2006Jリーグ ディビジョン1・第12節
 ゆっくりと穏やかな風が吹き抜ける中に、名古屋の選手達がウォーミングアップに現れたのは、午後2時25分。気温も程よく、心地よい天気に選手達の表情も落ち着いている。前節、異例のFWでの出場を果たした古賀も、この間の試合前を思えば表情は軟らかい。
 ピッチ内でスタンドに詰めかけた名古屋のサポーターに大きく手を振ると、選手達はゆっくりと体を動かし始め、モチベーションを高めてゆく。
 今日の試合を最後にリーグ戦は中断期を迎え、代表候補の選手達もチームを離れる。そういう意味で、玉田・楢崎・金の3人は気合いが入るところだろう。特に楢崎は、代表正GK争いの相手、川口がGKを務める磐田との対戦と言うこともあり、一際、気合いが入っている。この間の東京戦では土肥とのやはり代表候補争いを見せながら、結果が出せなかったことを考えれば、今日は前節の横浜戦での勢いそのままに、やってやるという固い意志が心にはあることだろう。
 そして、他の当確ライン上にいる、選手達が結果を出している中で、心中穏やかではない玉田も今日は結果を出したいところだ。古賀が入って、自分のにもボールが持てる機会が増えたと語っていた通り、今日もチャンスと見たら、鋭いドリブルで相手DFを切り裂いて、勝利に繋がるチャンスを演出、さらにはゴールシーンを見せて欲しい。
 午後2時50分、最後まで残っていた川島がゆっくりとロッカーへ消えるところを名古屋のサポーターが大きな拍手で見送る。まもなくキックオフだ!
〜前半15分
前半は、左エンドのホーム磐田に対し、名古屋は右エンドを取り、左へと攻め上がる。試合は磐田のキックオフでスタート。
名古屋は、GK楢崎、DF大森・秋田・増川の3バック。MFは吉村が中央で守備的な位置に。ひとつ前に金・山口、やや高い位置で右に中村、左が本田。FWは今日も玉田と古賀の2人という布陣で臨む。
 
 
2分、左からドリブルで相手ボールを奪って本田が仕掛けると、エリア内で左足のアウトにかけたボールで古賀を使おうとするが、反応が遅れてしまう。
3分、後方からのボールを古賀が落とすと、これに玉田が詰めるが、相手GKが先に抑えてしまう。
4分、右から磐田・太田がドリブルで入り込んでくるが、ここは秋田が体をしっかりと寄せて、ファウルを誘う。
 
 
6分、右から抜け出してきた磐田・茶野のマイナスのクロスを中央で太田が詰めてシュートに来るが、吉村がコースにしっかりと入って、ボールを弾き出してゆく。
8分、相手陣内中程右寄りで山口が倒されFKを得る。中村がゴール前へ狙って蹴っていったが、ボールが伸びてしまい、そのままラインを割ってしまう。
10分、山口とのワンツーで左を抜け出した玉田が深い位置で中へと折り返すと、相手GKの足下を抜けてくるが、中央に詰めてきた山口の足には僅か届かず。
 
 
11分、右サイドゴールラインギリギリの位置から太田の折り返したボールを秋田が落とすと、これを前田が詰めてくるが、楢崎が先にボールを体を張って抑えてゆく。
13分、自陣の増川からのロングボールに左から飛び出した本田が、ゴール前へ入れてゆこうとするが、クロスは大きく逆に抜けてしまう。
14分、相手陣内深くで切れ味鋭い切り返しでDFを振り切った金が、玉田にラストパスを送るが、ボールが足下に収まらず、ラインを割ってしまう。
 
〜前半30分
15分、右にこぼれたボールを拾った磐田・ファブリシオのクロスを中央で前田が頭で合わせてくるが、ボールは左に流れてゆく。
16分、相手陣内でのこぼれ球を拾った吉村がドリブルで深く入り込んでゆくが、足下へのスライディングでボールを奪われてしまい、このチャンスを生かせなかった。
 
 
17分、左からの磐田のCK。太田の右足からのボールに、中央で磐田・金が飛び込んでゆくが、ここは楢崎がキャッチ。  
 
 
18分、相手DFの裏へのボールにGKと交錯しながら山口が蹴ったボールがDFが追いつくよりも早く相手ゴールマウスに到達、思いもよらない形で先制点が生まれる。しかし、これで名古屋としては気持ち良く、このままの流れで試合を進めてゆけるだろう。
21分、本田からの大きなサイドチェンジのボールを受けた中村がドリブルで仕掛けてゆくが、ここは磐田の厳しいプレッシャーに遭い、止められてしまう。
23分、左タッチ際で本田のパスを受けた玉田が中へと切れ込んで縦のスペースに山口を走らせるが、ボールに追いつく前にGKが飛び出して先に抑えてしまう。
【得点】
18分 山口(名古屋)
 
24分、中央で前田のシュートを楢崎が阻止すると、こぼれ球に太田が詰めて右足でシュートに来る。しかし、ここでも楢崎が落ち着いたセーブを見せてシュートを阻み、名古屋のゴールを死守する。
26分、自陣からのロングボールを古賀が縦のスペースに落とすと、これに中村、玉田が追いかけるが、ボールはGKが先に抑えてしまう。
27分、磐田の右からのCK。村井のボールにニアで前田が合わせるが、ポストの右に外れる。
29分、自陣の山口からのクリアボールが相手選手に当たってエリア内でこぼれるが、ここでも山口が良い反応を見せてボールを蹴り出してゆく。
 
〜前半終了
30分、自陣ほぼ中央、ゴール正面の位置での磐田のFK。ファブリシオのゴール右隅を狙ったシュートは楢崎が弾いてゆくものの、これはその前に壁が動いたとしてやり直しに。  
31分、そして、しきり直して再度FKを蹴ったファブリシオのボールは、動いた楢崎の逆に決まってしまい、同点とされてしまう。
33分、名古屋の左からのCK。本田の入れたボールは古賀の頭を捉えてボールは右に流れるが、今度は中村の折返しが相手DFに当たり、右からのCKに。
【得点】
31分 ファブリシオ(磐田)
 
34分、中村のニアサイドへの速いボールを玉田が合わせようとしたが、体を寄せたDFに弾かれてしまう。
36分、左に出たボールを拾った磐田・村井のゴール前への速いクロスは楢崎の正面。
38分、左タッチ沿いで、本田、金と渡ったボールが相手DFの裏へと出ると、玉田が飛び出してゆくが、これはオフサイドに。
39分、磐田の左からのCK。中央で村井のボールを合わせた金のヘディングシュートはポストの右に抜けてゆく。
 
 
40分、左サイドで玉田が長い距離をドリブルで上がってゆくと、オーバーラップしていった本田の前のスペースへとパスを入れてゆくが、球足が速く、本田は追いつけず。
42分、左サイドで磐田らしい細かいパスを繋いで村井が上がってくるが、スペースへ出てきたボールは大森がしっかりとケアし、クロスを上げさせるまではいかせなかった。
44分、中央で玉田の落としたボールを増川が大きくDFの裏へと蹴り出してゆくが、FWが反応したところで旗が上がってしまう。
ロスタイム1、右で磐田・菊池の落としたボールをファブリシオがゴール前へ入れてくるがこれも楢崎が正面で抑えてゆく。
 
 
ロスタイム2、相手陣内中央ゴール正面の位置でこぼれ球を拾った玉田が得意の左ではなく、右足で狙ったシュートはDFに当たって弾かれてしまう。そして約2分のロスタイムを経て、前半が終了。予想通り、互いに譲らぬ、気迫充分の展開となった前半。後半も好ゲームが期待できそうだ。  
〜後半15分
後半は、左にエンドを変えた名古屋のボールで試合再開。両チームメンバー交代は無し
1分、DFの裏へのボールにタイミング良く抜け出した玉田がGKの飛び出しを見て、ループシュートを左足で狙ってゆくが、ボールは左ポストの外へ。
2分、右タッチ沿いを一気に上がってゆく大森にパスが通ると、早いクロスをゴール前へ入れてゆくが、ここはDFが玉田、古賀を抑え込んでおり合わせる前に弾き返されてしまう。
4分、磐田の右からのCK。村井の左足のボールは大森が中で跳ね返してゆく。
 
 
5分、左のスペースへ出たロングボールを拾った磐田・前田が秋田をかわして鋭い右足からのシュートを放ってくるが、楢崎が右手を掠め、ポストに当たって跳ね返ってゆく。磐田は後半から両サイドの裏を狙ってロングボールを使ってくるようになる。
7分、磐田の左からのCK。村井の左足のボールを競り合った大森が頭で弾き返すが、相手選手との交錯で倒れ込んでしまう。しかし、しばらくすると無事立ち上がり、チームメイト・サポーターをホッとさせる。
 
 
9分、吉村からのサイドを変えた右へのボールを中村がトラップしながら前に出ようとするが、タッチの外に流れてしまう。
11分、右から走り込んだ太田の前のスペースへ中央からパスが通ると、これをシュートに来るが、増川が体でこれを跳ね返してゆく。
13分、相手陣内中程やや右寄りの位置でFKを得る。中村の壁の上を越えるボールは相手選手がジャンプして先にカットしてしまう。
 
〜後半30分
16分、相手陣内深く右寄りの好位置でFKを得る。本田の蹴ったボールにゴール前へ飛び込んでゆくが、合わせることは出来なかった。
18分、左に持ち上がってきた磐田・成岡には秋田がしっかりと寄っていって体ごと止めてゆく。
 
 
19分、右で大森が中村とのワンツーで上がろうとしたが、意志が合わずボールはタッチを割ってしまう。  
21分、右サイドを上がってきた太田のパスを受けた茶野の入れたボールをニアに走り込んだ前田に決められ、とうとう磐田に先行を許してしまう。
23分、増川の弾いたボールが太田の前にこぼれると、右足からシュートを狙われるが、楢崎が片手一本でシュートを弾き、失点を阻止する。この時間帯は磐田の攻撃に押し込まれ苦しい状況が続いている。ここは何とか耐えてこれ以上離されないようにしたい。
【得点】
66分 前田(磐田)
 
26分、左から本田が前線に張っている古賀を狙ってボールを入れてゆくが、厳しく体を寄せられ、ボールの下へ入れさせてもらえなかった。
28分、中央の中村からスペースへ出たボールを受けた玉田がドリブルで仕掛けるが、簡単にはシュートは打たせてもらえず、DFにクリアされ、CKにされてしまう。
 
〜試合終了
30分、本田がゴール前へと左足で入れてゆくが、DFが体を入れてきたため、合わせた選手のボールは後ろに流れてしまう。  
  【交代:75分・名】
中村杉本
 
 
31分、相手陣内中程やや右でのFKのチャンス。これを本田が左足で直接蹴りこみ、とうとう名古屋に待望の2点目が生まれ、試合を振り出しへと戻してゆく。
33分、自陣左すぐの位置での磐田のFK。しかし、ここは安全策をとったのかファブリシオは中へは蹴り入れてはこなかった。
【得点】
76分 本田(名古屋)
36分、大森からの長いボールに杉本が快足を飛ばして走ってゆくと、これを拾ってDFを1人かわして、左足でゴール前へ入れてゆこうとするが、ボールをDFに阻まれてしまう。
37分、中央で中山の足下を抜けるパスが通ると、楢崎と1対1の場面となるが、楢崎が中山のシュートをきっちりと正面で止め、ゴールを割らせることはなかった。
【交代:80分・磐】
前田中山
 
39分、左でボールを持った本田がそのまま縦に勝負に行くと、付いてきたDFをかわして右足でゴール前へと入れてゆくが、ここは誰もボールに合わせることが出来なかった。
40分、相手陣内で古賀の落としたボールを拾った玉田が仕掛けようとしたところで倒され、FKを得る。
41分、本田がこれを直接狙って蹴っていったが、今度はボールに抑えが効かず、大きくバーを越えてゆく。
 
42分、ここで増川が怪我の治療のため、ピッチの外へと出ると、古賀が久し振りにDFラインの中へ戻る。 【交代:86分・磐】
太田船谷
ロスタイム2、左サイドを抜け出した杉本が切れ込んでいって左足で折り返すが、これは誰も入ってゆけず。 【交代:89分・名】
増川鴨川
 
ロスタイム4、自陣で相手スローインのボールの本田が上手く体を入れて大きく縦にクリアしたところで主審の手が上がり、大きく響くホイッスルで試合終了が告げられる。互いに譲らず白熱した試合内容のまま、あっという間に後半45分も過ぎてしまった、そんな充実した展開の今日の試合だったと言える。先制しながらも磐田に逆転を許した後、終盤で追いつくという前節以上の粘りを見せた名古屋。残念ながら久し振りの勝利はお預けとなってしまったが、今後に希望の見える今日の引き分けは、勝ち点1以上に、価値のある結果と誇って良いだろう。最後まで熱い声援をありがとうございました。 【交代:89分・磐】
成岡カレン
【交代:89分・名】
山口藤田