Jリーグ ディビジョン1・第30節
 午後3時25分、頬を打つ強い風が抜けて行くピッチに名古屋の選手が現れる。遠く地元から駆けつけたサポーターから暖かい拍手が送られる中、横一列に並んで大きく手を振って声援に応えると、すぐにウォーミングアップをスタートさせる。ちょっと前まではスタンドの影が落ちていた芝生の上も、すっかりと影になってしまい、肌寒さが増すばかりになってきた。
 今日の試合でJリーグ通算出場を飾る楢崎。しかし、本人の中では今日の試合への思いで一杯のようで、厳しく唇を結んだ表情からは、しっかりと闘志が伝わってくる。自らの記念すべき試合は勝利は勿論だが、きっちりとを完封で終えたいところだろう。
先の天皇杯でチームの勝利に繋がるゴールを挙げた豊田。少ない出場時間ながらきっちりと結果に繋げ、徐々にその本領を発揮し始めたと言っても良いだろう。苦しい状況を打破するためにも、今日もドンドンとゴールを狙って仕掛けて欲しいところだ。
 今日の対戦相手の大宮は、名古屋以上に苦しい状況。今年、永年の苦労が実り、見事J1入りもつかの間、またしてもJ2へ逆戻りの危険にさらされている。そういった意味でも今日の試合は勝ち点を奪うためなら、なりふり構わず戦いに挑んでくるはず。元々が堅い守りから早いカウンターで仕掛けて来るという、名古屋にとってはどちらかと言えば苦手なタイプの大宮。豊田スタジアムで戦ったホームでの初対戦も相手の固く閉ざした守備に苦労をさせられ、結果は1−1の引き分けとなってしまった。しかも、今回は大宮のホーム。そんな内容では終われるはずがないとばかりに、より一層ゴールを閉ざして、名古屋の隙を窺ってくるはずだ。
 今の苦しいチームの状態の中、得点力不足をずっと言われ続けている名古屋としては、簡単には勝利を手に入れることは出来ないだろう。厳しい試合になることは間違いないはず。しかし、今こそ選手一丸となって、このどん底とも言える状況から這い上がるべく、熱いプレイを見せて欲しい。
3時45分、充分に芝の感触を確かめた選手達は、1人、また1人とピッチを後にして行く。
〜前半15分
すっかりスタンドの影に覆われてしまった埼玉スタジアムのピッチに両チームの選手が入場してくる。気温はグッと下がり肌寒いが、両サポーターの陣取るスタンドは熱さで一杯だ。
オレンジユニフォームの右エンド・大宮に対し、左にエンドを取り、右へと攻め上がる、上下真っ白の名古屋。先発は、GK楢崎、DFは右に大森、左は古賀、中央は秋田の3バック。中盤は右に中村、左は若い渡邊、ボランチには安・吉村の2人、トップ下は藤田、FWは北陸戦の時同様にクライトンと豊田が組む布陣だ。前半はその名古屋のキックオフで始まる。
1分、古賀の裏を狙って大宮・藤本が出したボールに、久永が出てくるが、ここは古賀が仕事をさせない。
2分、左サイドをドリブルで上がってきた藤本がゴール前に上げてこようとしたが、ボールは大きく流れ、ゴールラインを割ってゆく。
 
 
3分、相手DFのクリアが右にこぼれたところを豊田が中へと落とすと、中村が拾って左足でゴール前に入れてゆくが、ボールは大きく越えてしまう。
4分、自陣右で中村が相手ボールを奪って縦に長く出して行くと、これを豊田が勝負にゆこうとしたが、寄せてきた大宮・マーカスに体を入れられ、ボールを奪われてしまった。
6分、相手のドリブルがもたつくところを中村が奪いにゆくと、縦に仕掛けてゴール前に早めにクロスを入れるが、これは戻ったDFがクリアしてしまう。
 
 
 
7分、左からのCKの中村のボールを正面に詰めていた秋田がヘディングシュートを叩き込み、見事な先制点を決める。
9分、自陣左入った位置での大宮のFK。藤本の蹴ったボールは大きく右に流れ、レアンドロの頭を越えてゆく。
10分、自陣中程ゴール正面の位置で大宮・桜井を倒してしまい、危ない位置でFKを与えてしまう。
11分、このFKを藤本が直接狙ってくるが、ゴール左上のギリギリのところを楢崎が指先に当てて弾き返し、ゴールを見事に守ってゆく。
【得点】
7分 秋田(名古屋)
 
13分、左サイドを藤田の落としたボールを拾った渡邊が上がってゆくと、中へと切れ込みながら右足でシュートを狙うが、これはDFに当たって弾かれてしまう。
14分、自陣からの古賀の長いボールに豊田が追うが、これは長すぎてしまった。
15分、左でクライトンがキープしたボールを渡邊が受けると、大きくゴール前へと蹴り入れてゆくが、詰めていた豊田には届かず。
 
〜前半30分
16分、裏へと入れてこようとしたボールを古賀が頭で弾くと、これを渡邊がすかさず前線に送ってゆくが、豊田が届く前にDFが体を入れてしまう。
17分、中央で藤田の戻したボールを安が大きく裏へと蹴り出してゆくが、ボールは相手GKの元へ。
 
 
18分、右でキープしたクライトンの中へ流し込んだボールに藤田が走り込んでゆくが、僅かに間に合わず。相手DFがカットしてしまう。
19分、ハーフウェイライン近くから、大宮・レアンドロがドリブルでスピードに乗って上がってくるが、最終ラインの秋田が強烈な寄せでボールを弾き飛ばすと、レアンドロごと吹っ飛んでゆき、自ら先制点を取ったことで気合いが充実、それがプレイに現れていることが伝わってくる。
21分、右でボールを持った大森が斜めに相手ゴール前へと鋭いボールを入れてゆくが、これは体を入れたDFの頭にカットされてしまう。
 
 
23分、渡邊が相手ボールを奪うと、これを秋田に戻しすぐに長いボールを縦に入れて行く。豊田がDFと競り合いながらもボールをスペースに落とすが、これは誰も詰めることができず。
24分、右サイドの渡邊の裏を大宮・西村に取られると右足でゴール前へ折り返してくるが、秋田が頭で大きく跳ね返してゆく。
 
 
27分、ここで前線で良いキープを見せていたクライトンが負傷でピッチを去ることになってしまう。  
29分、自陣から大きく蹴り出したボールが相手DFの元へと飛ぶと、早速、鴨川が仕掛けてゆくが、弾んだボールは相手GKが押さえてしまう。 【交代:28分・名】
クライトン鴨川
〜前半終了
31分、藤本が中へと左から入れようとしたボールを安が弾くと、これを大きく縦に出してゆく。このボールを相手DFと競り負けないよう鴨川が体を付けながら追いかけて拾うと、さらに縦へと繋いでゆこうとしたが、相手DFへのファウルを取られてしまった。
32分、右でボールを持って大宮・久永が仕掛けてこようとするが、渡邊が落ち着いてこれを対処、相手のチャンスをしっかりと潰してゆく。
34分、右からドリブルで仕掛けてきた大宮・久永がエリアの中で前を向こうとするが、藤田がきっちりとマークについてこれを阻止、最後はゴールラインの外へと追いやってゆく。
 
 
36分、左からレアンドロが抜け出してくるが、大森・中村・安が厳しく寄せてゆき、最後は相手のファウルを誘ってマイボールに。
38分、左から藤本が入れようとしたボールは中村が体に当てて、しっかりと弾ね返す。
40分、自陣で吉村がカットしたボールを大きく縦に出すと、豊田がDFと競り合って落ちたボールを拾いにゆくが、体を入れていたDFを倒してファウルを受けてしまう。
42分、自陣から大森が蹴り出したボールに鴨川が競りにゆくが、これは軽く触ったボールにDFが体を間に入れて、拾うことが出来なかった。
 
 
43分、相手陣内右でのFKのチャンス。中村の入れたボールはDFに一旦は弾かれるが、左で拾った安がこれを戻したボールを渡邊が入れてゆくと、古賀が競りにいったが枠には飛ばすことが出来なかった。 【交代:42分・大】
桜井若林
ロスタイム1、大宮がPKを奪うと、これを藤本にゴール右隅に決められてしまい、まさかの同点に追いつかれてしまう。良い雰囲気出来ていただけに、この時間帯での失点は厳しいが、ここは早く切り替えて欲しいところだ。そして、ここで前半が終了。クライトンの負傷による早々の交代でチーム内での動揺が心配されたが、何とか先制ゴールを守りきって前半を折り返すかと思われた終了間際のPKによる失点で試合は振り出しに。精神的に不安定な状態で後半を迎えることになるが、ここはしっかりとハーフタイムで気持ちを切り替え、新たな気持ちで後半に臨んで欲しいところだ。 【得点】
44分 藤本(大宮)
〜後半15分
右にエンドを入れ変えた名古屋に対し、後半は左エンドの大宮のキックオフで試合が始まる。
2分、中央で渡邊からのボールを受けた安がスペースに落とすと、これを吉村が縦に入れてゆくが、このボールは相手DFにカットされてしまった。
3分、古賀の大きく蹴り入れたボールを豊田がスペースに頭で落としてゆくが、これには誰も詰めることが出来ず。
 
 
5分、相手ボールを奪って吉村が前を向くと、遠目からミドルシュートを狙ってゆくが、これは相手GKの反応に合い、押さえられてしまう。
6分、自陣左入った位置での大宮のFK。藤本の早いボールに右から大宮・冨田があわせようと飛び込んでくるが、ボールは足下を抜けてゴールラインの外へ。
 
7分、中央に右から入ったボールを古賀がクリアしきれなかったところをレアンドロに拾われると、そのまま右足からの強烈なシュートを打たれると、これがクロスバーに当たってゴールラインを割り決まってしまう。 【得点】
52分 レアンドロ(大宮)
 
9分、相手ゴール正面で豊田が体を張って縦に落とすが、これは詰めていた鴨川が反応する前にDFがカット。しかし左で渡邊が拾って素早く入れると、藤田がこれを受けて中へと流れながら右足からシュートにいったが、僅かにポストの右に流れてしまい、ゴールを奪うことは出来ず。
12分、左で安が渡邊とのパス交換から抜け出してゆくが、これは相手DFラインの裏へと抜けた時点でオフサイドに。
14分、右からドリブルで仕掛けてきた大宮・久永がエリア内へと侵入してくるが、渡邊が落ち着いてマークについてゆくと、きっちりと押さえ込む。
 
15分、右からの大宮のCK。藤本の右足のボールを安がクリアしたところをトニーニョに左足で押し込まれてしまい、まさかの3失点目を喫してしまう。 【得点】
60分 トニーニョ(大宮)
  【交代:61分・名
吉村本田
〜後半30分
同点に追いつくはずが、セットプレーから追加点を奪われ、いよいよ後の無くなった名古屋としては、なんとしてでも早くゴールを奪い返していきたい。
18分、左からの大宮のCKのボールを奪うと、一気に前線へ。渡邊が中央の本田に入れると、これを右に展開、中村の中央への折返しを藤田がシュートを狙ってゆくが、ボールはジャストミートとせず、左に流れてしまう。
 
 
20分、左からのCKのチャンス。本田の入れたボールは大きく反対に抜けるが、これを拾った中村が中へと流れながら左足で放ったシュートはDFに弾かれてしまう。
22分、右に上がってきた大宮・西村のゴール前へのクロスは楢崎が前に出て押さえる。
23分、右から西村の入れたクロスは楢崎が弾いたところを安が大きく蹴り出し、このピンチを逃れる。
25分、中央で本田が藤田とのワンツーで抜け出そうとするが、相手DFにパスをカットされチャンスを演出することが出来なかった。
26分、右からの大宮のCK。藤本の入れたボールは豊田がクリアしてゆく。
27分、左からの大宮のCK。今度の藤本の入れたボールは大きく反対に抜けてゆく。
 
29分、左のスペースへと藤田が出したボールを杉本が拾って勝負を仕掛けるが相手DFの厳しいマークに遭い、仕事をする前に相手への警告を取られてしまう。 【交代:73分・名
豊田杉本
〜試合終了
 
31分、相手陣内右でDFを引きつけながら鴨川が右足で縦にスローインのボールを流してゆくと、杉本がこれを追うが、相手DFに阻まれてしまい、チャンスに繋げることが出来なかった。
33分、中央から左に繋いだパスを受けた渡邊が左足で中へと入れてゆくが、ゴール前の杉本には届かず。
34分、左からのCKのチャンス。本田の入れたボールはニアで跳ね返されてしまう。
35分、自陣右一番深い位置での大宮のFK。藤本の入れてきたボールはニアで本田がカットする。
【交代:81分・大
レアンドロ金澤
 
 
37分、ゴール正面から放ったミドルシュートがこぼれたところを拾った鴨川が右足から強烈なシュートを相手ゴールに叩き込み、チームに力を取り戻す、見事なJ初ゴールとなる追加点を挙げる。
39分、右から上がってきた大宮・久永のクロスがこぼれたところを後ろから詰めてきた藤本の放ったシュートは楢崎が正面でしっかりと押さえる。
42分、右で藤田のはたいたボールを受けた中村が前を向こうとしたところで倒され、FKを得る。
【得点】
82分 鴨川(名古屋)
43分、相手陣内右中程でのFKの場面。中村の蹴ったボールはファーサイドで古賀が詰めてゆくが、相手GKにキャッチされてしまう。
44分、大森が自陣から大きく前線に入れてゆくと鴨川が競り合いにゆくが、厳しい寄せにボールを触るのが精一杯。
【交代:87分・大
西村平岡
 
ロスタイム1、自陣での浮き球を渡邊が体を入れてカット、本田がはたいて、渡邊が縦に運ぼうとしたところでタッチを割ってしまう。
ロスタイム2、本田が左からゴール前へと入れてゆくが、これは相手GKが正面で押さえてしまう。そして、試合終了を告げる笛がむなしくスタンドにこだまし、名古屋は下位の大宮相手に痛恨の負けを喫してしまうことに。何とかして苦しい状況を乗り切ろうとして臨んだ大宮との戦いだったが、必死さで勝る大宮の勢いに屈する形で試合を落としてしまった。最後まで熱い声援をありがとうございました。