Jリーグ ディビジョン1・第32節
 午後2時25分、試合前のウォーミングアップのため、名古屋の選手が味の素スタジアムのピッチに登場すると、アウェイのスタンドに詰めている名古屋のサポーターから明るい声援が飛ぶ。前節・首位ガンバを叩きのめしてくれたことからか、拍手に暖かさを感じる。そして、その声援に応える選手達の表情も余裕を感じさせてくれる。しかし、試合が始まったらその気持ちはすぐに忘れて、死にものぐるいの勢いで勝ちを狙ってくる東京ヴェルディをしっかりと叩いて欲しい。
 前節の試合から、平本・林というチームの中心的選手を今節は出場停止で欠き、怪我人も多く抱えていることもあり、今のヴェルディのチーム状況は厳しい。更には今日負ければもはや後がないだけに、開始から相当に厳しく来ることは間違いないだろう。リーグ通算では2位につけているワシントンや小林(大)、山田等の危険な選手は多く、中盤でのボール回しも早く、巧みなだけに用心に用心を重ねることは重要だろう。
 ガンバ戦では終了間際、足をつらせながらも若い家長をしっかりと抑え込み、自らのシュートからクライトンのゴールを呼んだ角田には、今日も相対するヴェルディの左サイドの相馬をしっかりとマークして、攻撃のチャンスを作らせないよう潰して欲しい。そして、もう1人。鮮やかな先制弾を決めた鴨川には、新人らしからぬ落ち着きで、今日も3試合連続弾を決めて貰って、チームの勝利に貢献して欲しいものだ。
 ここ最近、シュートを打つ機会が少なく、コンディションが心配された中村も、前節は本田と主に相手ボランチの2人(遠藤・二川)を厳しくマーク、これが相手のチャンスを未然に潰していったという意味では、影の功労者の1人だ。しかし、直志にはゴールを決めて欲しいと願うのは、サポーターの大きな気持ちのはず。ヴェルディのJ2落ちを決するという残酷な試合だが、華麗なゴールを直志には決めて貰い、きっちりと引導を渡しても良いのかもしれない。
 午後2時45分、いささか荒れ気味の芝生の上で、入念にドリブルやシュートを繰り返して、最後の調整を終えたイレブンはゆっくりとした足取りでロッカーへと向かっていった。
〜前半15分
心なしか太陽の光が残っているものの、午前中の青空はどこかへ消えてしまい、今はうっすらと白い雲が上空を覆い、肌寒さを感じさせるようになる。そして、午後3時ちょうど、両チームイレブンがフェアプレイフラッグに引き連れられて入場してくると、絶対に降格させないと、熱い声援で勢いづく東京ヴェルディサポーターと、名古屋グランパスエイトのサポーターの打ち鳴らす太鼓の音が大きく響き渡り始める。
前半は、右にエンドを取った上下赤一色の名古屋に対し、ホーム・東京は左エンドを占める。試合は名古屋のキックオフでスタート。名古屋の布陣は、GKは守護神・楢崎、DFは右に安、左に井川、中央に秋田の3バック。中盤は、右に角田、左に藤田、ボランチは吉村と本田。トップ下に中村、FWは鴨川とクライトンの11人だ。
1分、右を上がってきた柳沢からのゴール前のボールにワシントンが詰めてくるが、その前で楢崎が正面でキャッチ。
3分、相手陣内中右でのFK。安がゴール正面入れたボールを鴨川がDFに押されながらもシュートを狙うが、これはヒットせずGKに押さえられる。
 
 
5分、DFの裏へのボールにワシントンが抜け出し、1対1になるが、シュートは飛び出した楢崎が正面で跳ね返す好セーブを見せる。
6分、左からのCKのチャンス。本田の左足からのボールは中央を飛び込んだ選手の頭上を抜けてしまう。
7分、右から持ち込んできた玉乃が右足でゴール前のワシントンに当ててこようとするが、これはパスを読んだ秋田が右足で弾き返してゆく。
8分、右でキープしていた角田が厳しい寄せでこぼしたボールを中村が拾って左足でゴール前へ入れて行こうとしたが、このボールはゴールラインを割ってしまう。
9分、左に上がったクライトンのゴール前へのボールはDFが弾くが、こぼれ球に詰めた吉村が右足で狙ったミドルシュートは惜しくも相手GKの正面。
 
 
11分、右に開いていった柳沢に出たパスをゴール前へ入れてくるが、秋田が頭で簡単に弾き返して行く。
13分、井川が相手選手のボールをカットしたところを拾った中村が縦にDFの裏へと蹴り出すと、鴨川が走り出すが、DFがボールを先にGKへと戻してしまう。この時間は両陣営をボールが激しく行き来し、なかなか落ち着かない。
15分、中央で細かいパス交換で右に抜け出した小林(慶)がヒールで戻して、マークを外しに来るが、吉村がこのボールをしっかりと捕まえ、縦に大きくクリアして行く。
 
〜前半30分
17分、右で小林(大)がワンタッチではたいたボールを柳沢が拾おうとしたが、藤田がここは体を上手く入れて相手をブロックし、チャンスを潰してゆく。
18分、中央をスピードに乗って玉乃が上がってくると、エリア内へと侵入を試みるが、付いていった安がタイミング良く体を入れて、ボールをあっさりと奪い去る。
19分、相手の最終ラインから出たクリアボールを角田がカット、そのまま遠目の位置からミドルシュートを狙うが、これはジャストミートせず。
 
 
21分、左の相馬からアーリークロスがゴール前へ入ってくるが、詰めていこうとしたワシントンは秋田がガッチリとブロックし、仕事をさせず。
23分、相手陣内左深い位置でのスローインからのボールを中村が受けると、大きく右に展開。これを角田が頭で中へと折り返したが、中央のクライトンには届かず。
24分、右で下がってボールを持った中村が大きく蹴りこんでゆくと、藤田が左から寄せていったが、前に出てジャンプしたGKにボールを押さえられてしまう。
26分、中央で縦のボールを受けた鴨川がワントラップして反転、縦に抜け出そうとしたところは、厳しいファウルに遭い倒されてしまう。
 
 
27分、左タッチ沿いで中村の激しい寄せでボールがこぼれたところをクライトンが拾って縦に走る鴨川の裏へ送り出してゆくが、DFが先に追いついてしまう。
29分、右でフリーでパスを受けた柳沢からのクロスに中央で何人か飛び込んでくるが、その前をボールは抜けてゆく。
30分、左からのクロスに中央でワシントンが待ちかまえるが、吉村がこのボールをカット。しかし、こぼれ球が相手選手に渡り、これを中央でシュートを放ってくるが、相手選手に当たってDFの裏へとこぼれたところでオフサイドの旗が上がる。
 
〜前半終了
31分、中央でボールを受けた本田が大きく左に出すと、上がっていた角田が右足でダイレクトで中へと折り返したが、ボールは大きく反対に抜けてしまい、ゴールラインの外へ。
33分、右サイドでワンタッチで裏を通そうとしてくるが、井川がボールにしっかりと反応、大きく縦に跳ね返してゆく。
35分、自陣中程右寄りでの東京のFK。素早いリスタートで縦に出たボールを柳沢が折り返すと、中央でジウ、遠いサイドでワシントンが飛び込んでくるが、ボールはその僅かに先を抜け救われる。
37分、相手陣内で縦に入ったボールを鴨川が落としたところをクライトンが拾って、遠目からシュートにいこうとしたが、これは前を阻んだDFにボールを弾かれ、チャンスには出来ず。
 
 
39分、左でボールを持った相馬に対し、角田が厳しく寄せると、得意の左ではなく、右足で中へと入れようとしたが、このボールは角田が足を伸ばして縦に弾き、チャンスを作らせなかった。
41分、右で角田のスローインのボールを寄せていった鴨川が落として角田に繋ごうとしたが、後ろからの激しい寄せにタッチの外へ弾いてしまう。
43分、右に上がった柳沢に小林(大)からボールが出ると、これをゴール前ではなくマイナスに入れて、正面で待っていた玉乃に入れてくるが、ボールはその後ろを抜けて行く。
 
 
ロスタイム1,ゴール前でフリーのジウの前にボールがこぼれると、これを左足でシュート狙いに来るが、秋田が体を張ってこれを阻止、ピンチを凌いでゆく。そしてここで前半が終了。予想通り、東京が中盤でのボールを制して、ドリブルで仕掛けて、ゴール前へと入れてくるが、名古屋の守備陣は慌てることなくこれを阻止、殆ど危なげなく跳ね返してゆく。しかし、このままでは勝利はまだ手に届かない。相手の攻撃をしっかりと跳ね返して出来るチャンスを利用して、上手くカウンター狙って得点に結びつけて行きたいところだ。後半に期待しよう。  
〜後半15分
  【交代:45分・名】
クライトン杉本
1分、自陣で藤田がボールを拾うと、すかさず縦に蹴りだし杉本を走らせる。しかし、DFの前に走りながら左足で蹴ったシュートは上手く当たらず。
2分、ワシントンと井川の競り合いでこぼれたボールを小林(大)がシュートにくるが、秋田がコースに入ってこれを跳ね返してゆく。
4分、縦に出たボールを鴨川がワンタッチで右にはたくと、角田がこれを右からゴール正面へ入れてゆく。遠いサイドで杉本が待ちかまえるが、その前でDFが頭でコースを変えてしまう。
 
 
5分、左で玉乃が小林(慶)のボールに抜け出そうとしてくるが、秋田が寄せていってしっかりとクリアしてゆく。
7分、中央でボールを持った本田が右のスペースへと出すと、これを角田が拾って前に繋ごうとするが、寄せてきた相馬に弾かれてしまう。
9分、ドリブルで左から玉乃が入ってこようとするが、安がしっかりと体を寄せながらついてゆき、ファウルを誘う働きを見せる。
 
 
10分、左からの東京のCK。小林(大)が短く出したボールを相馬が中を狙うが、DFが落ち着いて跳ね返してゆく。更にこぼれ球をもう1度拾って入れてきた相馬のボールはポストを大きく越えてゆく。
12分、中央でボールを持って前を向いた中村が、DFラインを見てタイミング良く出したスルーパスに杉本が抜け出す。左に流れながらシュートを狙ったが、体勢が崩れてしまい、シュートはGKの正面へ。
14分、DFの裏を狙って出てきたボールにジウが抜けてくるが、これはオフサイド。
15分、相手ゴール雨でのこぼれ球を本田が狙うが、コースに入った選手に当たって弾かれてしまう。
 
〜後半30分
16分、自陣左中での東京のFK。相馬がゴール前へ長いボールを入れてくるものの、これは楢崎が正面で難なくキャッチ。
17分、右でボールをフリーで持った角田が左足でゴール前へ低い弾道のボールを入れると、杉本がDFの間から抜け出してヘディングシュートを狙うが、これはオフサイド。
19分、相手ゴール正面で左から中村の入れたボールを、DFに阻まれていた鴨川が右のスペースへと出していったが、これには誰も寄せきれず。
 
 
20分、自陣からの縦パスに杉本が走り込んでゆくが、前に出てきたGKが先にカットしてしまう。  
22分、左で相馬が寄せてきた吉村を交わして縦に抜けてこようとしたが、追いついてきた角田が体を入れて、体勢を崩しながらもボールをカットしてゆく。
23分、ジウの縦パスを左で受けた戸田がゴール前へ入れてくるが、抜け出した選手の頭に合わせたところでオフサイド。
25分、右でこぼれたところを拾った柳沢のクロスボールは果敢に寄せた本田が体ごと跳ね返してゆく。
【交代:66分・東】
66分 玉乃町田
 
27分、左で相手ボールをカットした藤田が右に展開。これを中村が中央へと流れながら左足で中へと入れて行ったが、ボールはDFに跳ね返されてしまう。
28分、右からのCKのチャンス。中村のボールに中央で井川が頭で合わせるが、DFに当たって前には飛ばず。
 
30分、東京の左からのCK。小林(大)ゴール前へのボールは角田が頭でクリアしてゆく。 【交代:75分・名】
75分 鴨川豊田
〜試合終了
32分、豊田が縦パスを受けると、左に展開。これを受けた杉本がDFを交わして、右足でシュートにいったが、ボールは惜しくもGKの正面へ。
33分、中央での浮き球を藤田が足を伸ばしてカット、縦へと繋いでゆこうとしたが、これはDFがカット、チャンスに結びつけられず。
35分、右から入ったアーリークロスをゴール正面で受けたワシントンが秋田を背負いながらも前を向いてシュートに来ようとするが、その前でオフサイドの旗が上がる。
 
 
37分、中央でボールを持った藤田が左に上がる本田に繋ぐと、杉本を走らせようと縦に長いボールをグラウンダーで出してゆくが、DFが先に戻り、このボールはカットされてしまう。
38分、角田の縦パスに上手く反応した中村が右のCKを取ると、ゴール前へと早いボールを蹴りこんでいったが、上がっていた選手の頭には合わせられず。
 
 
41分、右でDFの裏へ抜けたボールを拾った豊田がそのまま持ち上がり、ゴール前へ入れていったが、中央に詰めた杉本に届く前にDFにカットされてしまう。
42分、左から相馬が早いボールを入れて森本を使おうとしてくるが、ここは井川がしっかりと体を寄せ、前を向かせなかった。この時間帯はゴール前へボールを放り込んでくる東京の攻撃を全員で下がって跳ね返してゆく。
【交代:75分・東】
75分 小林(慶)塗師
75分 ジウ森本
 
44分、ゴール前での競り合いで楢崎が倒されピッチにうずくまると、東京サポーターから激しいブーイングが飛び交う。
ロスタイム1、左に大きく展開されたボールを杉本が上がってきた本田に渡すと、そのままエリアの外からシュートを放ってゆくが、DFに当たってコースの変わったボールは相手GKの元へ。
 
 
ロスタイム2、右でボールを持った中村がタッチ沿いを上がってゆくと、そのままシュートを遠くから狙ってゆくが、ポストの右に流れてしまう。
ロスタイム3、そして、左に上がってきた相馬のクロスを寄せていった安が足に当ててコースが変わり、これを楢崎がゴールライン際でしっかりと押さえたところで長い笛がスタジアムにこだまする。結局90分間での決着はつかず、0−0のスコアレスドローで試合は終了。それでも両チームサポーターともに納得のゆく、気迫のこもった、両チームの選手の必死さが伝わる、見応え充分の内容の試合だったといえる、今日の東京戦だ。最後まで熱い声援ありがとうございました。