Jリーグ ディビジョン1・第14節
 午後6時15分、ゆっくりとした足取りでピッチに現れた、我らが名古屋グランパスエイトの戦士達。平日にもかかわらずスタジアムへ足を運んでくれたサポーターの下へと歩み寄ると、サイン入りのマスコットボールを投げ入れて行く。
 ピッチに広がった選手達は、ゆっくりとしたペースでウォーミングアップを行い、7時からの試合に向けて、気合いを込め始める。スタジアムでは清水の選手紹介が始まり、場内は騒然とした雰囲気になって行くが、そんなことを全く気にすることなく、名古屋の選手はアップに余念がない。ストレッチングで体をほぐし終えた選手達は2人1組に分かれボールを蹴り始める。前節での足の怪我が心配された中山も井川を相手にボールを蹴りあっており、心配は全くなさそうだ。髪を短く切り、イメージチェンジをした本田も体が軽くなってきているようで、いつもの、行く声の出る賑やかな、本田になってきた。
 東海地方は相変わらず梅雨前線が停滞しているようで、どんよりとした雨雲が上空を覆い、青空は全く見ることが出来ない。ここ日本平スタジアムもそれは同様のようで、まだ7時過ぎだというのに既に暗く、上空には黒い雲が腰を据えており、雨こそ降っていないものの、湿った、生暖かい、嫌な風をサポータに送り続けている。
 2戦連続で右サイドバックを務める杉本は、チーム1背の高い増川と組んで、試合前のアップを行っている。慣れ親しんだFWではないが、彼にとってはどのポジションで試合に出られることの方が重要と語っていた通り、今から相当に気合いが入っている。前節の、大宮の攻撃を抑え込み、試合の流れを変えたあのスピードを今日も見せて、名古屋の勝利に貢献する働きを期待したい。そして、クライトンと明るく語り合っている藤田には、気が早いかもしれないが、結果を出して欲しい。確かに試合勘はまだ戻ってきてはいないと思うが、彼が結果を出すことで名古屋の攻撃がレベルアップして行くことは間違いないはず。今日もこれまでの経験を生かしたプレイでチームの攻撃の底上げを図って欲しい。
 約30分、しっかりと体を動かした選手達は、汗をびっしりとかきながら、ロッカーへと消えていった。
 
〜前半15分
今にも雨が降り出しそうな黒い雲の下、両チームの選手がピッチへと入場してくる。左エンドの清水に対し、名古屋は右から左へと攻め上がって行く。前半は、ホーム・清水のキックオフで試合開始。
今日の布陣は、GK楢崎、DFは、右から杉本・古賀・増川・中谷の4バック。中盤は右に中村、真ん中に吉村、左にクライトン、1トップに中山、藤田と本田がその後ろに控える、4−3−2−1だ。
 
 
1分、右から市川がドリブルで入り込んでくるところを本田がファウルで止め、清水のFK。ゴール前へと入れてきたボールを清水・チョが頭であわせに来るが、増川が先に触ってCKに。
2分、清水の左からのCKはゴール前であわせてくるが、枠には届かない。
4分、右で藤田のスルーに中山が抜け出すと、相手DFが寄せてきたところで中村へ。これをファーサイドへと上げて行く清水DFはクリア、CKに。
5分、左からのCKのチャンス。中村の入れていったボールはニアの選手の頭に弾かれてしまう。
6分、右から市川が、佐藤とのワンツーで抜けてくるが、本田がしっかりとついて行き、タッチへと出して行く。
 
 
7分、自陣右中よりの位置での清水のFK。佐藤のファーサイドへの長いボールは落ち着いてクリアして行く。
9分、右でやや上がっていた杉本がボールを持つと、ゴール前へと早めに入れて行くが、このボールには中山が追いつけず、相手GKが先に押さえてしまう。
 
11分、自陣右やや入った位置での清水のFK。これをすぐにスタートさせると、ゴール前にシュートを蹴り入れてくる。これには楢崎が反応が遅れ、前に弾き落としたところを、チョ・ジェジンに押し込まれ、思わぬ形で失点を許してしまう。良い形で試合に入り始めていただけに、この失点は残念だ。
13分、左に本田からの縦パスで上がっていたクライトンがゴール前を狙って入れて行こうとするが、これは相手GKの正面。
14分、右から上がって来た佐藤のゴール前のクロスは、古賀が頭で弾き出す。
【得点】
11分 チョ・ジェジン(清水)
〜前半30分
前半の早い時間帯で清水が得点したことで、今は清水ペースで試合が進んでいる。ここは落ち着いて、気持ちを切り替えて試合の流れを手に入れたい。
16分、右に上がっていった杉本がドリブルで勝負に入って行くと、最後マイナスに早いグラウンダーをゴール前に蹴り入れてゆく。これに中央で本田が詰めていったが、僅かにタイミングが早すぎてしまい、後ろを抜けてしまう。
18分、左から持ち込まれると、久保山の放ったシュートは左のポストに当たり、こぼれ球を拾った高木のシュートは右のポストに嫌われるという、運に味方される形で、失点を逃れる。
 
 
19分、自陣右中程での清水のFK。佐藤がゴール前DFとGKの間へと蹴ってきたボールは楢崎が飛び出して、しっかりとキャッチ。
21分、本田から中谷、中谷から藤田、藤田から中村、そしてクライトンへと短いパスが通ると、最後エリアの外からクライトンがシュートを右足で放つが、これは相手GKが押さえてしまう。
 
 
23分、左でボールをもらった中谷がエリア内に入ってすぐにクロスボールを入れて行く。これに詰めていた本田がボレーを倒れ込みながら打とうとしたが、その前までDFにボールをカットされてしまう。
25分、ゴール前へこぼれたボールを清水・チェ・テウクがフリーで拾うと、シュートに来るが、戻ってコースに入った本田が体を張ってこれを弾き、失点を逃れる。
 
 
27分、右に上がってきた杉本がゴール前へと入れたボールにニアで中山が詰めるが、僅かにタイミングがあわず、反対に抜けてしまうが、これに詰めていったクライトンが足でカーブをかけてゴール右を狙ってシュートに行ったが、カーブが上手く掛からず、僅かに右のポストの外に外れてしまう。  
〜前半終了
30分、右に抜け出してきた市川のクロスボールに、左から上がってきた清水・チェ・テウクが左足でダイレクトボレーを狙ってくる。ゴールネットが揺れて、思わず肝を冷やすが、ボールはサイドネットの外。
32分、自陣でボールを回しながら相手選手を揺さぶると、クライトンが右の縦のスペースへとボールを出していったが、これは誰も感じ取れず。
33分、右に上がっていった杉本からの早いクロスをファーサイドで詰めていった本田がドンぴしゃのタイミングでヘディングシュートを打つが、クロスバーに弾かれてしまい、決めることが出来ない。
34分、今度は早めのクロスを清水ゴール前へと入れた杉本。中央にポジションを変わっていたクライトンが右足を伸ばしてこれをあわせようとしたが、僅かに足に届かず。徐々に名古屋が試合のペースを握り始めて来だしているこの時間帯。ここで同点に追いついておくと、後半が楽になるだけに積極的に攻め立てて行きたい。
 
 
36分、自陣右中程での清水のFK。佐藤の精度の高いボールに斉藤が足であわせてくるが、シュートはポスト右に外れ、辛うじて救われる。
39分、清水陣内深くでボールを持ち込んでいったクライトンが清水・佐藤のタックルに足を押さえて倒れると、清水のスタンドから大きなブーイングが沸き起こる。
41分、クライトンとポジションを変わっていた中山が左でボールをもらうと、すぐさま縦に出して行き中谷を走らせる。これをダイレクトでゴール前へと折り返して行くが、ボールは惜しくも相手GKに正面で押さえられてしまう。
43分、中山が中村から入ったボールを落として、杉本に渡そうとするが、これは相手選手が先に追いつき、タッチの外へとカットされてしまう。
 
 
44分、右でボールを拾った杉本が低いクロスを放り込んで行くと、これにニアで詰めていった本田がダイレクトで押し込み、見事な同点弾を決める。そして、ここで前半が終了。清水に早いリスタートから失点を許し、苦しい展開で始まった試合だったが、徐々に落ち着きを見せ始め、途中からは名古屋がボールを持つ時間が増え試合のペースを掴む。前線で選手達が流動的にポジションを入れ替えながら清水のエンドに押し込んで行く時間が増え、試合の主導権を完全に握ると、その勢いが最後本田の同点ゴールを生むことに。後半も、この勢いで清水の攻撃を押さえ込み、主導権をしっかりと握ったままで試合を進めることが、勝利を掴むためには重要だろう。 【得点】
44分 本田(名古屋)
〜後半15分
心配された雨はまだ何とか耐えているようで、この時間は気温もやや下がって、蒸し暑さを除けば、観戦にはもってこいのコンディションだ。
後半は左にエンドを変わった名古屋のキックオフで試合が再開する。
1分、清水・山西が縦に走るチェ・テウクにパスを通そうとするが、ここは杉本が素早く反応タッチへと弾き出して行く。
2分、左で中谷が横パスを受けると、ダイレクトで縦に蹴りだして行くが、これはボールが大き過ぎてしまい、本田を通り過ぎてしまう。
3分、中谷がドリブルしながら上手く反転してついてきた選手を振り切り前を向くと、縦に出して行く。上手く中村が裏へと抜け出したように見えたが、オフサイドに。
 
4分、清水・チェ・テウクに左から突破されると、古賀が切り返しにかわされて、コースが空いたところを右足でシュートを決められ、清水に先に追加点を奪われてしまう。 【得点】
49分 チェ・テウク(清水)
 
6分、右でボールを持った中村が縦に追い越していった杉本をおとりに体を反転、ゴール前へとクロスを入れて行くが、待っていた中山には届かず。
10分、相手陣内中程やや右でのFKのチャンス。中村がゴール前へと曲がるボールを蹴り入れて行くが、これは飛び出したGKがパンチングで弾き出してしまう。
12分、右からのCKのチャンス。中村の蹴ったボールは大きく反対に抜けてしまう。
 
14分、相手陣内左寄り入ったところでのFK。中村がGKとDFの間に入れるように見せかけてみんなが動いたところで、直接狙いのボールを蹴っていったが、惜しくもGKが反応、キャッチされてしまう。
15分、右でクライトンのパスを受けた本田が、エリアの外からゴール左を狙ってシュートを打っていったが、これはボールが大きくなってしまい、ゴールラインを割ってしまう。
【交代:57分・清】
佐藤太田
〜後半30分
16分、本田からのパスを受けた杉本が鋭い切り返しから縦に抜けて行くと、右足でゴール前へと上げてゆこうとしたが、このボールはクロスバーの上へ抜けてしまう。
18分、右サイド自陣で混戦となったところでこぼれてきたボールを中村がタッチ沿いに大きく蹴って行くと、これに藤田が反応、走り出して行くが、僅かにボールには間に合わず。
20分、左から中山とのワンツーで藤田が抜けて行こうとしたが、その前でボールをカットされる。
 
 
21分、清水のカウンターを受け、最後右に出たボールを拾った太田がゴール前へと入れてくるが、戻った杉本がゴール前でダイレクトで大きく蹴り出して行き、このピンチを逃れる。
22分、中谷の上がったスペースに右に抜け出した太田がゴール前へと入れてくると、これを中央でチョ・ジェジンがダイレクトボレーを放つが、クロスバーの上へ外れる。
24分、清水の右からのCK。チェ・テウクが短く出したボールを太田が拾って戻そうとしたが、ここは寄せた中谷がしっかりとカットしてゆく。
 
 

27分、クライトンの縦パスを豊田が頭で落として、杉本の寄せを待つが、ボールがその前でタッチを割ってしまう。
28分、中山が自陣から一気にドリブルで持ち上がって行くが、相手エリア内で味方の上がりを待っているところで、DFに詰められボールをカットされてしまう。
【交代:70分・名】
吉村豊田
【交代:70分・清】
高木岩下
〜試合終了
31分、相手陣内深くエリア内でこぼれたボールに右で杉本が拾って中へと折り返したボールに藤田が寄せていったが、僅かに間に合わず、相手DFに阻まれてしまう。
32分、中央でクライトンの縦パスを豊田が落として、本田がダイレクトで裏へと出したところを中山が飛び出して行くが、タイミングが遅れ、相手GKが押さえてしまう。
 
 
33分、右に上がっていった杉本の早いクロスをニアに流れながら豊田が頭で流し込もうとしたが、ボールは左に流れてしまう。 【交代:79分・清】
久保山財津
 
 
35分、左で中谷、藤田、中村と細かいパスが繋がると、最後これを受けた中村がエリアの外からコースを見つけてシュートを放つ。そして、これが見事に相手ゴールネットに突き刺さり、ようやく名古屋は同点に追いつくことが出来た。 【得点】
80分 中村(名古屋)
38分、右から杉本の放り込んだボールにファーサイドで豊田が頭から飛び込んで行くが、惜しくも届かず。こぼれたところを拾った渡邊がシュートを狙って行くが、これは清水DFに弾かれてしまう。・40分、右からのCKのチャンス。中村のボールに増川が合わせるが、GKが弾いてしまう。さらにこぼれ球を杉本が入れて行くと、今度は本田がヘディングシュートを狙うが、これは相手GKの正面。
42分、ゴール前でボールを持ったチョ・ジェジンのシュートは増川が上手く体を入れてコースを変えてゆく。
【交代:80分・名】
中谷渡邊
【交代:82分・名】
中山平林
 
44分、自陣からのボールを受けた平林がそのままドリブルで仕掛けると、縦に豊田を走らせようと出してゆくが、これはボールが長すぎてしまい、追いつくのが精一杯。
ロスタイム1、相手選手との競り合い方ボールを奪った増川がそのまま持ち上がって行き、裏へと入れてゆこうとしたが、これは相手DFが頭で弾いてチャンスにすることが出来なかった。
 
 
ロスタイム2、清水の右からのCK。チェ・テウクが短く出したところを、再度繋ごうとしたところで主審の長い笛が鳴り響き、名古屋はまたしても勝ち点3を手に入れることが出来ず、2−2の2戦続いての引き分けとなってしまった。しかし、清水に先行を許しながらも、最後まで粘り強く戦い、同点に追いつく執念は次ぎに繋ぐことの出来る、大きな意味のある戦いだったといえるが、それでもやはり勝てなかったことは悔しい。この悔しさは絶対に次に生かしてゆきたいところだ。最後まで熱い声援ありがとうございました。