第86回天皇杯・5回戦
 午前中から降り続いている氷の様に冷たい雨は、一向に止む気配はなく、午後12時30分現在、ピッチ上で白い息を吐きながらボールを蹴り合っている選手達の体を容赦なく濡らし続けている。しかし、どの選手達も表情には、気合いが漲っており、今日のこの試合に掛けるモチベーションは文句なしと言っても良さそうだ。
 勝てないと言われているこのカシマスタジアムだが、我らが名古屋の攻撃の柱・ヨンセンにとっては初めて芝生を踏み入れたスタジアムのひとつでしかないはず。シーズン途中から入団後、低迷していたチームを7位まで引き上げてくれた救世主の彼が、今日、名古屋のサポータにとっての、新しい伝説をきっと作ってくれるはずだろう。
 今週の練習で好調なところを見せていた杉本、そして、彼と共にヨンセンを加えたリーグ屈指の3トップの一角を占める玉田も、ベストフィットの状況と言っても良いほどのキレの良さを披露してきている。鹿島の堅い守りを切り崩す、スピード溢れるドリブルで名古屋が勝利を手中に収めるゴールを見せて欲しい。
 攻撃陣に隠れがちだが、今の名古屋の守備も絶好調だ。特に守護神の楢崎は好セーブを連発して、優勝を決めた浦和を封じ込めるなど、充実したプレイでチームを後ろから支えている。今日は、好調鹿島が相手だが、リーグ終盤の堅い守りを見せて、カシマスタジアム初勝利に貢献する働きを見せてくれそうだ。
 雨で濡れた芝生の上で、入念にボールの転がり具合やバウンドをチェックし終えた選手達は、午後12時45分、肌を刺す様な冷たい雨から逃れる様に、足早にピッチを去っていた。
〜前半15分
細かい雨の中、両チームメンバーが入場すると、寒さを吹き払わんばかりに気合いの入った声援を、サポーター達がスタートさせ、冷え切ったスタジアムに気のせいか熱が籠もり始める。
左エンドのホーム・鹿島に対し、前半は右にエンドを取る、上下白の名古屋。そして、前半は名古屋のキックオフで試合が始まる。
名古屋のメンバーは、GK守護神・楢崎、DFは大森・スピラール・増川の3バック、MFは右に中村、左に渡邊、中は金と山口が並び、FWはヨンセンを柱に、杉本・玉田の3トップ。3-4-3の布陣で臨む。
 
 
 
1分、左でのルーズボールを鹿島・ファビオサントスが縦に抜け出そうとしたが、大森が弾く。
3分、左深くで鹿島・本山がDFの裏へと狙って入れてくるが、鹿島・アレックスの前にスピラールが体を入れて、ボールをカット。
5分、中央へと入り込んだ鹿島・アレックスミネイロのシュートが楢崎の指先を抜けるが、ボールは右のポストに当たって跳ね返り、失点を逃れる。
 
 
7分、右にポジションを変えていた玉田が強烈なミドルシュートを放っていったが、これはゴールの上を越えてしまう。
8分、左タッチ沿いで渡邊の入れたスローインのボールをヨンセンが落とすと、渡邊がダイレクトでDFの裏へと蹴り入れるが、飛び出した玉田はオフサイドに。
鹿島は早い時間帯からしっかりとパスを繋いで名古屋の陣内へと攻め入ってきているが、名古屋も徐々に落ち着きを見せ始め、これに対処する。
 
 
11分、左からの鹿島のCK。鹿島・野沢のファーサイドのボールが中へと折り返ったところを詰めた鹿島・アレックスミネイロに右足からのシュートを決められてしまい、鹿島に先制点を奪われてしまう。 【得点】
11分 アレックス ミネイロ(鹿島)
 
 
12分。渡邊が左から入れたクロスをニアサイドの玉田が中へワンタッチでコースを変えると、中央に走り込んだヨンセンが迷わずこのボールを相手ゴールに押し込み、すぐさま同点とする。
14分、DFの裏へと出たボールに飛び出した杉本が相手GKと交錯しながらも左足で苦しい体勢からシュートを打ったが、ポストの左に抜けてしまう。
【得点】
12分 ヨンセン(名古屋)
〜前半30分
17分、右サイドでボールを持って前を向いた玉田が、そのままドリブルで抜すと、右のスペースへとパスを出して杉本を走らせようとしたが、これはパスが短くなってしまい、相手に奪われてしまう。
19分、自陣右でルーズになったボールを、鹿島・本山が放り込んでくるが、下がって守備に入っていた山口がしっかりとコースに入って、頭でボールを弾き出す。
 
 
20分、右に上がる中村にヨンセンからのパスが通ると、すかさずこれをゴール前へと折り返していったが、これは中央でDFに弾かれてしまう。
21分、左のスペースへ出たボールを渡邊がゴール前へとクロスを入れると、遠いサイドのヨンセンがヘディングシュートにいったが、このボールはジャストミートせず、GKに正面で抑えられてしまう。
 
 
22分、左でボールを拾った増川がそのままも持ち上がると、ヨンセンとの壁パスで更にDFの裏へと抜けだし、鹿島GKと1対1になるが、これはオフサイドに。
24分、右タッチ際でスローインのボールを受けた鹿島・内田が中へと放り込んでくるが、スピラールが頭で跳ね返す。
 
25分、鹿島の右からのCK。野沢のニアサイドへのボールをニアへ走り込んできた鹿島・中後に頭で決められてしまい、再び、鹿島に先行を許してしまう。
27分、ハーフウェイラインの辺りから増川がロングボールを右のスペースへと大きく蹴って、玉田を走らせるがこれは長すぎてしまう。
【得点】
25分 中後(鹿島)
 
28分、相手陣内左でルーズボールを拾った金が右足でエリアの外からシュートを狙ったが、これは右のポストに嫌われてしまい、鹿島のゴールを割ることは出来なかった。  
〜前半終了
31分、中央でボールを持った鹿島・中後がミドルシュートを狙ってくるが、これは雨でボールの球足が速いものの、楢崎が体で抑える。
32分、金が中央から、DFの裏へとワンタッチで出したボールに杉本が反応するが、先に相手DFに拾われてしまう。
 
 
33分、短くパスを繋がれると、最後右に張っていた内田から入ったボールを中央で、鹿島・アレックスミネイロにフリーでヘディングシュートを許すが、ボールはポストの左に流れる。
1点先行したことで、鹿島の選手達に落ち着きが見え、パスがしっかりと回り始める様になる。ここは慌てることなく、しっかりと守備をしたいところ。
37分、左でパスを受けた杉本が中へと勝負を仕掛けてゆこうとするが、ここは鹿島DFの早い寄せにボールをカットされてしまう。
 
 
38分、鹿島の右からのCK。野沢の右足からのボールは中央を経由して、左でアレックスが頭で折り返そうとしたがこぼれる。
40分、右で中村が落としたボールを杉本が拾いにゆこうとして、相手DFと奪い合いを見せるが、ここはファウルを取られてしまう。
41分、右のタッチ際からの中村のカーブの掛かったクロスに、ニアでヨンセンが、中央で玉田が走り込むが、合わせることは出来なかった。
 
 
42分、左に深く侵入した玉田の中への折返しに、ヨンセンが詰めるが、シュートを打ちきる事は出来ず。
44分、左で増川のパスを受けた玉田が縦のスペースへ遠ると、杉本が走り出すが、ここはオフサイドを取られてしまう。
 
 
ロスタイム1、中村からのパスを右寄りの位置で受けた玉田がエリアの外だったがシュートを積極的に打つ。しかし、これはコースに体を入れたDFに当たって勢いが無くなったところをGKに抑えられてしまう。
そして、前半は鹿島に先制を許しながらもすぐさま追い付き、試合を振り出しに戻したが、再びセットプレイからの失点を喫し、1-2で試合を折り返してゆく結果に。
しかし、前半の終盤は、名古屋が攻勢を見せ試合の流れを引き寄せた形で終了、後半へと向かうこととなっただけに、この勢いで早い時間帯に同点として、試合を振り出しに戻してゆきたいところだ。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、名古屋は左から右へと攻め上がってゆく。後半は、ホーム・鹿島のボールで試合が再開。名古屋、鹿島共にメンバー交代は無し。
1分、左から上がってきた鹿島・新井場にゴール前へのクロスを許すと、逆サイドに詰めていた野沢にヘディングシュートを狙われるが、叩きつけたボールはポストの右へと流れる。
4分、相手陣内深く右で、スローインのボールを受けた玉田が反転して右足からゴール前へと入れるが、これは相手GKの正面だった。
 
 
6分、中央で鹿島・本山とアレックスミネイロが短くパスを交換して、中へと入り込んでこようとしたが、ここはDF陣が慌てることなく抑える。
8分、相手陣内中程右寄りのところでのFKのチャンス。中村が長いボールを入れると、上がっていた増川が頭で合わせるが、ボールはポストの左に流れてしまう。
10分、右からの鹿島のCK。野沢のゴール正面へのボールは増川がしっかりと頭で弾き出す。
 
 
11分、左のスペースへと抜け出していった杉本が前に勝負を仕掛けようとしたが、鹿島DFの早い戻りに中へ入れさせてもらえず、苦し紛れの右足からのシュートはGKの正面へ。
13分、中央でボールを持ったヨンセンが右に上がる中村に預けて一気に駆け上がる。中村の入れた速いクロスにニアサイドへと飛び込んだヨンセンだったが、ボールには触れず。
 
 
〜後半30分
16分、左で金からのパスを受けた渡邊が鋭いクロスをゴール前へと送るが、逆サイドに詰めていた玉田の頭上を抜けてしまう。
18分、右の中村から山口へとパスが入ると、中央の金へと繋ぐが、鹿島の早い寄せに戻さざるを得なかった。
 
 
19分、左から抜け出した渡邊のクロスに中央で杉本が頭で飛び込んでヘディングシュートを狙うが、ボールは鹿島GKが抑えてしまう。
20分、右から杉本が入り込むと、相手DFが寄せてきたところで中央へのパスに切り替えて、これを金がシュートを狙ったが、ボールにミートすることが出来ず、大きく外してしまう。
 
 
22分、左でスピラールからのパスを受けた玉田が前を向こうとするが、鹿島・野沢の厳しい後ろからの寄せにボールを失ってしまう。
24分、左に金が叩いたボールを渡邊が早めにゴール前へと入れると、ヨンセンが頭でシュートを狙うが、ボールはポストの右へ抜けてしまう。
 
 
26分、左の渡邊からのボールをヨンセンが中へ落とすと、これを玉田が左足でシュート打つが、ボールはDFに当たってコースが変わってしまう。
28分、相手陣内中央やや右寄りで藤田が倒され、好位置でFKのチャンスを得る。これを玉田がセットして蹴ると見せて増川が直接狙って蹴っていったが、僅かにクロスバーの上へ抜ける。
【交代:70分・名】
中村藤田
〜試合終了
31分、中央で大森が送ったパスをヨンセンが落としてコースを変えようとしたが、これは相手のDFに拾われてしまう。そして、スピラールがこの日2枚目の警告を受けて退場となり、残り時間を1人少ない状況で戦うこととなってしまう。
32分、右からの鹿島のCK。野沢のボールは中央で増川がしっかりとクリア。
34分、右で杉本のパスを受けた山口が大きく中へと入れてゆこうとしたが、逆サイドに詰めていた藤田が受ける前にDFにコースに入られてしまう。
 
 
36分、右サイドからドリブルを仕掛けて入り込んでいった玉田だったが、シュート体勢に入る前に厳しいプレッシャを立て続けに受けてボールを失ってしまう。  
37分、右からドリブルで上がってきた本山のパスを受けたアレックスミネイロにゴールを決められたかと思われたが、これはオフサイド。
39分、増川からの鋭い左サイドの縦パスに渡邊が拾いにゆくが、雨に濡れたピッチにボールが走り、追い付くことが出来なかった。
【交代:81分・名】
杉本津田
 
40分、交代で秋田は増川の位置に入り、増川はFWに上がる。
41分、左から勝負を仕掛けた津田が右に送ると、山口が持ち込んでいって左足でシュートを打つが、DFに阻まれてしまう。
【交代:85分・名】
玉田秋田
44分、右に下がってきた増川が大森のパスを受けると、縦に送る。これをヨンセンが落としたところを津田が拾おうとしたが、ボールはDFが蹴り出してしまう。
ロスタイム1、右の山口が粘ってボールを拾うと、大きく左に展開。金が切り返しを繰り返してDFを振り切ってDFの裏へと入れると、中央で藤田がヘディングシュートを狙うが、これはオフサイドに。
【交代:87分・鹿】
ファビオサントス本田
 
ロスタイム2、山口が右から入れたクロスボールを上がってきた秋田が頭で合わせたボールは、ポストの右に流れてしまう。
そして、鹿島GKの曽ヶ端が大きくボールを蹴ったところで主審の両手が上がり、またしてもカシマスタジアムでの初勝利はお預けとなってしまう。
これで名古屋は今季の全ての日程を終えることとなってしまった。
最後まで熱い声援をありがとうございました。
そして1年間、応援ありがとうございました。
【交代:89分・鹿】
アレックス ミネイロ興梠