2006Jリーグ ディビジョン1・第6節 　午後3時20分、それまで大音響の下で、談笑を続けていた浦和サポーターが突然豹変すると、怒濤のようなブーイングが沸き起こる。そう名古屋のGKの2人、川島・楢崎がウォーミングアップに現れたからである。しかし、2人ともに、大舞台は充分経験済み。全く臆することもなく、軽い足取りでピッチへと入り、アウェイのスタンドに陣取る、名古屋サポーターに大きく手を振ると、アップを開始する。 　そして、スタジアムの雰囲気が反転、今度は浦和の選手の入場だ。足下が揺れるほどの勢いでサポーターが唸り声を上げ始め、スタジアムは騒然とする。彼らに5分ほど遅れて、名古屋の選手達がアップに現れる。声援と怒号と大音響で、早くも試合前から雰囲気だけは、最高潮だ。 　ピッチにゆっくりと並んだ選手達は、名古屋のスタンドに挨拶を終えると、すぐさまアップを開始。前の試合ではメンバーから外れ、休養を取った中村、本田も元気な顔を見せている。特に中村はこれまで浦和相手に好プレイを見せて、サポーターを悔しがらせてきているだけに、今日はこの間の分を取り戻す活躍を見せて欲しい。 　昨日の練習での秋田の怪我のため、急遽センターバックの一翼を担うこととなった増川。FWという、本人としてはいささか納得出来ないポジションながらも、チーム事情を理解し、甲府戦でもその役をしっかりと務めた。しかも、きっちりゴールを決めるなど、期待通りの働きをして監督に応えた。そして、今日は念願の、本人の望んだDFの役として先発出場を果たす。リーグ屈指の、圧倒的な破壊力でゴール前へと迫ってくる浦和の攻撃陣を、古賀や大森等と共に何処まで抑え込んでくれるのか注目したい。 　3時45分、相変わらず続く、浦和サポーターの声援の中、ピッチの芝生のコンディションを名残惜しそうに確認していた選手達は、1人また1人と、足早にロッカーへと消えていった。 〜前半15分 今にも雨の降り出しそうな怪しい雲行きのもと、浦和のサポーターの大声援に負けじと、太鼓を打ち鳴らし叫び続ける名古屋サポーターの前へ、両チームイレブンが入場してくる。 左エンドの、ホーム・浦和に対し、上下白のユニフォームの名古屋は右エンドから、浦和サポータの詰めるスタンドへと攻め上がる。 今日の先発は、GK川島、DF右から大森・古賀・増川・有村の4人、中盤は右に中村、左は本田、中央は金と吉村、その前に須藤、FWは玉田の1トップ。 1分、浦和・鈴木の右のスペースへのボールに堀之内が上がってくるが、ボールはゴールラインを割ってゆく。     3分、中央で浦和・長谷部が縦にパスを通して、ワシントンを走らせようとするが、ここは古賀が頭で跳ね返してゆく。 4分、右のスペースへ出たボールを中村が須藤に渡すと、そのまま縦のスペースへと出たボールを拾いに抜け出してゆく。ゴールライン際から折返しを狙っていったが、DFのマークに弾かれてしまい、相手ボールに。 6分、浦和・ポンテが下がりながらボールを受けると、左のスペースを使おうとするが、ここは大森が先に反応する。     7分、浦和の右からのCK。ポンテのボールは増川がゴール前で跳ね返す。 9分、浦和陣内からの闘莉王のロングボールは精度が無く、ゴールラインをそのまま割ってゆく。 10分、中央でボールを奪い合いを制した金がドリブルからDFの足下を抜くボールを出すと、玉田が走り出してゆくが、追いつく前に相手GKが抑えてしまう。 11分、中央でポンテのパスを受けた小野が反転から左足でシュートをエリアの外から狙ってくるが、ボールはポスト左に抜けてゆく。     12分、左でボールを持って前を向いた三都主が反対サイドへと展開してくるが、ボールはタッチを割ってゆく。 13分、右からの山田のスルーに抜け出したワシントンがシュート体勢に入るが、ここは増川がボールを先に足でゴールラインの外へとクリアしてゆく。   〜前半30分 15分、有村からの縦パスを玉田がトラップから前に抜け出そうとしたが、寄せてきた選手にボールを先に奪われてしまう。 16分、右でのこぼれ球を浦和・山田が中へと流れながら左足でシュートに来るが、川島が飛び出して、左から飛び込んでくるポンテを怖がることなく、パンチングで跳ね返してゆく。 17分、右で金がポンテに交わされると、深い位置まで持ち込んできてマイナスに折り返してくる。このボールに小野がダイレクトで合わせに来たが、ボールはクロスバーの上へ抜け、このピンチを逃れる。 19分、相手陣内でのこぼれ球を玉田が拾って有村に預けると、一気に前線へ駆け上がってゆく。しかし有村の入れたボールは右に上がる中村との間に入り、相手に渡してしまうことに。     21分、左で三都主がポンテが引きつけて出たボールを中へと入れてくるが、増川が判断良くボールに入り、弾き出してゆく。 22分、自陣左深い位置で浦和のFK。ポンテの抑えの効いたボールがゴール前に入ってくるが、幸いにも誰にも当たらず反対に抜けてゆく。 23分、相手陣内中央で金からのヒールパスを受けた玉田がミドルシュートを狙うが、ボールを強くミート出来ず、ポストの右に。 24分、右からポンテが有村をかわして入れてくるが、ここでも増川がきっちりコースに入り、頭で跳ね返してゆく。     26分、中央をワシントンとポンテが細かいパスで抜け出すと、最後エリア内へのボールをポンテがシュートに来るが、マークに付いた古賀の右足がコースを阻み、シュートをポストの左に外させる。 28分、金からの左の縦のスペースへのボールを本田が闘莉王と競り合いながら拾いにゆくが、最後は相手を倒してしまい、チャンスに結びつけることは出来ず。 29分、本田が金からのパスを胸で落として、スペースへ出してゆくと玉田が走り出すが、触ることは出来なかった。   〜前半終了 31分、相手陣内左でボールを持った有村がそのまま仕掛けてゆくと、深い位置で中へとクロスを入れてゆくが、味方は前に詰めすぎてしまい、その後ろをボールは抜けてしまう。 32分、左からの浦和のCK。ポンテが右足で中へとマイナス気味に出してくるが、これはシュートに来る前に大きく縦に蹴りだしてゆく。     34分、右の山田からのゴール前へのクロスボールは古賀がクリアしてゆく。左から等の浦和のCK。ポンテのグラウンダーのボールは、ニアに詰めていた増川がクリアしてゆく。 36分、中央で浮き球を拾った中村が左足で、左から走り込んでゆく本田の足下にパスを入れていったが、戻ってきた浦和のDFの足が先にボールをカットしてしまう。     37分、自陣中央エリアすぐ外での混戦からのシュートがゴールネットを揺らしてしまうが、これはオフサイドフラッグが上がっていた。 38分、右から金のヒールからのパスを有村が右足で狙って中へと入れていったが、詰めていた中村、須藤には届かず。 39分、左からスペースへと抜けだしてきた三都主がフリーでシュートに来るが、増川がコースを阻み、ボールを弾き返してしっかりゴールを守る。 41分、上がっていた闘莉王のDFの裏へのボールをワシントンが抜けようとしてくるが、ここは古賀がしっかりと体を密着させて阻止する。     43分、鈴木が中央でボールを捌きながら縦に仕掛けてこようとしたが、須藤がしっかりとコースを消してゆく。 44分、右の中村からのパスを中央で走り込んだ金がスルー。玉田がこれを受けると左のスペースへと出してゆく。本田がこのボールを拾いに走り込んでゆくが、僅かに伸ばした足には届かず。そして、前半は名古屋が浦和の攻撃をしっかりと凌いで抑え、0−0で折り返すことに。浦和の攻撃をここまではしっかりと阻止し、急遽入った増川も高さと反応の早さを見せて、川島をしっかりと助ける働きを見せている。この勢いで後半も浦和の攻撃を抑え込んでゆきたい。   〜後半15分 エンド入れ替え、浦和サポータを背にした左にエンドを変えた名古屋。後半戦は浦和のボールで試合が再開。両チーム共にメンバー交代は無し。前半途中から降り始めた雨のせいで、名古屋は後半は向かい風に。     1分、中央をワシントンのパスでポンテが抜け出してこようとするが、足下のボールが落ち着かず、こぼれたところを吉村がカットしてゆく。 2分、須藤からのパスを受けた本田が左から勝負を仕掛けると、エリアの近くでシュートに。しかし、これは相手GKに正面で止められてしまう。 4分、右から山田が抜け出すと、深い位置で中へと狙ってくるが、マークに付いた金がしっかりと抑えてゆく。     5分、相手陣内左中程でのFK。中村がこれを短く出して、中へと繋いでゆこうとするが、浦和DFにインターセプトされてしまう。 6分、右で中村からのパスを貰った玉田が堀之内と競り合いながら、何とかボールを奪おうとするが、厳しいマークに遭い、倒されてしまう。 8分、金が中村からのパスを受けて相手ペナルティすぐ右で個人技でかわして前を向いてシュートに行こうとしたが、濡れた芝生に足を滑らせてしまう。     9分、中央を須藤のパスを受けて玉田がドリブルを仕掛けるが、後ろからの厳しいマークに倒されて、シュートまでいけず。 10分、本田からの縦パスを胸トラップで落とした中村が右足からシュートにゆこうとしたが、坪井の厳しい寄せに撃たせてはもらえなかった。 12分、右に抜け出した小野からのシュートは有村がコースに当ててコースが変わったボールを川島が落ち着いて抑えてゆく。 14分、浦和陣内からワシントンに縦パスが入るが、古賀が厳しく体を寄せて、前を向かせず、ボールを金に奪わせる。   〜後半30分 16分、中央の中村からのパスを本田が有村に預けると縦に上がってゆく。有村からの縦パスを本田が走り込んでゴール前へ入れてゆくと、玉田が走り込むが、その前で浦和DFがクリアしてしまう。左からのCKのチャンス。本田がゴール前の須藤に狙って蹴っていったが、ボールはその前でカットされてしまった。 18分、自陣右中程での浦和のFK。三都主の速いボールを川島が外へパンチングで弾き出すと、これを拾った小野が中へと蹴り入れてくる。バウンドの弾んだところをワシントンに頭で押し込まれてしまうが、これはオフサイドに。     19分、エリアの外中央でボールを持ったワシントンがDFのタイミングを外して右足からのシュートを打ってくるが、川島が前に弾きながらもこれをしっかりと抑え、ゴールは割らせなかった。 21分、山田の中央からのDFの裏へのボールに攻め上がりを見せていた闘莉王が抜け出してくるが、ボールは長すぎてゴールラインの外へと出て行く。 22分、左から三都主がスペースへ出たボールを拾おうと走り込んでくるが、中村が体をしっかりと入れ、当たり負けることなくこれを阻止し、しっかりマイボールにしてゆく。     23分、エリアの外10mほどの位置でボールを持って前を向いた長谷部のシュートはポストの左に。   25分、左でボールを持った玉田が味方の上がりを待ってキープを見せると、中央に上がってきた藤田にパス。これを軽いタッチでDFの裏へと落としたところに中村が走り込むが、惜しくもオフサイドに。 26分、右でボールを持った中村がそのまま入ってゆくと、GKの前の嫌な位置にクロスを入れてゆく。正面で玉田がこれに飛び込んでいったが、GKの伸ばした指にボールが当たってコースが変わり、触れることが出来なかった。 【交代：68分・名】 須藤藤田   28分、左で代わったばかりのエスクデロが大森を引き倒して、ドリブルで仕掛けてくるが、これはその前のプレイが明らかなファウルに。 【交代：72分・浦】 小野エスクデロ 〜試合終了 32分、中央で藤田からのパスを受けた上がっていた増川が左足で、前線に走る玉田に狙って蹴っていったが、パスのイメージと動きが逆になってしまい、チャンスに繋げることが出来なかった。 34分、左から玉田が持ち込んでゆくと、最後コースを消しに来たDFをあざ笑うパスを中央の本田に出してゆく。これをフリーで左足でシュートにいった本田だったが、狙いすぎたのかポストの左に外してしまう。 【交代：76分・浦】 三都主相馬   36分、相手パスをカットした中村からDFの裏へのパスが出ると玉田がすかさず走り出すが、飛び出したGKが蹴り出してしまう。 37分、相手ゴール前でのこぼれ球を名古屋が何度か拾うと、インターセプトして前に残っていた古賀が何度かシュートを打って行くが、ここは浦和DFも集中しており、簡単にはゴールを割らせてはくれなかった。     38分、相手陣内中程やや左でのFKのチャンス。増川が豪快なボールを蹴りこんでいこうとしたが、壁に当たってコースが変わってしまった。   40分、中央で吉村がパスを受けると、縦に玉田に預けて行く。しかしトラップが大きくなってしまい、DFにカットされてしまった。 42分、自陣エリア内でのこぼれ球をワシントンが抜け出してシュートに来ようとするが、これに増川がすかさず反応クリアして、ピンチを救ってゆく。 【交代：83分・浦】 山田黒部   43分、左からのCKのチャンス。本田の入れたボールは中央の古賀・増川には届かず、カットされてしまう。   ロスタイム1、左からの浦和のCKは短く出したボールをゴール前に入れてくるが、古賀が頭できっちりと跳ね返してゆく。 ロスタイム2、右でボールを持って前を向いた大森が強烈なミドルシュートを放つが、これは相手GKの正面。 【交代：88分・名】 本田阿部 ロスタイム4、玉田のパスを右で受けた杉本が抜け出そうとしたが、浦和DFの厳しい寄せに中へは持ち込めず。 ロスタイム5、自陣中程ゴールほぼ正面の位置での浦和のFK。ワシントンがゴール右隅を狙って鋭いボールを蹴ってくるが、僅かに高く、クロスバーの上を抜けてゆく。そして、ここで主審の右手が上がり、浦和の先ほどのFKが外れて悔しがるサポータの声が響き渡る中に、長い試合終了を告げる笛が鳴り、試合は引き分けに、名古屋は大きな大きな勝ち点1を手に入れることに。今日のこの引き分けは、今後に向けての、選手達に大きな自信を与えてくれるはずだ。最後まで熱い声援をありがとうございました。 【交代：89分・名】 中村杉本