2006Jリーグ ディビジョン1・第11節
 午後6時20分、ゴールデンウィークと言うこともあって、子供連れで賑わうスタンドから大きな声が沸き上がる中へ、名古屋の選手達が現れる。対戦相手が横浜と言うこともあり、若い女性サポーターも多く、黄色い声援も数多く飛んでいる。
 ピッチ中央でスタンドのサポーターに大きく手を振って挨拶を終えた後、選手達はピッチに広がり体を動かし始める。ブルガリア戦での代表メンバー入りを果たした、楢崎・玉田も気合い充分な表情でウォーミングアップを行っている。なかなかチームに「勝利」という文字が戻ってこないため、選手達の表情もいささか曇りがちだ。先日の非公開練習後には、監督他、楢崎・秋田・藤田・吉村等が集まって緊急ミーティングが行われるなど、チーム内には相当な危機感が溢れている中、今は勝つためには手段を選んでいられる状況ではないだろう。
 今日は、先発に秋田・古賀・増川と大型選手を揃える異例のメンバー構成。是が非でも勝利をもぎ取りたいという、監督の気持ちがヒシヒシと伝わってくる。今は、ともかく戦術云々を語るよりも、全員が勝ちたいという気持ちで前面に押し出していかなければ勝つことは難しい。そんな中で、一人気を吐いているのが本田だ。前節でも好プレイを再三見せて、吉村以外でもっともゴールの匂いを嗅がせていた選手だったといえる。今日こそは、ホームサポータで溢れるスタジアムを歓喜させるようなアシストシーンやゴールシーンを数多く見せて欲しい。
そして、午後6時45分。夕暮れに染まり始めた空の下、芝生の感触を確かめ終えた選手達は、足早にロッカーへと消えていった。
〜前半15分
スタジアムに声援が反響して、否が応でも雰囲気が盛り上がる中へ両チーム選手が入場してくると、ボリュームが更に上がってゆく。
右エンドの横浜に対し、左エンドのホーム・名古屋。前半はその名古屋のボールで試合が始まる。
先発は、GK楢崎、DFは右から大森・秋田・古賀・増川。MFは吉村・金の2人が底を務め、右は中村左は本田、FWは玉田と山口の2人という布陣だ。
 
 
1分、大森のパスを走り込んで受けた吉村の縦のスペースへのボールに玉田が走り出すが、その前で足を伸ばしたDFがボールをカット。
3分、左からのCKのチャンス。本田が入れたボールを増川が頭で合わせるが、前には飛ばせず。そして、ここで古賀がFWにそのまま残り、何と玉田との2トップを組む。
5分、DFの裏へのボールに横浜・久保が抜け出すが、シュートはDFが体に当てて、ポストの左に。
6分、左からの横浜のCK。吉田の入れたボールは楢崎がガッチリと抑える。
 
 
8分、右からの横浜のCK。吉田の入れてきたボールは復帰してきた秋田が頭で跳ね返してゆく。
9分、楢崎からのロングフィードのボールを本田がスペースへ落としたところに玉田が走り込むが、ここは相手DFが先に反応、カットしてしまう。
10分、左サイドから、横浜・清水がスピードに乗って抜け出すと、ゴール前へと入れてくる。これを久保が受けて反転して前を向こうとするが、金が素早く体を入れてファウルを誘う。
 
 
12分、古賀の落としたボールを山口が流すと、吉村が大きくサイドを変えて、玉田に入れてゆくが、これはボールが長すぎてしまう。
13分、金が左にはたいたボールを本田が受けて前に上がると、中の選手達が一気に前線へと上がってゆく。しかし本田はそのままシュートを選択、ミドルシュートを放っていったが、ボールはバーの上へ。
 
〜前半30分
16分、右から横浜・田中が持ち上がると、中へと入れてこようとするが、ここは増川がしっかりとコースへ入りタッチの外へと弾き返してゆく。
17分、山口の左タッチ沿いでの長いボールに玉田が受けに行くと、ワンタッチで寄せてきたDFをかわして、中へと切れ込もうとしたが、トラップが流れたところを奪われてしまう。ここまではしっかりとボールを名古屋が支配し、良い雰囲気でゲームが進んでいる。
 
 
19分、中盤でパスを回して、最後、山口が中村の縦パスを縦に送って玉田を走らせるが、追いつく前にボールはタッチを割ってしまう。しかし、横浜も安定した守備を見せ、簡単にはチャンスを作らせてはくれない。
22分、大森のスローインのボールを古賀が頭で競り勝って、エリア内へと落としていったが、ここには誰も詰めることが出来ず。
25分、相手陣内中程右寄りの位置で古賀が倒されFKを得る。中村のゴール前へのボールに、中央で古賀が合わせにゆくが、ボールはそのまま抜け、ゴールラインを割ってしまう。
 
 
27分、中央で山口が玉田に縦パスを送ると、すぐさま落として自ら前に上がろうとするが、パスを相手に先に拾われてしまう。
28分、横浜のハーフウェイライン近く、左寄りの位置でのFK。マグロンのゴール正面へのボールに久保が入ってくるが、秋田・増川で挟んで仕事はさせなかった。
29分、相手陣内右深くでのFKのチャンス。中村の速いボールにニアへ増川が抜け出して合わせにゆくが、僅かにタイミングが合わず。
 
〜前半終了
31分、横浜の、右の吉田からのゴール前へのボールに、横浜・塩川が体を入れてくるが、秋田がしっかりと体を寄せてボールに触れさせず。
32分、右サイドを自陣から長い距離を上がっていった中村がそのまま切れ込んでゆくと、左足でミドルシュートを狙うが、ボールはポストの右に。
 
 
33分、相手陣内中程でのこぼれ球を拾った金がそのままドリブルで強引に持ち込んでいこうとしたが、3人に囲まれ、ボールを奪われてしまう。
35分、本田の相手DFとGKの間のボールが、相手DFのクリアミスになり、CKに。
36分、本田のゴール正面へのボールに秋田が飛び込むが、ヘディングシュートはポストに右に。
37分、左サイドに出たボールを本田が受けると、そのまま持ち上がり、中へと切れ込んで相手DFの中央を通すスルーパスを入れると、山口が飛び込んでくる。伸ばした右足に当てたシュートは、GKの脇を抜けて、惜しくもボールはポストの僅かに左に。
 
 
39分、相手陣内左すぐのところで得たFK。増川が左足で前に走り込んでゆく古賀を狙うが、ボールはコースに入ったDFが頭で弾き返してしまう。
40分、左から金のパスを受けた本田がドリブルで入り込んでゆくと、アウトに掛けたボールで縦に送り込んでゆくが、これは相手DFが足に当ててコースが変わり、味方には届かず。
42分、相手陣内すぐの左寄りで玉田がパスを受け、前を向いてスピードを上げようとしたが、厳しいタックルに倒されてしまう。
 
 
ロスタイム1、左サイドでのこぼれ球を本田が前に入れると、山口が右足で相手DFの裏へと入れてゆく。このボールに正面で反応した古賀が右足からのシュートを突き刺すが、惜しくもオフサイドとなり、ゴールは取り消されてしまう。そしてここで前半が終了。古賀のFW起用という思わぬフェルフォーセン采配だったが、選手全員がしっかりと前から守備が出来ており、ゴールこそまだ生まれないものの、良い流れで名古屋が試合のリズムを掴んでここまでは来ている。後半もこの勢いで試合を優位に進め、早く先制点を手に入れたい。  
〜後半15分
後半は、右にエンドが変わる名古屋。試合は左エンドの横浜のボールで再開。
名古屋は前半同様、古賀をFWに置いた、3−5−2の布陣。
1分、自陣中程やや左での横浜のFK。横浜・マグロンゴール左隅を狙ったボールは僅かに左に流れ、ポストをかすめて外へ。
2分、相手陣内深く古賀の落としたボールを後ろから詰めた玉田がダイレクトで狙っていったが、古賀に当たって枠には飛ばせず。
 
 
3分、左で玉田の落としたボールを金がすかさず縦に送ってゆくが、中澤の頭にタッチの外へ弾き出されてしまう。
4分、右サイドでパスを受けた中村が左足で大きくサイドを変えると、左に詰めていた古賀が頭でスペースへと落としていったが、ここは誰も詰めることが出来ない。
6分、左サイドを山口のドリブルに伴走する古賀の前にパスが出てくると、これをすぐに相手DFの裏へと入れてゆくが、山口がその前にDFに阻まれ倒されてしまい、チャンスに繋ぐことが出来ず。
 
 
7分、自陣左深くでの横浜のFK。吉田が中に入れると見せて、中で引いて待っていた松田に出すと、ミドルシュートを狙ってくる。しかし、ボールが選手に当たってこぼれたところに選手が詰めてくるが、楢崎がしっかりと抑える。  
9分、相手陣内深くやや右エリアのすぐ近くで玉田が倒され、絶好の位置でFKを得る。ノーステップで玉田が直接狙って蹴っていったが、相手GKにバーの上へ弾き出されてしまい、惜しくも決めることは出来なかった。 【交代:52分・横】
久保大島
 
13分、横浜の右からのCK。吉田のゴール前のボールがゴール前で味方に当たってこぼれるが、楢崎がすかさず反応、しっかりとボールを抑えて、ゴールを死守する。
14分、金が相手DFの裏への長いボールを蹴り出すと、玉田が競り合いにゆくが、これはDFが先に頭でカットしてしまい、玉田は触ることが出来なかった。
 
〜後半30分
15分、左からドリブルで入っていった玉田がゴール前へとクロスを入れると、山口が右から詰めるが、その前に前に出たGKがボールを抑えてしまう。
16分、右のエリアの外から吉田の意表を突いたミドルシュートが枠を捕らえるが、楢崎が右手1本で弾き出してゆく。
17分、右からの横浜のCK。吉田のボールは相手選手と体を寄せながら楢崎がパンチングで弾いて浮いたところを抑えてゆく。
 
 
18分、左で本田が古賀に当ててタッチ際を抜けてゆく。このパスを古賀が落として、中で山口がもらいにゆくが、相手DFにカットされてしまう。
20分、増川の縦パスを受けた本田が相手DFをかわして、エリア内へと入り込んでいったが、シュートまで行かせてもらえなかった。
21分、吉村のDFの裏への浮き球に抜け出した玉田が、左に流れながら左足からシュートを狙っていったが、相手GKがキャッチしてしまう。
 
 
23分、自陣中程ほぼ中央での横浜のFK。遠い距離だったがマグロンが直接狙って蹴ってくる。しかし、ボールは大きくバーの上へ消えてゆく。
24分、左サイドでボールを持った玉田が相手DFの足下を抜く右足からのパスを入れると、これに山口が走り込んだところで相手DFと交錯して倒れ、PKかと思われたがシミュレーションで逆にカードを貰ってしまう。
【交代:67分・横】
塩川山瀬
 
27分、左タッチ際に出たボールを横浜・山瀬が前に運ぼうとするが、ここは中村がしっかりとプレッシャーを掛けてゆき、ミスを誘う。
29分、ゴール前で大島が抜け出して左足でシュートを狙ってくるが、大森がしっかりとコースに足を出して、シュートを阻んでゆく。
 
〜試合終了
30分、左からのCKのチャンス。しかし、本田の入れたボールはニアの古賀の頭上を抜けてしまい、DFがそこをカットしてゆく。
31分、横浜のカウンターからの大島が縦に抜けだしてくるが、秋田が前から、金が後ろからしっかりとプレッシャーを掛けながらシュートを阻止してゆく。
33分、ハーフウェイライン上でのFKのボールを秋田が大きく前線へ蹴り出してゆくと、古賀がDFと競り合いながら落としていったが、その前にオフサイドに。
 
 
35分、自陣深くで細かくパスを繋いでくると、最後吉田からのパスを受けた田中がDFを切り返したところをクリアしてゆく。  
36分、横浜のシュートがポストに当たってこぼれたところを拾われ、最後ゴール正面からマグロンに決められてしまい、ついに均衡の破れる得点が、それも横浜に決まってしまう。 【得点】
80分 マグロン(横浜)
【交代:81分・名】
玉田鴨川
 
 
38分、相手陣内深く左の位置で鴨川が倒され、FKを得る。この場面で本田のボールに遠いサイドに詰めた古賀が頭で合わせて、相手ゴールネットを揺らす同点弾を叩き込み、再び試合を振り出しに戻してゆく。 【得点】
83分 古賀(名古屋)
【交代:83分・横】
清水ハーフナー マイク
41分、自陣からの中村の長いサイドチェンジのボールを前線に上がっていった古賀がヘディングシュートを角度を付けて狙うが、ボールはポストの左に。
43分、相手陣内右に中村が持ち込んで行くと、マイナスに入れてゆく。一旦は相手DFが弾くが、こぼれ球を山口が落ち着いて迫ってきたDFをかわしてシュートを狙うが、ボールは相手DFに当たってコースが変わったところをGKに拾われてしまう。
ロスタイム1、右にこぼれたボールを拾った中村が切り返して中へ入れてゆくが、是は誰も触れず。
 
 
ロスタイム2、そして、相手DFがGKへとバックパスをしたところへ、山口と鴨川が追い込んでいったところで、主審の手が上がり、試合終了が告げられる。終盤は前半飛ばした過ぎたこともあり、互いにスペースが出来て、攻守の入れ替わる激しい試合展開となった。そして、終了間際に、横浜に先制を許しながらも、すぐに追いつく粘りを見せて、最後まで観戦に訪れたサポーターを満足させる試合を見せることが出来た。今日の引き分けは価値ある勝ち点1を手に入れ、今後への復活の片鱗を見せた引き分けと言えよう。最後まで熱い声援をありがとうございました。