Jリーグ ディビジョン1・第13節
 東海地方は、6月中が空梅雨で、雨が思いの外少なく、節水警報が心配されていたが、昨日は朝からまとまった雨が降り、今日もその影響で朝から雲がちの天気に。しかし、その雨のお陰もあり、ここ豊田スタジアムは気温もそれほど高くなく、サッカー観戦には程よい日となった。試合前には、“PIXY”ことストイコビッチ氏による地元の小学生チームを集めたサッカー教室が行われ、スタジアムの雰囲気の盛り上がりに一役買っていた。
 午後6時40分、屋内で体をほぐし、汗を浮かべながら選手達がピッチへと走り込んでくると、大きな声援が沸き上がる。久し振りの公式戦、それも、新加入選手・藤田と中山2人が揃って入った初のリーグ戦ということもあり、サポーターの寄せる期待が相当なことが伺える。
 緑鮮やかな芝生の上では選手達が互いにボールを蹴り合いながら最後の調整に余念がない。期待の2人だけでなく、杉本・本田もやや緊張した面持ちでボールを捌いている。杉本にとっては、かつて特別指定選手として所属していたチームと言うことも合ってか、その心中は複雑なのだろうか。しかし、笛が鳴ってしまったらそんなことは気にせず、名古屋のFWの1人として、最後、力尽きるまでピッチを駆け回り、相手DFを苦しめ、サポーターを沸かして欲しい。
 藤田・中山という、攻撃力UPと言うことでは、最高で、強力な“武器”を手に入れ、満を持して臨んだ今日の大宮戦。今季の今後を占う意味でも重要な試合となることは間違いないだろう。ネルシーニョ指揮官の下、持てるポテンシャルを全員が発揮して、絶対に勝利で終わってほしい。
〜前半15分
サポーターの轟く声援が大屋根に反響して、スタジアム内の興奮度が上り詰めて行く中で、主審の右手が上がり、前半は名古屋のキックオフで試合開始。
右にエンドを取った白いユニフォームの大宮に対し、名古屋は左から右へと攻め上がる。GK楢崎、DFは右に角田、左に中谷、中央は古賀と増川が占める。中盤は、中村と吉村のダブルボランチに、右に藤田、左が本田、FWは杉本と中山が入るとと言う布陣で臨む。
 
 
1分、本田が左に捌いたボールを中谷がスピードに乗って持ち上がって行くが、相手選手の厳しい寄せにチャンスには繋げなかった。
3分、エリアのすぐ外でボールを受けた大宮・クリスティアンが強引に突破を図ると、右へと流れながらゴール前へと流し込んでくる。これをトゥットが合わせてくるが、ボールは辛うじて左に外れ、救われる。
6分、ハーフウェイラインでボールを持った吉村が相手DFの後ろのスペースへと大きく出すと、これに杉本が飛び出すが、惜しくもオフサイド。ここまでは、DFラインを高くして、コンパクトに守備をしてくる大宮に対して様子を見ながら、相手の攻撃を受ける形が続いている。
8分、左から角田をかわして藤本が抜け出してくるが、中へと狙ったボールは古賀が体に当てて、コースを変えたところを楢崎が押さえて行く。
11分、中央でボールの奪い合いでこぼれたところを拾った本田が左に出すと、これを中谷が受け、追い抜いていった本田に右足で繋ごうとしたが、これは相手選手が体を入れてしまい、カットされる。
 
 
12分、左からドリブルで仕掛けた本田が、エリア内手前のところで厳しい寄せを受けボールを見失うが、左に貼っていた中山の前にボールがこぼれ、これをシュートに行こうとしたが、その前にオフサイドに。
14分、中央で藤田の横パスを受けた吉村が鋭いスルーパスを縦に出すと、これに中山がきっちりと反応して飛び出して行くが、ボールに追いつく僅か手前で、相手GKにボールを先に押さえられてしまう。
 
〜前半30分
16分、ゴール前で競り合いでこぼれたボールを大宮・片岡が拾うと、右にと流れながら古賀と競り合うが、強引に右足でシュートを打ってくる。しかし、これは古賀が当たり負けすることなくついて行き、クロスバーの上へとボールは大きく抜けて行く。
18分、左でボールを持った藤本が大きく右に展開すると、これを受けたトゥットがエリアの外から強烈なミドルシュート。しかし、ボールはコントロールが効かず、左に流れて行く。
20分、大宮の右からのCK。藤本の右足からのボールがゴール正面に詰めたクリスティアンへとはいるが、ここはDFがしっかりと体を寄せており、ボールを蹴らせなかった。
 
 
21分、右に流れたボールを拾った藤田が戻したボールをダイレクトで吉村がゴール前へと放り込むと、本田がヘディングシュートに。枠を捕らえたシュートだったが、惜しくも相手GKの正面。  
23分、相手陣内右深くで相手DFのクリアボールをカットした杉本がそのまま細かなドリブルで勝負に行くが、最後エリア内でDF2人に阻まれ、シュートまで持ってゆけなかった。
25分、自陣左深くでの大宮のFK。トゥットが早いボールをゴール前へと入れてこようとするが、吉村がしっかりとコースに入り、頭で大きく弾き返して行く。
【交代:22分・大】
藤本久永
 
27分、右からトゥットがドリブルで中谷をかわして上がってくると、中へとグラウンダーを折り返してくるが中央で古賀が跳ね返して行く。  
28分、左に出たボールを、代わったばかりの大宮・久永がクロスボールを入れてくると、中央で待ちかまえていたクリスティアンに豪快なヘディングシュートを叩き込まれ、大宮に先制点を奪われてしまう。徐々に試合のリズムを掴み始め、前でプレイすることが増え始めていただけに、この失点は早く忘れて、気持ちを切り替えたいところ。 【得点】
27分 クリスティアン(大宮)
〜前半終了
32分、中央で吉村の落としたボールを受けた本田が、縦に走る杉本に合わせてパスを出して行こうとしたが、DF2人に挟まれる形でボールをカットされてしまう。
35分、相手陣内右中程でのFKを得る。中村の鋭いボールに古賀があわせに行ったが、頭にミートせず、ボールは左に流れてしまう。
36分、自陣から増川が大きく縦に、左のスペースへとボールを蹴っていったが、これは誰も取りに行けず。
 
 
38分、右でボールを受けた角田が上がって行くと、早めのクロスを入れて行こうとするが、これはボールが長すぎてしまい、相手GKに渡ってしまう。
39分、中央右寄りで中村の出した長い縦パスにタイミング良く相手の裏へと飛び出した杉本が一気に持ち込んで行くと、相手エリア内でDFをかわしに行こうと勝負して行くが、これはボールをカットされ、このチャンスを生かせず。
41分、中央で相手パスをカットした古賀のボールを中村が受けると、すぐに縦に蹴りだして行く。しかし、これに味方が反応する前に、相手GKが押さえてしまう。
 
 
44分、角田が藤田との縦パスで上がって行こうとするが、藤田が後ろからのタックルに倒され、ボールを貰うことが出来なかった。
ロスタイム1、左で中山が入れたボールを中村が縦に折り返して行くと、ゴール正面に藤田がいたが、これをスルーし、さらにゴール近くにいる杉本を使おうとするが、感じきれず。
ロスタイム2、結局、前半は0−1のまま終了。なかなか良い形が作れず、大宮相手に1点ビハインドで折り返したチームにフラストレーションが溜まったサポータからブーイングが沸き起こる。後半はこの嫌な状況を振り払うためにも、早く点を取って、スタジアム内の雰囲気を塗り替えて貰いたい。
 
〜後半15分
杉本が右のサイドバックに入り、左オフェンシブハーフに平林が入る。エンドを右に代わった大宮のキックオフで試合再開。
1分、右からのCKのチャンス。中村の入れたボールが浮いたところを古賀が頭で折り返すと、平林が狙いに行くが、これは相手DFに阻まれてしまう。
3分、自陣左入った位置での大宮のFKは大きく右に展開したボールを中谷が弾き返して行く。
5分、自陣からの右のスペースへの長いボールに杉本が一気に抜けていったが、惜しくもオフサイドを取られてしまう。
6分、右のスペースへと出たボールをトゥットがゴール前へと入れてくるが、楢崎が余裕で押さえる。
【交代:45分・名】
本田平林
角田豊田
 
7分、相手陣内左サイド深くでのFK。ゴール前へと入れたボールを豊田がドンピシャリのヘディングシュートを放つが、惜しくもGK正面。  
 
 
8分、右からのCKのチャンス。中村のボールに古賀が見事に頭で決め、ついに同点に。さあ、こうなったら、一気に突き放しに掛かるぞ〜!
10分、自陣深くから杉本が長い距離をドリブルで上がって行くと、最後ゴール前へとグラウンダーを折り返していったが、味方がかえって着いてこれず、ボールに寄せて行くことが出来なかった。
12分、右からのCKのチャンス。中村が今度は長めのボールを入れるが、これはファーサイドの吉村の頭上を抜けてしまう。
13分、右で相手ボールを奪った豊田が前に走る中山の足下へと入れて行こうとするが、これはDFにカットされてしまう。
【得点】
53分 古賀(名古屋)
〜後半30分
15分、右に抜け出してきたトゥットがゴール前へ上げてくるが、このボールも楢崎が落ち着いてキャッチしてゆく。
17分、ゴール正面でトゥットが久永とのワンツーで抜けてくるが、ここはCKへと逃れる。ゴール前へのボールは飛び出した楢崎が指先で弾き出して行く。
18分、右でボールを持った豊田が前を向くと、クロスボールをゴール前へと放り込んで行く。中山が頭で競り合いにゆくが、上背の高いDFに弾かれてしまう。
 
 
21分、ゴール前エリア内すぐの位置で、トゥットが杉本を切り換えしてシュートに入ってくるが、吉村のコースに上手く入るスライディングでボールをカット、ピンチを救う。
24分、相手GKのボールを受けたクリスティアンが体を寄せていた増川をはじき飛ばしながら左足でシュートを放ってくるが、これはクロスバーの上へ大きく抜けて行く。
27分、杉本の裏へのボールを豊田が拾いにゆくと、相手DFとの厳しい競り合いにエリア内で倒れるが、ファウルはもらえず。
 
 
28分、左でパスを受けた中谷がそのまま持ち込んで行くと、中へと入っていって中央に走り込む藤田へと短く出して行くが、これは僅かにタイミング合わず藤田の足を弾いてしまう。  
大宮2人目メンバー交代:クリスティアン→横山
29分、左から相手陣内深くへ切れ込んでいった中谷が、最後マイナスに折り返して行くが、中央に詰めていった豊田には届かない。
【交代:73分・大】
クリスティアン横山
〜試合終了
同点に追いついてからは、名古屋が一方的と言っても良いほど押し込んでいるだけに、早く追加点が欲しいところだ。
32分、自陣入ってすぐやや右寄りでの大宮のFK。トニーニョがゴール前へと入れてくると、大宮・横山がこれを拾ってゴール前へと抜け出してシュートに入ってこようとしたが、楢崎が体ごと飛び込んで行き、接触しながらも、しっかりとボールを押さえ込んでゆく。
35分、相手陣内左中程でのFKを得る。中村が短く出したボールを中谷が受け、再度戻して中村が縦に出したボールを受けた平林が、個人技を見せて抜け出したところをカットされ、CKに。
 
 
36分、中村のファーサイドへのボールは詰めていた古賀が頭であわせに行くが、DFに体を寄せられ、前に飛ばすことが出来なかった。  
38分、相手陣内右、中程の位置でのFK。古賀・増川・中山等の高い選手が入って行くが、誰も当てることが出来なかった。
40分、相手陣内深く左寄りのゴールライン際でのFKのチャンス。中村の早いボールにニアの増川が頭で合わせるが、枠には飛ばず、惜しくもクロスバーの上へ抜ける。
43分、スローインのボールを中村が簡単に縦に捌いて行くが、平林が拾う前に相手DFがカットしてしまう。
【交代:82分・大】
桜井森田
 
44分、大宮・トゥットがドリブルで縦に走り出してDFの間に入れてこようとしたが、これはオフサイドに。
ロスタイム1、中村が左足でゴール前へ上げたボールに藤田、中山が入り込んで行くが、コースを阻んだDFへのファウルを取られてしまう。
ロスタイム2、藤田が杉本が相手ボールをカットしたところを拾って大きく右のスペースへと出して中山を走らせるが、これは相手DFが弾いてしまう。
 
 
ロスタイム3、豊田が中村の右からDFの裏へのボールに反応、抜け出していって右足でシュートに行くが、これは惜しくもオフサイドに。そして、3分以上のロスタイムを経て主審の試合終了の笛が豊田スタジアムの屋根に響き渡り、残念ながら、再開後の最初の試合は、勝ち点1を分け合う形となり、名古屋は白星スタートを飾ることが出来なかった。前半は相手の守備にはまってしまい、何も出来ないまま試合が進んだが、後半から杉本を右サイドバックに入れたことで、全員の動きが良くなり、ゲームのスピードが上がり始め、豊田が入って前でのターゲットが増えたことで、名古屋が良い形を作れるようになった。しかし、最後のところでなかなか決めきれず、古賀のCKによる同点ゴールだけに終わったことは、ちょっと寂しい。それでも、後半からはパスもしっかりと繋がるようになり、選手達のパスや動きにも意図が見えるようになったことは、今後への大きな光明といえるだろう。最後まで熱い声援ありがとうございました。