2006 Jリーグ ディビジョン1:第16節
 午後6時を回って、西日を送っていた太陽が顔を隠し、夕闇がスタジアムを包み始める。夕方からスタンドを吹き抜けていた風は相変わらずで、日が沈んだことで気温が下がったこともあり、時に肌寒い程に。前節の大宮戦の勝利で、選手達の間には自分達のサッカーに対する自信が大きくなり始めてきているようで、午後6時25分、ウォーミングアップへと現れた表情は落ち着き払っている。
 7月は2週間で4試合と厳しい日程をこなしてきた我らが名古屋グランパスエイトだが、今日の試合が終われば一息付く事が出来る。
 8月12日からのリーグ後半戦を良い勢いを込めてスタートさせる為に、今日の千葉戦は是が非でも勝っておきたい一戦だ。殆どの選手が落ち着いた様子で体を動かし始める前から、気合いの入ったトレーニングを先に始めている楢崎だけはちょっと雰囲気が違う。そう、昨年の最終節、同じここフクアリでのゲームで、味方の山口との衝突で負傷し、長らく戦線離脱を余儀なくされた彼にとっては、今日のゲームは特別なものと言えるだろう。前節の大宮戦では、久し振りの先発でゴールを任されると、チームは4ヶ月ぶりの勝利を果たした。本人としても、今日は今季一番と言っても良い程、気持ちが乗った状態で今日の試合に臨むことが出来たはずだ。今日は、千葉の怒濤のように押し寄せる攻撃をことごとく跳ね返してゆくような神懸かり的なセービングを見せて、名古屋サポーターを歓喜の渦の中に巻き込んで欲しい。
そしてもう1人、今日の注目はやはり新加入のヨンセン選手。期待されて来日を果たすと、すぐさまチームに加わり、コミュニケーションの浸透を図る。北欧人らしい真面目な性格が相まって、攻撃だけでなく守備面でも労を惜しまない姿勢で、早くも選手達の信頼を勝ち得、アップ中の表情も明るい。その彼が今日のゲームでどんなデビューを果たすのかは、サポーターのみならず、我々関係者も大いに気になるところだ。千葉サポーターが嘆き悲しむようなゴールシーンを是非とも見せて欲しいものだ。午後6時45分、最後、少々荒れ気味の芝生の状態をドリブルやロングボールのトラップ等を繰り返して入念に確認し終えた選手達は、黄色いユニフォームに埋め尽くされた中、名古屋のサポーターが陣取るスタンドの前を声援に応えながら通り過ぎ、6時50分、先発メンバーとして、最後の1人である楢崎がゆっくりとした足取りで、ロッカーへと向かっていった。
〜前半15分
夕闇がスタンドをすっかり包み込んだ中、両チームイレブンが入場してくると、夏休みと言うこともあって、超満員にふくれあがるフクアリのスタジアムは、両チームのサポーターが上げていた声援により一層力がこもる。前半は、左エンドのホーム・千葉に対し、上下真っ赤なユニフォームに身を包んだ名古屋は、右から左へと攻め上がってゆく。千葉のメンバーより先に中央で円陣を組んで気合いを入れると、千葉のキックオフで試合開始。
先発は、GK楢崎、DFは大森・スピラール・古賀の3バック。MFは中央下がり目に藤田、その両横に山口と金、右は中村、左は本田、FWは杉本と期待の新外人ヨンセンという11人だ。
 
 
1分、右から中村がグラウンダーのボールを入れるがこれは戻ったDFに止められる。
2分、左の本田の入れたボールを相手DFがカットしたところを拾った金が縦に落とすと、これを山口が受けようとして倒されるがファウルはもらえず。
3分、藤田からのDFの裏へのロングボールを拾った杉本が左からクロスを入れるが、これはヨンセンはタイミングが合わず。
4分、右からのCK。本田のボールに中央でスピラールがヘディングシュート。しかし、これはDFに体を寄せられ前には飛ばせず。
 
 
5分、左からルーズボールを拾った千葉・山岸が入れたパスを巻が中へ落とすが、スピラール・藤田がしっかりとこれに寄せてボールをカットしてゆく。
7分、大森のスルーパスに杉本が縦に抜けてゆくが、千葉・水本の厳しい寄せにボールを受けさせてもらえず。
9分、相手陣内右深くで中村が相手DFと激しくボールの奪い合いを見せるが、ファウルを取られてしまう。
11分、ヨンセンが落としたボールを金が拾うが、ここは千葉の厳しい寄せに前を向かせてもらえず。
 
 
12分、自陣右深くでの千葉のスローイン。水野が長いボールをゴール正面に入れてくるが、これはスピラールが頭で弾き出してゆく。
13分、右から中へと入ってきたボールを千葉・坂本が胸で落とすと、これをハースがダイレクトでシュートを打ってくるが、ボールはクロスバーの上へ。この辺のパスの早い繋ぎは用心して、しっかりと集中して対応してゆきたいところ。
14分、右の中村からのDFの裏へのパスにヨンセンが反応するが、パスは長すぎてしまい、相手GKが抑えてしまう。
 
〜前半30分
15分、自陣すぐ中央での千葉のFK。DFラインに向けて浮き球を蹴り入れてくると、落ちたところを千葉・ハースがミドルシュートを狙ってくるが、ここは楢崎が正面でキャッチ。
17分、自陣からスピラールのロングボールをヨンセンが頭で合わせようとしたが、ボールは僅か上を抜けてしまう。
19分、ゆっくりとしたペースでボールを回しながら、千葉・阿部が縦に鋭いパスを入れてくるが、これは中村がコースに入ってカットしてゆく。
 
 
20分、自陣左中程での千葉のFK。水野の蹴ってきたボールはニアの本田が頭でクリアしてゆく。
22分、左で本田が粘ってボールをキープすると、これを藤田が貰って縦に抜けだそうとしたが、スライディングに倒されてしまう。
 
 
24分、自陣中程ゴール前でのルーズボールが楢崎の前のスペースにこぼれたところに、千葉・佐藤が飛び込んでくるが、楢崎が落ち着いてボールを抑えてゆく。ここまでは名古屋も落ち着いて試合を進めているが、どちらも流れを掴むことなく、時間だけが経過してゆく。前線のヨンセンをターゲットにボールを入れてゆくが、千葉の早い動き出しにスペースを詰められ、簡単には拾わせてもらえていない。  
 
26分、右でヨンセンの落としたボールを山口が受けて縦に抜け出すと、深い位置で足下へとパスを通してゆくが、中央に詰めてきたヨンセンには届かない。
28分、千葉・山岸が藤田を振り切ってドリブルで深く侵入してくると、最後、右に詰めてきた巻を狙ってパスを通そうとしてくるが、ここは古賀がコースに入ってカットしてゆく。
 
〜前半終了
31分、自陣左深い位置での千葉のFK。ここは時間帯を考えても、絶対に失点はしたくないところ。水野の蹴ったボールは壁に立った選手が体に当てて跳ね返してゆく。
33分、左のハースがフリーでパスを受けて前を向くと、右に詰めている巻を狙ってクロスを入れてくるが、これは精度を欠き、大きく頭上を抜けてゆく。
 
 
34分、左サイドでヨンセンが粘って、縦にパスを送ってゆくと、これを本田が受けて前を向こうとしたが、その前にオフサイドに。
37分、自陣左でのボールを本田が縦に繋いでゆこうとしたが、体を入れたハースにファウルを受けて味方に渡すことが出来ず。徐々に千葉が持ち前の走力を生かして速いテンポで名古屋陣内へと押し入ってくる場面が目立ち始めるが、しっかりと集中してこれに対応は出来ている。
 
 
39分、右の山口からのクロスを本田が頭で落とすと、右に詰めた中村が左足に切り返してシュートを狙ってゆくが、ボールは上手くミートせず、ポスト右に。
42分、自陣からの金のクリアボールを受けたヨンセンがDFをかわして前を向こうとするが、寄せていたDFへのファウルに。
 
 
43分、古賀の縦パスを受けた本田が勝負にゆこうと寄せてきたDFを1人かわして、更にペナルティエリア内へと侵入を試みるが、厳しいディフェンスに遭い、倒されてボールを奪われてしまう。  
 
 
ロスタイム1、左に抜けだした杉本がゴール前へ鋭いクロスを入れてゆくと、中央に詰めたヨンセンがヘディングからの見事なシュートを千葉ゴールに叩き込み、早くも来日初となるゴールを決めて、名古屋が先制点を奪う。そして前半はこのゴールが決まったところで終了。名古屋は願っても見ない、最高の形で試合を折り返してゆく。しかし、千葉としても後半は、早く取り返そうと前半以上に激しい走りを見せてくるはず。しっかりと油断することなく、気持ちを切り替えて、集中して戦う必要がある。 【得点】
44分 ヨンセン(名古屋)
〜後半15分
前半終了間際での先制弾。それも新加入のヨンセンによる来日初ゴール。最高の形で前半を終えただけに、後半もこの勢いを持って試合に臨みたい。
エンド入れ替わり、後半は左にエンドを変えた名古屋のボールで試合が始まる。
 
1分、左で山口が金に当てて縦に抜け出そうとしたが、パスは千葉DFにカットされてしまう。
3分、大森が相手選手のプレスをかわしながら縦のスペースにパスを送って、山口を走らせるが、これは追いつけず。
 
 
4分、本田が左からドリブルを仕掛けてゆくと、ペナルティエリア内へと侵入してゆくが、DF2人の早い戻りにシュートを思い切り打たせてもらえず。
6分、千葉の右からのCK。水野の右足からのボールがゴール前でこぼれるが杉本が蹴り出してゆく。
 
7分、右からの千葉・水野のクロスをゴール前に詰めていた巻に足で押し込まれ、1-1と同点にされてしまう。 【得点】
52分 巻(千葉)
8分、ゴール前で前を向いた佐藤の前に古賀の競り合ったボールがこぼれたところを詰められシュートを決められてしまい、千葉に逆転を許してしまう。
12分、相手陣内中央ほぼゴール正面でのFK。本田がこれを狙って蹴っていったが壁に当たって跳ね返されてしまう。
【得点】
53分 佐藤(千葉)
 
14分、左の本田からの縦のパスを杉本が上手く受けると、そのまま持ち上がってゴール前へ入れてゆく。中央にヨンセンが入っていったがDFがクリア、左からのCKに。  
〜後半30分
15分、中村の入れたボールを遠いサイドのヨンセンがヘディングに入ったが、ボールはポストの僅かに右。
17分、左に上がる金からの中へのパスがDFに当たってこぼれたところに詰めた杉本がシュートを積極的に打っていったが、これはコースをDFに阻まれ、跳ね返されてしまう。
18分、ロングボールをハースが大森の前に体を入れて落としたところに詰めてきた佐藤がループ気味にシュートをゴール右に狙って打ってきたが、これはポストの右へ。
 
 
20分、左から千葉・羽生がフリーでパスを受けて上がってくると、縦のスペースに出したボールでハースを走らせてくる。しかし、スピラール・大森がしっかりと寄せていってコースを消し、強引に放ったシュートはサイドへ外れる。
22分、本田の相手陣内右中程でのFKのボールをニアに流れながら中村がヘディングシュートにゆくが、ボールは左に流れ、ポストの僅かに左へ外れてしまう。
23分、千葉の左からのCK。大きくマイナスに出してミドルシュートを狙ってくるが、これが味方に当たって杉本の前へ。
 
 
24分、一気に杉本が持ち上がってゆくと、寄せてきた坂本をかわしゴール前へ入れてゆく。ヨンセンがこれを落として藤田が走り込んでシュートに入ったが、ボールは左に外れてしまう。
26分、左でパスを受けた杉本がDFをかわして中へと入れてゆくと、金が受けようとしたが厳しい寄せにカットされる。
 
28分、相手陣内右から突破を図った金がエリアのすぐ外で倒され、絶好の位置でFKを得る。ここで本田が蹴ると見せかけ中村が蹴っていったが、ボールは壁で跳ね返されてしまう。 【交代:71分・名】
藤田玉田
 
 
29分、左からドリブルで持ち込んでいった玉田が粘って粘って最後にゴール前へラストパスを送ると、中央で待ち受けていた金が押し込んで、ついに同点とする。 【得点】
74分 金(名古屋)
〜試合終了
 
 
 
32分、左からのCKのチャンス。中村のボールに古賀が頭で逆サイドから落としたところに詰めたヨンセンが右足で落ち着いて流し込み、ついに逆転に。
35分、自陣入ってすぐ中央での千葉のFK。水野が長いボールを蹴り入れてくるが、大森がコースに入って頭でボールを弾き出す。
【得点】
77分 ヨンセン(名古屋)
 
38分、右サイドで須藤がパスを受けると、中村がこれを追いかけるが、千葉DFの早い戻りにボールに触れず。 【交代:81分・名】
杉本須藤
ここで千葉は一気にメンバーを入れ替え、勝負に来る。
43分、右に抜け出してきた千葉・工藤のクロスがゴール前を抜けて巻の前に落ちるが、ここはDF陣が落ち着いてこれについてゆき、シュートまでいかせなかった。
44分、左の深いスペースに山岸を走り込ませてくるが、ここは中村が付いていってボールに触れさせなかった。
【交代:84分・千】
羽生楽山
水野クルプニコビッチ
【交代:87分・千】
坂本工藤
 
ロスタイム1、金からのパスを受けたヨンセンが落としたボールを玉田が拾って前を向こうとしたところで倒され、相手陣内左中程でFKを得る。  
ロスタイム2、縦のスペースへ出していったボールを本田が追うが、触れることは出来なかった。 【交代:89分・名】
山口増川
 
ロスタイム3、自陣左深くで千葉がボールを持ち込んでこようとするが、ここは玉田が戻ってクリアしてゆく。そして、長いロスタイムを経て、名古屋は待望の勝利を手に入れることになる。この勝利に名古屋のサポーターはまるで優勝したような喜びようだ。それもそのはず、およそ1年以上チームは連勝から遠ざかっていただけに、この勝利はサポーターにも、そしてチームにも今後に活力を与える、大きな大きな1勝と言えるもの。さあここから連勝街道を突き進んで欲しい。最後まで熱い声援をありがとうございました。