けることが出来ないトップチームにもこの勝負強さは見習って欲しいところだ。