2006 Jリーグ ディビジョン1:第31節
 それまでは、反対側のバックスタンドにいるサポーターのざわめきが届くほど静かだった豊田スタジアムだったが、午後1時20分、名古屋の選手達がピッチへと現れ始めたとたんに、まるでアウェイのスタジアムに紛れ込んだのかと間違うほどの、浦和のサポーターからの怒号がスタジアムを包んでしまう。しかし、名古屋サポーターも負けじと太鼓を打ち鳴らしながら、大きく手を振りながらピッチ内へと広がる選手達へ声援を送ってゆく。
 現在勝ち点65の、首位・浦和に対し、勝ち点38、12位の名古屋は数字だけ見れば大きく差をつけられてしまっているが、リーグ戦では、千葉・大分という上位をしっかりと叩いて2連勝を挙げ、天皇杯4回戦も制して、ここ最近は3戦3勝と好調だ。そして、長らく怪我で離れていた玉田も、今は今季最高とも言えるフィット感を見せて、完全復活をアピール、絶好調のヨンセン・杉本と組む3トップはリーグ屈指の破壊力を秘め始めてきた。今日は固い守備を誇る浦和も、相当警戒して臨んでくることだろう。
 前節の警告により、今日は金に代わって藤田が先発に戻ってきた。圧倒的な決定力を持つワシントンばかりに目がいきがちだが、その後ろの選手達もスピードに乗った攻撃をドンドン仕掛けてくる。特に長谷部・ポンテ・山田等、ひと癖もふた癖もある選手達を、藤田が周りの選手を上手く統率して、どう止めてゆくかに、今日の勝利の鍵が潜んでいそうだ。
午後1時45分、スタジアムのアナウンスも殆ど聞き取れないほどの、太い声と太鼓の音がスタジアムを騒然とさせている中、試合前のアップを終えて、集中力をしっかりと高めた選手達は、1人また1人と、慌てる様子を見せることなく、ロッカーへとしっかりとした足取りで向かっていった。
試合前、10月度の月間ランクル賞が発表され、スピラール選手が受賞しました。
〜前半15分
相変わらず続く、浦和のサポーターの声援の中、フェアプレイフラッグのちびっ子達が入場を始めると、それまで冷え込んでいたスタジアムの空気が熱を帯び始めてゆく。そして、名古屋のサポーターの歌い上げる応援歌にのせて、両チームイレブンが審判団を先頭に入場。豊田スタジアムは、緑の芝生を囲んで真っ赤な波が渦巻いてゆく。
右にエンドを取った浦和に対し、上下赤のユニフォームに身を包んだ名古屋。前半は、アウェイの浦和のボールで試合が始まる。
今日は、GK守護神・楢崎、DFは右から大森・スピラール・増川・本田、MFは藤田を中央に、右に中村、やや左に山口、FWはヨンセンを中央に、右に杉本、左に玉田の3トップ。4-3-3の布陣だ。
 
 
2分、藤田からの裏へのロングボールに杉本が飛び出してゆくが、このボールは相手GKが前に出て抑えてしまう。
3分、中央で浦和・ポンテが下がって右のスペースへと出したスルーパスに浦和・山田がフリーで受けると、シュートを狙ってくるが、本田がしっかりとスライディングに入ってボールを跳ね返す。
5分、右に下がって、浦和・平川のパスを受けた山田が裏へのパスを入れてくると、浦和・ポンテが抜け出してくるが、ここは楢崎がしっかりとボールを抑える。
 
 
7分、左で藤田からの縦パスに抜け出そうと玉田が前を向くが、パスはその前にカットされてしまう。
8分、本田が左でパスを受けると、玉田とポジションを代えていた杉本へパスを送る。これをダイレクトでゴール前へと入れて、ヨンセンへと繋いでゆこうとしたが、GKが抑えてしまう。
10分、左で藤田の落としたボールを本田がゴール前へと入れると、ニアで中村、中央でヨンセンが待ち受けるが、ボールは届かず。
 
 
11分、左サイドで藤田のパスを受けた玉田がDFをかわして上がってゆくと、左足からのボールをゴール前へと入れてゆくが、味方までは届かず。立ち上がり、浦和が早い展開で名古屋ゴール前へと攻め上がって来たが、名古屋の選手達は慌てることなくこれに対応、良い形で試合に入ることが出来たと言えよう。
14分、中央へ左から迫力のあるドリブルで浦和・ワシントンが上がってくると、左についてきた選手にパスを送ろうとしたが、ここはスピラールがコースをしっかりと読んで、パスを弾き返してゆく。
 
〜前半30分
17分、右に上がってきた大森からのパスを受けたヨンセンが中へと放り込んでゆこうとしたが、これは寄せてきたDFに弾かれてしまう。
18分、相手陣内右深くでのFK。玉田がニアに詰めていた本田めがけて蹴っていったが、体を入れた浦和DFにボールを弾き出されてしまう。
19分、中央で杉本がパスを受けると、右のスペースへと上がってくる玉田にパスを送ってゆく。これを寄せてくるDFをかわしながら入り込んでゆこうとしたが、2人3人と厳しく囲まれ、ボールを失ってしまう。
 
 
21分、右からドリブルでワシントンが本田をかわして入り込んでくると、角度のないところからシュートを狙ってくる。楢崎の体の横を抜けたシュートだったが、左ポストに助けられる。更にこぼれ球をゴール前へと入り込んできた浦和・長谷部、山田等がシュートを狙ってくるが、殆どの選手がDFに入ってこれを止め、最後は、スピラールが大きくクリアしてゆく。  
 
23分、右のオープンスペースへのロングボールを長い距離を走っていった杉本がギリギリで追い付いて、浦和・ネネをかわしてゴール前へと入れたが、このボールは味方が間に合わず。
26分、大森からの縦パスをヨンセンが背負ったDFを上手くかわして縦に送ると、中央に藤田が走り込んでゆく。しかし、両サイドをDFに阻まれ、ボールを受けることが出来なかった。
 
 
28分、右深い位置でフリーでパスを受けた浦和・ポンテが中央に詰めるワシントンへとパスを入れるが、これは足下に収まらず、逆サイドへと抜けてゆく。
29分、本田からのボールを受けた玉田が足下でキープしながら、浦和陣内深く攻め入ったところで倒され、左45度の好位置でFKを得る。
30分、そしてこれを本田が直接狙って蹴っていったが、ボールは抑えが効かず、クロスバーの上へ抜けてしまう。
 
〜前半終了
33分、本田が玉田からのパスを受けて縦に勝負をかけてゆくと、左足でゴールライン際からクロスを狙っていったが、これはラインを割ってしまった。
34分、縦パスをヨンセンが落として寄せてくる中村に預けると、これを右タッチ沿いに待ち受ける杉本へ送ってゆく。ワンタッチでボールを寄せてきた選手をかわそうとしたが、ラインを割ってしまった。
 
 
36分、藤田の相手DFの裏へのボールに杉本が抜け出そうとしたが、浦和DFが反転しながら、右足でクリアしてしまう。
37分、右深くでヨンセンからのボールを受けた中村が左足でエリアの外からシュートを狙うが、これは相手GKの守備範囲内。
39分、中央をボールを持って上がってきた浦和・ポンテが右に抜け出してゆくワシントンにラストパスを入れてくるが、増川がコースをしっかりと消してゆき、相手のシュートミスを誘う。
 
 
41分、相手陣内右でのルーズボールを杉本がネネと競り合いにゆくが、相手へのファウルを取られてしまう。
42分、右から浦和・山田がドリブルで中へと流れて入ってくると、シュートコースを探しに来るが、大森がきっちりと体でこれを止めに入る。
 
 
44分、左から上がってきた浦和・内舘のパスを貰った浦和・三都主の大きなクロスポールには、浦和の選手は誰も入ってこない。そして、前半は互いに一歩も譲ることなく、両チーム無得点、0-0で試合を折り返す。
立ち上がりの相手の攻撃をしっかりと抑えたことで、良い守備で試合に入れたことが選手達に落ち着きを与えたようで、前半は危なげなく試合を進めたと言えよう。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は右にエンドを入れ替えた名古屋のボールで試合再開。
1分、左の縦のロングパスを杉本が拾うと、そのまま前へ抜け出し、ゴール前へと左足からクロスボールを入れてゆくが、これはヨンセンが飛び込んだが間に合わず。
2分、右からの浦和のCK。三都主の速いボールは、ニアのヨンセンが頭で弾き出してゆく。
3分、右からの浦和のCK。今度はポンテが右足で遠いサイドに逃げてゆくボールを蹴り入れてきたが、スピラールが頭で弾き出してゆく。
 
 
4分、本田が縦に落としたボールをヨンセンが右足で、相手DFの裏へと蹴り入れ、これを杉本が狙いにゆくが、ここは副審の旗が上がっていた。
5分、右にフリーで上がってくる浦和・平川の前にパスが通ると、右足からダイレクトでクロスを入れてくる。ゴール前でワシントンが頭で狙って待ちかまえていたが、スピラールが体を上手く入れて弾き出してゆく。
6分、スピラールがスパイクの交換でピッチを離れている間に浦和のカウンターを受けると、ワシントンが中央で右足からシュートを放ってくる。横っ飛びした楢崎の指先を抜ける、あわやというコースに飛んだボールだったが、ポスト右を抜けてゆく。
 
 
8分、右からの浦和のCK。ポンテの右足からのボールに闘莉王が頭から飛び込んできたが、楢崎が体当たりを見せて、これをパンチングで弾き出してゆく。
10分、左タッチ沿いを本田が浦和・鈴木をかわして上がってゆくと、杉本に縦パスを送ってゆく。寄せてきたDFをかわして右足でクロスを入れた杉本だったが、中央のヨンセンには届かず。
12分、左からのCKのチャンス。玉田が左足から入れた速いボールをニアでスピラールがねじ込もうとしたが、これはマークに付いていたDFに弾かれる。
13分、相手陣内右深くでのFKのチャンス。玉田がワンバウンドする速いボールを入れると、ニアで増川が飛び出すが、伸ばした足にはタイミングが合わず、ボールに触れられず。
 
 
15分、右にフリーで上がるワシントンにパスが通るとシュートを右足から狙ってきたが、コースに飛び込んだ増川がしっかりと弾き返して、ゴールを死守してゆく。  
〜後半30分
16分、右に上がる中村からのゴール前へのボールはニアで跳ね返されてしまう。
17分、左からドリブルで抜け出した浦和・山田と楢崎が1対1になるが、山田のシュートはしっかりとコースを読んだ楢崎が止め、ゴールを割らせることはなかった。
 
19分、縦に入ったパスをヨンセンが上手く落とすと、玉田がこれを拾って縦に入り込んでゆこうとするが、味方へのスルーパスを選択、縦に入れようとしたが、浦和の守備の網に掛かってしまう。 【交代:63分・名】
藤田吉村
 
20分、自陣右中程での浦和のFK。三都主がニアを狙ったボールを蹴ってきたが、代わって入った吉村が頭で跳ね返す。
22分、浦和の右からのCK。ポンテの入れたボールはしっかりとクリアしてゆく。
23分、左に下がってパスを受けたヨンセンがワンタッチで縦に送ると、玉田が上手く抜け出したように見えたが、オフサイド。
 
25分、右からのCKのチャンス。中村の入れた速いボールは守備についていたワシントンにクリアされてしまう。 【交代:70分・名】
玉田渡邊
 
27分、右に上がった大森からゴール前に待っていたヨンセンにクロスボールが入るが、これの前のプレイで相手DFへのファウルを取られてしまう。
29分、左タッチ際で山口が中村とのパス交換で縦に抜け出すが、中村のパスを相手DFに弾かれてしまう。
【交代:71分・浦】
山田小野
〜試合終了
31分、相手陣内深くでの右からのスローイン。吉村が入れたゴール前へのボールを杉本が競り合いにゆくが、体をぶつけたDFへのファウルを取られてしまう。
33分、右タッチ際でボールをキープして縦に抜け出そうとした浦和・小野だったが、渡邊が厳しい寄せを見せて潰してゆく。
 
 
 
 
【得点】34分、左でこぼれ球を拾った本田のゴール前へのクロスボールをドンピシャリで合わせたヨンセンのヘディングシュートが浦和のゴールを揺らし、ついに均衡が破れるゴールが、それも名古屋に生まれる。
36分、左に小野のパスを受けた三都主が右足からゴール前へ入れてくると、中央でポンテが頭で狙ってくるが、頭上を抜けてゆく。
38分、自陣からのロングボールを左で受けた杉本が一気に上がってゆくが、最後エリア内へと入ったところで、DFにボールを奪われてしまった。
【得点】
79分 ヨンセン(名古屋)
 
41分、自陣エリア内での浮き球をワシントンが反転しながら右足からシュートを打ってくるが、これはボールに力が無く、楢崎が正面で難なく抑えてゆく。
42分、相手陣内左でボールを受けた渡邊が左足からクロスを狙ったが、これはDFに弾かれてしまう。
43分、右に上がってゆく中村が、縦に勝負を仕掛け、相手エリア内へと入り込んで右足からシュート気味のクロスを入れるが、2人の選手が飛び込んでいったが、誰もこれには触れることが出来なかった。
44分、右から浦和・鈴木の入れたボールがゴール前でこぼれるが、須藤が体を張って大きく右足でクリアしてゆく。
【交代:84分・名】
杉本須藤
【交代:84分・浦】
ポンテ田中
 
ロスタイム1、自陣からのロングボールを前線で体を張ったヨンセンが倒れながらボールを競りにゆくが、これはファウルを認めてもらえず。
ロスタイム2、ゴール前の浮き球がルーズになったところで、こぼれ球を闘莉王が倒れながら右足で放ったシュートが枠を捕らえそうになるが、ポストに詰めていたスピラールがこれを跳ね返し、ゴールを守ってゆく。そして、約2分間のロスタイム。相手の猛攻を最後まで我慢した名古屋が、首位・浦和を1-0で下し、見事な勝利を飾る。
全選手が高い集中力を見せ続け、少ないチャンスを生かして取ったヨンセンの得点を守りきった今日の勝利は、最高に価値ある、大きな大きな自信に繋がる勝利と言えよう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。