Jリーグ ディビジョン1・第31節
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 アウェイ側からの強い日差しは西に傾いてしまい、ピッチで練習を始めた選手達はスタジアムの大屋根の影に覆われたピッチの上で、厳しい表情で試合前の最後の調整に時間をかける。そして、約30分後には我らが名古屋グランパスエイトは、関西に初の栄冠をもたらそうと、厳しい試合を繰り広げながらも首位を走る、ガンバ大阪との第31節を戦う。
 前節、途中出場ながらリーグ戦初出場初ゴールという華々しいデビューを飾った鴨川は、今日は先発として登場と言うこともあって、早くも気合い充分なのがピッチの外からでもよく分かる。決定力不足、FWがいない、と言われている中で短い時間の中できっちりと結果を出しただけに、いよいよ昨年の関東での活躍の真価が今日の試合で問われるといっても良いだろう。そしてもう1人気合いが入っているのがクライトンだ。大宮戦でもFWとして起用され、チームに良いリズムをもたらし、それが秋田の移籍初ゴールを生んだが、唇を何針も縫うという怪我で途中退場を余儀なくされ、それがチームの流れを止めてしまい敗戦へと繋がったと言うこともあってか、責任感のある彼にとっては悔しいばかりだっただろう。
今日はこの2人の奮起が攻撃力に大きく影響するだけに期待できそうだ。
最近のトレーニングマッチや紅白戦での元気なプレイをようやく認められた角田・井川も久し振りの先発出場と言うこともあり、気合いの入ったアップを行っている。苦しい時は藤田や秋田等、永年の経験者達がしっかりとチームを引っ張ってくれることは当然だが、この2人のように脂の乗ってきた、一番高いポテンシャルを発揮できる年齢の選手達にはもっと頑張って欲しいだけに、この2人のプレイにも注目したい。
 1時45分、ウォーミングアップの残り時間の最後を締めくくるシュートやドリブルで芝の感触を選手達は確かめている。そして、納得した表情を見せながら選手達は1人、また1人と力強い足取りでピッチを後にしていった。
ピッチ横で練習を見つめる“PIXY”ストイコビッチ氏
キックオフ直前、先日の大宮戦でJ通算300試合出場を達成した
楢崎正剛選手の栄誉をたたえ、クラブより記念品が贈られました。
〜前半15分
午後2時、サポータの大合唱の前に名古屋のイレブンが入場してくると、サポータの声が怒号に変わり、スタジアムの興奮が増してゆく。
右にエンドを取った上下ブルーのガンバに対し、上下グランパスレッド1色の名古屋はいつものように左にエンドを取り右へと攻め上がる。前半はアウェイのガンバのキックオフで試合開始。
 
 
 
今日の先発は、GK楢崎、DFは大森・秋田・井川、中盤は、右に角田、左が藤田、安がワンボランチとなり、前目の位置にに本田と中村、FWはクライトンと鴨川と言う布陣だ。
1分、左深くのスローインからフェルナンジーニョが抜け出すと、左足でゴール前へ入れてくるが、秋田が足を出してこのボールはしっかりとカット。
3分、右サイドをボールを持ったアラウージョが仕掛けてくると、中へと流れながら左足でシュートに来るが、ここは井川がしっかりと付いていってポストの左へ外させる。
 
 
 
4分、大森からの縦に入ったボールを鴨川が上手くDFの裏へとトラップで落とすと、そのまま持ち込んで右足からのシュートを決め、なんと先制点を奪う! 【得点】
4分 鴨川(名古屋)
 
6分、中央に流れたフェルナンジーニョのスルーパスにアラウージョが裏へと抜けてこようとしたが、ここは大森がパスコースを読んでボールをカット。
8分、自陣中程左寄りの位置でフェルナンジーニョを倒してしまいガンバにFKを与える。この場面で蹴るのはシジクレイ。激しいポジション取りの間を縫ったボールを入れてこようとしたが、相手選手に当たってそのままゴールラインを割る。
 
 
10分、今度は先ほどよりやや中央よりの位置で相手に足を上げたと言うことでファウルを与えてしまう。このボールは遠藤がフェルナンジーニョが流したボールを右足で直接狙って蹴ってくるが、DFが頭で弾き返す。
13分、中央から右へとフェルナンジーニョが展開したボールを、渡辺が中へと入れてくるが、秋田が落ち着いて、そして豪快に蹴り出してゆく。慌ただしい展開もこの時間帯になると落ち着きを見せ、名古屋も余裕を持ちながらパスを回して、チャンスを捜しているが、ガンバの守備も厳しくなかなか中へ入れてもらえない状況が続いている。
 
〜前半30分
17分、シジクレイのクリアボールが左に上がっていたクライトンの前に落ちると、これを中へと流し込んで行く。右から詰めた本田がGKとDFの間に狙って放り込むと、クライトンが飛び込んでゆくが、惜しくも伸ばした足から10cmもないところを抜けてしまい、追加点は奪えなかった。
19分、ガンバの右からのCK。フェルナンジーニョの入れたボールを楢崎がパンチングで弾き出すと、再びフェルナンジーニョが拾ってゴール前へ入れてくる。これに残っていたシジクレイがニアで入ってきたが、その前で楢崎が正面でガッチリとキャッチ。
 
 
21分、中央でボールを持った本田が右に展開すると、これをクライトンが持ち上がり中へと入れて行くが、このボールは精度を欠き、相手選手に持ち去られてしまう。
25分、左を上がる藤田からの大きく右に展開されたボールを上がっていった角田が山口と競り合いながらも頭で相手ゴールへと向かってボールを飛ばそうとするが、相手DFにボールが触れ、クロスバーの上へ。
 
 
27分、右でスローインのボールを鴨川が中へと落とすと、これをゴールに背を向けていた本田が反転しながらシュートにいったが、上手くコントロールできず、ポストの左に流れる。
29分、中央から右に出たボールをフェルナンジーニョがワンタッチで井川の裏へと入れたボールに渡辺が飛び込んでくるが、ボールとの間に秋田が体を入れ、楢崎がしっかり押さえる。
 
〜前半終了
31分、左から家長が抜け出すとゴール正面に入れてくる。戻ってきた安がクリアしたボールがフェルナンジーニョの足下に落ちるが、シュートを狙おうとしたところを安が伸ばした足でカットしてゆきピンチを救う。
34分、しかし、なんとここで大森が負傷、交代することになってしまう緊急事態となり、吉村が代わって入る。
 
 
名古屋1人目メンバー交代:大森→吉村35分、右からのゴール前へのボールにアラウージョが飛び込んでヘディングシュートを狙ってくるが、これは右に外れる。 【交代:34分・名】
大森吉村
36分、左からドリブルで入ってきたフェルナンジーニョをエリア内で安が倒したとしてPKを取られてしまう。このPKを遠藤に落ち着いて決められ、なんと2試合連続でPKによる同点で試合は振り出しに戻ってしまう。
39分、本田からの右のスペースへのボールに角田が上がってゆくと、中へと狙いにゆくが、寄せてきた家長に先にカットされてしまった。
【得点】
36分 遠藤(G大阪)
 
41分、ガンバの右からのフェルナンジーニョのCKは反対に抜けてゆく。同点としたことでガンバのリズムが良くなってきただけに、ここはしっかりと集中して、無駄な失点は防ぎたい。
42分、右の角田から出た左スペースへのボールを鴨川が拾うと、藤田に戻し、これを中村経由で中央の本田に繋がったところでシュートにゆくが、DFに正面で弾き返されてしまう。
 
 
44分、自陣右サイド深くでのガンバのFK。フェルナンジーニョの精度の高いボールに楢崎が小さく弾いたボールが相手選手の前に落ちると、シュートに来ようとするが必死の守備でこのボールを外へと蹴りだし、このピンチを逃れる。
ロスタイム1、右で相手ボールを奪った中村が速いクロスを入れると、これを鴨川が中央で後ろに流し込むが、ここは誰も飛び込めなかった。
 
 
ロスタイム2、左サイドをドリブルで上がってきたクライトンのラストパスを本田が中央でGKを見てループ気味のシュートを放っていったが、これはGKに止められてしまった。そして、ここで前半が終了。慌ただしい展開が続き、あっという間に終わってしまった前半という感じだ。しかし、終盤は名古屋が良い流れを取り戻し始めただけに、後半早々での追加点を奪うことが出来れば、名古屋の勝利がグッと近づくと言っても良いだろう。  
〜後半15分
後半は、エンドを右に変わった名古屋のボールで試合が再開する。前半に代わって入った吉村がボランチに入り、安が右のストッパーとして、大森の位置にそのまま入っている。
1分、中央で本田の出したDFの裏へのボールに抜け出した鴨川がDFの間を狙って左足でシュートを狙うが、これはサイドネットを揺らす。
2分、左でパスを受けた本田が寄せてきたDFの裏へと左のアウトサイドで出すと、これをクライトンが拾ってペナルティ内へと侵入したところでオフサイドの旗が上がって笛が鳴ってしまう。
 
 
3分、左にこぼれたボールを拾ったクライトンが早めにゴール前へ入れると、中央に詰めていた本田がヘディングシュートを狙ってゆくが、ボールは相手GKの正面をついてしまう。
5分、藤田が左から入れたボールをクライトンが流すと、右から飛び込んできた角田が左足でシュートにゆくものの、ヒットせず、ボールはGKの正面に。
6分、二川からの裏へのボールに家長が抜け出してくるが、これはオフサイドに。
8分、細かいパスを繋いで右から渡辺が抜け出してくるが、ここは井川が厳しく行ってボールを縦にクリアしてゆく。
 
 
9分、左サイドで藤田のパスを受けたクライトンがシジクレイを交わしてシュートコースを作ると、右足でループ気味にコースを狙ったボールでゴールを狙うが、僅かに大きく、クロスバーの上に抜けてしまう。
11分、右からのゴール前へのクロスに鴨川が頭から飛び込んでくるが、僅かにタイミングがあわず、DFにクリアされてしまった。
13分、自陣でボールを持ったクライトンがカウンターで出てゆくと、左に上がってゆく鴨川にパスを出したが、これはオフサイドになってしまう。
 
 
14分、右に抜け出した吉村がゴール前へといれてゆくが、詰めていたクライトンに届く前にDFがカットしてしまう。  
  【交代:60分・名】
鴨川杉本
〜後半30分
16分、相手陣内右深くでのFKのチャンス。本田の入れたボールは高いDFに跳ね返されてしまう。
18分、左でボールを持って上がっていったクライトンが中央へと流し込むと中村が詰めてゆくが、その前でDFが先に飛び出してカットしてしまう。
19分、右に上がってきたアラウージョが井川を交わしてゴール前へと入れてくるが、詰めていたフェルナンジーニョには安がしっかりと付いており、目の前で頭でボールをカットしてゆく。
 
 
 
21分、右で角田がボールを持ったところでその後ろを中村が抜けたことで相手DFの反応が遅れ、出来たコースを狙ってシュートを打ってゆく。しかしボールは相手GKの正面にゆくが、威力があったために前へと弾いたところにクライトンがしっかりと詰めて、右足で無人のゴールに流し込むだけのシュートで追加点を挙げ、ついにガンバを突き放す得点を決める。 【得点】
66分 クライトン(名古屋)
 
23分、左から家長が細かいドリブルで角田をかわしてペナルティ内へと侵入してくるが、安がしっかりと体を張ってこのボールをクリアする。  
 
25分、左から上がってきた家長がフェルナンジーニョの戻したボールを上げてくると、詰めていた三木の高い打点を狙ってくるが、ここは秋田がしっかりと詰め、プレイさせなかった。
26分、左から藤田が本田から貰ったパスをゴール正面に入れてゆくと、詰めていた角田がヘディングシュートにゆくが、ボールは惜しくもGKの正面。
28分、中央で藤田のパスを受けたクライトンが右に上がってくる杉本に預けて中央を上がって行く。杉本はこのボールを受けて中へと入ってゆくと、右足アウトサイドでゴール前へと放り込んでゆくが、中央に入ってきたクライトンが触れる前にGKが押さえてしまう。
30分、左からアラウージョが抜け出してくるとシュートに来ようとしたが、戻った角田がゴールラインの外へしっかり蹴りだしピンチを逃れる。
 
〜試合終了
32分、左で中村がDFの股の間を抜いて縦に切れ込んでゆくと、右足で強烈なシュートを放ってゆく。このボールを慌てたGKが前に弾いてしまうが、反応した杉本がボールへとゆく前にGKに押さえられてしまう。
33分、カウンターからのボールを左からクライトンがゴール前へと入れてゆくが、杉本の前でDFがカットしてしまう。
 
 
  【交代:79分・G大】
三木松波
渡辺森岡
37分、左からフェルナンジーニョが抜け出してくると、付いてきた安を振り切って左足でシュートを打ってくるが、楢崎が片手1本でシュートを外へと弾き出して、ゴールを死守する。
38分、右から入ってきたアラウージョの縦のボールに抜け出してきたフェルナンジーニョが楢崎との1対1からシュートに来るが、ここは果敢に飛び出した楢崎がシュートを正面で止める殊勲のプレイを見せ、会場を沸かせる。
40分、右サイドに出たボールを相手DFが拾ったところを、クライトンと杉本が執拗に寄せてゆくが、ボールを奪うことは出来なかった。それでも今の時間帯はこの気迫が大事だ。残り時間を戦うためにもあと5分少々頑張って欲しい。
【交代:80分・名】
角田山口
 
42分、右に上がって切っていた宮本のゴール前のボールはエリアの中でこぼれるが、DFが集中してこれに対処、無事外へと蹴り出してゆく。
43分、左サイドをドリブルで抜け出してきたフェルナンジーニョがオーバーラップしてゆく前の選手に向けてパスを入れてくるが、楢崎がしっかりと飛び出し、体を張ってこのボールを押さえてゆく。(ロスタイム表示:4分)ロスタイム1、上がっていたシジクレイが右からゴール前へと入れたボールを中央で待っていた松波がシュートに来るが、これは井川が体を入れてゴールラインの外へと弾き出してゆく。
ロスタイム2、相手陣内左で吉村からパスが入ると、これを藤田がトラップで時間を稼いでファウルを得る。
ロスタイム3、自陣左中程で相手選手からボールを奪って前に出ようとした中村だったがファウルを取られてしまう。しかし、このFKをフェルナンジーニョがゴール前へと入れてくると、相手選手のヘディングのボールがゴールラインを割ったところで主審の手が上がり、名古屋の久し振りの勝利が決まる。首位を走っていたガンバの猛攻をはねのけて、最後まで全員で耐え抜いた末に勝ち取ったこの試合。選手全員の絶対に負けないという気迫が、しっかりとサポーターに伝わった、正に感動できたゲームといえよう。最後まで熱い声援ありがとうございました。