2006 Jリーグ ディビジョン1:第32節
 午後2時25分、セレッソのサポーターで埋め尽くされているスタンドに囲まれた中、ピッチを斜めに横切る様にして名古屋の選手達が現れると、スタジアムの角に追いやられる様にして、限られたエリアに陣取る名古屋のサポータに大きく手を振ってゆく。
 日差しが全くないこともあって、気温が上がらず、ピッチ上は冷たい風が吹き抜けてゆくが、降格を何とか阻止しようと、気合いタップリのセレッソサポーターの声援が早くも始まり、スタンドだけは熱い。
 そんな騒然とした中で、名古屋の選手達は黙々とボールを使って体を動かし、気合いを込めてゆく。前節の、浦和との激戦を制した自信からか、どの選手達も表情には落ち着きが見え、プレッシャーは特に感じられない。降格圏争いから先に逃れてしまったことも、選手達にとっては大きな事だったのかもしれない。
 浦和戦で見事なヘディングによるゴールを決めたヨンセンも元気よく体を動かしている。慣れない日本での夏場を無事に乗りきり、今や名古屋の攻撃の核となった彼にとっては、今日の寒さは全く影響ないだろう。もし、今日のセレッソ戦で得点を挙げれば、10ゴール目と大きな節目にもなる。DFの要のスピラールと共に、寒い国の選手らしい、溌剌とした、労を惜しまぬプレイを今日も期待したい。
中盤の選手が多く出場出来ないことで先発に入った須藤や渡邊も今日は大きな見せ所だろう。これまで、先発も幾度か務めたこともあったが、両選手共になかなか定着するまでには至っていないだけに、今日のこの機会を大きなチャンスとして、怪我から復帰後、初先発の吉村と共に、しっかりとチームに溶け込んで、フェルフォーセン流の戦術をしっかりと身に付けていることを、サポーターの前で披露して、今日の勝利に貢献して欲しい。
 そして、完全復調と言っても良い玉田には、切れ味タップリのドリブルで、もう一人のスピードスター・杉本と2人でセレッソDF陣を終始苦しめて貰い、ヨンセンのゴールをアシストするのはもちろんの事、自らもしっかりとゴールを叩き込んで、セレッソサポータを失意のどん底に落とし込んでしまうような、活躍を見せて欲しい。
 2時45分、冷たい風の吹き抜ける中、しっかりと体を解し終えた選手達は、汗が冷えてしまう前に着替えてしまおうと、足早にロッカーへと駆け込んでいった。
〜前半15分
午後3時ちょうど、両チームサポーターでほぼ埋め尽くされた長居第2競技場のピッチに両イレブンが登場すると、これが降格争いを繰り広げているチームへの応援なのかと思われるほど、熱のこもった声援がスタンドを飛び交い始める。
今日は上下白のアウェイユニフォームで臨む。前半は右エンドの名古屋のキックオフで試合開始。
先発は、GK守護神・楢崎、DFは右から大森、スピラール・増川、渡邊の4バック。MFは、右に須藤、左に山口、中央守備的な位置に吉村、FWはヨンセンを中央に、杉本・玉田の3トップ、4-3-3の布陣だ。
 
 
2分、右でヨンセンが下がってボールを受けると、杉本へとパスを送ろうとするが、厳しいマークにボールを奪われてしまう。
3分、右タッチ際から杉本がクロスボールをゴール前に蹴り入れてゆくが、これはDFがヨンセンが走り込んでくる前にカットしてしまう。
4分、相手陣内から、セレッソ・下村が左に上がるセレッソ・ゼ・カルロスの前にロングボールを送り込んでくるが、これはオフサイド。
 
 
5分、相手パスをカットした大森が前へと上がりながら、スルーパスを出して杉本を走らすが、これはオフサイドに。
7分、セレッソの右中程でのFK。ゼ・カルロスがゴールに向かって来るボールを直接蹴って狙ってきたが、ポスト左に。
9分、右深い位置でのボールをセレッソ・大久保がキープしたボールを受けたセレッソ・宮本がマイナスに入れたボールを下村がミドルシュートを打ってくるが、これは精度を欠く。
 
 
11分、中央で玉田の落としたボールをスピラールが長いボールを蹴って、DFとの競り合いから抜け出す杉本の前のスペースへと送ってゆくが、DFへのファウルを取られてしまう。  
14分、ゴール前でボールを受けたセレッソ・西澤が楢崎の飛び出しを切り返してかわすと、左足からのシュートを決め、セレッソに先制を許してしまう。 【得点】
14分 西澤(C大阪)
〜前半30分
16分、相手陣内中程中央やや右寄りの位置でのFKのチャンス。玉田がこれを直接狙おうと左足から速いボールを蹴るが、壁に入った選手にカットされてしまう。こぼれ球をスピラールがダイレクトで相手DFの頭上に放り込むと、残っていた吉村が競りに入るが、ファウルに。  
 
18分、中央で下がってボールを受けに来た大久保が前に送ろうとしてくるが、左から渡邊がしっかりこれをカットして、相手にチャンスを作らせない。
19分、右から杉本の絶妙のクロスにニアでヨンセンが走り込んだが、足を出すタイミングが合わず、逆サイドに抜けてしまう。これを左で拾った山口が寄せてきた渡邊に送ると、ダイレクトでゴール前へと入れてゆくが、今度は前に出たGKに抑えられてしまう。
 
 
23分、右からのセレッソのCK。セレッソ・古橋の右足からのボールは、ニアサイドに詰めていたヨンセンが頭で大きくクリアしてゆく。
24分、玉田、杉本、そして左の渡邊へとパスが繋がると、これをゴール前に上げてゆくが、遠目に待っていたヨンセンへは届かず。
26分、ヨンセンが左の縦のスペースへと頭ではたいたボールを杉本がスピードに乗って持ち上がってゆくが、寄せてきたDFに体を入れられてしまい、チャンスに繋ぐことが出来なかった。
 
 
28分、中央で西澤へ入ったパスがこぼれたところで吉村がボールを拾うが、西澤への増川のファウルに。
29分、この日、早くも2枚目の警告を受けた渡邊が退場してしまい、名古屋は10人で残り時間を戦うことに。
30分、ゴール前へのこぼれ球に大久保がシュートを狙ってくるが、コースに入った楢崎がボールを足に当てて跳ね返し、ゴールを守る。
 
〜前半終了
 
 
31分、左から抜け出した杉本のクロスがしっかりとミートしなかったため、ゴール前へと転がってきたボールを、相手DFがクリアしきれないところに右から飛び込んだヨンセンがダイレクトでボールを相手ゴールに突き刺し、1-1の同点とする。 【得点】
31分 ヨンセン(名古屋)
 
34分、右に上がってきたセレッソ・山田がマークに付いた山口を振り切って右足でゴール前へと入れてくるが、ここはスピラールが頭で弾き出す。
36分、セレッソに押し込まれ、ボールを細かく繋がれるが、タイミング良くボールを奪ったスピラールが杉本に渡すと、これをダイレクトで大きく前線に蹴り出してゆくが、誰もこれは追い付くことが出来なかった。
 
 
38分、左からのセレッソのCK。古橋のボールに中央に何人か寄せてくるが、前に出た楢崎がパンチングでボールを叩き出す。
39分、右タッチ際で玉田が大久保にボールを奪われると、これを中央の古橋に送り、さらに縦に走る西澤へと繋ごうとしてくるが、パスが長く、触ることが出来ず救われる。
この時間帯は、セレッソがゆっくりとボールを回す名古屋の選手を執拗に追いかけて高い位置で奪おうとしてくるが、落ち着いて回しながら、相手にチャンスを与えない状況が続く。
 
 
43分、エリアすぐ外右の位置で、西澤がDFに囲まれながらも間を抜くパスで古橋をゴール前に走らせてくるが、楢崎がしっかりとこのボールに反応し、シュートに来る前にスライディングで抑える。
ロスタイム1、CKのクリアが中途半端になったところをこぼれ球を拾われると、左から走り込む古橋にパスが繋がり、右足からのシュートを許すが、DFが体をしっかりと入れてこのボールを弾き出して、セレッソへの追加点を阻止する。そして、前半は1-1で終了。
1人少なくなってからは、相手の攻勢に晒されてしまったが、セレッソDFのミスに助けられる形でゴールを奪い、辛うじて前半で同点に追い付くことが出来た。しかし、後半45分、1人少ないことは確か。しっかりと守って、何とか追加点を与えない様にしてゆきたいところだ。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は左エンドの名古屋。ボールは右エンドのセレッソからスタート。DFは右から大森・秋田・スピラール・増川の4バックとする。 【交代:45分・名】
玉田秋田
1分、左の下がった位置でパスを受けた大久保が、右足で前にスペースを見つけてシュートを打ってきたが、これはコースに走り込んできた相手選手に当たる。名古屋が攻撃の選手を1人代えて、DFの選手を入れて守備的にしたこともあり、セレッソは立ち上がりから攻勢に出てくる。  
 
4分、ゴール前へ入ったクロスを中央で西澤がヘディングシュートを狙ってくるが、これは楢崎が正面でキャッチ。
6分、左からのセレッソのCK。古橋が短く出したボールを宮本がパス交換で抜けると、深い位置からゴール前へと入れてくる。中央でヘディングシュートを西澤が狙ってきたが、これはクロスバーの上へと抜ける。
 
 
10分、中央でボールを持って前を向いた大久保からのスペースへのパスを山田が拾いに来るが、ここは厳しくマークに付き、中へと入れさせることはなかった。  
13分、ゴール前でパスを受けて前を向いた西澤がシュートを狙ってこようとしたが、鋭い寄せをスピラールが見せて、大きくクリアしてゆく。 【交代:55分・大】
山田名波
〜後半30分
17分、左に抜け出したセレッソ・山崎の左足からのクロスは、中央でスピラールが高い打点で頭で縦に弾き出してゆく。
19分、セレッソ・山崎・ゼ カルロスがボールを繋ぎながら、エリア近くで待つ、大久保・西澤にパスを入れようとするが、秋田・スピラールがしっかりと体を寄せて前を向かせない。
 
 
21分、左から強引に突破を図った古橋が左足で、ゴール前に落としてくるが、これはセレッソの選手は誰も詰めることが出来ず。
22分、自陣からの速いカウンター攻撃。ヨンセンからのロングパスを受けた杉本がGKと1対1に。しかし、左足からのシュートはジャストミートできず、力無く転がるボールを戻ってきたDFにクリアされてしまった。
 
 
24分、セレッソの左からのCK。古橋のボールが飛び出した楢崎の指先を抜けて反対サイドに抜けてゆくが、ここでも誰も詰めてくる選手が無く、助けられる。
26分、中盤での浮き球を競り合うが、ヨンセンが上手く体を入れて奪うと、タッチ際の津田へと送ってゆくが、DF2人に囲まれてしまう。
【交代:67分・名】
杉本津田
【交代:73分・名】
須藤青山
30分、右からのCKのチャンス。吉村からのボールにスピラールが頭から飛び込んでヘディングシュートを狙うが、僅かにクロスバーの上へ外れてしまう。 【交代:75分・大】
宮本河村
〜試合終了
33分、左で増川からの縦パスをDFを背負って受けた津田が何とか前を向こうとするが、エリア近くでの厳しい奪い合いでファウルを取られてしまった。
34分、右からセレッソ・河村の放り込んできたボールを中央で柿本が体を張ってこれを競り勝とうとしてくるが、秋田がしっかりと押さえ込んでボールにすら触れさせなかった。
【交代:76分・大】
西澤柿本
 
37分、右で津田が粘っていたところを寄せた青山が拾って、これを抜け出してクロスを狙っていったが、ゴール前のヨンセンには届かなかった。
39分、青山のスペースへのロングボールを拾った津田がゴール前へとクロスを入れてゆくが、これには誰も詰め切ることが出来なかった。
40分、相手陣内右中程でのFK。大森がゴール正面へと入れてゆくと、中央でヨンセンが頭で合わせてゆくが、その前のプレイで警告を受けてしまう。
 
 
名古屋がしっかりと引いてゴール前を固めていることもあり、セレッソは攻め手が無く、攻撃も単調気味になってきている、この時間帯。名古屋としてもしっかりと凌いでゆきたい。
44分、右からの古橋のボールを遠いサイドに上がっていた河村が頭でゴール前へと落としてくるが、中央で大久保が詰めてくる前に落ち着いてクリア。
ロスタイム1、名波の入れてきたボールを拾った古橋がミドルを狙ってくるが、しっかりとDFが体を入れて、これを跳ね返す。
 
 
ロスタイム2、相手陣内中央でFKを得るが、ここは慌てることなく、短く出して時間を掛けてゆく。
ロスタイム3、右からのセレッソのCK。古橋のニアへのボールは大森がクリアしてゆく。そして、最後、こぼれ球を右から古橋が放り込んできたところを飛び出した楢崎がパンチングで弾き出したところで主審の右手が上がり、試合は1-1のドローに終わる。
 
 
しかし、セレッソに先制を許しながらも、60分以上を10人で戦いきり、ヨンセンの2試合連続となるゴールで追い付き、最後までセレッソの攻撃を凌ぎきった名古屋が価値ある勝ち点1を手に入れた試合だったといえる。
最後まで熱い声援ありがとうございました。