Jリーグ ディビジョン1・第28節
 午後2時25分、鹿島のメンバーに5分ほど遅れて、名古屋の選手達がウォーミングアップの仕上げにカシマスタジアムのピッチに登場すると、名古屋から遠く声援に訪れたサポーターから暖かい拍手が送られる。今日は鹿島アントラーズと第28節を戦う、我らが名古屋グランパスエイト。
 雨で濡れたピッチでゆっくりとしたペースで最後の仕上げを選手達は表情を変えることなく行う。しかし、藤田と2人でボールを使っているDF秋田だけは、雰囲気が別格だ。古巣との久し振りの対決と言うこと、チームが16戦して1度の勝利を挙げていないカシマスタジアムでの初勝利を今日こそ手にしたいと言うこと、そして、チームの状況が良くない今こそ自分がやらなければと言うこと、溢れるほどの思いを胸に今日のこの地に立ったはずだろう。彼の、その気迫がチームに上手く伝わり、選手全員がこれまで練習で身につけた力を見せつければ、絶対に勝利を手に入れてくれることだろう。
そしてもう1人、試合前から元気なところを見せているのが杉本だ。高校選手権の県の決勝戦では、決勝点を決めたという“相性の良い”ホームスタジアムでの試合と言うことで、否が応でも気持ちは高まっている様子だ。広島戦での活躍同様、彼が数多くのチャンスを作れば、絶対に勝利に結びつくはず。鹿島の攻撃陣をしっかりと押さえ込んでしまうほどのスピードで右サイドを切り裂いて欲しい。
中田新監督となって、1勝2敗となかなか勝ちきれない名古屋の勝利を、今日こそ17戦目のカシマスタジアムの初勝利と言う形で挙げて欲しい。
〜前半15分
薄暗くなった上空からは、時折細かな雨が落ちてくるが、昼間ほどの粒はなくなり、濡れた芝生が水銀灯に輝く中で、両チームのメンバーがピッチへと散らばってゆく。
右にエンドを取った名古屋に対し、左エンドのホーム・鹿島のキックオフで前半が開始する。前節は開始早々に油断からやられてしまっただけに、まずは集中して入りたいところ。
先発は、GK楢崎、DFは右に増川、左に古賀、中央は秋田が構える。中盤は右に杉本、左は2試合続いて先発の大森、ボランチは安とクライトンの2人、トップ下には藤田、FWは中山と中村の2トップで臨む。
1分、右でボールを持った杉本が挨拶代わりに外からシュートを打っていったが、これは右サイドネットを揺らす。
3分、中央を鹿島・リカルジーニョがドリブルで仕掛けてくると中央に入れてこようとするが、ここは秋田がガッチリと体を入れる。
 
 
4分、右のスペースに出たボールを拾った鹿島・深井の切り替えしからの左足のシュートは楢崎が好セーブで弾き出す。
5分、中央、鹿島・小笠原からのパスを右で受けたアレックス・ミネイロがドリブルで仕掛けてくるが、増川が落ち着いてついてゆき、プレイさせず。
6分、鹿島GKの曽ヶ端のロングフィードをアレックス・ミネイロが体を落下点に入れてくるが、ここは古賀が身体の力の高さを見せて競り勝つ。
8分、中央で鹿島・深井に縦にパスが入るが、クライトンが素早く体を入れて、ボールを奪い去る。
10分、自陣から増川が相手のDFの裏へと長いボールを蹴っていったが、これは中山が追いつく前にGKの下へ。
 
 
11分、右サイドで鹿島・本山が落としたボールを青木が受けると、中央のアレックスに渡す早い展開を見せてくるが、最後のところで古賀がボールに先に入ってゆき、ボールを奪う。
12分、相手のボールを安が奪うと、これを中央に走る中村へ繋いでゆく。そのままドリブルで一気に上がっていったが、ここは付いてきたDFの厳しい守備に遭いボールを奪い返される。予想通り、鹿島が開始から仕掛けてくるが、ここまではしっかりと落ち着いて鹿島の攻撃を受け止めている展開だ。
 
〜前半30分
16分、左からの鹿島のCK。小笠原の入れたボールはクライトンがニアでカット、そのまま縦に出してゆくと、左に開いていた杉本へとボールが渡る。これをドリブルで仕掛けてゆくが、DFの厳しい寄せにこぼれてしまう。これに詰めてきた古賀が拾いにゆくが、ボールは流れてしまい、このチャンスは生かすことが出来なかった。
17分、左タッチ際を大森がドリブルで上がってゆくが、厳しいスライディングに倒される。しかし、これは相手ボールに。
 
 
19分、秋田が大きく右に出したボールを鹿島・新井場が落としたところに増川が詰めて、是を前線にダイレクトで入れてゆく。しかし、中央で待っていた中山を通り過ぎてしまい、相手のボールに。
21分、右サイドでボールを受けた鹿島・青木が縦にアレックス・ミネイロへとパスを通してくるが、これはオフサイドに。
22分、相手陣内中央入った位置で中山が倒され、FKのチャンスを得る。そして、この場面で増川が走り込んで抜けたところに入っていった中村が右足で直接狙って蹴っていったが、低い弾道のボールは左にと切れ、ポストの外へ抜けてしまう。
24分、右サイド縦のスペースへ杉本から出たボールを中村が拾うと、そのまま持ち上がって最後、ゴール前へと入れてゆく。中央で詰めていた中山がマイナス気味のボールにあわせにゆくが、ボールは上手くミート出来なかった。
 
 
26分、左サイドを上がってきた鹿島・新井場からのクロスがゴール正面へと入ってくるが、古賀がしっかりと体を入れて競り勝ち、縦に跳ね返してゆく。
27分、前線で藤田が相手DFを追い込んで、苦し紛れに出させたパスを安が奪いにいったが、これはファウルを取られてしまった。
29分、左サイド自陣で大森が縦に入れたスローインのボールをタッチ際で藤田が受けて縦に抜けようと試みるが、相手DFが体をぴったりと寄せ、タッチの外へ出してしまう。
 
〜前半終了
32分、自陣右深くでの本山のスローインのボールを青木がダイレクトでゴール前に入れてくると、アレックス・ミネイロがあわせに来るが、ここはボールが頭上を抜けてゆき、救われる。
33分、右からドリブルで斜めに切れ込んでいった杉本だったが、体を入れてきた鹿島・フェルナンドに阻止され、ボールを奪われてしまう。
34分、クライトンのはたいたボールを右で受けた杉本が早めに入れてゆこうとしたが、蹴りこもうとしたボールはDFにタッチの外へと弾き返されてしまう。
35分、右サイドに展開されたボールを拾った本山が左足でスペースへと入れてこようとしたが、安が判断良く伸ばした足でボールをカット、大きく縦に蹴り出してゆく。この時間帯は、鹿島主導で試合が展開してはいるものの、名古屋も守備陣が崩されることもなくしっかりと鹿島の攻撃を抑え込み、膠着した状況がずっと続いている。
 
 
39分、自陣からの縦パスを右で頭で受けた中山がそのまま縦に流していったが、これには誰も感じてもらえなかった。
40分、自陣右でパスを受けて前を向いたリカルジーニョがシュート気味のボールをゴール前へ蹴りこんでくると、これにアレックス・ミネイロが走り込んでくるが、ボールはその足下を抜けてゴールラインの外へ。
41分、右に開いた鹿島・深井が左足でゴール前へ入れたボールに中央から本山が2列目から飛び込んできたが、その頭上で楢崎がボールをガッチリと受け止める。
43分、中央でクライトンがパスを貰うと、藤田に預けて自ら上がってゆき、パスを貰おうとしたが、鹿島の選手のプレッシャーに遭いパスを後ろに戻すことになってしまった。
 
 
ロスタイム1、鹿島・アレックス・ミネイロが中央エリアのすぐ外で落としたボールを寄せていった小笠原が左に展開されるが、このパスはミスパスの形になりラインの外へ。そして、ここで前半が終了。苦しい展開が続くが、守備陣は問題なく鹿島の攻撃に対処し、危なげなく前半を終えることが出来た。しかし、攻撃の方は相変わらず単調になり、良い形で中山や中村にボールが出てこない状態が続いている。杉本も持ち前のスピードを生かす場面が少なく、物足りない状況とも言える。後半も鹿島優勢で試合が続くことを考えれば、彼のスピードをもっと生かした攻撃で、得点を奪う場面を見たいところだ。  
〜後半15分
エンド入れ替わり、左から攻め上がる名古屋のキックオフで試合が再開。
1分、左から本山の短いパスを受けた深井のクロスがゴール前に上がると、これをアレックス・ミネイロがヘディングシュートに来るが、叩きつけたボールは大きく弾んでゴールの上に抜け、救われる。
2分、左サイドをDFを交わして抜けてきた大森が素早く入れたクロスは、DFに当たってCKのチャンスに。左からの中村のCKのボールに中央で増川が飛び込んでくるが、飛び出したGKに押さえられてしまう。
3分、安がDFの裏へ出した縦パスを上手く溜めてタイミング良く中山が抜け出してゆくが、ボールには僅かに追いつけなかった。
4分、藤田が左から入れたパスを中村が落としたところをクライトンが拾いにゆくが、先にDFがカットしてしまう。
 
 
5分、右のスペースでボールを持った杉本からのマイナスのクロスを2列目から飛び込んだ藤田がヘディングシュートにいったが、ボールは右に流れ、枠を外してしまう。
6分、相手陣内深くゴールやや右寄りの好位置でFKを得る。これを中村が早いステップで打っていったが、惜しくも壁に当たって弾かれ、直接決めることは出来なかった。
8分、右からの鹿島のCKは簡単に跳ね返して行く。
9分、藤田が中央で落としたボールを拾った中村が左に流れながらもシュートを狙うが、左足からのボールはゴールラインを割ってしまう。
11分、左に抜け出した中村のマイナスの折返しを中央で藤田がダイレクトで左足でシュートに行ったが、これはDFに当たって弾かれてしまう。
 
 
12分、自陣ゴール前エリアの中でのこぼれ球を本山が体勢を崩しながら右足でシュートに来たがこれはポストの外。
13分、カウンターからの早い攻撃で抜け出した中山が右足で強烈な枠に向かってシュートを放つが、これは相手GKの好セーブに遭い、外へ弾き返されて、決めることは出来なかった。
 
14分、左に上がって新井場からのパスをエリアの外から本山が放ったシュートが右のポストに当たって中へと跳ね返り、これがネットを揺らして先制点に。 【得点】
59分 本山(鹿島)
〜後半30分
17分、右からのCKのチャンス。中村からの速いボールに増川が飛び込んだが、僅かにクロスバーの上へ。
18分、自陣から縦に入ったパスを藤田が胸でトラップ、左の大森にはたこうとしたところで、厳しい寄せをしてきた鹿島・フェルナンドに奪われてしまう。
20分、クライトンの右のスペースへと出したボールを拾った杉本が拾うと、一気に縦に上がって行くが、追いかけてくる新井場を振り切って右足から上げようとしたボールは相手に当たってしまう。
 
 
23分、中田監督は中山の位置に杉本を入れ、山口は右サイドに。
24分、右に開いた杉本からのクロスはDFがカット、右からのCKに。本田の左足のボールは遠いサイドの古賀が競り合うが、DFがクリア左からのCKに。今度は中村が入れて行くが、中央に詰めていた秋田の前で相手DFがカット。
26分、相手陣内左深い位置でのFKのチャンス。中村の低い弾道にニアの本田が合わせにゆくが、鹿島DFに倒されてしまった。
【交代:67分・名】
中山本田
【交代:68分・名】
藤田山口
 
27分、この時間帯は名古屋がメンバーを2人入れ替え、良い流れになっているだけに早く追いつきたいところだ。
28分、鹿島・アレックス・ミネイロのDFの裏へのボールに新井場が左から抜け出してきたが、これはゴールラインをボールが先に割る。
【交代:71分・鹿】
深井鈴木
〜試合終了
31分、相手陣内でパスを受けて前に向かおうとした安が倒され、FKを得る。これをクライトンがゴール前へと入れてゆくと、秋田がヘディングシュートに行ったが、ボールはGKの正面に。
33分、中央でパスを受けてゴールに背を向けた本田が左足でスペースへと蹴り出して行くが、このボールには上がっていった大森が追いつく前にDFがGKに戻してしまう。
34分、相手陣内中央すぐのところでのFK。今度もクライトンがゴール前へと右足で入れて行くが、これはDFに頭で跳ね返えされてしまう。
 
 
36分、左サイドを新井場がドリブルで抜けてこようとするが、ここは山口とクライトンが上手く寄せてボールをカットして行く。
37分、リカルジーニョが右から抜けてゴール前へと入ってこようとするが、古賀の守備に寄せてきた小笠原に繋ごうとするが、これを上手く読んだ安がパスをカット、ピンチを逃れる。
38分、右のスペースへのボールを受けた中村だったが、前を阻まれて持ち替えようとしたところでDFに弾かれてしまい、シュートまで持ってゆけなかった。
40分、相手陣内右深い位置でのFKのチャンス。この場面は本田がボールをセットすると、左足でゴールに向かうボールを蹴ってゆく。中央に古賀が飛び込んでいったが、その前でDFにカットされ、このチャンスを決めきれなかった。残り時間僅かだが、何とか最低でも同点に追いつきたい。
 
 
43分、右サイドで縦に入ったボールを中村が受けると、体を寄せた鹿島DFを振り切ろうとするが、かえってファウルを取られてしまう。
44分、自陣右中程での鹿島のFK。小笠原の遠いサイドを狙って蹴ったボールは楢崎がキャッチ。(ロスタイム表示:3分)
ロスタイム1、自陣右深くでのスローインのボールを中へと持ち込もうとするが、ここは3人がDFに行きマイボールとする。
ロスタイム2、時間を稼ぎの為、鹿島の選手が倒れ込む。ゴール前でファウルを取ろうと倒れた、アレックス・ミネイロだったが、これはかえって裏目となり、警告が出る。
【交代:80分・鹿】
リカルジーニョ野沢
 
ロスタイム4、左からのCK。中村の入れたボールにあわせた古賀のヘディングシュートは、ポストの右に外れてしまう。
ロスタイム5,左でパスを受けた大森が中へと入りながら、右に上がろうとしてきた山口に繋ごうとしたボールが相手DFのカットにあって奪われたところで主審の手が上がると、鹿島の勝利が決まる笛の音がスタジアムに響き渡る。後半は名古屋が試合の主導権を握る場面も多く、もう1歩のところまで鹿島を追いつめていったが、本山のゴールによる1点を鹿島に守りきられ、またしてもカシマスタジアムの“呪縛”から解き放たれることが出来なかった。最後まで熱い声援ありがとうございました。
【交代:89分・鹿】
フェルナンド石川