2006Jリーグ ディビジョン1・第9節
 午後1時25分、名古屋のサポーターの大きな声援に迎えられて、選手達がピッチに現れる。それまでスタンド下のウォームアップエリアで体をほぐしていたこともあり、選手達は上気した顔で、表情も軟らかい。見る限り、どの選手にも気負いは全く見あたらない。かえって、J最強と言われる攻撃陣をどうやって抑えてやろうかという、楽しみを間近にして、ワクワクと嬉しそうな雰囲気が見えるほど。
 スタンドにサインボールを投げ入れた後、芝生に足を踏み入れると、スタンドに向けて全員で挨拶を終えると、早速最後の調整に入ってゆく。その傍らでは、相変わらずのひょうひょうとした様子で楢崎が芦川コーチ相手にボールを受けている。久し振りのリーグ戦出場と言うこともあり、少しは緊張しているかと思われたが、さすが代表経験の長い彼のこと、落ち着き払った様子は心憎いほどだ。
 そしてもう1人、黙々とボールを捌いているのが玉田だ。前節の新潟戦は自身のコンディションが良くなかったこともあり、全くと言っていいほどボールに触る機会もなく、本人も忘れたいほどの出来だったとか。しかし、今日は体調も戻り、先日の練習試合でも流れから豪快なゴールを奪い、コンディションは上々だ。チームに勢いを取り戻すためにも、彼の活躍が必要不可欠。今日こそはPKではない、チームの勝利を決定づけるようなファインゴールを決めて欲しい。
 前節は出場停止のため、試合に出ることが出来なかった金も、久し振りの先発出場となった渡邊同様に気合いが入っている。それぞれに役割は違うが、監督の言うチーム全員で守って戦うと言う気持ちを忘れずに、納得のゆくプレイを見せて、サポータに、そして監督にしっかりとアピールして貰いたい。
 1時45分、芝生の感触を充分確認できたのか、選手達は納得した表情でロッカールームへと向かっていった。
キックオフ前、3月度の月間ランクル賞の発表が行われ、川島選手が受賞しました。
〜前半15分
上空には少し雲が増え、日差しが弱くなったものの、気温は下がらず、問題なさそうだ。この天気を忘れるほどの内容の試合を見せて欲しい。
右エンドの川崎に対し、左から右へと攻め上がる、上下赤一色の名古屋。前半はホーム・名古屋のキックオフで試合が始まる。今日の先発は、GKは今季リーグ戦初出場の楢崎、DF右から角田・増川・古賀・渡邊。中盤は、右に中村、左に阿部、中は金と吉村の2人。FWは藤田と玉田の11人。
1分、自陣中程やや左での川崎のFK。蹴るのは川崎・マルコン。長い距離を走って蹴ったボールだったが、壁の選手がしっかりと弾いてゆく。
4分、中央に出たスルーパスに川崎・我那覇が抜け出してくるが、ここは増川と渡邊がしっかりとついてゆくと、ボールをクリアしてゆく。
 
 
6分、中央の玉田からの早いリスタートのボールを藤田が左へとはたくと、阿部がこれを早めにクロスボールを入れてゆくが、ボールは右に流れてしまい、中央に詰めた中村の頭上を抜けてしまう。
7分、マルコンがタッチ際を上がってくるが、金と中村がしっかりと寄せてゆき、中へ入れさせなかった。
8分、自陣左深い位置での川崎のFK。川崎・マルクスの入れたボールはニアの吉村が跳ね返してゆく。
9分、相手陣内左にこぼれたボールを拾った阿部がゴール前へと入れてゆこうとしたが、このボールは勢いが無く、先にDFが追いつくと、クリアされてしまう。
 
 
11分、右で金が溜を作って出したパスを中村がワンタッチで玉田に渡すと、これをスペースへと出してゆくが、コースを阻まれた中村はボールには寄せられず。
12分、縦パスに飛び出したジュニーニョがワントラップで増川をかわすと、右のアウトでシュートを打ってくるが、これは力無く、楢崎が正面で難なく抑える。
14分、自陣中程での川崎のFKのボールをDFの裏へ左から抜けたジュニーニョが左足でシュートに来るが、これも楢崎の守備範囲内。
 
〜前半30分
16分、右に抜け出してきた川崎・我那覇のシュートはポストに当たって中へと跳ね返るが、中央に2列目から飛び込んできた谷口に押し込まれ、先制点を許してしまう。
18分、右を玉田、藤田で崩すと、吉村がスペースへのボールに上がってゆこうとするが、川崎のDFのスライディングにカットされる。この時間はこれ以上の失点を恐れてか、玉田1人を前線に残し、全員が守備に回ってしまっている。
【得点】
16分 谷口(川崎)
 
20分、左のスペースへの川崎・中村のボールに我那覇が抜け出してくるが、ここはオフサイドに。
23分、右から中へと入ってきた中村が細かいドリブルで味方を捜すが、エリアの外からしびれを切らしたかのように左足でシュートを狙うが、ボールはバーの上へ抜けてしまう。
25分、相手陣内中程左の位置でFKを得る。阿部が短く出したボールを玉田が受けて前を向こうとするが、川崎DFの厳しい寄せに前を向かせてもらえず。
 
 
26分、川崎の早いカウンターから左に上がってきたジュニーニョのボールに右から我那覇が頭で合わせに来るが、ボールは僅かに高く、頭上を抜けてゆく。
28分、細かいパスをエリアで繋いで玉田が左の前のスペースへ出したところで、ファウルを受けてピッチに倒れ込んでしまう。しかし、大事には至らず本人は痛そうにしながらもしばらくして無事立ち上がる。
 
〜前半終了
30分、自陣の金からのロングボールに中村・玉田が走り込むが、ボールは相手GKが抑えてしまう。
31分、久し振りに前を向いた玉田が前に残っていた阿部に当てて抜けてゆこうとしたが、川崎のDFの早い反応にあい、ボールを奪われてしまう。
33分、右の縦のスペースへのボールを拾った川崎・森が中へ入れてくるが、増川が頭で跳ね返してゆく。こぼれ球を拾った川崎・中村のクロスは大きくゴールラインを割ってゆく。
 
 
36分、中央を川崎・中村が細かなステップで抜けてこようとするが、金がファウル覚悟でここは止めに入り、チャンスを作らせなかった。ここへ来て川崎はペースがスローダウン。名古屋のサポーターが口笛やブーイングを鳴らして、牽制してゆく。
38分、中盤で金がボールを取られると、左に抜け出した我那覇がパスを貰って中への折返しを狙ってくるが、大きく右に流れてゆく。
 
 
39分、右のタッチ際を相手選手がウエアを引っ張るのを振り切って吉村が抜け出すと、右足で中へと走る中村の前を狙ってボールを入れてゆこうとするが、これはコースに入ってきた選手の足に阻まれる。
41分、古賀のクリアのこぼれたところに詰めたジュニーニョが右足で強烈なシュートを放ってくると、楢崎の左に。指の先を抜けたボールはポストに当たって跳ね返り追加点とはならなかったが、大きなため息がこぼれる。
 
 
43分、右からの川崎のCK。マルクスの右足のボールを遠いサイドのマルコンが狙ってくるが、ボールはバーの上へ。 ロスタイム1、左タッチ際に角田の出したスローインのボールに中村がDFを背負いながら受けようとするが、相手へのファウルを貰ってしまう。そして、ここで前半が終了。なかなか攻撃の糸口が見えず、苦しい展開が続く中で前半が終わってしまう。後半に向け打開策が欲しいところだ。監督の修正が見物だ。  
〜後半15分
後半はエンドを左に変えた川崎のボールで試合が始まる。
1分、左に上がってきた川崎・マルコンのクロスは大森がしっかりコースを読んでカットしてゆく。
2分、中央をドリブルで持ち上がった吉村からの右へ展開したボールを中村が右足で中へと入れてゆこうとしたところで芝生に足を滑らせてしまう。左からの川崎のCK。マルクスの入れたボールは渡邊の前で増川が大きくクリアしてゆく。
【交代:45分・名】
角田大森
 
4分、右で個人技でDFを交わして縦に抜けだした玉田だったが、中へと切れ込んだところでDFにコースを阻まれ、シュートは打たせてもらえず。
5分、自陣中程左での川崎のFK。マルクスの右足からのボールは阿部が横っ飛びで弾き飛ばす。
6分、左を金からのパスを受けて阿部が抜け出してゆくが、縦へのトラップが大きくなってしまい、ボールは折り返そうとする前にゴールラインを割ってしまう。
 
 
11分、左から抜け出した川崎・我那覇に左足からのシュートを決められてしまい、0-2とされてしまい、ますます苦しい状況に追い込まれてしまう。
13分、右からの中村の左足のシュートはDFに当たって、左からのCKになる。阿部のニアへのボールはDFがカットしてしまう。
14分、左に抜けた阿部のクロスに中央で玉田が飛び込むがDFがクリア。左からのCKのチャンス。阿部の入れたボールを遠いサイドの古賀が落としたところに詰めた増川がシュートを打とうとするが、その前にDFにカットされてしまう。
【得点】
56分 我那覇(川崎)
〜後半30分
16分、右に抜け出そうとする川崎・中村を渡邊がマークについてゆくが、ファウルを取られてしまう。
17分、左に縦パス1本で抜け出したジュニーニョがマイナスに折り返したところを、詰めてきたマルクスが左足でシュートに来るが、これはバーの上へ抜けてゆく。
 
 
21分、藤田の縦のスペースへの長いボールに杉本がスピードを上げて拾いにゆくが、タッチの差で先にボールに追いついた川崎・寺田にボールを奪われてしまう。
23分、相手パスを藤田がカットすると、金が左に大きく展開。これを拾った中村が左足で中へと折り返していったが、ボールは逆から詰めた吉村の頭上を抜けてタッチの外へ。
【交代:65分・名】
渡邊杉本
 
25分、左の阿部のパスを受けた藤田が中へと入ったところで左足でパスを繋ごうとするが、川崎のDFも集中し、これを体を入れられカットされてしまう。
27分、相手陣内深く右でのFKのチャンス。中村の蹴ったボールに古賀が詰めるが、ボールはその目の前でカットされてしまう。
28分、中央で藤田がワンタッチで縦のスペースへとパスを通そうとするが、玉田の走り出した横にDFが飛び出し、カットされてしまった。
 
〜試合終了
31分、左からの川崎のCK。マルクスの入れたボールは中央で吉村がクリアしてゆく。
33分、阿部からの縦の長いボールを杉本が凄い形相で追いつくと、何とか持ち替えようとするが、拾うのが精一杯。
34分、右でボールを持った吉村のシュートはGKに弾かれてこぼれると、左にフリーでこれに詰めた杉本が絶好のシュートチャンスを得るが、左足でのボールを何と左にポストを当てて、外してしまう。
【交代:75分・川】
我那覇黒津
 
37分、左の阿部の入れたボールを玉田がコントロールして左足でDFの裏へと入れてゆくと、これに藤田が飛び出すが、シュートのタイミングにいこうとしたところでボールがゴールラインを割ってしまう。
38分、古賀からの縦パスを杉本が落としたところを中村が拾いにゆくが、その前に相手DFがボールをカットしてしまう。
40分、右に上がった大森のパスを受けた中村が左のスペースへの走り込みを期待してパスを入れてゆくが、ここは誰も感じることが出来ず。
【交代:81分・名】
吉村山口
 
43分、左から阿部が縦に大きく蹴りだしたボールは杉本が追いかけるものの、その前にゴールラインを割ってしまう。
44分、右の川崎・中村からのゴール前へのスルーパスに入った古賀のクリアボールはあわや枠にいくかと思われるが、辛うじてタッチに出てゆく。
 
 
ロスタイム1、右に上がった山口のゴール前へのクロスは相手DFがクリア。右からのCKに。
ロスタイム2、右からのCKのチャンス。中村の入れたボールに古賀が合わせにゆくが、枠は捕らえられず、クロスバーを越えてしまう。
ロスタイム3、そして、川崎のGKが大きく蹴り出したところで主審の笛で試合終了が告げられる。最後までスタジアムの熱気が上がることなく、川崎に敗戦を喫してしまった名古屋としては、今後の立て直しが早急に必要と言えるだろう。最後まで声援ありがとうございました。