Jリーグ ディビジョン1・第12節
 午後3時30分過ぎ、名古屋の選手がピッチにウォーミングアップのため入ってくると、スタンド全体を包み込むような大きな声援が沸き起こる。その中でも今月でチームを去ることが決まっているマルケスに対しては惜しみない拍手が送られた。
 初夏の爽やかな風がスタジアム内を吹き抜け、芝生の青い香りをサポータに運んでくれる、今日の豊田スタジアム。天候は暑くもなく寒くもなく、正にサッカー観戦には最高の1日となった。
 現在チームは単独2位をキープしているものの、怪我人が多く、苦しい布陣が続いたことで、開幕当初のような安定感に欠く試合が続き、チーム状態は決して良くはない。そして、今日の神戸戦を終えればリーグ戦は中断期に入る。この後に控えるナビスコ杯に向けても、絶対に勝利という良い形で終わっておきたいところだ。今月いっぱいで退団の決まったマルケス選手の姿を見ることが出来るのも、今日を含め、残り僅かの試合数となってしまった。名古屋サポータのみならず、対戦相手の選手をも驚愕させた、あの華麗な個人技を今日はじっくりと目に焼き付けたい。
大きくスタンドの屋根が影を落とすピッチの上を選手達は最後の調整を入念に行う。かつては対戦相手だけでなく、名古屋の選手の足を引っ張る劣悪な芝生として、悪者呼ばわりされてきた豊田スタジアムの芝も、今日は緑鮮やかに刈り揃えられ、優しく両チームの選手を迎え入れ、この後の好ゲームを演出しようと、息を潜めて待っている。
午後3時45分、およそ15分と短い時間の中でしっかりとウォーミングアップを終えた選手達はサポーターのエールを背に受けながらゆっくりとした足取りでロッカーへと消えていった。
“俺達は君がくれた1つ1つの感動を忘れない。ありがとう、マルケス”
キックオフ直前、ゴール裏サポーターからマルケスへのメッセージを込めた横断幕が掲げられました。
〜前半15分
大きくスクール生のちびっ子がチームフラッグをなびかせるピッチに両チームの選手が入場してくるとスタジアム内の興奮度が上がってゆく。現在、勝ち点18・順位2位対勝ち点6順位18位の一戦。本来であれば間違いなく名古屋の方が楽勝の試合になるはずだが、今のチーム状態だけを考えれば、その勢いは甲乙付けがたいところだろう。良い流れをものにするためにも、前半開始から仕掛けてくるであろう神戸の攻撃をしっかりと押さえて、リズムを作りたいところだ。
前半は、右にエンドを取った神戸に対し、左から右へと攻め上がる名古屋。前半は神戸のキックオフで試合開始。
GKは楢崎、DFは右から山口・古賀・井川・角田の順。MFは中村・吉村・クライトン、そして平林が左を務める。FWは杉本・マルケスのコンビだ。
1分、左から持ち込んだクライトンがマルケスに当てて縦に入ってゆくが、受けたボールがトラップが大きくて流れてしまい、シュートまで持ってゆけなかった。
2分、右からのCKのチャンス。中村のボールをゴール正面でフリーで受けたマルケスがヘディングシュートにゆくが、前に飛ばすことが出来なかった。
 
 
3分、右からの神戸のCK。三浦(淳)がゴール前へと精度の高いボールを入れてくるが、楢崎が弾き出す。
4分、自陣からのカウンターで杉本が一気にドリブルで持ち上がってゆく。相手エリア内で味方が余っていたが、自らシュートにゆこうとして、DFに阻まれてしまった。
6分、左サイド深い位置でスローインのボールを受けた神戸・幡戸がスペースへ出して抜けてこようとしたが、古賀・山口でこれをきっちりクリアしてゆく。
7分、右から入ったゴール前へのボールを井川を背負ってキープした三浦(和)がファーサイドへ持ち替えて出してくるが、ゴールラインの外。
 
 
9分、右のスペースへ抜ける平林に中村が縦パスを出すと、これを相手DFの足の間を抜いて入ってゆこうとしたが、これは足に当たってしまう。
10分、左サイドを持ち上がってきた神戸・ホージェルが折り返してくるが、そのままゴールラインを割る。
11分、相手陣内中程右の位置でのFKのチャンス。中村の早いボールはマルケスが足下で合わせたところをカットされてしまう。
13分、クライトンのドリブルのボールをカットして上がってきた神戸・朴がゴール前に狙って入れて来ようとしたが、吉村が判断良く足を伸ばしてこのボールをカット、ピンチを未然に防ぐ。
 
〜前半30分
16分、長い縦パスを左で受けた幡戸が頭で中へ折り返すと、これを拾った三浦(和)が前を向いてシュートに来ようとしたが、これは古賀・井川で上手く挟み込んでボールを奪ってゆく。
17分、自陣左深くゴールやや左寄りの危険な位置で神戸にFKを与えてしまう。三浦(淳)が壁の脇を抜ける早いボールを蹴ってくるが、壁に当たる。こぼれたところをホージェルがシュートに来るが、力無いボールは楢崎の正面。
 
 
20分、中村からの右のスローインのボールを相手陣内深くで受けた杉本がDFをかわして折り返そうとするが、相手DFの厳しい当たりにボールを見失ってしまう。
22分、中央のマルケスからのダイレクトパスを右で受けた杉本が落としてエリア内へと侵入してゆくが、寄せてきたDFに対するファウルを奪われ、相手ボールになってしまう。
23分、味方へのボールを神戸・北本にインターセプトされると、これをDFの裏へと入れて三浦(和)を走らせてくるが、ここは楢崎が落ち着いてボールを押さえにゆく。
 
 
25分、中村からの縦パスに右で抜け出した杉本がゴール前へと折り返してゆく。このボールにマルケスが飛び込んでゆくが、競り合いに出たDFの足下に収まってしまい、枠へと飛ばすことが出来なかった。
27分、相手陣内でクライトンが縦に突破してゆこうとして倒され、好位置でFKを得る。エリアから約10m左よりの位置から中村が直接左隅を狙って蹴っていったが、GKの好セーブにあい、惜しくも弾き出されてしまった。
 
〜前半終了
31分、自陣左入ったところでの神戸のFK。三浦(淳)がゴール前へ入れてくると、こぼれたところを三浦(和)シュートに来るが、これはDFが体を入れ、ボールをはじき返してゆく。
32分、左でボールを持った平林が押し上がってきた角田を待って縦に出すと、これをゴール前へと右足で折り返してゆくがDFが弾き、CKに。
33分、左からのCKのチャンス。中村のボールをゴール前で平林が合わせるが、ジャストミートせず、GKにボールを押され込まれてしまい、決めることが出来なかった。
 
 
35分、相手陣内左深くでボールをキープしていたマルケスがファウルで倒され、好位置のFKを得る。中村が意表を突いて短く出すと、杉本がこれをゴール正面で受けて前を向いたところでエリア内の選手がファウルを取られ相手ボールになってしまう。
37分、自陣中程やや左での神戸のFK。三浦(淳)が直接狙いのボールを蹴ってくるが、今度は神戸の選手によるエリア内でのファウルでマイボールになる。
38分、左からの神戸のCK。三浦(淳)の早く曲がるボールが入ってくるがDFがクリア、再びCKに。
 
39分、左からのCKのボール、神戸・北本が飛び込んだところ、最後味方に当たってのオウンゴールで神戸に先制を許してしまう。良い形で神戸を抑えこんでいただけに、このセットプレイからの失点は悔しい。しかし、ここは早く切り替えて、失点を繰り返さないよう集中してゆきたい。
【得点】
39分 オウンゴール(神戸)
 
42分、右の深い位置からの中村の折返しに正面で杉本が合わせようとしたが、DFにクリアされてしまう。
43分、右からのCKのチャンス。中村のファーサイドへのボールに杉本が飛び込むが、これはシュートを当てることが出来ず、後ろに抜けてしまった。(ロスタイム表示:1分)ロスタイム1,自陣左入った位置での神戸のFK。三浦(淳)ゴール前へ抜けてくる早いボールは誰も触れることなく、楢崎が正面で押さえる。そして、ここで前半が終了。名古屋が開始から良い形をつくり、先制攻撃を仕掛けてゆくが、なかなか得点が奪うことができなかった。途中からは神戸が三浦(淳)のセットプレーで流れを掴み始めるが、守備陣が神戸の攻撃をしっかりと押さえ込む。そういう意味でもセットプレーでの失点は悔やまれるところ。後半は早い時間帯で同点として、試合の流れを引き戻し、逆転勝利へと向かいたい。
 
〜後半15分
後半は右にエンドを変えた名古屋のキックオフで試合開始。
平林の位置にクライトンを入れ、セバスティアンをボランチに据える布陣に変えてきたネルシーニョ監督。
1分、右からの神戸のCK。三浦のゴール前のボールは弾いてゆく。
3分、相手陣内で縦パスを受けたクライトンが前を向こうとしたが、ここは厳しい当たりにファウルを受け、倒されてしまう。
4分、相手陣内中程右寄りでFKのチャンス。中村の入れたボールに古賀が待ちかまえるが、その前のDFに当たって弾かれてしまう。
【交代:45分・名】
平林セバスティアン
【交代:45分・神】
三浦(知)和多田
播戸薮田
 
5分、神戸の左からのCK。三浦のゴールに向かって曲がるボールは楢崎がパンチングで弾き出す。
7分、吉村が縦に早いボールを出すと、そのスペースへ中村が走り込もうとするが、ボールに追いつけず。
8分、相手陣内中程ゴール正面で中村からのパスを受けた杉本が前を向こうとしたところで厳しいファウルを受け倒され、好位置でのFKを得る。中村が直接狙って蹴っていったが、壁に弾かれ右からのCKに。中村のゴール正面へのボールは簡単にクリアされてしまう。
10分、左に流れたボールをホージェルがゴール前へ入れてくると、これに和多田が頭で合わせてくるが、ポスト右に外れる。
 
 
11分、名古屋2人目メンバー交代:山口→豊田12分、右からのCKのチャンス。中村のボールはニアのDFがカットしてしまう。
14分、自陣右で角田が神戸の選手を押さえ込んでしまい、ファウルを受ける。
15分、ホージェルのゴール前への早いボールに和多田が合わせようとしてくるが、これは井川がしっかりと競り合い仕事をさせなかった。
【交代:55分・名】
山口豊田
〜後半30分
17分、吉村がクライトンに当ててさらに縦に上がってゆこうとするが、相手DFのスライディングにボールを止められてしまう。
18分、相手陣内深くゴール左寄りの絶好の位置でFKを得る。セバスティアンがカーブの掛かったボールを蹴るが、壁に当たってしまい、こぼれたところをGKに押さえ込まれ、このチャンスを生かすことが出来なかった。
 
 
20分、左でセバスティアンのパスを受けたマルケスが中へと切れ込んでゆくと、エリアの外からシュートにゆくが、コースに入ったDFに弾かれてしまう。
22分、相手陣内中程でボールの奪い合いが続くと、最後拾った中村がDFの裏へと出そうとしたボールがDFに当たり、弾かれてしまう。ハンドかと思われたが、主審は認めず流されてしまう。
24分、左のスペースに出たボールをフリーで受けたセバスティアンだったが、慌てたのかトラップを流してしまい、クロスを上げる前にゴールラインの外へ出してしまう。
 
 
25分、右で中村が杉本に当ててさらに縦に上がってゆくが、杉本のパスを相手DFにカットされ、チャンスを作ることが出来なかった。  
28分、マルケスの大きく入れたボールに豊田がDFと競り合うが、倒されてしまう。
29分、左のスペースへ出たボールを拾ったマルケスが切り返して右足でゴール前へと上げて行くが、このシュート気味のボールには誰もあわせることが出来なかった。
【交代:70分・神】
北本河本
【交代:72分・名】
杉本中島
〜試合終了
32分、右サイド深い位置でボールをキープした豊田だったが、相手DF2人による厳しいプレッシャに耐えかね、ファウルを取られてしまう。
33分、右サイドで神戸・朴が粘りながら中へと上げてこようとしたが、角田がしっかりとついて行き、ゴールキックとする。
 
35分、右サイドで三浦にボールをもたれると、中へと流れてきながらゴール正面のところで左足からの強烈なシュートを叩き込まれ、よもやの2点目を奪われてしまい、ますます苦しい状況になる。 【得点】
80分 三浦・淳(神戸)
 
38分、縦に入ったボールを豊田が落とすと、マルケスが寄せて行くがチャンスを作ることが出来ない。
39分、左に上がっていった角田からの折返しをファーサイドの豊田が頭で折り返すと、中央にマルケスが相手GKと交錯しながらも飛び込んで行くが、合わせることは出来なかった。
41分、中央でセバスティアンが縦にボールを蹴り出して行くが、味方には通らずDFにカットされてしまう。
43分、自陣左の中程での神戸のFK。しかし、三浦のボールはニアのホージェルが合わせようとしたボールにDFが競り、前に飛ばさせなかった。
 
 
(ロスタイム表示:3分)
ロスタイム1、相手陣内右でのFK。簡単にゴール前へ入れて行くが、誰も押し込むことが出来ず。
ロスタイム2、左からのCK。セバスティアンがニアの中村に蹴って行くが、出足の良い神戸のDFにカットされてしまう。
 
 
ロスタイム3、右から中村がゴール前へ入れて行くと、ファーサイドからマルケスがあわせにゆくが、その前でDFにカットされてしまう。そして、ここで試合終了の主審の試合終了を告げる長い笛が豊田スタジアム内に響き渡り、名古屋はリーグ戦中断前のホームでの試合を勝利で飾ることが出来なかった。そして、日本でのリーグ戦最後となるマルケスにとっては、残念な結果となってしまった。最後まで、熱い応援ありがとうございました。