2006 Jリーグ ディビジョン1:第33節
 午後1時25分、ホーム最終戦のキックオフを待ち受ける、名古屋サポーターの前に選手達がロッカールームから駆け出してくる。瑞穂での、今季最後の試合と言うこともあるが、チームが好調を維持していることもあって、自由席のスタンドは超満員だ。日曜開催と言うことも有り、ちびっ子も多く、いつもの野太い声や黄色い声に混じって、可愛い「頑張って〜!」と言う、ほほえましい声援が聞こえてくる。
 ピッチの中程で全員横一列に並んで、改めて声援を送ってくれるスタンドの向けて大きく手を振った選手達は、早速、ウォーミングアップを開始する。前節、セレッソ・西澤にこそ技ありのゴールを奪われたものの、それ以外は、セレッソの攻撃をDF陣と共に、完璧に抑え込んだ、守護神・楢崎。今日も鬼気迫るプレイで、名古屋のゴールを守って、ホーム最終戦の勝利を飾って欲しい。
 この間の、U-21代表戦は、腿の張りを訴えて出場を断念した本田だが、今日は練習から気合い充分だ。それもそのはず。1シーズンを通しての活躍やファン投票をもとに、グランパスランクル賞選考会で選ばれるという「グランパスランクル賞」を見事受賞したからに他ならないだろう。若いながらも、物怖じしないプレイでしっかりと今年チームの中心となってプレイを続けた彼への評価はサポーターも文句のつけようがないはず。今日も受賞に花を添える様な左足からの華麗なボールの数々で、スタジアムを大いに沸かして欲しい。
 今か今かとキックオフを待つ両チームサポーターは、試合開始を満ちきれないのか、早くも選手毎に大きな声で声援を送っている。その目の前でドリブルやロングボールを蹴り合いながら、最後の調整に余念のない選手達。今季、ホーム最後の試合をしっかりと締めくくる内容を見せて欲しいものだ。
午後1時45分、全員で仕上げに短いダッシュを何本か繰り返した後、選手達は納得のゆく表情を見せながら、ゆっくりとした足取りでロッカーへと向かっていった。
〜前半15分
少し明るさを増した上空だが、相変わらず青空は見えず、雲が一面を覆っている。ピッチ中央でスクール生の打ち振る応援旗と、メインスタンドの前に整列したスクール生の応援旗が作るアーチが待ち受ける中へ、両チームイレブンが入場を果たす。右にエンドを取る福岡に対し、ホームの名古屋は左エンドから右へと攻め上がる。前半は福岡のキックオフで試合開始。
今日の先発メンバーは、GK守護神・楢崎、DFは、大森・スピラール・増川の3バック。MFは中村が右、左は本田、中央は山口と金が並び、やや下がり目の位置に藤田、FWは玉田と杉本の2人。3-5-2の布陣で臨む。
 
 
1分、右からの中村のアーリークロスに中央から山口が飛び込んでヘディングシュートを狙うが、これはポストの左。
3分、右に出たボールを中村がクロスボールを狙うが、これは相手の厳しいDFに跳ね返される。
5分、右からの福岡のCK。福岡・久藤の長いボールに逆サイドから福岡・古賀が跳び込んできてダイレクトでシュートを狙ってくるが、これはエリア内での相手のファウルに。
 
 
福岡は、余りラインをしっかりと上げず、ロングボールを蹴って、こぼれたセカンドを拾って攻め込んでこようとしてくるが、スピラールを中心にDF陣は落ち着きを見せている。
8分、左から抜け出した杉本が中央を走り込んでゆく玉田の足下へとクロスを狙ってゆくが、これは戻ったDFにカットされる。
10分、中央にドリブルで走り込んでいった中村が左足からシュートを狙うが、これはポストの左へ。ここへ来て雨が降り始め、スタンドは赤いカッパに身を包んだサポーターが彩りを添え始める。
 
 
11分、左に上がる福岡・アレックスのパスを古賀がワンタッチで中へと流し込んでくるが、ここはスピラールが落ち着いてカットする。
13分、自陣左深くでの福岡のFK。古賀の左足からのボールはニアで杉本がクリアする。
14分、左からの福岡のCK。古賀のボールをニアで流し込まれると、ゴール前でこぼれたところを福岡・布部が狙ってくるが、楢崎が先にボールを抑える。
 
 
立ち上がり15分は、福岡が果敢な攻め上がりを見せたが、落ち着いて対処した名古屋が良いリズムを掴んでいるこの時間帯。  
〜前半30分
17分、中央からワンタッチで右のスペースへと出たボールを、右から抜け出した福岡・吉村がゴール前へと迫ってくるが、増川が上手く体を入れて、ミスを誘い、名古屋のボールへ変える。
19分、自陣ほぼ中央での福岡のFK。古賀が左にはたいたボールをアレックスがクロスを入れてくるが、遠いサイドに上がったボールは金が落としたところを藤田がしっかりと縦にクリア。
 
 
20分、左でボールを持った増川が高い位置から強烈なミドルシュートを狙ってゆくが、これは惜しくもポストの僅か右に外れる。
21分、中央でのルーズボールを上がって拾ったスピラールがそのまま持ち上がると、右に上がってゆく玉田に合わせてスルーパスを狙って蹴ってゆこうとするが、足下への危ないタックルで倒されてしまう。
 
 
22分、右でパスを拾った中村が左足から鋭い縦パスを放って、杉本を走らせるが、これは雨で濡れたピッチにボールが思う以上に走ってしまい、ボールが先にタッチを割ってしまう。
24分、右の中村のサイドを変えたボールを杉本がエリア内で受けて前を向くが、コースを探す内にDFに詰め寄られてしまい、ボールを奪われてしまう。
26分、自陣中程ゴール正面の位置での福岡のFK。今度は古賀が左足で直接決めようと蹴ってきたが、ボールは大きくゴールの上を抜ける。
 
 
28分、左から持ち上がっていった本田がそのまま中へと流れてゆこうとするが、厳しく寄せてきたDFをかわそうとしてファウルを取られてしまう。
29分、左でボールを受けた玉田がエリア内で体勢を変えようとしたところで倒され、PKを得る。
 
〜前半終了
 
 
31分、これを玉田自らが蹴りにゆくと、先に体を動かしたGKをあざ笑うかの様に、逆方向のネットへとしっかりとボールを突き刺し、先制点を決める。
33分、左に上がってきた古賀がゴール前へとクロスボールを入れてくるが、中央で増川が頭で跳ね返してゆく。
34分、自陣左深くでの福岡のFK。古賀のボールを福岡・藪田が頭で落としたところを、布部が拾ったところで、主審の旗が上がりこれはオフサイドに。
36分、縦に入ったボールがバウンドが合わず、増川の目の前を抜けると、布部がエリアの外から右足で振り抜いてシュートを狙ってくるが、ボールはクロスバーの上へ。
【得点】
31分 玉田(名古屋)
 
先制点を奪ったこともあり、この時間帯は名古屋は余り無理することなく、守備の陣形を整えながらゆっくりとしたテンポでパスを回している。
39分、本田の当てたパスを藤田が縦に方向を変えると、これを本田がそのまま受けて、相手ペナルティ内へ入り込むが、DFがこれはクリア、左からのCKに。
40分、左からCKのチャンス。玉田の入れたボールを上がっていた増川がヘディングシュートを狙うが、ボールはポスト左へ。
 
 
43分、左サイドを久し振りに上がってきた、福岡・アレックスが古賀に預けて更に縦へと上がってゆくが、山口がしっかりとパスの出しどころを抑え、古賀のミスを誘う。
ロスタイム1、左に抜け出した福岡・ホベルトからのクロスボールが自陣の前でルーズになったところで、中央で走り込んできた福岡・アレックスが左足からのシュートを放ってくるが、ボールはポスト左へ抜けてゆく。
そして、前半は玉田のPKの1点を守りきって、1-0で折り返してゆく。
 
〜後半15分
エンド代わって、右から左へと攻め上がる名古屋のボールで後半が始まる。両チーム共にメンバー交代は無し。
1分、相手陣内左中程でのFKのチャンス。中村がゴールに向かうボールを蹴ってゆくが、DFの頭にカットされてしまう。
3分、中盤でのルーズボールを拾った藤田が前を向いたところで奪われると、福岡にカウンターを食らいそうになるが、藤田が体勢を戻してボールを奪い返す。
 
 
5分、右で粘った福岡・藪田が体勢を崩しながらも左足でシュートを狙ってくるが、ボールはポストの右に外れる。
7分、増川が左タッチ際での相手のパスを跳ね返したポールが、長い距離を転がると、これを杉本が拾いにゆくが、わずかの差で体を入れた、福岡・柳楽にクリアされてしまった。
 
 
10分、右に藤田がはたいたボールを中村が受けにゆくが、コースに相手DFが入り込んでしまい、受けることが出来なかった。
11分、中央の金が右にサイドチェンジすると、これを中村が入れてゆこうとしたが、ニアサイドでカットされ、右からのCKに。
12分、玉田のゴールに向かうボールを中央で飛び込んだスピラールがヘディングシュートを狙うが、飛び出したGKがパンチングで先に弾き出してしまう。
 
 
14分、中央を豪快なドリブルで増川が上がってゆくと、左に上がる杉本へパスを出して、中央で待ち受けるが、相手DF2人の厳しいプレッシャーもあってゴール前へ入れることが出来なかった。  
〜後半30分
16分、右からの福岡のCK。福岡・久藤のボールはきっちりと跳ね返す。  
 
 
 
17分、自陣からのカウンターで藤田が中央を上がってゆくと、左に上がる杉本の前のスペースへとパスを送る。そして、これを受けた杉本が左足でマイナスに入れる。ボールが中央に走り込んだ藤田・玉田と抜けてしまうが、僅かに右から送れて走り込んだ中村が左足でダイレクトシュートをネットに突き刺す2点目を決めて、福岡を突き放す。 【得点】
61分 中村(名古屋)
22分、相手陣内左中程の位置で藤田が倒され、FKを得る。この場面で本田が得意の無回転ボールを蹴ってゆくが、意外に変化が付かず、ボールはクロスバーを越えてしまう。 【交代:65分・福】
久藤田中
布部城後
 
24分、中央を持ち上がったスピラールからのパスをタッチラインギリギリで受けた杉本が中へクロスボールを上げてゆく。遠いサイドに上がっていた金が頭で落とすと、中央で山口が詰めてゆくが、相手DFと交錯し、シュート打つことが出来なかった。
25分、左で杉本が寄せてきたDFの足下を抜くパスを入れると、本田がペナルティエリア内へと侵入を図るが、体を当ててきたDFに倒されてしまい、シュートまでゆけず。
 
 
29分、早いリスタートからのボールを中村が持ち込んでゆくと、エリアの近くに待ち受ける玉田に繋ごうとしたが、体勢が逆になってしまい、前を向くことが出来なかった。  
30分、自陣でのこぼれ球を古賀に拾われると、フリーでシュートを打たれるが、これは慌てたのか、クロスバーの上へ大きく外す。 【交代:75分・福】
藪田飯尾
〜試合終了
32分、左でこぼれ球を拾った増川が、左足で縦に上がってゆく金を狙ってパスを出してゆくが、これは戻りながら守備をした福岡DFに頭でカットされてしまう。
34分、左タッチ際で増川のパスを貰って前を向こうとした玉田だったが、厳しいタックルを受けて倒されてしまう。
 
 
36分、左から抜け出してきた福岡・飯尾が楢崎と1対1になると、左足からシュートを狙ってくるが、これはボールが足に引っかかりすぎたのか、逆サイドへと抜けてゆき救われる。
2点リードしていることもあり、名古屋は全く慌てる様子を見せることもなく、この時間帯は守備に気持ちを入れながら、全体的に下がり目になって福岡の攻撃を止めてゆく。逆に名古屋の守備が固くなったこともあってか、福岡は攻め手を欠き、単純にパスを回してゆくしか手だてが見つからない。
【交代:80分・名】
吉村
 
40分、自陣からのロングボールを杉本がDFと競り合うが、スペースへこぼれたボールは福岡のGKが抑えてしまう。
42分、自陣左深く、ペナルティエリアすぐ外での福岡のFK。古賀が低い弾道のボールを蹴ってくると、壁の足下を抜けてくるが、その後ろに詰めていた選手の足にボールが当たって、大きく跳ね返ってゆく。
ロスタイム1、右に抜け出す杉本に合わせて中村からのパスが出ると、これをダイレクトで入れてゆこうとするが、DFに弾かれ右からのCKに。
 
ロスタイム3、右からの玉田のCKのボールはニアで弾かれてしまう。
ロスタイム4、相手陣内左深くでのスローイン。吉村の入れたボールを本田が縦に送ったが、これは味方と意志が通じず。そして、およそ4分ほどのロスタイムを経過、名古屋がホーム最終戦を2-0と、堂々の力の差を見せて勝利を挙げる。
シーズン序盤は苦しい試合を続けていた名古屋だったが、終盤にきて一気に勢いを加速、チーム状態は今季最高の状態と言って良いだろう。この勢いで残り試合を勝ち切り、そして、天皇杯も絶対に制して欲しい。
最後まで熱い声援ありがとうございました。
【交代:89分・名】
山口秋田