Jリーグ ディビジョン1・第19節
午後5時20分過ぎ、試合前の岡山県陸上競技場・桃太郎スタジアムは、それまで吹いていた風が無くなり、いささか蒸し暑くなりはじめた。その中へ名古屋の選手達がピッチへウォーミングアップのため現れると、名古屋のサポータの詰めるスタンドから選手を呼ぶ大きな声が沸き起こる。
今日は、苦手にしているヴィッセル神戸との第19節。しかし、チームとしてはそんなことは言ってはいられない。ともかく勝って試合を終えることが今日は絶対だ。そのことを選手全員が心得ているようで、アップする最中も相当に気合いが入っていることが伺える。
2人1組でボールを蹴り合う選手達。期待の新外人・ルイゾンはクライトンと共に黙々とボールを蹴り合っている。「新しい国で新しいクラブの選手として戦うことを楽しみにしている」前日には語っていたが、その物静かな表情からは、その燃える気持ちは、今は見て取ることは出来ない。しかし、試合が始まれば経験豊富な彼のこと、必ずやチームを勝利に導く活躍を見せてくれることだろう。
また、アップから気迫溢れる雰囲気を見せてくれているのが安だ。彼にとっては幼少の時期を過ごした故郷の地という岡山。凱旋を果たした今日のこの神戸戦では、怪我から復帰後の初戦とは思えない程の最高のパフォーマンスを見せてくれることだろう。そしてもう1人。選手以上に気合いが入っているのが、誰あろうネルシーニョ監督だ。スタンドの下で、アップを終えて戻ってくる選手の様子を見守る視線は非常に険しい。
今日は選手全員が、この試合の重要性をしっかりと意識して、熱い熱い内容の試合を見せ、そして勝利してくれるはずだろう。
 
〜前半15分
上空は明るさが次第に減り始め、夕闇がまもなく訪れそうな気配になり始める。午後5時55分、両チーム選手が審判団に引き連れられ入場すると、いよいよリーグ戦再開の幕開けだ。
左にエンドの神戸に対し、名古屋は右から左へと攻め上がる。前半はホームの神戸の6時ちょうどのキックオフで試合開始。
先発は、GK楢崎、DFは角田・古賀・増川・中谷の4バック。中盤は、藤田・吉村・安・クライトン、FWは中村と新加入のルイゾンが組む。
 
 
1分、左から神戸・ホルヴィが抜けてくると、ゴール前へとクロスボールを入れてくるが、これは増川が頭で弾き返して行く。
2分、左から上がった中谷がクライトンからのパスを貰うと、斜めに入れて行こうとするが、これは相手選手に当たってしまう。
3分、左のスペースへ出たボールを中谷が入れると、戻って受けたルイゾンがヒールで流して縦に上がるが、このパスは相手にカットされてしまう。
5分、自陣から縦にルイゾンの足下へパスが入るが、ここは相手DFに厳しいファウルに前を向かせてもらえなかった。
6分、左からのCKのチャンス。中村の右足からのボールにニアで増川が入って行くが、その前でDFがカットしてしまう。
 
 
7分、右のスペースへの神戸・三浦のボールを受けた朴が中谷を交わして、エリア内へと入ってくるが、ゴール前へ入れようとしたボールは増川がコースへ入って奪う。ここまではホーム神戸が積極的に縦にボールを入れてくるのに対し、名古屋は中盤で落ち着いてボールを回しながら様子を見るといった出だしだ。
10分、左からの神戸・ホルヴィのクロスも体を入れた増川が縦に跳ね返してゆく。
11分、左から中へ流れながら藤田の出したスルーパスにタイミング良く抜け出したルイゾンだったが、GKとの1対1からのシュートは阻まれてしまう。
12分、神戸の左からのCK。三浦のゴール前へのボールは楢崎がパンチングで弾き返す。
13分、相手陣内右深くの好位置でのFKのチャンス。中村の蹴った低いボールは跳ね返されてしまうが、こぼれ球を再度ゴール前に入れると、これに角田が飛び込んでゆくが、オフサイドに。
14分、右での神戸の縦パスにイヴォが拾いにゆくが、ボールはタッチを割る。
 
〜前半30分
16分、相手の縦のボールを古賀が頭で落としたところに神戸・平瀬が詰めてミドルシュートを放ってくるが、ボールはポストに左に抜けて行く。
18分、中谷からの前線へのボールを藤田が頭でコースを変えて、相手DFの裏へと入れてゆこうとしたが、これはDFが足に当ててしまい、チャンスには出来なかった。
 
 
20分、自陣右寄り中程での神戸のFK。ホルヴィが左足で早いボールを入れてこようとしたが、吉村が頭で跳ね返す。
21分、今度は自陣左中程での神戸のFK。今度は三浦が早いボールを蹴ってくるが、これは壁に立った選手が跳ね返して行く。
23分、相手陣内右寄りの位置で安からの縦パスを受けて前を向こうとしたルイゾンだったが、厳しいファウルにまたしても倒されてしまう。
24分、自陣から中村が右サイドをドリブルで駆け上がって行くと、最後エリアの近くのところでミドルシュート気味のクロスを蹴ってゆくが、ボールは左に抜けてゴールラインを割ってしまう。
 
 
26分、中央で安→中村とダイレクトでパスが繋がると、最後、DFの裏へ出してルイゾンを走らせようとするが、ボールはDFに弾かれ、チャンスには出来なかった。
27分、神戸の右からのCK。ホルヴィが入れたボールは落ち着いてクリアしてゆく。
28分、右のスペースに出たボールを拾った中村が深い位置からゴール前へと入れてゆくが、これは相手GKがボールを直接キャッチしてしまう。
 
 
29分、右でルイゾンからのパスを受けたクライトンが中村の上がりを待って裏へとパス出してゆくが、ボールが短すぎてしまい、DFにカットされてしまう。  
〜前半終了
31分、相手陣内中程右寄りでボールを持った角田。前にコースがあると見て遠目からシュートを狙っていったが、ボールはクロスバーの上に抜けてしまう。
32分、左で中谷が相手のパスをカットして落としたボールを藤田が拾うと、そのまま持ち上がっていって、DFの裏を狙うルイゾンに向けてスルーパスを出そうとしたが、これはDFに読まれ、カットされてしまう。
 
 
33分、左から中谷がゴール前に詰めているルイゾンに当ててゆこうとするが、DFがカット。しかし、こぼれ球を安が拾ってゴール前へと再度入れて行こうとしたが、このボールは相手DFの正面に。
35分、相手DFの不用意なバックパスをDFの裏から抜け出したルイゾンが奪いにゆこうとするが、慌てたGKが僅かに早くタッチの外へ出してしまう。
36分、左で神戸・三浦が縦に上がるマルティンにあわせてパスを入れてこようとするが、角田がしっかりと付いていって、頭で弾き返してゆく。
 
 
38分、右でスローインのボールを受けた安が切り替えして左足でパスを正面に入れて行くと、藤田が走り込んで受けると見せてスルーし、ゴール前に詰めていたルイゾンを使おうとするが、相手DFに体を寄せられてしまい、ボールを上手く収めることが出来なかった。
39分、角田からの縦パスを受けた安が更に縦に長いボールを入れて、ルイゾンを裏へ抜け出そうとさせたが、パスはDFがカットしてしまった。
41分、中央の中村とパス交換して中へ入った中谷が縦に走る藤田の足下を抜けるパスを入れてゆくが、これは僅かに長すぎてしまい、GKが先にボールを押さえてしまう。
 
 
42分、左でクライトンの戻したボールを吉村が左足でGKとDFの間を狙ってクロスを入れていったが、ボールはGKが飛び出して捕らえてしまう。そして、前半は0−0のまま終了。立ち上がりの神戸の攻勢を凌いで、勢いを奪ってからは名古屋が試合のペースを掴むが、前線での連携面が物足りなく、引いてしまった神戸に対し、チャンスを上手く作れず、決定的な場面の無いまま前半を折り返すことに。後半はもう少し工夫が必要だろう。  
〜後半15分
エンド入れ変わって、左から攻め上がる名古屋のボールで後半戦が始まる。両チームともメンバー交代はなし。
1分、左でホルヴィの縦パスに神戸・遠藤が抜け出して、右足でサイドを変えたパスを蹴ってくるが、中谷がコースに先に入ってボールを奪う。
2分、右のタッチ際から角田が左足で大きく縦に蹴りだしてゆくと、中村が競り合いにゆくが、ボールを受けた時点ではオフサイド。
 
 
5分、相手陣内中央で縦パスを受けて抜け出そうと藤田がしたが、厳しいタックルに合い倒されてしまう。
7分、左からスペースへのパスに抜け出したホルヴィがゴール前に入れてこようとするが、ボールは反対に抜けたところを中谷が縦にカットしてゆく。
9分、左からの神戸のCK。三浦が短く出して戻したボールを再度受けて流すと、ゴール前へと入れてきたボールにファーサイドで上がっていた神戸・金古がヘディングに来るが、ボールには触れずゴールラインの外へ抜けてゆく。
 
 
12分、自陣左深めの位置での神戸のFK。三浦の右足からのボールはクロスバーの僅かに下を狙った直接のボールだったが、楢崎が上手くあわせて、外へ弾き出して行く。
15分、左にドリブルで上がったルイゾンからの折返しを中村がスルーして、右からきた藤田がボールにあわせて、シュートにいったが、これはオフサイドの判定。
 
〜後半30分
16分、中央で縦に出たパスを中村が相手DFと体をぶつけ合いながら拾いにゆくが、これは奪うことは出来なかった。
17分、自陣右入った位置での神戸のFK。三浦が早いボールを入れてくるが、これはDFラインにいた相手選手が受けた位置がオフサイドポジション。
19分、左に抜け出したホルヴィが左足で角田をかわして中へ入れてこようとするが、古賀が上手く体を入れて、頭で跳ね返す。
 
 
20分、ここで先日の、直前の紅白戦で見せた布陣にメンバーが落ち着く。
22分、右から角田が早く低いボールを入れて行くが、これはDFが足でカットしてしまう。
23分、右でスローインのボールを受けた安が左足でファーサイドのルイゾンにあわせて蹴って行くが、ボールは長すぎてしまい、頭上を抜けてしまった。
24分、中央でルイゾンが藤田との細かなパス交換で縦に入ってゆく。しかし、最後のところでパスが流れてしまい、足下に上手く収まらなかった。
【交代:65分・名】
吉村杉本
 
25分、自陣左深く、危険な位置で神戸にFKを与えてしまう。ここは絶対に失点は許してはいけない場面だ。神戸・三浦の早いニアへのボールは中央で跳ね返してゆく。
27分、自陣で相手ボールを奪ってカウンターに出ると、最後、藤田が左から長い距離を走ってきた杉本の前にパスを通そうとしたが、慌てて戻った神戸のDFが先に足を伸ばしてクリアしてしまう。
 
 
28分、中央で藤田がボールを持つと、右の中村へ。これをDFを交わして深く入ってゆくと、最後ゴール前へ上げて杉本を飛び込ませたが、僅かにタイミングがあわず、GKがボールを押さえてしまった。今の時間帯は、名古屋の選手がここが勝負時だと分かっているようで、ボールに対する出足が激しく、気迫がここまでとは違う。  
〜試合終了
31分、神戸のカウンターからのボールをゴール前の平瀬が受けると、上がってきた三浦へパスを出す。これを右に流れながらゆくと、増川がついてゆくものの、角度のないところから右足で振り抜いたシュートを決められてしまい、神戸にこの時間帯で失点を許してしまう。 【得点】
76分 三浦(神戸)
34分、ネルシーニョ監督はここで最後の勝負に出てきた。
37分、右サイドにポジションを変えた杉本が大きく左にサイドを変えてゆこうとするが、ボールは本田に渡る前にカットされてしまう。
38分、中央でパスを受けて抜けだそうとしたクライトンが相手選手と交錯、倒されたように見えたが、ファウルは貰うことが出来なかった。
【交代:77分・神】
遠藤田中
【交代:79分・名】
中谷本田
角田中山
 
40分、中央で本田がルイゾンとのワンツーで抜け出すと、GKと1対1に。最後右足でのシュートはGKに弾かれて浮いてしまい、枠を捕らえることは出来なかった。
41分、右から杉本が縦に抜けてゆこうとするが、前を阻まれてしまったために中に流れながら、スペースへ出してゆこうとした、ボールをカットされてしまう。
43分、クライトンが右に抜けようとした杉本にあわせて蹴り出して行こうとしたが、このボールはDFが頭でカットしてしまう。
44分、右から上がった杉本がゴール前へと入れてゆこうとするが、パスは上がってきた中山の頭上を通過してしまう。
 
 
ロスタイム2、右からの神戸のCK。三浦が短く出して再度受けようとしたところを安が厳しくいってファウルを受ける。
ロスタイム3、自陣でボールを持った杉本が大きく縦のスペースへと蹴り出して、これを中村が追いかけていったところで主審の長い笛がスタジアムに響き、名古屋はまたしても神戸の前に得点を奪うことが出来ず0−1で敗れてしまい、再開の初戦を白星で飾ることは出来なかった。最後まで声援ありがとうございました。
【交代:89分・神】
平瀬栗原