2006 Jリーグ ディビジョン1:第24節
午後2時30分、心地よい風が吹くピッチに選手達が現れる。それまでは何処かのんびりとした雰囲気だったスタジアムのテンションがようやく上がり始める。
ピッチ横に全員整列すると、アウェイサポーターのスタンドに向け、大きく手を振って一礼を済ませると、選手達は芝生の上に広がってウォーミングアップをスタートさせる。上空も選手達の登場を待ちかねたかのように青空が広がり始め、ピッチに大屋根の影を落とし始める。前節、自身のゴールこそ挙げることは出来なかったものの、3得点全てに絡む、MVPにふさわしい程の大活躍を見せた杉本選手。今週の練習でもスピード溢れるプレイを見せ、目下、コンディションは絶好調と言えるだけに、今日は横浜の守備陣をキリキリ舞いにする活躍を見せて欲しい。
そしてもう1人、前節、チームの中心として、攻守にバランスあるプレイとコーチングでチームの勝利を支えた藤田選手も好調の1人。攻撃に絡む場面こそ少なかったが、今もアップ前から軽快な動きを見せている。勝利には絶対必要な選手として、今日も走り回って貰いたい。すっかり名古屋の攻撃の顔になったヨンセンも今日は気温がそれほど上がっていないこともあり、体が相当に軽そうだ。着実にゴールを重ね、間違いなくチームの攻撃の柱。今日はスタンドからノルウェーの旗を振って声援する、母国のサポーターも練習中から歓声を送っていただけに、大活躍は必至だ。
午後2時45分、1人1人とピッチコンディションを思い思いの方法でチェックし終えた選手達は、足早にスタンドに手を振って、気合いの入った表情を見せながらロッカーへと消えていった。
〜前半15分
白い雲と青い空が入り交じる、秋の天気の中、午後3時ちょうど、大音響に迎えられるように、フェアプレイフラッグに続いて、審判団と共に両チームの選手達が入場してくると、この日最高の盛り上がりを見せ始める日産スタジアム。
ホームの横浜が左エンドに対し、上下白のユニフォームに身を包んだ名古屋は右エンドを取り、左へと攻め上がってゆく。前半はその名古屋のボールでスタート。
今日の先発は、GK守護神・楢崎、DFは大森・スピラール・古賀・渡邊の4人、MFは右に中村、左に本田、中は藤田と金が並び、FWはヨンセンと杉本の2トップ、4-4-2の布陣で臨んでゆく。
 
 
0分、左に抜け上がった横浜・ドゥトラのクロスを遠いサイドの横浜・大島に頭で合わせられ、早々と先制点を奪われてしまう苦しい立ち上がりに。
3分、右で大森の入れたスローインをヨンセンが落とすと、中村がダイレクトで縦のスペースを狙うが、ここは誰も走り込めない。
4分、ヨンセンが左に流して縦に上がると、彼をめがけて本田がクロスボールを入れてゆくが、これは相手GKの正面。
【得点】
0分 大島(横浜)
 
6分、左から横浜・中澤のパスを受けた山瀬が入り込んでくるが、大森が落ち着いてボールを奪う。
7分、スピラールの縦のボールを杉本が落とすと、これを藤田が前線に送るが、これはヨンセンが追いつけず。
9分、金とのワンツーで中へ流れた本田が縦にパスを送ろうとするが、これはDFにカットされてしまう。
 
 
11分、左でバックパスを受けたドゥトラの早いクロスがゴール前に入ると、ニアで奥が頭で流し込もうとしてくるが、これはクロスバーの上へ。
12分、左タッチ際でキープするドゥトラを倒してしまい、横浜にFKを与えてしまう。
13分、このFKを山瀬がゴール前に詰めた横浜・河合に狙って蹴ってくるが、これはCKに逃れた。
14分、左からの横浜のCK。山瀬のボールは本田が頭で弾き返す。
 
〜前半30分
16分、横浜の左からのCK。ドゥトラの左足からのボールは今度は大森が頭でクリア。
17分、楢崎のゴールキックのボールが思った以上に風に乗ると、相手DFの上を越えたところをヨンセンが飛び出して、ループシュートをダイレクトで狙っていったが、ボールは惜しくも、クロスバーの僅か上へ抜けてしまう。
 
 
18分、相手パスをカットした本田が、左からドリブルで入り込んでゆくと、ゴール正面に入り込んだところで足下への厳しいタックルで倒されるが、これは相手のファウルとはならず。
20分、金の左へ送ったパスを本田が相手GKの前へ狙い澄まして蹴り入れてゆくが、逆サイドを上がっていったヨンセンには届かず。
 
 
21分、左サイドを上がっていた渡邊が前を向いてパスを受けると、前線で待ち受けるヨンセンめがけクロスを入れていったが、これは厳しいマークを受けていた為、ボールを受けることが出来ず。
立ち上がりの失点で落ち着く事が出来ず、横浜ペースだったが、20分辺りから名古屋もパスがしっかりと繋がるようになり、徐々にペースを掴み始める。しかし、横浜の自陣への戻りが速く、ゴール前をしっかりと固めている為、なかなか攻撃の糸口が見つからない。
 
 
24分、右から横浜・田中が縦に突破を仕掛けてくるが、本田がしっかりと体を入れ、ボールには触らせず。
25分、相手陣内へとボールをパスを繋ぎながら上がってゆくと、最後中央に流れた中村が左足でミドルシュートを狙うが、これは抑えが効かず、大きくゴールを越えてしまう。
27分、本田が自陣で相手パスを奪うと、そのままドリブルで上がってゆく。左サイドを駆け上がる杉本に合わせてスルーパスを狙ったが、芝生の上をボールが走らず、DFに奪われてしまう。
29分、左からボールを持ち変えて右足でドゥトラが入れたボールは、大きく逆サイドタッチを割る。
 
〜前半終了
31分、右から金の入れたクロスを相手GKが目測を誤り、本田の前にこぼれると、これを一旦中に流し込んで、最後、杉本が右足でシュートにゆくが、DFに当てて枠を外してしまう。
32分、右からのCKのチャンス。本田の入れたボールはDFがクリア。右からのCKに変わる。
33分、右から中村の入れたボールは遠いサイドに待っていたスピラールに届く前にクリアされてしまう。
 
 
34分、右サイド深くに金が勝負を仕掛けると、2度3度と鋭い切り返しを見せてDFをかわしに掛かるが、最後抜け出そうとしたところでボールへのタックルで倒されてしまい、チャンスを作ることが出来なかった。
この時間帯は名古屋が良い形で相手陣内でパスを回しながら攻撃を仕掛けることが出来ているだけに、早くゴールに結びつけてゆきたいところだ。
36分、左に上がっていった杉本のマイナスのクロスをゴール前へ詰めていたヨンセンが押し込んでゆくが、このシュートは相手GKが足に当てて前に弾いてしまい、ゴールにすることが出来なかった。
 
 
38分、ヨンセンが縦に受けたボールを上手く足下に落とすと、反転から鋭く左足を振り抜くミドルシュートを放っていったが、これは僅かにクロスバーの上。
39分、中央を持ち上がってゆく横浜・河合のスルーパスに、奥が飛び出すがこれはオフサイド。
40分、渡邊の縦パスに杉本が横浜・栗原と厳しい競り合いを見せるが、ボールを受けて前を向く前にファウルを貰ってしまう。
42分、左からドゥトラの入れたクロスに大島が飛び込んでくるが、これはオフサイド。
 
 
43分、藤田からの縦パスに本田が頭で相手ゴール前のスペースを狙って落としてゆくが、GKが抑えてしまう。
44分、左サイドのスペースへ出たボールを拾った本田が、得意の左足ではなく右足でクロスを入れると、ヨンセンが詰めてゆくが、ボールはその頭上を抜けてしまう。
そして、前半は立ち上がりの失点の場面以外、名古屋がボールを支配して、試合の主導権を握る場面が目立ったものの、横浜の固いDFに封じられ、ゴールを奪うことが出来ないまま終えることに。
終盤良い流れが生まれてきただけに、後半もその流れで上手く試合に入って、早い時間帯で同点弾、更に逆転ゴールと繋いでゆきたいところ。後半に期待しよう。
 
〜後半15分
エンド入れ替わり、後半は右エンドの横浜のボールで試合が再開する。
1分、右サイド渡邊との競り合いのボールがこぼれたところを横浜・田中が拾いに来るが、ボールはゴールラインを割ってゆく。
2分、左に走る本田に金がパスを通すと、これを中央へと送り込んでゆく。ヨンセンが落としたところを走り込んでいった藤田が貰おうとするが、これはタイミングが合わず。
【交代:45分・横】
吉田
 
3分、左を代わったばかりの横浜・吉田が持ち上がってゆくと、左足からのクロスを入れてこようとしたが、DFが落ち着いて頭でこれを処理、楢崎に渡してゆく。
4分、中央の中村から左に上がる本田へパスが出るが、これはタイミングが合わず、相手にカットされてしまう。
5分、左から渡邊が速いクロスを放り込むが、ヨンセンは厳しいマークに遭い動くことが出来ず。
 
 
 
6分、中央から金のミドルシュートを相手GKが弾くと、右で大森がこぼれ球に詰めて、ゴール前へクロスボールを入れてゆく。そして、中央で競り合いに勝ったヨンセンが高い打点からのヘディングシュートをゴール左に決め、ついに同点に追い付く。
8分、左から本田の入れたDFの裏へのボールに中村が飛び出してゆくが、これはオフサイド。
しかし、同点としたことで選手達の動きが良くなり、ゲームは名古屋のリズムになってゆく。
【得点】
51分 ヨンセン(名古屋)
 
10分、右のスペースへのボールを頭で前に送ってそのまま上がってゆく杉本が、中央に上がってくるヨンセンに合わせて右足で鋭いクロスを入れていったが、これは逆サイドに抜けてしまった。
12分、左サイドで大森が楢崎のパスを受けたところで山瀬に厳しいタックルを受けて倒されるが、これがそのままプレイが続けられる。しかし、山瀬の左からのクロスは精度を欠き、大きく反対に抜ける。
15分、相手陣内左の中程でパスを縦に送ろうとした金が倒され、名古屋が良い位置でFKを得る。
 
〜後半30分
16分、このFKの場面で本田が得意の無回転のボールを蹴っていったが、ボールは風に流され、右のポストの外へ。
17分、今度は先ほどとは逆の右の位置でFKを得る。中村がゴール前へ狙っていったが、これは横浜の守備の壁に跳ね返されてしまう。
18分、右で大森がボールを持って前を向いた瞬間に、金が相手マークを振り切って切れ込んでいったが、ボールを受ける前に相手GKが抑えてしまう。
 
 
19分、左タッチ際を縦に出たボールに代わったばかりの横浜・坂田が快足を飛ばしてくるが、それ以上の快足で走り込んでいった古賀がボールをきっちりとタッチの外へと蹴り出す。
21分、自陣左中程での横浜のFK。山瀬のゴールに向かってくるボールを楢崎が弾き出してゆくと、このこぼれ球を拾った田中がシュートを狙ってくる。しかし、ボールは大きくゴールの上を抜ける。
同点に追い付いて名古屋のリズムになったが、この時間帯は横浜が押し戻そうと躍起になって仕掛けて来ている。
【交代:63分・横】
大島坂田
 
23分、左からの横浜のCK。山瀬の右足からのボールがゴール前にこぼれたところを坂田が左足で押し込もうとしたが、ここは守護神・楢崎がしっかりとコースに体を入れ、シュートを止める好セーブを見せる。  
27分、早いリスタートからのボールが相手DFの裏へ出ると、これにいち早く反応した杉本が飛び出すが、惜しくもオフサイドの旗が上がってしまう。
28分、金に中盤で繋ぐはずのボールを上野に奪われると、DFの間を狙ったスルーパスに坂田が抜け出そうとしてきたが、スピラールがしっかりと戻ってボールを奪う。
【交代:70分・名】
中村山口
 
29分、中央の藤田から右に上がる大森を狙って出たパスは、寄せてきた選手を気にしてタイミングが遅れてしまい、チャンスに出来ず。  
30分、DFの前へのボールを楢崎がゴールを飛び出して処理してゆくが、これが田中の前に落ちると、横を向いた姿勢から強引にシュートを打ってくる。そして、これが風に乗って無人のゴールへと収まってしまい、横浜に勝ち越しを許してしまう。 【得点】
75分 田中(横浜)
〜試合終了
35分、自陣の大森からのロングボールに構えていたヨンセンは厳しいマークに倒されてしまう。
36分、津田の縦パスをオーバーラップで受けた片山が左から鋭いクロスを入れてゆくが、詰めてきた選手には届かず。
37分、右にポジションを変わっていた本田からの縦パスをヨンセンが粘ってゆくが、中へ入れることが出来ず。
【交代:79分・名】
杉本津田
渡邊片山
 
38分、横浜のカウンターから坂田が中央をドリブルで上がってくるが、スピラールがしっかりと戻ってこれを止める。
39分、山口からのパスを左で受けた片山が前に落とすと、低いクロスを入れてゆく。これを中央で詰めていたヨンセンが左足でシュートにいったが、ボールを強くミートできず。
41分、右に抜けてきた吉田のグラウンダーに中央で坂田が合わせてくるが、ボールは逆サイドへ。
 
 
42分、相手陣内深く攻め入った金が倒されボールを奪われるが、これはファウルとはならず、横浜のカウンターに。中央を河合が持ち上がってきてそのままシュートに来るが、ボールは抑えが効かず、ゴールを越える。
43分、相手ゴール前へ入ったボールに詰めていったヨンセンがDFともつれて倒されるが、これはヨンセンがファウルを受けてしまう。
44分、片山からのパスを受けた金が切り返しからエリアに入り込んでゆこうとしたところで倒されるが、これはシミュレーションとしてカードを受けてしまう。
ロスタイム1、片山からのパスを受けた金が寄せてきた選手を倒してしまいチャンスに繋ぐことが出来ず。
 
 
ロスタイム2、大森が左サイドを駆け上がる津田の前に長いボールを蹴っていったが、俊足を飛ばしたもののボールに追い付くことが出来なかった。
そして、試合は横浜が1点リードしたまま終了を迎え、名古屋は痛い星を落としてしまう。
試合の流れ的には名古屋が支配していただけに、この敗戦は残念だ。それでも内容的には最後まで自分達のサッカーを押し通し、次に繋ぐ形が出来ていたことは幸いだろう。
最後まで熱い声援をありがとうございました。