2006 Jリーグ ディビジョン1:第28節
 午前中から続く強い日差しが、午後12時25分、最後の調整の為にピッチへと現れた選手達に照りつけている。予想以上に強い今日の日差しは、運動量の多い甲府のサッカーを戦ってゆくには、意外に敵に回ることになるかもしれない。そして、遠く観戦に訪れた名古屋サポーターの陣取るアウェイスタンドへとサインを入れたマスコットボールを投げ入れ、大きく手を振って声援に応えると、芝生に広がりウォーミングアップをスタートさせる。ともすれば、気持ち良い天気の中でのキックオフを迎えると言うことで、気持ちが緩みがちになりやすくなってしまいそうだが、今日の対戦相手・ヴァンフォーレ甲府は怒濤の攻め上がりが信条の、徹底的な走るチーム。開始からしっかりとこれを受けてゆこうと、アップ中から集中していることが伺える。
 2人1組でボールを使って体を解し終えると、狭いエリア内でボール回しを行って、アップを仕上げてゆく。前節の清水戦では、久し振りに前目のポジションということもあり、攻撃に何度か顔を出していた山口がキビキビとした動きを見せ、コンディションが良いところをアピールしている。また、山口や金以上に攻守に渡り、大事な場面で持ち前のキープ力と速い判断を見せて、チームの中盤を引っ張った藤田も軽快にボールをさばいている。幻に終わってしまった清水戦のゴールを、今日は本物にして欲しいところだ。
 12時45分、既に試合前の練習時間は終了を迎えているはずだが、名古屋の選手達は名残惜しそうに、何度もボールをドリブルしたり、味方からのパスに応えたシュート練習を繰り返し、気合いを高めている。特に攻撃の柱・ヨンセンは、ミドルレンジからのシュートを何本も蹴り入れるなど、相当に気持ちが乗っていることを感じさせてくれる。彼の真面目さが今やチームに浸透し、雰囲気を大きく変えてくれただけに、早い時間帯にゴールを決めてくれれば、全員が乗って試合を進められることは間違いないはずだ。
〜前半15分
良く晴れ渡った秋の日という事もあり、多くの甲府サポーターが詰めかけたスタンドから、一斉に声援が沸き起こり、タオルマフラーを打ち振り始めると、それに呼応するように名古屋サポーターも声援に熱が入り始める。そして、その熱い雰囲気の中へ両チーム選手が入場、スタジアムのボルテージが一気に上り詰めてゆく。
前半、左エンドのホーム・甲府に対し、右にエンドを取った名古屋。ボールはのキックオフで試合が始まる。
先発メンバーは、GK守護神・楢崎、DFは大森・スピラール・古賀・本田の4バック、MFは中央に藤田、やや前右に山口、左は金、FWはヨンセンを中央に中村と杉本がその下に陣取るという、4-3-3の布陣だ。
 
 
1分、左でヨンセンの落としたボールを藤田がワンタッチでDFの裏へ出すと、本田が胸トラップから右サイドのスペースへパスを入れるが、これは誰も詰めることが出来ない。
2分、左から甲府・石原が勝負を仕掛けてくるが、スピラールがきっちり寄せて、ミスを誘う。
4分、中央で甲府・藤田からのパスが甲府・宇留野に入るが、金と山口が厳しく寄せてこれを潰す。
 
 
5分、自陣中程左寄りの位置での甲府のFK。甲府・山本の回転の効いたボールがDFの間を抜けて楢崎の下へと飛んでくると、一旦は上に弾くが、落ち着いてボールを抑え、ゴールを守る。
7分、左サイドで相手DFの拾ったセカンドボールをヨンセンがカット、チャンスになりかけるが、トラップしたボールがタッチを割ってしまう。
甲府は、セカンドボールを拾うと、早く前線のバレーへとボールを当てて、そのボールを拾って仕掛けてくるが、DF陣は落ち着いてここまでは対処、慌てることなく試合を進めている。
 
 
11分、相手陣内でヨンセンの競り勝ったボールを本田が縦に送ると、これに杉本が反応してゆくが、DFにコースを読まれカットされてしまう。
12分、自陣深く右タッチ際での甲府のFK。甲府・藤田の右足からのボールは大きく壁を越えて、更にゴールラインを越える。
13分、金からのパスを受けたスピラールが左スペースへと出したロングボールを中村が拾いにゆくが、これは相手DFが体を入れ、触れることが出来ず。
14分、左タッチ際で、藤田が杉本からのパスを受けて中へと入れてゆこうとしたが、DFの足に弾かれてしまう。
 
〜前半30分
16分、ゴール正面エリア前でのルーズボールを、甲府・杉山がシュートに来るが、これは楢崎が正面で止める。
17分、バレーの戻したボールに走り込んだ甲府・藤田のミドルシュートは、楢崎が弾き出してゆき、右からの甲府のCKに代わる。
18分、甲府・石原の左足からのCKのボールは大きくゴール前を抜け、タッチの外まで飛んでゆく。
 
 
19分、左から細かいステップで甲府・バレーがドリブルを仕掛けてくるが、シュートの瞬間に古賀が飛び込んでこれを弾く。
20分、甲府の右からのCK。短く出したボールを石原が左足で放り込んでくるが、中央でクリアする。
21分、左からの甲府のCK。甲府・藤田の入れたボールは楢崎がパンチングで弾き出す。右からの甲府のCK。甲府・石原のボールに中央でビジュが合わせてくるが、これはしっかりと跳ね返す。
立て続けの甲府のセットプレーが続いた時間帯だったが、名古屋はしっかりとこれを凌ぎ、失点することなく、集中したプレイを続けている。
 
 
23分、左サイドからカウンター攻撃を仕掛けると、前で本田のパスを貰った藤田のパスを本田がクロスを放り込む。逆サイドを上がってきたヨンセンがこれに頭を合わせていったが、甲府DFの高さに弾かれてしまう。
25分、大森のロングボールを合わせたヨンセンからのこぼれ球を藤田が拾いにゆくが、これは足下に収まらず。
27分、右に開いた杉本に金からパスが通ると、これを自ら持ち込んで中央に抜け出そうとした藤田にパスを送るが、甲府の早い戻りに藤田が潰されてしまい、このチャンスを生かすことが出来なかった。
 
 
29分、古賀からのパスをヨンセンが頭でスペースへと送って杉本を走らせるが、ここは甲府の守備が高い集中力を見せ、ボールをカットしてしまう。  
〜前半終了
31分、右にポジションを変えて上がってきた甲府・杉山のゴール前へのクロスはスピラールが判断良くゴールラインの外へ蹴り出す。
32分、本田がパスコースを捜しているところを狙わられ、甲府・茂原にボールを奪われると、すかさずDFの裏へとパスを入れてくるが、スピラールが鋭い反応を見せ、これをしっかりとカット。
34分、右でスピラールのタックルをかいくぐった甲府・杉山がフリーでゴール正面へパスを入れてくるが、ここは楢崎が正面でキャッチ。
 
 
37分、相手陣内深く右でこぼれ球を拾った杉本が左足からのクロスをゴール前へ入れると、ヨンセンが頭で落としたところに藤田が飛び込むがこれはシュートまで行けず。
38分、右サイドで粘りを見せた金がDFをかわして、左足からのクロスに中央でヨンセンがシュートを狙うがこれは大きく浮いてしまう。更にこのボールに中村が足を伸ばして合わせたが、ボールに力が無く、相手GKが難なく抑えてしまう。
40分、相手陣内中程左寄りでのFK。このボールを本田が左足から力強いボールを蹴ってゆくが、ボールに抑えが効かず、大きくゴールを越えてしまう。
42分、自陣左中程での甲府のFK。甲府・藤田のゴール前へのボールはスピラールがしっかりと弾き返す。
43分、自陣で相手ボールを奪って中村がそのままドリブルで持ち上がると、左から抜け出す杉本に合わせてラストパスを出すが、僅かにタイミングがあわず、オフサイドの判定。
 
 
44分、左タッチ際を甲府・宇留野が抜け出して、左足からゴール前へとボールを入れてくるが、楢崎の正面。
ロスタイム1、前線へと送ったボールをヨンセンが落としたところを藤田が狙うが、相手DFの寄せが早く、大きく蹴り出されてしまう。
そして、前半は0-0で終了。
圧倒的なシュート数の甲府に対し、名古屋も苦しい展開が続いたが、しっかりとこれを集中して対応し、失点することなく試合を折り返したことは、後半に向け大きな自信になったはずだ。
後半は疲れからスペースが出来きてくるはず。高い位置で良い形でチャンスを掴んで、攻撃に、そして、ゴールへと結びつけてゆきたいところだ。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、左にエンドを代えた名古屋のキックオフで試合が再開する。前半は予想通り、甲府の早い攻め上がりもあり、守備に終始する展開だったが、しっかりとこれを凌いだことは大きい。
1分、オフサイドギリギリのタイミングで抜け出した杉本が深く持ち込んで行くと、右からクロスを入れてゆく。これを相手GKが弾いたところに左からヨンセンが飛び込むが、ボールはポストの僅か外へ。
2分、右のスペースへのロングボールを拾った甲府・杉山が中を狙ってくるが、体を寄せた本田がボールを弾き返す。
 
 
4分、左からの甲府・石原の速いクロスボールに飛び込んだバレーが右足で合わせようとしてくるが、ボールは逆サイドへ流れる。
5分、右を持ち上がった大森のクロスに正面からヨンセンが飛び込んだが、GKが飛び出してボールをキャッチしてしまう。
7分、左で古賀がボールをキープしているところを削られ、ボールを奪われると、攻め上がった選手に合わせ、甲府の選手が一気に押し上がってくるが、ゴール前へと入れてきたボールは大森が落ち着いて頭でスペースへと弾き出し、このピンチを逃れる。
 
9分、古賀が負傷でピッチを離れて1人少ないところで、左からのクロスボールをゴール正面で甲府・宇留野にヘディングからのシュートを決められてしまい、失点を許してしまう。 【得点】
54分 宇留野(甲府)
 
11分、左からのCKのチャンス。中村の右足からのボールをニアで杉本が合わせようとしたが、寄せていた甲府の選手に当たってしまう。
12分、左からのCKのチャンス。中村のボールに遠いサイドのスピラールが頭で合わせるが、枠には届かず。
【交代:56分・名】
古賀秋田
 
 
 
14分、左に上がった杉本からのゴールラインギリギリからのボールを、中央でフリーで走り込んだ藤田が右足からのシュートを突き刺し、見事な同点を決める。 【得点】
59分 藤田(名古屋)
  【交代:61分・名】
藤田玉田
〜後半30分
17分、左から持ち込んできた甲府・バレーにそのままゴールを奪われ、再び甲府に勝ち越しを許してしまう。
18分、右に抜け出した杉本からのクロスに、中央でヨンセンが飛び込むが、これは弾かれてしまう。更にこぼれたところを左に詰めた玉田が狙うが、枠にはシュートを飛ばせず。
20分、秋田からの右スペースへのボールを受けた山口が切り返して左足でゴール前へ狙ってゆくが、これはDFの頭に跳ね返されてしまう。
【得点】
62分 バレー(甲府)
 
22分、左サイド深いところで本田からのパスを受けた玉田がペナルティエリア内へと侵入してゆくと、DFの足下へのタックルに倒されたように見えるが、これはボールへ行ったとして、PKを得ることは出来なかった。
23分、今度は右に流れていた玉田が、速いドリブルで中へと流れながら左足からのシュートを放ってゆくが、これは惜しくも相手GKの正面。
 
 
25分、相手陣内深くCK近くでのFK。玉田がこれを蹴るが、ニアへのボールはDFに弾かれてしまう。  
26分、左から本田がミドルシュートを狙ってゆくが、これはクロスバーの上を抜けてしまう。
28分、甲府・藤田のスルーパスに、右から石原が抜け出してワンタッチで押し込もうとしてくるが、これは楢崎の正面。
29分、左で杉本の送った縦パスを本田が受けると、すぐに中を狙って入れてゆくが、甲府のDFに跳ね返されてしまう。
【交代:71分・甲】
大西
  【交代:75分・名】
山口吉村
〜試合終了
32分、相手陣内へと上がっていたスピラールが、相手の右スローインのボールを右のスペースへ送って、杉本を走らそうとしたが、タイミングが合わず。
34分、相手パスをカットした杉本が縦のスペースに、味方を走らせようと蹴ってゆくが、これは誰も反応できず、相手に渡ってしまう。
35分、前に上がっているスピラールからのパスを左でフリーで受けた玉田がシュートを狙ってゆくが、これはDFに弾かれてしまう。
【交代:76分・甲】
井上池端
 
37分、左で吉村が縦に送ったロングボールを受けた中村が前を向くと、一気に持ち上がり、ゴール正面に上がってくるヨンセン・杉本へとクロスを狙って蹴るが、ボールを抑えきれず、直接ゴールラインを越えてしまう。
38分、自陣から秋田がゴール前に張っているヨンセンへロングボールを蹴り入れると、これを頭でシュートにゆくが、DFが体を寄せているため、枠に飛ばせない。
40分、玉田がスローインからのボールを走り込んでゆく吉村に繋ぐと、トラップしたボールが相手DFの手に当たるが、これは故意とは認められず。
 
 
42分、大森のスペースへのロングボールにヨンセンが走り込んでくるが、体を寄せてきた甲府・ビジュを嫌おうとしたプレイでファウルを取られてしまう。
43分、中村の縦パスを中央へ入り込んできた本田がワンタッチで縦に送るが、前線にいたヨンセンには届かず。
44分、相手DFのボールを奪おうとスライディングを仕掛けた金がこの日2枚目のイエローを受けてしまい、退場となってしまう。
 
ロスタイム2、スピラールからのロングパスを受けた玉田が左から持ち込むと、最後ゴール正面のヨンセンにラストパスを送る。これをダイレクトで左足でシュートを狙ったが、コースに入ったDFに弾かれてしまい、枠を捕らえることは出来なかった。 【交代:89分・甲】
宇留野須藤
 
ロスタイム3、本田のロングボールを右に上がってゆく玉田が拾いにゆくが、伸ばした足には届かず。そして、試合は甲府の最後まで諦めないしぶといプレイを名古屋が切り崩すことが出来ず、古賀の負傷というタイミングの失点で突き放されてしまった。
名古屋も最後まで諦めることなく攻撃を繰り返したものの、ホームのサポーターの後押しのある甲府の粘り強く守備に跳ね返されてしまい、追加点を挙げることが出来ず、痛い星を落としてしまうことになってしまう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。