2006 Jリーグ ディビジョン1:第25節
午後6時25分、浦和戦の時のようなざわついた雰囲気が少ない、いささか静かな駒場スタジアムのピッチに名古屋の選手が登場する。やはりいつものようなブーイングが無く、ちょっと肩すかしを食ったような雰囲気だが、その分、名古屋のサポーターの選手に向ける声援の大きさを感じさせてくれる。日が沈んで、すっかり暗くなった駒場スタジアムの上空。しかし、その闇の下では水銀灯に彩られた緑鮮やかな芝生の上で、両チームのメンバーが黙々とボールを使って、ウォーミングアップを続ける。
先日、入籍を果たしたヨンセン選手には、「おめでとう」の声が一際多く飛ぶ。前節での負けはもう払拭できたようで、選手達は気合い充分な表情を見せながらアップを進めてゆく。来週には、ガーナ代表との試合に向けたメンバーが発表される。名古屋からは中村だけでなく、本田も十分可能性があるだけに、2人には呼ばれるにふさわしい、好プレイを連発して貰いたい。横浜戦では、予想しない形での2失点で敗戦を喫したが、試合内容は間違いなく名古屋のものだっただけに、上向き始めたチームの雰囲気を高めてゆく為にも、しっかりと自分達のプレイを見せて勝利したい。
ここ数試合、すっかりボランチの定位置を得た藤田。これまでは攻撃的なポジションでの役割が目立っていたが、いまや、バランサーとしての役割でも重要な選手となった。彼の存在が好守に渡りチームを引っ張っていると言っても良いだけに、今日もチームを勝利へと導く大役を彼には果たして欲しい。藤田同様に、好プレイを見せているのが、杉本だろう。持ち前のスピードと労を惜しまぬ走りには、フェルフォーセン監督はいつも絶賛している。再三に渡り、決定的なシュートを放つ場面を見せるだけでなく、アシストでもしっかりと目立っている。あとは結果を残すだけだ。久し振りに名古屋のスピードスターのゴールを今日は見たいところ。
午後6時45分、気温も下がり、過ごしやすくなった駒場のピッチで最後の調整を行った選手達は、満足げな足取りでロッカーへと向かった。
〜前半15分
午後7時ちょうど、大げさすぎる程のBGMに迎えられて、両チームイレブンがスタジアムへ入場を果たすと、両サポーターの詰めるスタンドが賑わいを見せ始める。左エンドのホーム・大宮に対し、前半は右から左へと攻め上がる、上下白いユニフォームの名古屋。試合は、その名古屋のキックオフからスタートする。前節のこともあるので、立ち上がりからしっかりと集中して試合に入りたいところだ。
今日の先発は、GK楢崎、DFは大森・スピラール・古賀の3バック、MFは中央に藤田、その前、右に中村、左に本田、中に山口と金が肩を並べ、FWはヨンセンと杉本という3-5-2の布陣だ。
 
 
2分、自陣右中程での大宮のFK。大宮・小林(大)の入れてきたボールは本田が頭で跳ね返す。
3分、自陣からのロングボールをヨンセンがDFと体を寄せ合いながらも頭でスペースに落としてゆくが、これは金が詰める前にDFがダイレクトでカットしてしまう。
 
 
5分、自陣左中程での大宮のFK。ここでも小林(大)が、今度は先ほどより速いボールを蹴り入れてくるが、守備に入っていたヨンセンが高い打点で弾き出してゆく。ここ3試合、勝ちのない大宮は早い時間帯でゴールを奪って気持ちを楽にしたいのか、立ち上がりから積極的に攻め立ててくるが、名古屋は落ち着いた守備を見せる。
7分、藤田の裏へのパスに飛び出した杉本がゴールライン際で折り返したボールをゴール正面で本田が待ち構えるが、これはDFがカットしてしまう。
9分、右からのCKのチャンス。本田の低い弾道のボールはニアの選手がカットしてしまう。
 
 
10分、左のスペースへと出たボールに大宮・森田が抜け出してくるが、大森が落ち着いてボールをカット。
12分、自陣で大宮・小林(慶)のパスを大森がカットすると、縦のスペースへ斜めに大森が鋭いパスを出してゆくが、これは杉本が俊足を飛ばすものの追い付くことが出来ず。
14分、中盤でのパスを拾われると、すかさず裏へと入れて大宮・桜井を走らせるが、これはオフサイド。
 
〜前半30分
16分、自陣高い位置でボールを持ったスピラールが前線に待ち構えるヨンセンに当ててゆこうと大きく蹴ってゆくが、これはGKまで行ってしまう。
18分、大宮の左からのCK。小林(大)のボールに土屋が中央で待ち構えるが、スピラールが前に出て、頭で弾き出す。
 
 
19分、右サイドで小林(大)がマークに付いている本田を振り切ってパスに抜けてゆこうとしたが、これは本田がファウルを誘う。
21分、大宮の右からのCK。小林(大)のボールに遠いサイドの大宮・冨田が頭で合わせてくるが、大きく浮いたボールは楢崎がキャッチ。
24分、右の縦へのパスに抜け出した杉本からのゴール前への折返しに、中央で金が詰めてダイレクトでシュートにゆくが、これを空振りしてしまい、チャンスを決めることが出来なかった。
 
 
29分、右サイドで抜け出した大宮・西村からのクロスを中央にフリーで飛び込んだ大宮・久永にゴールを決められてしまう。 【得点】
29分 久永(大宮)
〜前半終了
 
 
30分、中盤から飛び出した山口がエリア内でダイレクトにボールを繋ぐと、これを受けた杉本が右足からのシュートを叩き込み、あっという間に同点とする。 【得点】
30分 杉本(名古屋)
 
 
31分、本田の左足からのゴール前へのクロスをヨンセンが頭で合わせ、大きく浮いたボールは相手GKの指先を抜けて枠を捕らえ、僅か2分の間に一気に逆転。ここまで静かな試合展開が、あっという間に慌ただしい点の取り合いへと変わり、スタジアムのボルテージが一気に上がってゆく。
35分、右にポジションを変えていた久永のクロスはスピラールが果敢に前へ出ると、大きく頭で弾き出す。
【得点】
31分 ヨンセン(名古屋)
 
35分、相手DFの足下を抜くパスに左から杉本が飛び出してゆくが、これはオフサイドに。
36分、右からボールを持って中へ流れていった中村のパスを受けた本田が左足でシュートを狙うが、これはDFに当たってしまう。更にこぼれ球に右から山口が詰めていったが、間一髪のところで飛び出したGKに抑えられてしまう。
 
 
40分、中盤でパスを回しながら、名古屋DFラインが上がってきたところを狙って、裏へ出たボールに森田が飛び出してくるが、これはオフサイド。
42分、右に開いたヨンセンへ中村のパスが通ると、これをゴール前へと入れてゆく。相手DFがカットしてこぼれたところを受けた藤田が胸で寄せてくる金に送り、ミドルシュートを金が放っていったが、ボールはDFの壁に阻まれてしまう。
 
 
ロスタイム1、スピラールが競り勝って頭で縦にに送ったボールをヨンセンが頭でスペースへ落とし、杉本が拾いにゆくが、これは相手DFが先に拾ってしまう。
そして、短い時間に立て続けに奪い合った得点以降は、決定的な場面を両チーム共に見せることなく、前半を2-1と1点リードして終える。
 
〜後半15分
前半、先制を許すものの、あっという間の逆転を見せた名古屋。後半は左へとエンドを変え、試合は大宮のキックオフで再開する。
1分、左のスペースへのボールに走り込んだ久永のクロスを逆サイドで森田が待ち構えるが、楢崎が落ち着いてボールを処理する。
2分、右タッチ際で大森のスローインのボールをヨンセンが山口に当てて縦に抜け出そうとしたが、ボールをDFにクリアされてしまう。
 
 
3分、相手陣内右深くでFKのチャンスを得る。中村の速いボールに中央で古賀がタイミング良く入っていったが、その前でDFがカットしてしまう。
5分、楢崎からのロングフィードを杉本が落として左に上がる本田が拾って、もう一度杉本に預ける。このボールを相手GKのポジションを見て、ループシュートを狙う杉本だったが、ボールは思った程に落ちきらず、クロスバーの上を抜けてしまう。
 
 
8分、自陣左すぐの位置での大宮のFK。小林(大)が上がっていた冨田を使おうと狙って蹴っていったが、スピラールがしっかりとマークに付いて体を寄せ、ボールに触らせなかった。
10分、自陣右すぐの位置での大宮のFK。ここでも小林(大)が鋭く落ちるボールをゴール前へと狙って蹴り入れてくるが、ヨンセンが体を張ったクリアを見せる。
11分、大宮の入れてきたロングボールを古賀が頭で跳ね返したところを拾われると、右サイドにフリーでいた桜井にパスが通る。そして、これをシュートを狙ってくるが、ここは古賀・金・本田としっかりと寄せて、シュートを阻む。
 
 
 
13分、右のスペースへのパスを拾った中村がそのまま持ち上がると、鋭いボールをゴール前へ放り込んでゆく。これを中央に走り込んだ杉本がダイレクトで合わせたシュートを相手ゴールネットに突き刺し、3-1と大宮を引き離す得点を挙げる。 【得点】
58分 杉本(名古屋)
〜後半30分
16分、右のスペースへと出たボールを杉本が拾ってゴール前へと折り返すと、これに中央で本田が飛び込むが、これは相手DFが戻って体を入れてしまい、枠へと飛ばすことは出来なかった。
17分、またしても右サイド深く持ち込んだ杉本が鋭いボールを中へと折り返すが、これは中央に待っていたヨンセンには届かず。
【交代:60分・大】
冨田藤本
 
19分、左からドリブルで抜け出していった藤本のゴール前への鋭いクロスに桜井が中央で抜け出してくるが、これはオフサイド。
20分、スピラールからのロングボールを本田がスペースへと落とすと、右から詰めた杉本が拾いにゆくが、これは相手DFが速かった。
 
 
 
 
21分、相手DFが処理をもたつくところを走り込んで奪ってしまった杉本が、そのまま持ち込んでゆくと、DFに体を入れられながらも左足からのシュートを右ポストと、GKの間にねじ込み、何とこの日3点目となるゴールを奪って4-1とする。
24分、大宮の右からのCK。小林(大)の入れたボールは落ち着いてクリアしてゆく。こぼれ球を拾った久永が左から入れたボールは楢崎が果敢に飛び出しパンチングで弾き出し、右でこのこぼれを拾った、小林(大)のシュートも精度を欠き、簡単に跳ね返す。
【得点】
66分 杉本(名古屋)
27分、右で大宮・小林(慶)の縦パスに桜井が抜け出そうとしてくるが、古賀がしっかりと寄せて、オフサイドに仕留める。
29分、相手陣内中程右寄りの位置でのFK。本田のゴールに向かってゆくボールに中央で古賀が詰めていったが、これは目の前でクリアされ、左からのCKに。
【交代:70分・大】
森田若林
〜試合終了
30分、中村からのCKのボールはミスキック気味になってしまい、ニアの選手にカットされてしまう。
31分、右で小林(大)のスルーパスに桜井が抜け出してくるが、古賀がしっかりと寄せてシュートを打たせない。苦し紛れに中央に折り返してきたボールはポジションを下がっていた山口がしっかりと狙って奪う。
 
 
33分、左サイドで本田がボールを持つとすぐさま、中に上がる杉本に預けてゆく。これを左タッチ際を上がる金の前のスペースへと送り込んでいったが、パスが長すぎてしまう。
35分、相手陣内深く右のタッチ際でのこぼれ球を杉本がすかさず拾って中へと放り込んでゆくが、これは名古屋の選手が詰める前にDFがクリアしてしまう。
36分、左からのCKのチャンス。中村の入れたボールは桜井1人残して、全員が戻っていたDFに阻まれてしまう。
【交代:81分・大】
小林(大)アリソン
 
38分、名古屋1人目メンバー交代:
早速、相手DFの裏へのパスに津田が飛び出していったが、これはボールに触る前に旗が上がってオフサイドに。
40分、大宮の左からのCK。大宮・アリソンの入れてきたボールはニアで頭で弾き出す。
【交代:82分・名】
杉本津田
 
42分、右でパスを受けて縦に上がる山口が、中央に待っていたヨンセンにパスを送ると、これを落ち着いて左に上がる須藤へと渡し、更に左に上がる本田へと渡してゆくが、ボールは足下に収まらず、大きく流れてしまう。 【交代:86分・名】
須藤
ロスタイム1、ヨンセンの落としたボールを右で拾った中村が、ダイレクトで縦に送って山口を使おうとしたが、これは山口の反応が遅れ、タッチを割ってしまう。
ロスタイム2、右タッチ際で中村のスローインのボールを受けた津田がDFのマークをかわして抜けてゆこうとしたが、これはファウルを取られてしまう。そして、ロスタイムも全く危なげなく過ごし、名古屋は4-1で力の差を見せつけた勝利でこの日の試合を制する。
ここ数試合、気持ちのしっかりと入ったプレイを見せ続けていた杉本が、ようやく真価を発揮することの出来た今日の試合と言えるだろう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。
【交代:89分・名】
本田渡邊